沖縄から-行政法研究者有志一同の「辺野古埋立承認問題における政府の行政不服審査制度の濫用を憂う」声明を読む。

 行政法研究者有志一同 からの「辺野古埋立承認問題における政府の行政不服審査制度の濫用を憂う」との声明を要約する。


(1)経過
①翁長雄志沖縄県知事は去る 10 月 13 日に、仲井眞弘多前知事が行った辺野古沿岸部への米軍新基地建設のための公有水面埋立承認を取り消した。
②沖縄防衛局は、10 月 14 日に、一般私人と同様の立場において行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対し審査請求をするとともに、執行停止措置の申立てをした。
③この申立てについて、国土交通大臣が近日中に埋立承認取消処分の執行停止を命じることが確実視されている。
(2)結論
 法治国家の理念を実現するために日々教育・研究に従事している私たち行政法研究者にとって、このような事態は極めて憂慮の念に堪えないものである。国土交通大臣においては、今回の沖縄防衛局による執行停止の申立てをただちに却下するとともに、審査請求も却下することを求める。
(3)結論に至る理由
①この審査請求は、沖縄防衛局が基地の建設という目的のために申請した埋立承認を取り消したことについて行われたものである。行政処分につき固有の資格において相手方となった場合には、行政主体・行政機関が当該行政処分の審査請求をすることを現行の行政不服審査法は予定しておらず(参照、行審 1 条 1 項)、かつ、来年に施行される新法は当該処分を明示的に適用除外としている(新行審 7条 2 項)。したがって、この審査請求は不適法であり、執行停止の申立てもまた不適法なものである。
②一方で国の行政機関である沖縄防衛局が「私人」になりすまし、他方で同じく国の行政機関である国土交通大臣が、この「私人」としての沖縄防衛局の審査請求を受け、恣意的に執行停止・裁決を行おうというものである。
 このような政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するものであって、じつに不公正であり、法治国家に悖るものといわざるを得ない。


 この「辺野古埋立承認問題における政府の行政不服審査制度の濫用を憂う」との声明は、政府の今回の行政不服審査制度の濫用が「法治国家に悖るもの」であると、断罪されたことを示すものである。

 以下、声明の引用。






辺野古埋立承認問題における政府の行政不服審査制度の濫用を憂う

                          2015 年 10 月 23 日
                              行政法研究者有志一同


 周知のように、翁長雄志沖縄県知事は去る 10 月 13 日に、仲井眞弘多前知事が行った辺野古沿岸部への米軍新基地建設のための公有水面埋立承認を取り消した。これに対し、沖縄防衛局は、10 月 14 日に、一般私人と同様の立場において行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対し審査請求をするとともに、執行停止措置の申立てをした。この申立てについて、国土交通大臣が近日中に埋立承認取消処分の執行停止を命じることが確実視されている。
 しかし、この審査請求は、沖縄防衛局が基地の建設という目的のために申請した埋立承認を取り消したことについて行われたものである。行政処分につき固有の資格において相手方となった場合には、行政主体・行政機関が当該行政処分の審査請求をすることを現行の行政不服審査法は予定しておらず(参照、行審 1 条 1 項)、かつ、来年に施行される新法は当該処分を明示的に適用除外としている(新行審 7条 2 項)。したがって、この審査請求は不適法であり、執行停止の申立てもまた不適法なものである。
 また、沖縄防衛局は、すでに説明したように「一般私人と同様の立場」で審査請求人・執行停止申立人になり、他方では、国土交通大臣が審査庁として執行停止も行おうとしている。これは、一方で国の行政機関である沖縄防衛局が「私人」になりすまし、他方で同じく国の行政機関である国土交通大臣が、この「私人」としての沖縄防衛局の審査請求を受け、恣意的に執行停止・裁決を行おうというものである。
 このような政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するものであって、じつに不公正であり、法治国家に悖るものといわざるを得ない。
 法治国家の理念を実現するために日々教育・研究に従事している私たち行政法研究者にとって、このような事態は極めて憂慮の念に堪えないものである。国土交通大臣においては、今回の沖縄防衛局による執行停止の申立てをただちに却下するとともに、審査請求も却下することを求める。


呼びかけ人(50 音順)
岡田正則(早稲田大学教授) 紙野健二(名古屋大学教授)木佐茂男(九州大学教授) 白藤博行(専修大学教授)本多滝夫(龍谷大学教授) 山下竜一(北海道大学教授)亘理格(中央大学教授)浅川 千尋(天理大学教授) 荒木 修(関西大学准教授) 石崎 誠也(新潟大学教授)和泉田 保一(山形大学准教授) 礒野 弥生(東京経済大学教授) 磯村 篤範(島根大学教授) 稲葉 一将(名古屋大学教授) 井上 禎夫(福岡大学准教授) 岩﨑 恭彦(三重大学准教授) 碓井 光明(明治大学教授) 大沢 光(青山学院大学教授) 大田 直史(龍谷大学教授) 大貫 裕之(中央大学教授) 岡崎 勝彦(愛知学院大学教授) 長内 祐樹(金沢大学准教授) 折登 美紀(福岡大学教授) 垣見 隆禎(福島大学教授) 梶 哲教(大阪学院大学准教授) 門脇 美恵(名古屋経済大学准教授)川合 敏樹(國學院大學准教授) 川内 劦(広島修道大学教授)岸本 大樹(北海道大学教授) 北見 宏介(名城大学准教授) 木藤 伸一朗(京都学園大学教授)久保 茂樹(青山学院大学教授) 神山 智美(富山大学准教授) 児玉 弘(佐賀大学准教授) 小島 延夫(早稲田大学教授) 後藤 智(富山国際大学准教授) 小林 博志(西南学院大学教授)小山 正善(岡山大学教授) 権 奇法(愛媛大学准教授) 蔡 秀卿(立命館大学教授) 榊原 秀訓(南山大学教授) 下山 憲治(名古屋大学教授) 庄村 勇人(名城大学准教授) 杉原 丈史(愛知学院大学教授) 鈴木 眞澄(龍谷大学教授) 髙木 英行(東洋大学准教授) 高橋 明男(大阪大学教授) 高橋 利安(広島修道大学教授) 高橋 洋(愛知学院大学教授) 竹内 俊子(広島修道大学) 田村 和之(広島大学名誉教授) 寺田 友子(桃山学院大学名誉教授)徳田 博人(琉球大学教授) 豊島 明子(南山大学教授) 仲地 博(沖縄大学教授) 中山 代志子(早稲田大学助教) 西田 幸介(法政大学教授) 野村 武司(獨協大学教授) 萩原 聡央(名古屋経済大学准教授)原島 良成(熊本大学准教授) 晴山 一穂(専修大学教授)人見 剛(早稲田大学教授) 日野 辰哉(筑波大学准教授) 平田 和一(専修大学教授) 府川 繭子(青山学院大学准教授) 福田 健治(早稲田大学助手) 藤枝 律子(三重短期大学准教授)洞澤 秀雄(南山大学准教授) 前田 定孝(三重大学准教授) 見上 崇洋(立命館大学教授) 三野 靖(香川大学教授) 村上 博(広島修道大学教授) 安本 典夫(大阪学院大学教授) 山田 健吾(広島修道大学教授) 山本 順一(桃山学院大学教授) 由喜門 眞治(関西大学教授)横山 信二(広島大学教授) 李 斗領(立正大学教授)
ほか氏名非公表希望の賛同者15 人


by asyagi-df-2014 | 2015-10-26 05:52 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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