日本経済団体連合会の「防衛産業政策の実行に向けた提言」を読む。

 一般社団法人日本経済団体連合会(以下、経団連とする。)は2015年9月15日、「防衛衛産業政策の実行に向けた提言」(以下、「提言」とする。)を発表した。
 この「提言」を読む。

 この「提言」の主張は、次のことにある。


「安全保障に係わる新規のプログラムへの参画等により積極的に人材を採用し、組織の活性化、継続性、多様性の確保および中小企業を含めた優れた技術を持つ企業の参入促進を図るとともに、国民による理解を促進し、防衛産業の発展に努めていく。」


 つまり、経団連は、最終版を迎えていた「安保関連法案」反対の国民の声を無視し、「現在、国会で審議中である安全保障関連法案が成立すれば 」、と経団連としての圧力をあからさまに振りかざし、「防衛産業の発展」を高らかに宣言したのである。
これは、安倍晋三政権の「成長戦絡」とは、経団連にとっての「武器輸出」であったことを国民に示したものである。
 経団連は、「経団連は、防衛生産・技術基盤の強化や装備品の国際共同開発・生産の推進に向けた提言を重ねてきた。」、と本音を覗かせる。
 この上で、①昨年4月に防衛装備移転三原則が閣議決定、②防衛省の外局として防衛装備庁の新設が盛り込まれた、③本年6月10日に改正防衛省設置法が成立し、10月に防衛装備庁が新設される予定である、という日本の環境の変化を示す。これらは、すぐれて、安倍晋三政権の役割の発揮である。
 だから、経団連は、この時こそと、「今般、防衛装備庁の政策に対して産業界の考えを反映させるため、『防衛産業政策の実行に向けた提言』を以下の通りとりまとめた。」、とマスコミでは成立が6月18日とも予想されていたから2015年6月15日に、「武器輸出」で資本のより一層の利益の確保のために乗り出したのである。
 もちろん、「世界一、企業のやりやすい環境を作る」という安倍晋三政権を、支えるために。

 この「宣言」は、1.防衛産業の現状と環境変化、2.防衛生産・技術基盤の強化と装備品の国際共同開発等の推進、3.防衛装備庁への期待、4.産業界の取組み、の四つの章で構成されている。
 この中で、基本的な考え方に関わる部分で、特に気がついたものをいくつか採り上げる。

 「宣言」は、「1.防衛産業の現状と環境変化」の中で、「わが国を取り巻く状況」として、次のように記述する。


「北朝鮮の弾道ミサイルや核兵器の脅威に加え、中国は軍事力を広範かつ急速に強化し、ロシアも日本近海における活動を再度活発化するなど、わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しくなっている。また、国家安全保障戦略で示された国際協調主義に基づく積極的平和主義によるわが国の国際貢献が、災害派遣なども含めて求められている。」


 ここでは、安倍晋三政権の常套言葉である「積極的平和主義」を、そのまま安易に使用する。
 あれほど、国民や研究者等からわかりにくいとか理論になっていないと批判されてきたにも拘わらずである。
 つまり、安倍晋三政権の「積極的平和主義」とは、同一レベルで経団連の主張でもあったことを如実に表しているのである。
 そして、「安保関連法」の目的を、この6月15日の段階で、「安全保障関連法案が成立すれば、自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる。」、と宣言して恥じなかったのである。
 この上で、経済連としての倫理亡き展望を、「自衛隊の活動を支える防衛産業の役割は一層高まり、その基盤の維持・強化には国際競争力や事業継続性等の確保の観点を含めた中長期的な展望が必要である。」、と表現したのである。

 実に分かりやすい論理構造である。

 また、経団連は、「1.防衛産業の現状と環境変化」の中で、「防衛産業・技術基盤の現状」として、次のように記述する。


「政府が工廠を保有していないわが国では、民間企業が防衛装備品の開発・生産、維持・整備、運用を支える防衛生産・技術基盤を有しており、この基盤によって、優れた装備品を独自に開発・生産などができる能力を保持している。」
「現行の中期防衛力整備計画のもとでは、オスプレイやAAV7(Amphibious Assault Vehicle:水陸両用車両)などの高額な装備品が短期的に海外から導入され、国産の装備品の調達が大幅に減少している。」
「こうした中で、防衛関連事業から撤退する企業が出ている。一旦その基盤が喪失されると、企業の再参入は難しく、これまで培った技術的な優位性は失われる。政府が支援しても、人員、技術力、設備、事業の回復には長い期間と膨大な費用が必要である。」


 こうして、経団連は結論として、「このように、国内の防衛生産・技術基盤の維持や防衛事業の継続は非常に厳しい状況である。」、から「安保関連法」が必要であるし、日本国憲法を否定し「武器輸出」に本腰を入れる政権の必要性を説くのである。
 このことは、例えば、「従来の武器輸出三原則等のもとでは、武器輸出は実質的に全面禁止されていた。防衛装備移転三原則はこの方針を転換し」、といった「宣言」の説明文が端的に表している。

 こうした表現以外にも、二つの気になるものがある。
一つには、「こうした重要な意義を持つ技術開発力を国家として確保するため、研究開発の積み重ねと継続的ものづくりが必要である。」。
 この記述は、防衛省が「軍事応用可能研究」として「小型無人機やサイバー攻撃対策など軍事技術への応用が可能な基礎研究」に研究費を支給する初の公募をしたことの意味を説明してくれている。
 二つ目には、「米国との間では、本年4月に改定された日米防衛協力のための指針において、防衛装備・技術協力が日米共同の取り組みの一つとして位置づけられた。米国が、国防費を削減する中で同盟国や友好国との協力を一層重視しており、わが国に適切な対応が求められている。」。
 これは、米軍再編を新たな利益追求の手段としてしか捉えきれない倫理亡き集団の姿を、そしてこの集団に尽くそうとする政権の暴力的行為の意味を、説明している。

 結局、この「宣言」から窺えるものは、経団連にとって、日本国憲法は足枷にしか過ぎず、防衛産業の分野で、むしろそれは軍需産業と言った方が相応しいが、利益を追求したいという露骨な意図である。
 そして、同時に見えるものは、「米軍再編」という新たな「価値」の創生のために、すべてを投げ打ってこれを下支えしようとする安倍晋三政権の理念なき姿勢である。

 最後に、「宣言」は、「3.防衛装備庁への期待」で、防衛装備庁の役割について、「防衛生産・技術基盤の維持・強化」とし、そのためには「まず政府の関連予算の拡充と実現に向けた強いリーダーシップの発揮が求められる。」、とする。
 防衛装備庁の具体的役割は、①装備品に関する適正な予算を確保し、人員の充実を図ること、②企業の技術革新と効率性を両立させる仕組みと関係省庁を含めた官民による緊密な連携を基にした装備品や技術の海外移転の仕組みを構築すること、③陸海空の装備品の調達および国際共同開発・生産や海外移転を効果的に進めること、としている。

 「宣言」の趣旨である「武器輸出」や防衛装備庁の「海外移転を効果的に進める」という役割のためには、「安保関連法」が前提となっている。
 米国の「米軍再編」に従属する安倍晋三政権の役割が、経団連の思惑とぴったり重なっている。


by asyagi-df-2014 | 2015-09-30 05:47 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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