沖縄から-「普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有水面埋め立て承認の取り消し」を各新聞から読み取る。

 2015年10月13日翁長沖縄県知事が行った「普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有水面埋め立て承認の取り消し」について、2015年10月14日、各紙は、次のように主張した。


①沖縄タイムス社説-[知事 承認取り消し]国民的議論を喚起せよ-
②琉球新報社説-承認取り消し 民意実現の出発点に 政府は新基地断念すべきだ-
③北海道新聞社説-辺野古承認撤回 移設作業の全面停止を-
④東奥日報社説-泥沼化避け対話の道探れ/辺野古承認取り消し-
⑤秋田魁新報社説-「辺野古」対立激化 政府は対抗より対話を-
⑥茨城新聞論説-辺野古承認取り消し ほかに道はないのか-
⑦新潟日報社説-承認取り消し 辺野古移設の前提崩れた-
⑧中日新聞社説-辺野古取り消し 県内移設は白紙に戻せ-
⑨福井新聞論説-辺野古承認取り消し 「沖縄の痛み」に向き合え-
⑩京都新聞社説-辺野古埋め立て  取り消し決断は民意だ-
⑪神戸新聞社説-辺野古取り消し/計画の妥当性を検証せよ-
⑫中国新聞社説-辺野古承認取り消し 問われる「基地と自治」-
⑬愛媛新聞社説-辺野古承認取り消し 泥沼の闘争に政府は終止符打て -
⑭徳島新聞社説-辺野古取り消し やむにやまれぬ決断だ-
⑮高知新聞社説-【辺野古取り消し】国の姿勢に募る違和感国の姿勢に募る違和感 -
⑯朝日新聞社説-辺野古移設 沖縄の苦悩に向き合え-
⑰毎日新聞社説-辺野古取り消し やむを得ない知事判断-
⑱東京新聞社説-辺野古取り消し 県内移設は白紙に戻せ-
⑲読売新聞社説-辺野古取り消し 翁長氏は政府との対立煽るな-
⑳産経新聞主張- 承認取り消し 知事の職責放棄するのか-
㉑日本経済新聞社説-沖縄の基地のあり方にもっと目を向けよ-


 これは、「社説・論説47NEWS」から地方紙を、残りは各紙の主張・主張から、2015年10月14日付けのものを取り出したものだ。13日を受けて14日に見解を出すという行為がやはり大きいという気がしている。
さて、ここで取りあげた21社の社説等の見出しの特徴は、読売と産経の二社の突出した表現の異様さだろう。あらためて、ジャーナリズムのあり方を考えさせられる。

 ここでは、各新聞社の社説等で特に気になった指摘及びその主張のいくつかを取りあげる。


(1)指摘事項
①沖縄タイムス
・翁長知事には忘れられない光景がある。那覇市長時代の13年4月、衆院予算委員会と南部市町村会の懇談会における自民党委員の発言である。「本土で嫌だって言っているんだから、沖縄で受け入れるしかないだろう。不毛な議論はやめよう」と言い放った。自民党議員のあからさまな発言は、中谷元・防衛相の言葉にも通じる。中谷防衛相は「(本土は)今はまだ整ってないから、沖縄が受けるしかないんですよ」と言った。基地を沖縄に押し込める思考停止ぶりは何も変わらない。海兵隊駐留が沖縄でなければならない軍事的理由はない。政治的に不都合だから沖縄に配備し続けているのであり、元防衛相の森本敏氏も現職時代に明言している。理不尽としかいいようがない。
・何度民意を示しても一顧だにせず辺野古の陸でも海でも公権力を強引に行使し、けが人が出ても問答無用とばかりに作業を強行する。そのようにして新基地を建設し、他国の軍隊に差し出そうとする主権国家がどこにあるだろうか。このような事例が他府県のどこにあるだろうか。
②琉球新報
・知事は埋め立て承認取り消し後の会見で、普天間飛行場は戦後、県民が収容所に入れられている間に、強制接収されて建設されたことをあらためて強調した。その上で「辺野古に移すということは、土地を奪っておきながら代わりのものも沖縄に差し出せという理不尽な話」と批判した。普天間飛行場が国際法に反して建設されたことは明らかである。知事の批判は当然だ。
・菅義偉官房長官は知事の承認取り消しを「沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」と批判した。「政治の堕落」を指摘されたことから何ら学んでいないと言わざるを得ない。車の窃盗犯が持ち主である被害者に「古くなった車を返すから新車をよこせ」と開き直るような姿勢は改めるべきである。政府はそんな犯罪的な行為を国民の面前で恥ずかしげもなく行っているのである。これで法治国家と言えるだろうか。官房長官が知事を批判するなど、筋違いも甚だしい。
③北海道新聞
・翁長氏は先の政府側との協議で、沖縄に米軍基地が集中する現状や海兵隊が駐留する必然性など根本的な疑問への回答を求めた。しかし政府側は普天間返還の日米合意を振りかざすばかりで、辺野古への移設を唯一の解決策とする明確な根拠を示せなかった。
④東奥日報
・今秋の本体工事着手を目指す政府側は、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき国土交通相に審査請求と取り消し処分の効力停止を申し立てる。申し立ては認められ、本体工事が始まることになるだろう。
⑤秋田魁新報
・だが法廷闘争で政府が勝っても、沖縄県の政府への不信は強まるばかりではないか。在沖米軍への沖縄県民の視線は一層厳しくなり、日米安保体制を維持する上で不安材料となる恐れもある。基地問題の研究者は、政府が辺野古移設に固執するほど、基地が集中する現状に不満を募らせている沖縄県民と、本土国民の分断が進むと懸念する。そうした事態は、政府と沖縄県という行政機関同士の対立以上に不幸なことだと指摘している。
⑧中日新聞
・こうした歴史的経緯を顧みず、駐留継続の合理的な理由も説明せず、米軍基地を引き続き押し付けるのであれば、沖縄県民に過重な米軍基地負担と犠牲を強いる「沖縄差別」でしかない。
⑨福井新聞
・これでは、強権力で県民から土地を収奪した「銃剣とブルドーザー」と同じではないか。戦後70年を経て今なお大戦の傷跡が生々しい沖縄は、米国に従属する政府の圧力にさらされている。「沖縄の土地は誰のもの」。県民はそう激怒しているのではないか。
・政府に辺野古以外の選択肢を含め打開策を探る動きはない。そればかりか3次改造内閣で新沖縄北方担当相に地元沖縄選出の女性参院議員を充てた。「県外移設」から「容認」に変節した議員である。来年の選挙を控え、政府は県民の「分断」を図るのだろう。「沖縄に寄り添う」としてきた安倍政権の本性が透ける。
⑩京都新聞
・安倍晋三政権は沖縄県民の苦悩に向き合う気がないのか。
⑭徳島新聞
・政府と県は8~9月に集中協議を行い、融和を図る機運も出ていた。それがここまでこじれたのは、沖縄の民意をくみ取ろうとしない政府側に責任があるといえよう。集中協議で政府は、「辺野古が唯一の解決策」という主張を変えなかった。これでは、歩み寄りの糸口など見つかるまい。
⑮高知新聞
・防衛局は行政不服審査法に基づき審査請求と指示の効力停止を申し立て、農相が効力停止を決めた経緯がある。ところが農相は今も、審査請求への結論を出していない。中途半端な状態のまま、国は移設作業を進めていることになる。埋め立て承認取り消しに対しても、防衛局は同様の申し立てを行い、所管する国土交通相が効力停止を認める公算が大きい。しかし行政不服審査はそもそも、行政処分に不満がある国民の救済を目的とした制度とされる。国の機関(防衛局)がこれを使い、国(国交相)が判断することへの疑問も指摘されている。
⑯朝日新聞
・ 戦後、米軍に土地を強制接収され、次々と米軍基地が造られた歴史。戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの「基地被害」と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史。そして、いまなお全国の米軍専用施設面積の73・8%が、国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中している現実。これはまさに、沖縄に対する「差別」ではないのか。日米安保条約を支持する政府も国民も、そうした沖縄の現実に無関心でいることによって、結果として「差別」に加担してこなかったか――。
⑰毎日新聞
・行政不服審査法は、行政に対して国民の権利を守るのが本来の趣旨だ。国が国に訴え、それを同じ国が判断することには違和感がある。
⑱東京新聞
・沖縄県民は、国政や地方自治体の選挙を通じて県内移設に反対する民意を示し続けてきたが、安倍政権は無視してきた。選挙で支持されたからと強弁して安全保障法制の成立を強行する一方で、沖縄の民意を無視するのは二重基準ではないのか。
㉑日本経済新聞
・一連の法手続きは公権力が個人の私権を侵害した場合の救済措置として設けられた。その仕組みのもとで政府と地方自治体が争うのは、政治の調整力のなさを露呈するものである。
・米軍基地を全廃すべきだと考える沖縄県民はさほど多くない。県民の怒りの矛先は、基地が沖縄に偏りすぎているといくら言っても、全く振り向かない本土の無関心に向いている。


(2)主張
①沖縄タイムス
・国の埋め立てを承認した前知事の判断を後任の知事が取り消すのは前例がない。取り消しを発表した翁長知事にとっても、沖縄県にとっても歴史的な重い判断である。翁長知事は会見で「日本国民全体で日本の安全保障を考えてもらいたい」「日本全体で安全保障を考える気概がなければ他の国からも尊敬されない」と繰り返した。翁長知事が就任以来強調してきたのは、沖縄の過重負担の上に成り立っている日米安保体制のいびつさである。翁長知事が退路を断ち、背水の陣で訴えたことを、本土の人たちはよそ事でなくわが事として受け止めてほしい。これを機会に米軍駐留と負担について国民的議論を巻き起こす必要がある。
②琉球新報
・阻止運動を県外、国外に広げ、新基地建設断念と普天間飛行場の閉鎖を勝ち取る新たな出発点に、承認取り消しを位置付けたい。
・新基地建設は沖縄だけの問題ではない。普遍的な問題を包含している。新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。日米同盟を重視し、民意は一顧だにしない政府を認めていいのかが突き付けられているのである。優れて国民的問題だ。知事は「これから節目節目でいろんなことが起きると思う」と述べている。新基地建設問題の本質をしっかり見極めてほしいということだ。そのことを深く自覚し、声を上げ続けることが今を生きる私たちの将来世代に対する責任である。
③北海道新聞
・このままでは国と県の対立はさらに深刻化する。政府は移設作業を全面的に停止し、県側との対話と計画の見直しを進めるべきだ。
④東奥日報
・移設作業の現場に近い陸地と海上では反対派の市民らが気勢を上げ、興奮と緊迫感が高まっているという。対立の出口が見えないままでは、不測の事態が起きることも懸念される。普天間移設をめぐり辺野古以外の選択肢も含めて米政府とあらためて協議するなど、政府は打開に動くべきではないか。
⑤秋田魁新報
・政府は、移設先を辺野古に限定する明確な理由を示していない。日米安保の将来像について沖縄県が求める説明もしていない。こうした地元の疑問を置き去りにして本体着工を強行するようでは、暴挙とのそしりを免れない。
⑦新潟日報
・埋め立て工事の前提は崩れた。政府は作業を中止して、米国とともに辺野古移設以外の選択肢を探るべきだ。
・政府は辺野古移設で危険な普天間飛行場の固定化を避けると主張した。だが、沖縄県内における固定化の実態は変わらない。辺野古なら普天間と違い、住宅街の上空を飛行しないと説明しても、墜落事故で住民が巻き添えになる危険性はつきまとうのだ。承認取り消しは、米国も重く受け止めるべきだ。
・日米両政府は、抵抗の意味に今度こそ正面から向き合わねばならない。沖縄の思いをくみ取り、沖縄とともに考えることが、私たちにも問われる。
⑧中日新聞
・翁長知事の判断は妥当である。
・安倍政権が今なすべきは、選挙で示された沖縄県民の民意を謙虚に受け止め、普天間飛行場の県内移設を白紙に戻し、県外・国外移設を米側に提起することである。県側に法的に対抗することでは、決してないはずだ。
⑪神戸新聞
・移設作業を強引に進めても対立は解消しない。政府はこの機会に立ち止まり、計画の進め方を含め、その妥当性を検証すべきではないか。
⑬愛媛新聞
・ここまで対立を先鋭化させたのは、基地問題に関して「辺野古移設が唯一の解決策」との一点張りで、民意を一顧だにしない政府の強権的な態度にほかならない。抗議する市民への警察官や海上保安官らによる取り締まりが厳しさを増す現在、さらに力ずくで本体工事に突入すれば、流血の事態さえ現実のものとなりかねない。暴挙は断じて許されない。政府には、事態を重く受け止め工事を中止するよう強く求める。県民の声を聞き、苦難の歴史と向き合い、基地負担軽減策を練り直して米国との協議のやり直しへかじを切るべきだ。
⑭徳島新聞
・政府は対抗措置を講じた後、今秋にも本体工事に着手する方針だが、強引に推し進めるのではなく、沖縄の声に耳を傾けるべきだ。辺野古以外の選択肢も視野に、計画を再考することが解決の近道ではないか
⑮高知新聞
・沖縄をこれ以上追い詰めることのないよう、国に慎重な対応を求める。
⑯朝日新聞
・政府は直ちに行政不服審査請求などを行う方針だ。政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない。政府は埋め立ての法的根拠を失った以上、計画は白紙に戻し改めて県と話し合うべきだ。
・政府に求められるのは、沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。
⑱東京新聞
・沖縄県の翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て許可を取り消した。これ以上の米軍基地押し付けは認めない決意の表れである。政府は重く受け止め、普天間飛行場の県内移設は白紙に戻すべきだ。
・安倍政権が今なすべきは、選挙で示された沖縄県民の民意を謙虚に受け止め、普天間飛行場の県内移設を白紙に戻し、県外・国外移設を米側に提起することである。県側に法的に対抗することでは、決してないはずだ。
㉑日本経済新聞
・米軍普天間基地の移設を巡る政府と沖縄県の対立がいよいよ抜き差しならないところまで来た。残念な事態と言わざるを得ない。どうすれば折り合えるのかを国民全体でよく考えたい。
・本土のわがままで沖縄がひどい目にあっている。県民がそう思っている限り、たとえ最高裁が名護市への移設にお墨付きを与えても摩擦はなくならない。移設を円滑に進めるのに必要なのは、本土側の真摯な取り組みである。

(3)あえて、読売新聞と産経新聞の主張
⑲読売新聞
・菅官房長官が「関係者が重ねてきた、普天間飛行場の危険性除去に向けた努力を無視するもの」と翁長氏を批判したのは当然だ。
・翁長氏は承認取り消しが認められなかった場合、工事差し止めなどを求めて提訴する構えで、法廷闘争になる公算が大きい。その場合、政府は、関係法に則のっとって粛々と移設を進めるしかあるまい。
・疑問なのは、翁長氏が先月下旬、国連人権理事会で「沖縄の自己決定権や人権がないがしろにされている」などと訴えたことだ。違和感を禁じ得ない。沖縄の「先住民性」や、独裁国家の人権抑圧を連想させ、国際社会に誤ったメッセージを送る恐れがある。
・翁長氏は、沖縄選出の島尻沖縄相の就任について「基地と振興策が混同すれば、ややこしいことにならないか」と発言した。辺野古移設には反対しつつ、沖縄振興予算も確保しようという発想は、虫がいいのではないか。
⑳産経新聞主張
・辺野古移設が頓挫すれば、尖閣諸島周辺などで野心的な海洋進出を繰り返す中国の脅威に対し、抑止力を維持することができない。市街地の中心部にある普天間飛行場の危険性も除去できない。いずれも危険に直面するのは沖縄県民である。地方行政のトップとして、こうした判断が本当に許されるのか。


 さて、結論から言えば、中日新聞の「翁長知事の判断は妥当である。」、との指摘が大方の結論である。
 安倍晋三政権は、この間、沖縄県側が主張してきた「歴史的経過」「構造差別の実態」「沖縄の自己決定権」等について、もう一度きちんと深く考え直さなければならない。
 そして、まずは、中日新聞の「安倍政権が今なすべきは、選挙で示された沖縄県民の民意を謙虚に受け止め、普天間飛行場の県内移設を白紙に戻し、県外・国外移設を米側に提起することである。県側に法的に対抗することでは、決してないはずだ。」、という立場を取る必要がある。
 安倍晋三政権の選択すべき道は、「沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。」(朝日新聞)、ということだ。
 最後に、福井新聞の「3次改造内閣で新沖縄北方担当相に地元沖縄選出の女性参院議員を充てた。『県外移設』から『容認』に変節した議員である。来年の選挙を控え、政府は県民の『分断』を図るのだろう。『沖縄に寄り添う』としてきた安倍政権の本性が透ける。」、との指摘は痛烈である。
 
 以下、各新聞社の社説等の引用。(非常に、長文です。)







沖縄タイムス社説-[知事 承認取り消し]国民的議論を喚起せよ-2015年10月14日

 「本日、普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有水面埋め立て承認を取り消しました」。県庁6階で行われた記者会見。翁長雄志知事は前を見据えきっぱり言い切った。

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 国の埋め立てを承認した前知事の判断を後任の知事が取り消すのは前例がない。取り消しを発表した翁長知事にとっても、沖縄県にとっても歴史的な重い判断である。

 翁長知事は会見で「日本国民全体で日本の安全保障を考えてもらいたい」「日本全体で安全保障を考える気概がなければ他の国からも尊敬されない」と繰り返した。

 翁長知事が就任以来強調してきたのは、沖縄の過重負担の上に成り立っている日米安保体制のいびつさである。翁長知事が退路を断ち、背水の陣で訴えたことを、本土の人たちはよそ事でなくわが事として受け止めてほしい。
 これを機会に米軍駐留と負担について国民的議論を巻き起こす必要がある。
    ■    ■
 2013年12月、仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認した。政府はこれを錦の御旗としてボーリング調査など本体工事に向けた作業を続けている。仲井真氏の選挙公約は「県外移設」だった。にもかかわらず承認直前、東京の病院に閉じこもり、政府と「裏交渉」を重ねた。県議会や県民に対する説明責任を一切果たさないまま埋め立てを承認し多くの県民の誇りを傷つけ、怒りを買った。その結果が14年11月の選挙である。

 今回の翁長知事の承認取り消しは選挙公約に基づく民意に即した決断といえる。

 翁長知事には忘れられない光景がある。那覇市長時代の13年4月、衆院予算委員会と南部市町村会の懇談会における自民党委員の発言である。「本土で嫌だって言っているんだから、沖縄で受け入れるしかないだろう。不毛な議論はやめよう」と言い放った。

 自民党議員のあからさまな発言は、中谷元・防衛相の言葉にも通じる。中谷防衛相は「(本土は)今はまだ整ってないから、沖縄が受けるしかないんですよ」と言った。

 基地を沖縄に押し込める思考停止ぶりは何も変わらない。海兵隊駐留が沖縄でなければならない軍事的理由はない。政治的に不都合だから沖縄に配備し続けているのであり、元防衛相の森本敏氏も現職時代に明言している。理不尽としかいいようがない。
    ■    ■
 翁長知事の取り消しは、新基地建設阻止に向けたスタートであり、むしろこれからが本番である。

 政府は新基地建設をやめる気がない。知事の取り消しを受け、中谷防衛相は行政不服審査法に基づき14日以降、石井啓一国土交通相に取り消し無効を求める審査請求と裁決が出るまでの執行停止を求める考えを明らかにした。

 行審法の本来の趣旨は、行政庁の違法な処分によって侵害された「国民の権利利益」の救済を図ることである。

 国民のための制度を国の機関の沖縄防衛局が使うのは法の趣旨を曲げており、国の機関が審査請求などの不服申し立てをすることはできないというべきだ。

 3月にも沖縄防衛局が投入したコンクリート製ブロックがサンゴ礁を傷つけた可能性が高いとして翁長知事が防衛局に海底作業の停止を指示。防衛局は、審査請求と指示の効力停止を当時の林芳正農相に申し立て、6日後に効力停止を決定している。

 国の機関である沖縄防衛局が国の国土交通相に不服審査を申し立てるのは政権内の「出来レース」である。三権分立の趣旨からしても行政府の中ですべてを決めるやり方は乱暴だ。第三者機関である国地方係争処理委員会や高等裁判所の判断に委ねるのが筋である。
 翁長知事は安倍政権について「沖縄県民に寄り添ってこの問題を解決していきたいという考えが大変薄いのではないか」と強く批判した。

 何度民意を示しても一顧だにせず辺野古の陸でも海でも公権力を強引に行使し、けが人が出ても問答無用とばかりに作業を強行する。そのようにして新基地を建設し、他国の軍隊に差し出そうとする主権国家がどこにあるだろうか。このような事例が他府県のどこにあるだろうか。


琉球新報社説-承認取り消し 民意実現の出発点に 政府は新基地断念すべきだ-2015年10月14日


 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸部への新基地建設をめぐり、翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した。

 沖縄の将来を見据え、新基地建設阻止への決意を示す意義ある一歩として高く評価したい。
 裁判などで問題解決までには長い道のりが予想される。だが、新基地建設反対の民意は圧倒的であり、土地を同意なく奪って建設した普天間飛行場の形成過程からしても、理は知事にある。
 阻止運動を県外、国外に広げ、新基地建設断念と普天間飛行場の閉鎖を勝ち取る新たな出発点に、承認取り消しを位置付けたい。
犯罪的な行為
 知事は埋め立て承認取り消し後の会見で、普天間飛行場は戦後、県民が収容所に入れられている間に、強制接収されて建設されたことをあらためて強調した。その上で「辺野古に移すということは、土地を奪っておきながら代わりのものも沖縄に差し出せという理不尽な話」と批判した。普天間飛行場が国際法に反して建設されたことは明らかである。知事の批判は当然だ。
 ところが、菅義偉官房長官は知事の承認取り消しを「沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」と批判した。「政治の堕落」を指摘されたことから何ら学んでいないと言わざるを得ない。車の窃盗犯が持ち主である被害者に「古くなった車を返すから新車をよこせ」と開き直るような姿勢は改めるべきである。
 政府はそんな犯罪的な行為を国民の面前で恥ずかしげもなく行っているのである。これで法治国家と言えるだろうか。官房長官が知事を批判するなど、筋違いも甚だしい。
 官房長官が言うように、政府はこれまで普天間飛行場の危険性の除去に努力してきただろうか。
 新基地は完成までに10年かかるとされる。危険性を除去し、固定化させないための辺野古移設としながら、10年間は固定化し、危険性もその間放置されるのである。政府が真剣に危険性除去を考えるならば、直ちに普天間飛行場を閉鎖すべきだ。そうしないのは県民軽視以外の何物でもない。
 普天間飛行場の危険性除去や固定化回避を持ち出せば、新基地建設に対する県民の理解が得やすいといった程度の認識しかないのではないか。
 前知事の埋め立て承認の条件ともいえる普天間飛行場の5年以内の運用停止の約束も、ほごにしている。政府の言う「努力」はこの程度のものでしかない。
普遍的な問題
 本来ならば、知事の承認取り消しを政府は重く受け止め、新基地建設の作業を直ちに停止すべきである。しかしそのような常識が通用する政府ではないようだ。
 中谷元・防衛相は「知事による埋め立て承認の取り消しは違法」と述べ、国交相に知事の承認取り消しの効力取り消しを求める不服審査請求と執行停止申し立てを速やかに行うとしている。
 同じ政府機関が裁決して公正を保つことはできない。政府側に有利になる可能性は極めて高い。これが官房長官の言う「わが国は法治国家」の実態である。
 新基地建設は沖縄だけの問題ではない。普遍的な問題を包含している。新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。日米同盟を重視し、民意は一顧だにしない政府を認めていいのかが突き付けられているのである。優れて国民的問題だ。
 知事は「これから節目節目でいろんなことが起きると思う」と述べている。新基地建設問題の本質をしっかり見極めてほしいということだ。そのことを深く自覚し、声を上げ続けることが今を生きる私たちの将来世代に対する責任である。


北海道新聞社説-辺野古承認撤回 移設作業の全面停止を-2015年10月14日


 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事はきのう、米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。

 防衛省は作業を一時中断するが、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に求める。要求が認められるのは確実で、政府は移設を続行する方針だ。

 しかしその根拠となる行政不服審査法は本来、行政の不当な処分に対して国民が不服を申し立てる道を開き、「国民の権利利益の救済を図る」ことを目的とする。

 行政権を行使する立場の防衛省が、県民を代表する知事の決定に不服を申し立て、民意を踏みにじるのでは法の精神に反する。

 このままでは国と県の対立はさらに深刻化する。政府は移設作業を全面的に停止し、県側との対話と計画の見直しを進めるべきだ。

 翁長氏は、埋め立ての必要性に疑いがあるとした第三者委報告を根拠に、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事の承認には「瑕疵(かし)がある」と指摘した。

 これに対し菅義偉官房長官は記者会見で、手続きに法的瑕疵はないと主張。「工事を進めていく考えに変わりはない」と強調した。

 翁長氏は先の政府側との協議で、沖縄に米軍基地が集中する現状や海兵隊が駐留する必然性など根本的な疑問への回答を求めた。

 しかし政府側は普天間返還の日米合意を振りかざすばかりで、辺野古への移設を唯一の解決策とする明確な根拠を示せなかった。

 辺野古移設をめぐっては、米カリフォルニア州バークレー市議会が今年9月、計画に反対し、米政府に再考を促す決議を行った。

 日米合意を主導したナイ元米国防次官補も「沖縄の人々の支持が得られないなら、計画を再検討しなければならない」と述べた。

 過去の合意を盾に県民の声を抑え込むのなら、いったい誰のための政府か。計画見直しに向け、米国との再協議を探るべきだ。

 注目されるのは、先に入閣した島尻安伊子沖縄北方担当相の対応だ。参院沖縄県選挙区の選出で、2010年の参院選では県外移設を公約に掲げて当選した。

 その後は辺野古移設容認に転じたが、民意は熟知しているはずだ。政策に反映させる責務がある。

 安倍晋三首相は島尻氏の起用について「沖縄の心に寄り添った振興策を進めてほしい」と述べた。

 振興策はもちろん必要だが、問題の本質ではない。沖縄の心に寄り添うというならば、首相は自らの言葉を守り、県民の多くが反対する計画を撤回するのが筋だ。


東奥日報社説-泥沼化避け対話の道探れ/辺野古承認取り消し-2015年10月14日


 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。これに対し今秋の本体工事着手を目指す政府側は、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき国土交通相に審査請求と取り消し処分の効力停止を申し立てる。申し立ては認められ、本体工事が始まることになるだろう。

 県は国を相手に効力停止の取り消しや作業停止などを求め提訴することを検討。法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。さらに海底ボーリング調査に伴い海中に投入されたコンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷の有無を調べた潜水調査の結果によっては、防衛局への岩礁破砕許可を取り消す意向だ。

 埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例も県議会で成立しており、この先も対抗措置の応酬が繰り返されるとみられる。国と県の対立は「全面対決」の局面を迎えた。ほかに道はないのだろうか。

 8月から9月にかけ移設関連工事を中断して行われた集中協議で政府は、市街地にある飛行場の危険性除去は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返し主張。県側に寄り添う姿勢を見せなかった。これ以上の泥沼化は避け、対話の道筋を真剣に模索すべきだ。

 これまで国と県の間に対話と呼べるものはなかったといっていい。1カ月に及んだ集中協議では県庁や首相官邸で計5回の話し合いが持たれたが、協議終了に際し翁長氏が「全力を挙げ(辺野古移設を)阻止するということで最後を締めくくった」と述べたことからも分かるように、双方の主張は平行線のまま最後までかみ合わなかった。

 承認取り消しに関する記者会見で、翁長氏は「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に全力で取り組む」と強調した。防衛局に提出した取り消しの通知書で県は、政府による沖縄の地理的優位性の説明について「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」などと指摘した。

 移設作業の現場に近い陸地と海上では反対派の市民らが気勢を上げ、興奮と緊迫感が高まっているという。対立の出口が見えないままでは、不測の事態が起きることも懸念される。普天間移設をめぐり辺野古以外の選択肢も含めて米政府とあらためて協議するなど、政府は打開に動くべきではないか。


秋田魁新報社説-「辺野古」対立激化 政府は対抗より対話を-2015年10月14日


 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、名護市辺野古(へのこ)沿岸部の埋め立て承認を取り消した。埋め立ては米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転先とするため政府が申請し、前知事の承認を得ていたが、翁長氏は承認手続きに法的な瑕疵(かし)があるとして、取り消す方針を表明していた。

 取り消しによって政府は移設工事の法的根拠を失った。このため対抗措置として近く、工事を所管する国土交通相に対し、行政不服審査法に基づき、取り消し無効を求める不服審査請求と、取り消し処分の効力停止を申し立てる。

 不服審査は長期にわたるが、処分の効力停止については早期に国交相が認めるとみられる。その場合、政府は速やかに本体工事に着手する見通しだ。

 翁長氏は辺野古移設阻止のために「あらゆる手段を講じる」と述べており、今回の埋め立て承認取り消しをその第一歩と位置付けている。政府が本体着工に踏み切れば、沖縄県は承認取り消しが有効であることの確認や、工事自体の差し止めなどを求めて提訴する構えだ。

 政府と沖縄県は9月9日まで1カ月間、妥協点を見いだすための集中協議を行ったが、歩み寄るどころか溝が深まった。だが両者は新たな協議会を設け、集中協議後も話し合いを続けることで合意したはずだ。理解を求める側である政府は国交相への申し立てを見送り、対話再開の道を探るべきではないか。

 政府は、前知事による承認手続きに瑕疵はなく、行政の継続性の観点から、工事を進める必要があると主張。仮に沖縄県から訴訟が起こされても勝算があると見込んでいる。

 だが法廷闘争で政府が勝っても、沖縄県の政府への不信は強まるばかりではないか。在沖米軍への沖縄県民の視線は一層厳しくなり、日米安保体制を維持する上で不安材料となる恐れもある。

 基地問題の研究者は、政府が辺野古移設に固執するほど、基地が集中する現状に不満を募らせている沖縄県民と、本土国民の分断が進むと懸念する。そうした事態は、政府と沖縄県という行政機関同士の対立以上に不幸なことだと指摘している。

 菅義偉(よしひで)官房長官は今月下旬、米領グアムを訪ね、普天間などの米海兵隊員の一部が移る予定の施設を視察する。沖縄県の基地負担軽減につながることをアピールし、辺野古移設への理解を促す狙いがあるという。

 だが沖縄県が望むのは、辺野古移設の方針を堅持したままでの基地負担軽減策ではない。県外移設と普天間返還の両立を要求しているのだ。

 政府は、移設先を辺野古に限定する明確な理由を示していない。日米安保の将来像について沖縄県が求める説明もしていない。こうした地元の疑問を置き去りにして本体着工を強行するようでは、暴挙とのそしりを免れない。


茨城新聞論説-辺野古承認取り消し ほかに道はないのか-2015年10月14日

沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。これに対し今秋の本体工事着手を目指す政府側は、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき国土交通相に審査請求と取り消し処分の効力停止を申し立てる。申し立ては認められ、本体工事が始まることになるだろう。

県は国を相手に効力停止の取り消しや作業停止などを求め提訴することを検討。法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。さらに海底ボーリング調査に伴い海中に投入されたコンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷の有無を調べた潜水調査の結果によっては、防衛局への岩礁破砕許可を取り消す意向を示している。

埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例も県議会で成立しており、この先も対抗措置の応酬が繰り返されるとみられる。国と県は「全面対決」の局面を迎えた。ほかに道はないのか。政府は、翁長氏が当選した県知事選や名護市長選、衆院選の沖縄4小選挙区全てで示された移設反対の民意を全く顧みようとはしない。

8月から9月にかけ移設関連工事を中断して行われた集中協議でも、市街地にある飛行場の危険性除去は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返し主張。県側に寄り添う姿勢はかけらもなかった。これ以上の泥沼化は見るに堪えない。対話の道筋を真剣に模索すべきだ。

これまで国と県の間に対話と呼べるものはなかったといっていい。1カ月に及んだ集中協議では県庁や首相官邸で計5回の話し合いが持たれたが、協議終了に際し翁長氏が「全力を挙げ(辺野古移設を)阻止するということで最後を締めくくった」と述べたことからも分かるように、双方の主張は最後まで平行線のままだった。

前知事の埋め立て承認について「法的な瑕疵(かし)」があると結論づけた県の有識者委員会の報告を踏まえ、翁長氏は普天間移設計画の背景にある在沖海兵隊の「抑止力」や沖縄の「地理的優位性」に疑問を呈した。米軍に「銃剣とブルドーザー」で強制的に土地を収用された沖縄の戦後も振り返り「県民の魂の飢餓をどう思うか」とも問い掛けた。だが答えらしい答えは返ってこなかった。

政府は「唯一の解決策」との主張から一歩たりとも踏み出そうとしなかった。また埋め立て承認の取り消しに向け、県は手続きの一環として意見聴取を行うと防衛局に通知したが、防衛局は「応じられない」と回答。聴取の場に足を運ばず「承認に瑕疵はなく取り消しは違法」とする陳述書を提出しただけだった。

承認取り消しに関する記者会見で、翁長氏は「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に全力で取り組む」と強調した。防衛局に提出した取り消しの通知書で県は、政府による沖縄の地理的優位性の説明について「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」などと指摘している。

移設作業の現場に近い陸地と海上では反対派の市民らが気勢を上げ、興奮と緊迫感が高まっているという。このまま対立の出口が見えないままでは、不測の事態が起きることも懸念される。普天間移設をめぐり辺野古以外の選択肢も含めて米政府とあらためて協議するなど、政府は打開に動くことが求められよう。


新潟日報社説-承認取り消し 辺野古移設の前提崩れた-2015年10月14日


 埋め立て工事の前提は崩れた。政府は作業を中止して、米国とともに辺野古移設以外の選択肢を探るべきだ。

 沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が、宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事による承認には瑕疵(かし)があると判断した。

 政府側は、「法的瑕疵はない」(菅義偉官房長官)との立場を変えていない。防衛省沖縄防衛局が審査請求と取り消し処分の効力停止を国交相に申し立て、国交相は効力停止を認める見通しだ。

 県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて裁判所に訴えを起こすとみられる。政府と県が全面対決する異常な事態だ。

 法廷闘争では、政府側に有利な判断が下される可能性が高い。しかし、政府には今日の事態に至る経緯をよく考えてもらいたい。

 沖縄県の承認取り消し通知書は、政府が普天間飛行場の県内移設を「地理的に優位」などとした点について、「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と問題視した。

 政府は沖縄県と1カ月の集中協議を行ったが、「なぜ辺野古が唯一の移転先なのか」との疑問に答えず、「1996年の日米合意が原点」と述べるにとどまった。不誠実な態度が不信感を高めたと言わざるを得ない。

 また、政府は辺野古移設で危険な普天間飛行場の固定化を避けると主張した。だが、沖縄県内における固定化の実態は変わらない。

 辺野古なら普天間と違い、住宅街の上空を飛行しないと説明しても、墜落事故で住民が巻き添えになる危険性はつきまとうのだ。

 承認取り消しは、米国も重く受け止めるべきだ。

 安倍晋三首相は4月のオバマ米大統領との会談で辺野古移設について翁長氏の理解を求めると確約した。しかし、理解を得るどころか、対立が決定的になった。

 対立がさらに先鋭化すれば、在沖縄米軍全体の運用にも支障が生じかねない。

 翁長氏は9月、国連人権理事会で演説し、「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国が、どうして世界の国々と価値観を共有できるか」と日本政府の対応を非難した。

 人権理事会は、加盟国の人権状況を監視し、改善を促す国連の重要機関だ。北朝鮮による拉致問題に国際的な関心を高める上でも大きな役割を果たしてきた。

 戦後70年が経過しても、沖縄に米軍基地が集中し、基地に起因する事件、事故が絶えない。沖縄の訴えが、日米両政府への厳しい視線を呼ぶ可能性がある。

 既成事実を積み重ねて工事着手に突き進む姿勢は、民主国家とは思えない。対米追従ばかりが際立つ政府の対応は、根強い国民の異論を押し切った安保関連法と同じ方向性に見える。

 日米両政府は、抵抗の意味に今度こそ正面から向き合わねばならない。沖縄の思いをくみ取り、沖縄とともに考えることが、私たちにも問われる。


中日新聞社説-辺野古取り消し 県内移設は白紙に戻せ-2015年10月14日


 沖縄県の翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て許可を取り消した。これ以上の米軍基地押し付けは認めない決意の表れである。政府は重く受け止め、普天間飛行場の県内移設は白紙に戻すべきだ。

 政府側に提出された通知書では「地理的に優位」とされている県内移設について、時間、距離などの根拠が示されておらず、県外移設でも抑止力は大きく低下しないと指摘。環境保全措置が適切、十分に講じられていないことも、仲井真弘多前知事による埋め立て承認に法的瑕疵(かし)(誤り)があった理由に挙げている。

 翁長知事の判断は妥当である。

 住宅地などが迫り、危険な米軍普天間飛行場(宜野湾市)返還は急務ではあるが、沖縄には在日米軍専用施設の約74%が集中する。

 米海兵隊の基地を置き続ける必要があるのなら、政府はその理由を説明しなければならないが、これまで県民が納得できるだけの明確な説明は聞いたことがない。

 そもそも沖縄の米軍基地は、戦後の米軍政下で住民の土地を「銃剣とブルドーザー」で強制的に収用したものであり、駐留する海兵隊は、反対運動の激化に伴って日本本土から移駐してきたものだ。

 こうした歴史的経緯を顧みず、駐留継続の合理的な理由も説明せず、米軍基地を引き続き押し付けるのであれば、沖縄県民に過重な米軍基地負担と犠牲を強いる「沖縄差別」でしかない。

 沖縄県民は、国政や地方自治体の選挙を通じて県内移設に反対する民意を示し続けてきたが、安倍政権は無視してきた。

 選挙で支持されたからと強弁して安全保障法制の成立を強行する一方で、沖縄の民意を無視するのは二重基準ではないのか。

 政府は八月から一カ月間、米軍基地問題について県側と集中的に協議し、その間、海底掘削調査を一時中断していたが、これも安保法制成立のために国民の反発を避ける手段にすぎなかったのか。

 埋め立て承認に法的瑕疵はないとする政府は、行政不服審査法に基づく不服審査請求を行うなど着工に向けた作業を継続する構えだが、そもそも政府が不服を申し立てられる立場にあるのか。法の趣旨を逸脱してはいないか。

 安倍政権が今なすべきは、選挙で示された沖縄県民の民意を謙虚に受け止め、普天間飛行場の県内移設を白紙に戻し、県外・国外移設を米側に提起することである。県側に法的に対抗することでは、決してないはずだ。


福井新聞論説-辺野古承認取り消し 「沖縄の痛み」に向き合え-2015年10月14日


 これでは、強権力で県民から土地を収奪した「銃剣とブルドーザー」と同じではないか。戦後70年を経て今なお大戦の傷跡が生々しい沖縄は、米国に従属する政府の圧力にさらされている。「沖縄の土地は誰のもの」。県民はそう激怒しているのではないか。

 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。だが政府は今秋の本体工事着手を目指し、法的措置で効力を停止する方針だ。あくまで政府に反対姿勢を貫く県との全面対決になる。

 知事は会見で、仲井真弘多前知事による埋め立て承認に関し「瑕疵(かし)があり、取り消しが相当と判断した」と述べた。「辺野古には絶対新基地を造らせない」という公約を本土の国民や国際社会に訴え続け、死守する構えだ。法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。

 しかし、沖縄防衛局が予定する国土交通相への行政不服審査法に基づく審査請求と効力停止は、そもそも行政処分に不満のある国民の救済を目的とした制度。県側は、政府が同制度を行使し政府側で判断することの問題点を批判する。

 県では、海底ボーリング調査の際に投入されたコンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷の有無を調査しており、調査結果によっては防衛局への岩礁破砕許可を取り消す意向を示している。埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例も県議会で成立しており、徹底して対抗措置を取っていく構えだ。

 確かに菅義偉官房長官が「前知事からの行政の判断は示されており、法的瑕疵はない」と言うように、埋め立ては知事が承認した。

 だが米軍基地の県外移設を主張してきた前仲井真知事が政府の説得工作で翻意したことに県民が反発。昨年11月の知事選で県内移設反対の翁長氏が仲井真氏を破り当選。県知事選や名護市長選、衆院選の沖縄4小選挙区全てで反対派が当選したように、沖縄の民意は移設反対だ。政府はこの現実を一顧だにしない。

 8月から1カ月間、移設関連工事を中断して行われた集中協議でも「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すのみで、安倍政権は日米同盟を強化し、沖縄の基地整備に追従姿勢を強める。

 県民の願いは「世界一危険な基地」とされる普天間の「危険性除去」に向けた県内移転ではない。基地自体の撤去である。知事は「沖縄が抱える米軍基地の負担を全国で分かち合うべきだ」と強調。政府が根拠とする在沖海兵隊の「抑止力」や「地理的優位性」についても何ら根拠が示されていないと反発する。

 政府に辺野古以外の選択肢を含め打開策を探る動きはない。そればかりか3次改造内閣で新沖縄北方担当相に地元沖縄選出の女性参院議員を充てた。「県外移設」から「容認」に変節した議員である。来年の選挙を控え、政府は県民の「分断」を図るのだろう。「沖縄に寄り添う」としてきた安倍政権の本性が透ける。


京都新聞社説-辺野古埋め立て  取り消し決断は民意だ-2015年10月14日

 安倍晋三政権は沖縄県民の苦悩に向き合う気がないのか。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を翁長雄志知事が取り消したのに対し、さっそく政府は取り消しの効力を停止させる法的措置を取る方針を示した。
 翁長知事の決断は、沖縄の苦難の歴史と多くの県民の声を受けたものだ。一方、政府は移設推進の姿勢を変えていない。このままでは法廷闘争を含めた「全面対決」になるのは必至だ。
 政府は法的措置を経て、秋のうちに本体工事着手を目指すとしているが、あまりにかたくなではないか。日本の安全保障の足元が揺らぎかねない、との認識が希薄に思える。沖縄の声に耳をふさいで、工事を進めるべきではない。
 仲井真弘多前知事が下した埋め立て承認には環境保全措置などに不備がある-とする県の有識者委員会の検証結果にもとづいた承認取り消しである。さらに言えば、辺野古移設に主張を変えた前知事に、県民は選挙でノーを突きつけ、翁長知事を大差で選んだことも忘れてはなるまい。
 工事主体の防衛省沖縄防衛局は、翁長知事の取り消しの効力停止と審査請求を、すみやかに国交相に申し立てるという。同じ政権内であり、申し立てが認められるのは火を見るより明らかだ。
 そもそも、申し立ての根拠である行政不服審査法は、行政の処分に不満がある国民の救済を目的にしており、政府側が使うのはおかしなことだ。
 3月に前例がある。移設関連作業でサンゴ礁が傷ついていないか、翁長知事が調査のため作業停止を指示したところ、防衛局は農相に停止取り消しを申し立て、認められている。この時の審査請求の結論は今も出されていないのに、作業は再開されている。
 法的手続きを踏まえているというだろうが、県民には上から従わせる強権的な姿勢にしか見えまい。安倍政権は県側と協議の場を設けたといっても、「沖縄県民に寄り添って解決しようという思いが薄い」と翁長知事は受け止めている。
 国交相が効力停止を認めれば、審査請求の審査期間中でも本体工事に着手できる。そうなれば、県側は効力停止の取り消しを求め裁判を起こすことになろう。
 法廷では政府側に有利な判断が下されるとの見方が強い。しかし法律や権力で県側を屈服させて、問題は解決するだろうか。沖縄の苦難の歴史に学ぶべきだ。


神戸新聞社説-辺野古取り消し/計画の妥当性を検証せよ-2015年10月14日


沖縄県の翁長(おなが)雄志知事がきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しに踏み切った。

 仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による2年前の埋め立て承認に「瑕疵(かし)があった」という理由だ。

 政府は「地理的優位性」「一体的運用の必要性」などを、辺野古を唯一の移転先とする理由に挙げる。しかし、県側は「根拠が何ら示されていない」と批判し、環境保全措置についても「適切に講じられているとも十分とも言えない」と断じた。

 8~9月に行われた政府との集中協議は平行線のまま終わった。沖縄の主張を通すには、このカードを切る以外に道が残されていないと、知事は判断したのだろう。

 懸念されるのは、政府との対立が決定的となることだ。県にとって今後の展望が見通せる状況でない。

 それでも知事は「今後も辺野古に新基地を造らせない公約の実現に全力で取り組む」と会見で強調した。支えているのは昨年の知事選などで示された民意であり、重い決意と言わねばならない。

 政府があらためて沖縄の民意と向き合い、「全面対決」を回避すべきではないか。

 承認取り消しによって埋め立ての法的根拠が失われる。政府は、工事主体の防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき、きょうにも審査請求と取り消し処分の効力停止を国土交通相に申し立てる方針だ。

 効力停止が認められれば、請求の審査中でも移設作業を続けられ、今秋の本体工事着手が可能となる。その場合、県側も効力停止の取り消しや差し止めを求めて訴訟を起こすなどの対抗措置に出る構えだ。

 裁判になれば長期化は避けられないだろう。対立は泥沼化し、解決は遠のく。法廷での争いの一方で、移設作業が進み、埋め立てが既成事実化する恐れもある。

 翁長知事は先月、国連人権理事会で演説し、沖縄県民の自己決定権や人権が「ないがしろにされている」と訴えた。国際社会の理解を求める異例の行動だ。基地負担に苦しむ沖縄の深刻な状況を解決するのは、政府の責任である。

 移設作業を強引に進めても対立は解消しない。政府はこの機会に立ち止まり、計画の進め方を含め、その妥当性を検証すべきではないか。


愛媛新聞社説-辺野古承認取り消し 泥沼の闘争に政府は終止符打て -2015年10月14


 ついに国と沖縄県の全面対決に至ってしまった。
 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。対して政府側は、工事主体の防衛局が行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に申し立てると表明した。
 国交相が効力停止を認めれば防衛局は審査請求の審査期間中も移設作業を続け、本体工事に着手することができる、と政府は読む。そうなれば、県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて提訴する方針だ。泥沼の法廷闘争は避けねばならない。
 ここまで対立を先鋭化させたのは、基地問題に関して「辺野古移設が唯一の解決策」との一点張りで、民意を一顧だにしない政府の強権的な態度にほかならない。抗議する市民への警察官や海上保安官らによる取り締まりが厳しさを増す現在、さらに力ずくで本体工事に突入すれば、流血の事態さえ現実のものとなりかねない。
 暴挙は断じて許されない。政府には、事態を重く受け止め工事を中止するよう強く求める。県民の声を聞き、苦難の歴史と向き合い、基地負担軽減策を練り直して米国との協議のやり直しへかじを切るべきだ。
 普天間返還の合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は辺野古移設について「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」と沖縄の地元紙に述べている。住民の反発下では米国側も基地の安定的持続が見通せないに違いない。
 ナイ氏は以前、沖縄が中国の弾道ミサイルの射程内にあることを踏まえ、沖縄への基地集中を変えるべきだとも指摘している。実際、米国はリスク軽減のためハワイやグアムなどへの兵力分散を加速させている。
 沖縄での最大の兵力である海兵隊については、機動力や抑止力、訓練の環境などの観点から沖縄での存在意義や戦略的価値を疑問視する声が米国内や日本の専門家らから上がっている。
 これらの状況を鑑みれば、辺野古移設が基地問題の唯一の解決策であると主張する根拠は揺らぐ。国民の強い懸念と反発を米国に伝え、別の解決策を探ることこそ政府が取るべき道だ。
 米国への協力をアピールするために、政府が主導して辺野古への新基地建設を強行することは決して認められない。国民より米国との約束を優先する姿勢は安全保障関連法の強行成立と共通しており、深く憂慮する。
 翁長知事は先月、国連人権理事会で「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国がどうして世界の国々と価値観を共有できるか」と訴えた。県民の怒りはもっともだ。本土からの賛同や支援も拡大している。民意を力で抑え続ければ国際的信頼を失うことを政府は肝に銘じ、計画見直しと対立解消へ力を尽くさなければならない。


徳島新聞社説-辺野古取り消し やむにやまれぬ決断だ-2015年10月14日

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を正式に取り消した。承認に瑕疵(かし)があるというのが理由だ。

 これに対して政府は、行政不服審査法に基づき、審査請求と取消処分の効力停止を、国土交通相に申し立てる構えである。

 県が一度行った埋め立て承認を取り消すのも異例なら、政府が法的な対抗措置を講じるのも極めて異例のことだ。

 両者の攻防は法廷に持ち込まれる可能性が高く、全面対決の様相を呈してきた。

 対立が泥沼化すれば、世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化が現実味を帯びてくる。そんな最悪の事態は、何としても避けなければならない。

 取り消された埋め立て承認は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が2年前に判断したものだ。翁長氏はこれについて、沖縄防衛局に提出した通知書で、主に2点の瑕疵を挙げた。

 一つは、政府が普天間飛行場を沖縄県内に移設する理由を「地理的に優位」などとした点で、「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と指摘した。

 もう一つが環境面への影響である。通知書は、埋め立て計画について「環境保全措置が適切に講じられているとも、その程度が十分とも言えない」とした。

 政府は「承認に法的瑕疵はなく、取り消しは違法」としているが、なぜ辺野古が地理的に優位といえるのか、明確に説明する必要がある。

 環境面では、前知事の判断を検証した沖縄県の有識者委員会も7月、国や県の「生物多様性戦略」に反している可能性が高いとの報告書を出している。政府は、こうした疑問にも真摯に答えなければならない。

 政府と県は8~9月に集中協議を行い、融和を図る機運も出ていた。それがここまでこじれたのは、沖縄の民意をくみ取ろうとしない政府側に責任があるといえよう。

 集中協議で政府は、「辺野古が唯一の解決策」という主張を変えなかった。これでは、歩み寄りの糸口など見つかるまい。

 翁長氏は記者会見で、一連の協議を振り返り「内閣の姿勢として、県民に寄り添って解決したいという思いは非常に薄い」と厳しく批判した。

 承認取り消しという非常手段に出た背景には、戦後70年もの間、基地の存在に苦しむ県民の悲痛な思いがある。やむにやまれぬ決断である。

 国土面積の0・6%しかない沖縄県に、在日米軍専用施設の約74%が集中している現状は、あまりに酷と言わざるを得ない。

 政府は対抗措置を講じた後、今秋にも本体工事に着手する方針だが、強引に推し進めるのではなく、沖縄の声に耳を傾けるべきだ。

 辺野古以外の選択肢も視野に、計画を再考することが解決の近道ではないか


高知新聞社説-【辺野古取り消し】国の姿勢に募る違和感国の姿勢に募る違和感 -2015年10月14日


 沖縄県の翁長知事が米軍普天間飛行場の移設先とされる、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。
 政府は速やかに法的措置を取り、取り消しの効力を停止する方針だ。両者の対立が法廷闘争に発展する可能性がさらに高まった。
 知事の決断には圧倒的な民意の後押しがある。にもかかわらず、菅官房長官は「沖縄や政府関係者が重ねてきた努力を無にするもの」と批判した。沖縄の思いを切って捨てるような国の姿勢は残念と言うほかない。
 菅氏は2013年12月の仲井真前知事による埋め立て承認を踏まえ、「行政の継続性」も訴えてきた。だが広く国民への理解が広まるだろうか。
 県外移設を求めていた仲井真氏が辺野古容認に転じたのは、巨額の沖縄振興予算が大きい。札束でほおをたたく国のやり方への反発が根強いのは、14年11月の知事選で翁長氏が仲井真氏を約10万票の大差で破ったことで明らかだ。継続しているのは辺野古反対の民意の方である。
 県が承認を取り消した理由の一つには、埋め立てに伴う環境保全措置への疑念がある。翁長氏は今年3月、移設関連作業で投入されたコンクリートブロックでサンゴ礁が傷ついていないか調査の必要があるとして、沖縄防衛局に作業停止を指示した。
 防衛局は行政不服審査法に基づき審査請求と指示の効力停止を申し立て、農相が効力停止を決めた経緯がある。ところが農相は今も、審査請求への結論を出していない。中途半端な状態のまま、国は移設作業を進めていることになる。
 埋め立て承認取り消しに対しても、防衛局は同様の申し立てを行い、所管する国土交通相が効力停止を認める公算が大きい。しかし行政不服審査はそもそも、行政処分に不満がある国民の救済を目的とした制度とされる。国の機関(防衛局)がこれを使い、国(国交相)が判断することへの疑問も指摘されている。
 1996年、日米が普天間返還で合意してから20年近い歳月が流れた。曲折を経た国策の懸案を、直近の民意を無視して解決するのは難しい。県民や国民の多くが懸念や疑念を抱くやり方を政府が押し通せば、大きな禍根を残すことにもなろう。
 沖縄をこれ以上追い詰めることのないよう、国に慎重な対応を求める。


朝日新聞社説-辺野古移設 沖縄の苦悩に向き合え-2015年10月14日


 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事がきのう、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。

 これに対し、政府は直ちに行政不服審査請求などを行う方針だ。政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない。

 政府は埋め立ての法的根拠を失った以上、計画は白紙に戻し改めて県と話し合うべきだ。

 前知事による承認から1年10カ月。翁長知事は取り消しに向けて周到に準備を重ねてきた。

 「承認手続きに瑕疵(かし)がある」との結論は、第三者委員会が半年かけて導き出した。

 第三者委は移設の必要性について「実質的な根拠が乏しい」と指摘。「米軍の沖縄配備の優位性」などの政府の主張にも具体的な説明がないとした。

 翁長知事は政府との集中協議でもこれらの点を問いただしたが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すばかり。説得力ある説明はなかった。

 翁長知事は先月、ジュネーブでの国連人権理事会の演説で、「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。基地問題を人権問題ととらえての主張である。

 戦後、米軍に土地を強制接収され、次々と米軍基地が造られた歴史。戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの「基地被害」と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史。

 そして、いまなお全国の米軍専用施設面積の73・8%が、国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中している現実。

 これはまさに、沖縄に対する「差別」ではないのか。

 日米安保条約を支持する政府も国民も、そうした沖縄の現実に無関心でいることによって、結果として「差別」に加担してこなかったか――。

 翁長知事による埋め立て承認取り消しは、政府に、国民に、そこを問いかけるメッセージだと受けとめるべきだ。

 残念なのは、ジュネーブでの知事の演説に対し、菅官房長官が「強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」と冷淡な対応に終始したことだ。

 行政手続きや司法判断の結果がどうあれ、政府と沖縄の亀裂がこれ以上深まれば米軍基地の安定運用も危うくなるだろう。

 政府に求められるのは、沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。


毎日新聞社説-辺野古取り消し やむを得ない知事判断-2015年10月14日 


 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画をめぐり、翁長雄志(おなが・たけし)知事が移設先の名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。国と県の対立は決定的となり、最終的に法廷闘争に持ち込まれる可能性が高まった。異常な事態であり、残念だ。

 県は、前知事による埋め立て承認に「瑕疵(かし)があった」と主張し、国は「瑕疵はない」という。言い分は真っ向から食い違い、法的にどちらに理があるかは、まだ判断し難い。

 だが、今回のことは、安倍政権が県の主張に耳を傾けず、移設を強行しようとした結果ではないか。県の取り消し判断はやむを得ないものと考える。

 翁長氏は、記者会見で、今夏の1カ月間の政府と県の集中協議などを振り返って「内閣の姿勢として、沖縄県民に寄り添って問題を解決していきたいというものが薄い」と政府への不満を語った。

 菅義偉官房長官は、県の取り消し決定について「日米合意以来、沖縄や政府の関係者が重ねてきた普天間の危険性除去に向けた努力を無視するものだ」と批判した。溝の深さを改めて見せつけられるようだった。

 今回の取り消しにより、政府は埋め立て工事と前段のボーリング調査について、法律上の根拠を失う。

 政府は対抗措置として、行政不服審査法に基づき国土交通相に対し不服審査請求をする予定だ。あわせて取り消し処分の一時執行停止も申し立てる。執行停止が認められれば、政府はボーリング調査を再開し、来月にも本格工事に着手する構えだ。

 だが行政不服審査法は、行政に対して国民の権利を守るのが本来の趣旨だ。国が国に訴え、それを同じ国が判断することには違和感がある。

 不服審査の結果が出るまでには数カ月かかるとされ、最終的には国か県のいずれかが結果を不服として提訴すると見られる。そこまでして辺野古に代替基地を造ったとしても、安定的に運用できないだろう。

 翁長氏が知事に就任して10カ月。この間、安倍政権は辺野古移設計画を進めるにあたり、県の意向をくみ取ろうとする姿勢に乏しかった。一時期は、翁長氏と会おうともしなかった。

 今回、県は、取り消しの通知書とともに、15ページにわたって理由を記した文書を政府側に提出した。そこには「普天間が他の都道府県に移転しても、沖縄には依然として米軍や自衛隊の基地があり、抑止力が許容できない程度にまで低下することはない」など、辺野古移設への疑問が列挙されている。

 政府が今すべきは、強引に辺野古移設を進めることではなく、移設作業を中止し、これらの疑問にきちんと答えることではないだろうか。


東京新聞社説-辺野古取り消し 県内移設は白紙に戻せ-2015年10月14日

 沖縄県の翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て許可を取り消した。これ以上の米軍基地押し付けは認めない決意の表れである。政府は重く受け止め、普天間飛行場の県内移設は白紙に戻すべきだ。

 政府側に提出された通知書では「地理的に優位」とされている県内移設について、時間、距離などの根拠が示されておらず、県外移設でも抑止力は大きく低下しないと指摘。環境保全措置が適切、十分に講じられていないことも、仲井真弘多前知事による埋め立て承認に法的瑕疵(かし)(誤り)があった理由に挙げている。

 翁長知事の判断は妥当である。

 住宅地などが迫り、危険な米軍普天間飛行場(宜野湾市)返還は急務ではあるが、沖縄には在日米軍専用施設の約74%が集中する。

 米海兵隊の基地を置き続ける必要があるのなら、政府はその理由を説明しなければならないが、これまで県民が納得できるだけの明確な説明は聞いたことがない。

 そもそも沖縄の米軍基地は、戦後の米軍政下で住民の土地を「銃剣とブルドーザー」で強制的に収用したものであり、駐留する海兵隊は、反対運動の激化に伴って日本本土から移駐してきたものだ。

 こうした歴史的経緯を顧みず、駐留継続の合理的な理由も説明せず、米軍基地を引き続き押し付けるのであれば、沖縄県民に過重な米軍基地負担と犠牲を強いる「沖縄差別」でしかない。

 沖縄県民は、国政や地方自治体の選挙を通じて県内移設に反対する民意を示し続けてきたが、安倍政権は無視してきた。

 選挙で支持されたからと強弁して安全保障法制の成立を強行する一方で、沖縄の民意を無視するのは二重基準ではないのか。

 政府は八月から一カ月間、米軍基地問題について県側と集中的に協議し、その間、海底掘削調査を一時中断していたが、これも安保法制成立のために国民の反発を避ける手段にすぎなかったのか。

 埋め立て承認に法的瑕疵はないとする政府は、行政不服審査法に基づく不服審査請求を行うなど着工に向けた作業を継続する構えだが、そもそも政府が不服を申し立てられる立場にあるのか。法の趣旨を逸脱してはいないか。

 安倍政権が今なすべきは、選挙で示された沖縄県民の民意を謙虚に受け止め、普天間飛行場の県内移設を白紙に戻し、県外・国外移設を米側に提起することである。県側に法的に対抗することでは、決してないはずだ。


読売新聞社説-辺野古取り消し 翁長氏は政府との対立煽るな-2015年10月14日


 政府との対決姿勢を強めるばかりで、問題解決への展望はあるのか。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、沖縄県の翁長雄志知事が、仲井真弘多前知事の埋め立て承認について「法的瑕疵かしがある」と強弁し、取り消しを決めた。

 米軍の抑止力は県外移設でも低下せず、辺野古移設の「実質的な根拠が乏しい」と主張する。埋め立て後、貴重な自然環境の回復がほぼ不可能になるとし、騒音被害の増大の可能性にも言及した。

 だが、ヘリコプター部隊を県外に移せば、米軍の即応力は確実に低下する。自然環境などへの影響について、仲井真氏は防衛省に約260もの質問をし、その回答を踏まえて、環境保全は概おおむね可能と判断し、埋め立てを承認した。

 辺野古移設は、日米両政府と地元自治体が長年の検討の末、唯一の現実的な選択肢と結論づけられたものだ。翁長氏は、代案を一切示さない頑かたくなな姿勢でいる。

 菅官房長官が「関係者が重ねてきた、普天間飛行場の危険性除去に向けた努力を無視するもの」と翁長氏を批判したのは当然だ。

 防衛省は14日にも、国土交通相に対し、行政不服審査とともに、県の取り消しの執行停止を申し立てる。執行停止が決まり次第、作業を再開し、11月にも埋め立て本体工事に入る考えだ。

 翁長氏は承認取り消しが認められなかった場合、工事差し止めなどを求めて提訴する構えで、法廷闘争になる公算が大きい。その場合、政府は、関係法に則のっとって粛々と移設を進めるしかあるまい。

 疑問なのは、翁長氏が先月下旬、国連人権理事会で「沖縄の自己決定権や人権がないがしろにされている」などと訴えたことだ。

 違和感を禁じ得ない。沖縄の「先住民性」や、独裁国家の人権抑圧を連想させ、国際社会に誤ったメッセージを送る恐れがある。

 辺野古移設に賛成する名護市の女性は同じ場で、「教育、生活などで最も高い水準の人権を享受している。(翁長氏の)プロパガンダを信じないで」と反論した。

 沖縄は「辺野古反対」で一色ではない。翁長氏が政府との対立を煽あおるだけでは、普天間飛行場の移設が遠のくうえ、米海兵隊グアム移転なども頓挫しかねない。

 翁長氏は、沖縄選出の島尻沖縄相の就任について「基地と振興策が混同すれば、ややこしいことにならないか」と発言した。辺野古移設には反対しつつ、沖縄振興予算も確保しようという発想は、虫がいいのではないか。


産経新聞主張- 承認取り消し 知事の職責放棄するのか-2015年10月14日


 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は、前知事による名護市辺野古沖の埋め立て承認に「瑕疵(かし)がある」として、正式に承認を取り消した。

 翁長氏は会見で「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に取り組む」と述べた。これが目的だとすれば、瑕疵の有無についての判断は二の次だったのではないか。

 辺野古移設が頓挫すれば、尖閣諸島周辺などで野心的な海洋進出を繰り返す中国の脅威に対し、抑止力を維持することができない。市街地の中心部にある普天間飛行場の危険性も除去できない。

 いずれも危険に直面するのは沖縄県民である。地方行政のトップとして、こうした判断が本当に許されるのか。

 菅義偉官房長官は「工事を進めることに変わりはない」と述べ、今秋の本体工事着手を目指す方針だ。政府は、取り消しの効力停止などを石井啓一国土交通相に申し立て、国交相がこれを認めれば移設作業は続けられる。

 政府は従来、行政判断はすでに示されているとして移設推進に変更はないとの立場をとってきた。手続き上も問題はなく、日本の安全保障環境を考慮すれば当然の対応といえよう。

 沖縄県側はこれに対し、効力停止の取り消しや差し止めを求める訴訟を起こすとみられる。

 だが翁長氏には知事の職責として国益を十分に認識し、県民の平和と安全を守る義務がある。現実的な判断を求めたい。

 翁長氏は9月、国連人権理事会で演説し、沖縄の「人権」や「自己決定権」を訴え、辺野古移設反対を唱えた。日本の防衛にかかわるテーマだけに、国内の混乱を対外的に印象づけるような手法は国益を損なう行為といえた。

 翁長氏は13日の会見でも、「広く米国や国際社会に訴える中で解決できればよい」とし、「地方自治や民主主義のあり方を議論する機会を提示できればと思う」とも述べた。首長として、手段や目的をはき違えてはいないか。

 政府も混乱の収拾に向けて全力を尽くしたとはいえまい。例えば新任の島尻安伊子沖縄北方担当相は就任後、この問題をめぐって翁長氏の説得に努めたか。移設作業をいたずらに遅滞させることがないよう、沖縄県民の理解を得る責任を果たしてもらいたい。


日本経済新聞社説-沖縄の基地のあり方にもっと目を向けよ-2015年10月14日

 米軍普天間基地の移設を巡る政府と沖縄県の対立がいよいよ抜き差しならないところまで来た。残念な事態と言わざるを得ない。どうすれば折り合えるのかを国民全体でよく考えたい。

 普天間基地は沖縄県宜野湾市の市街地にある。11年前、米軍のヘリコプターが大学キャンパスに墜落する事故があった。住民は常に危険と隣り合わせで暮らす。

 同基地を人口が比較的少ない同県名護市辺野古に移すという政府の方針は妥当である。

 他方、沖縄県の翁長雄志知事は県外移設を求め、前知事が下した移設先の埋め立て許可を取り消した。「沖縄に集中する基地負担が固定化する」との判断だ。

 埋め立て許可やその取り消しが妥当かどうかは、公有水面埋立法を所管する国土交通相が判断する権限を持つ。防衛相は近く審査請求する。国交相は移設工事の続行を認めるとみられる。

 その後は知事が国交相の決定への不服を裁判所に申し立てるなどの形で、法廷闘争に入ることになろう。最終決着は最高裁に委ねるしかないが、そもそも司法で争うのになじまない問題である。

 一連の法手続きは公権力が個人の私権を侵害した場合の救済措置として設けられた。その仕組みのもとで政府と地方自治体が争うのは、政治の調整力のなさを露呈するものである。

 米軍基地を全廃すべきだと考える沖縄県民はさほど多くない。県民の怒りの矛先は、基地が沖縄に偏りすぎているといくら言っても、全く振り向かない本土の無関心に向いている。

 沖縄にある米軍基地の中には本土にあって差し支えのない施設が少なくない。だが、本土に移すとなると相当な反対運動を覚悟せざるを得ないため、米統治時代のままの体制がおおむね維持されてきた。政府は沖縄の基地負担の軽減にもっと努める必要がある。

 沖縄にはどれぐらいの防衛力があればよいのか。日米両政府や与野党が基地のあり方にもっと目を向け、真剣な議論を展開すれば、沖縄県民も自分たちが置かれた立場を理解するようになるはずだ。

 本土のわがままで沖縄がひどい目にあっている。県民がそう思っている限り、たとえ最高裁が名護市への移設にお墨付きを与えても摩擦はなくならない。移設を円滑に進めるのに必要なのは、本土側の真摯な取り組みである。


by asyagi-df-2014 | 2015-10-14 15:05 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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