大学・研究機関における軍事研究(軍学共同研究)を考える。

 大学・研究機関における軍事研究(軍学共同研究)について、共同通信は「軍事応用可能研究」として2015年9月22日、「小型無人機やサイバー攻撃対策など軍事技術への応用が可能な基礎研究に研究費を支給する防衛省の初の公募に、東京工業大や岡山大など少なくとも16大学が応募したことが22日、理工学、医学部門を持つ全国93の大学を対象とした共同通信のアンケートで分かった。国内の大学は太平洋戦争に協力した反省から、長らく軍事研究から距離を置いてきたが、公募は民生用にも使える基礎研究に限定し、成果の公表を原則としたことから一定数の応募があったとみられる。一方で専門家からは『軍学共同研究』が歯止めなく広がり、学問の自由が脅かされる懸念を指摘する声も出ている。」、と報じた。

 このことについては、私自身が気づかなかっただけで、随分ことは進んでいた。
 朝日新聞は2015年7月22日付けで、「国の安全保障に役立つ技術を開発するとして、防衛省は大学などの研究者を対象に研究費の支給先の公募を始めた。研究者に直接お金を出すのは初めてで、最大で1件あたり年3千万円と一般の研究費に比べて高額だ。軍事応用が可能な研究分野の広がりが背景にあり、戦後、軍事研究と一線を画してきた日本の学界にも課題を突きつけている。」、と経過と疑問を呈していた。
 また、朝日新聞は2015年8月6日には、「大学の研究者と軍事技術が密接になりつつある。」とし、デュアルユース技術についても「科学技術の進歩や軍事装備の多様化から、『デュアルユース』となる技術は増えている。長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は、軍事と民生技術の違いはわかりづらく、『軍事はダメ』と簡単には言えないと指摘する。」「『最先端の研究では、軍事応用への可能性はその研究者にしかわからないため、研究者個人のモラルだけに頼るのではなく、第三者による審査の枠組みが欠かせない。成果の公開、基礎研究への限定などの基準作りが必要だ」、と指摘していた。

 この問題については、「軍学共同反対アピール署名の会」が、軍学共同(大学・研究機関における軍事研究)反対アピールを発表している。
 現在の軍学共同研究の問題点を整理するために、この反対アピールを次に、要約する。


(1)軍事研究の定義
 軍事研究とは、武器開発や、敵国に対して優位に立つことを目的とする装備開発や戦略研究であり、戦争・戦闘に直接・間接に繋がる研究である。
(2)これまでの経過と現在の様子
①戦後、この戦争遂行に加担したあやまちを二度とくりかえさないため、大学や研究機関は平和目的の研究のみに従事し、軍事研究は行わないことを固く誓った。その決意は日本学術会議の総会声明で「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(1967年)と、歴史の節目ごとに繰り返し確認されてきた。また、1980年代後半には大学非核平和宣言運動があり、大学や研究機関ごとの平和宣言・平和憲章なども制定された。
②いま軍学共同の動きが加速されようとしている。2014年4月に、防衛省は大学と軍事の共同研究を本格化させる専門部署「技術管理班」を新設し、大学側との手続きを円滑化しようとしている。すでに、いくつかの大学や研究機関では、防衛省との共同研究協定が締結された。このような軍学共同の動きの背景には、武器禁輸三原則の撤廃などの安倍政権の姿勢が強く関連している。「平成26年度防衛計画大綱」(2013年12月)でも「大学や研究機関との連携の充実により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努める」との方針が打ち出されている。
(3)問題点
①特定秘密保護法が成立(2013年12月)した今日、軍事にかかわる研究の透明性は著しく低下し、軍事機密を漏えいしたとみなされた大学教員や研究者が厳罰を科される可能性が強く懸念される。
②軍学共同が社会に深く根付いているアメリカの事例から、学問の自由が著しく蹂躙されかねないことが容易に想定できる。
③軍学共同研究の影響は、大学教員や研究者にとどまらず、大学においては学生・院生へも及ぶことは自明である。それは研究室を主宰する教員や研究者が、その軍学共同の資金に合意された研究を院生・学生にやらせるという立場にもなりうるからである。この結果、院生・学生が意味を十分に理解しないまま、軍事研究に従うことになっていくことも十分ありうる。このような荒廃を決して大学や研究機関にもたらしてはならない。
④とりわけ大学は、本来、人類の未来を切り開くための学問・研究の場である。大学は、学問・研究を通じて、民主主義の発展や人々の生活向上、核兵器の廃絶・貧困の根絶といった普遍的な問題や、平和の創造に関する問題に取り組む場である。このため大学は、政治的権力や世俗的権威から独立して、真理と平和を希求する人間の育成を教育の基本とすべきであり、軍学共同とは両立しえない。
(4)主張
 われわれは、科学本来の目的・役割に反し、さらに科学の発展をゆがめる、戦争を目的とする研究と教育には絶対に従うべきではない。軍学共同によって戦争に加担するというあやまちを二度とくりかえしてはならない。
 ここに学生・院生も含めた大学・研究機関の構成員すべてに対し、軍関係機関に所属する者との共同研究を一切おこなわず、これらの機関からの研究資金を受け入れないこと、また軍関係機関に所属する者の教育はおこなわないことを、あらためて心からアピールするものである。


 日本国憲法の構造と同じように、「軍学共同研究」について、これまでは一定の枠を課してきた。
しかし、実は「だが、距離は近づき始めている。日本物理学会の決議の変遷はその象徴だ。」との指摘もなされてきた。
 こうした中で、安倍晋三政権のもとでは、明確に違憲である「安保関連法」を可決させたように、新しい価値の基にそうした一定の枠も取り払おうとしている。
 そうなると、やはり、今必要なものは、「科学本来の目的・役割に反し、さらに科学の発展をゆがめる、戦争を目的とする研究と教育には絶対に従うべきではない。軍学共同によって戦争に加担するというあやまちを二度とくりかえしてはならない。」(「軍学共同反対アピール署名の会」)というスタンスに立ち返ることである。
 また、具体的には、京都新聞の「安保関連法の成立で『軍学共同研究』を求める圧力は一層強まろう。第三者による多角的なチェックの仕組みが必要ではないか。」ということも重要になる。
 私たちは、2015年9月19日というものを目のあたりにしてきた。
 このことの意味は、すでに待ったなしの状況に、追い込まれているということなのだ。
沖縄タイムスの「研究は『学問の自由』の下でなされ『国策』に取り込まれることではあるまい。研究者のモラルも問われている。」、という指摘を肝に銘じなければならない。

 以下、共同通信、朝日新聞、軍学共同反対アピール署名の会反対アピ-ル、京都新聞、沖縄タイムスの引用。







共同通信-軍事応用可能研究に16大学応募 東工大や岡山大 防衛省が費用-2015年9月22日


 小型無人機やサイバー攻撃対策など軍事技術への応用が可能な基礎研究に研究費を支給する防衛省の初の公募に、東京工業大や岡山大など少なくとも16大学が応募したことが22日、理工学、医学部門を持つ全国93の大学を対象とした共同通信のアンケートで分かった。

 国内の大学は太平洋戦争に協力した反省から、長らく軍事研究から距離を置いてきたが、公募は民生用にも使える基礎研究に限定し、成果の公表を原則としたことから一定数の応募があったとみられる。一方で専門家からは「軍学共同研究」が歯止めなく広がり、学問の自由が脅かされる懸念を指摘する声も出ている。

朝日新聞-(重なる軍と民 70年目の科学技術:下)兵器開発、担った工学系学部-2015年8月13日


 戦中戦後の9年間だけ存在した東京大(東京帝国大)第二工学部の資料を集め、デジタルアーカイブとして公開する準備を東大が進めている。

 学部開設は真珠湾攻撃4カ月後の1942年4月。技術者の大量育成という軍の要請に基づいて工学部の定員を倍にして分け、千葉市に新校舎を建設。資材は軍が全面的に援助した。

 卒業生が寄贈した資料からは、大学と軍事研究が近い存在だった戦時下の様子が浮かぶ。時間割には、火薬学、銃器、機雷及び爆雷、理学兵器といった科目も並んでいた。卒業生によると、校舎は急ごしらえで整備が間に合わず、当初は東京の第一工学部で授業したこともあったという。

 当時は全国で工学系の大学、学部、学科の新増設が相次いだ。大阪大の沢井実教授(産業史)によると、戦闘機開発につながる航空学科、電波兵器に関連するエレクトロニクス関係の学科が新設され、大学工学部全体の卒業者数は36年度の1489人が44年度は3125人になった。

 軍が技術者を必要としたのは、新兵器を開発して戦局を有利に進めるためだ。ベテランは徴兵で激減。大学での育成に活路を求めた。開戦当時は、戦艦大和を生むなど日本の技術者の活躍がめざましい時代。沢井教授は、そうした技術への自信が開戦に踏み切らせた、と分析する。

 「技術が為政者の行動を決めている側面がある。当時の技術者には、自分の仕事が軍事的、政治的判断に影響を与えている自覚がどこまであったのだろうか」
 ■再び近づく距離
 終戦により日本の科学技術は軍事と大きく距離を取ることになった。第二工学部の研究や教育も転換を迫られ、その後廃止された。

 だが、距離は近づき始めている。日本物理学会の決議の変遷はその象徴だ。

 66年に京都であった半導体国際会議で、主催の日本物理学会が米軍の助成を受けたことが問題化、国会でも取り上げられた。学会は翌年、「一切の軍隊からの援助、その他一切の協力関係をもたない」とする決議を採択。年会・分科会のプログラム冒頭に毎回掲げた。

 だが、お金のほか、研究者の所属、研究テーマなどを調べて軍事か否かを厳格に線引きする学会の作業が煩雑との声が次第に強まり、研究者間で温度差も出始めていく。軍事にも民生にも使えるデュアルユース技術も広がった。

 学会は95年、決議の毎回掲載をやめ、「学会が拒否するのは明白な軍事研究」と方針を変更した。当時の学会長は学会誌で「軍事研究といえども基礎研究と連続的につながっており、境界を定めることが出来ない」と理解を求めた。
 ■「研究者は自覚を」
 12日、大学研究者らに防衛省が研究費を出す新制度の公募が締め切られた。対象はロボットやレーザー、化学物質の検知など、将来的に防衛に活用できる分野だ。大学で自由に使えるお金が年々減るなか、最大で年3千万円と多額を受け取れる公募に波紋が広がる。

 技術者倫理も教えてきた黒田光太郎・名古屋大名誉教授(材料工学)は「研究者は自分の研究が軍事に転用されうるかどうかを自らに常に問うべきで、防衛省の資金で研究することは、どのようなテーマであれ軍事にコミットすることだと自覚すべきだ」と指摘する。

 防衛予算の使い道として疑問視する声もある。東京工業大の中島秀人教授によると、米国は冷戦時代、多額の国防費を大学に投じたが、費用の割に成果は少なかったとの見方が大勢という。「大学の研究は本来、独創的なものを生み出すのが目的で効率的ではない。大学を使って軍事研究をするつもりなら、米国の失敗を繰り返しかねない」

 国家と科学技術は影響を及ぼし合う。戦後70年、国際情勢が変化し国のあり方が議論になるなか、科学者、技術者一人ひとりの考え方が問われている。
 (竹石涼子、嘉幡久敬)



朝日新聞-(重なる軍と民 70年目の科学技術:中)「軍事研究」悩む線引き-2015年8月6日

 大学の研究者と軍事技術が密接になりつつある。

 横浜国立大の上野誠也教授は3年前、「群制御」という技術をテーマに、防衛省との研究協力を始めた。

 ロボットやドローンによる探索活動で、広範囲を短時間でくまなく調べて効率的に分析するには、何台もの機体を協調して動かす必要がある。遭難者探しや希少動物の調査に生かせる一方で、防衛省はテロリスト情報の収集などを念頭に置いている。軍民どちらにも使える「デュアルユース技術」の典型だ。

 上野教授が理論づくりとその改良を担い、防衛省がロボットで実験する。「ハードウェアを作らずにデータが得られるのが大きなメリット。我々はコンピューターしか使っていない」

 防衛省が研究協力を始めたきっかけは、東日本大震災だ。「被災地でロボットが十分活躍できるようになるためには、ふだんから実証を伴う研究が必要だと痛感した」と防衛省の担当者は話す。

 以前から、防衛省の技術者が大学研究室に籍を置き、博士号を取得する制度はあった。そこへ、データの交換や実験装置の融通をする研究協力制度ができ、3年前から拡大。今年度は大学の研究者に年最大3千万円の研究費を出す「安全保障技術研究推進制度」も始まった。交流は人、データ、お金へと進んでいる。
 ■基礎研究に限定
 大学側の姿勢はどうか。

 東京大と京都大は軍事研究に最も厳しいとされる。東大は1950年代に評議会で軍事研究禁止の方針を確認、69年に職員組合との間で確認書を取り交わすなど「方針は代々引き継がれている」(広報課)。ただし、「軍事研究」を定義して禁止の枠組みを定めた指針などはない。京大も「軍事、国防に関する研究を教職員個人レベルでやっていないとはいえない」(研究推進課)と認める。現状では研究者のモラルが歯止めだ。

 一方で、軍事研究か否かの線引きや、受け入れ可否を判断するしくみを作る大学も増えている。

 東京工業大は2005年、「軍事・国防関連の研究を実施する政府機関等との研究協力に関する要領」を策定した。米国防総省の規定による「基礎研究」にあたるなら、研究成果の公開などを前提に受け入れる。担当理事や教員らによる会議で研究者の申請を審議する。今年7月中旬までに申請のあった25件すべてが認められ、22件が米軍、3件が防衛省関連だった。

 会議の内容は学内に公開される。議事録によると、12年4月には、米空軍科学技術局からの寄付金受け入れが審議された。応用研究へ発展するおそれから、この研究者に「年度ごとに報告書の提出を義務づける」ことを条件に承認した。

 九州大も10年、軍事に関わる研究に対する指針を策定。国内の組織との研究に限って認め、役員会で審議する。東北大も指針を作成中で、軍事技術などの開発、応用に直接つながる研究でないなど6項目を判断基準にするという。

 大阪大は10年、共同研究が軍事目的でないかを審査する体制を作った。国外への技術流出を防ぐための従来の枠組みを活用した。
 ■「成果公開も必要」
 科学技術の進歩や軍事装備の多様化から、「デュアルユース」となる技術は増えている。長崎大核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は、軍事と民生技術の違いはわかりづらく、「軍事はダメ」と簡単には言えないと指摘する。

 「最先端の研究では、軍事応用への可能性はその研究者にしかわからないため、研究者個人のモラルだけに頼るのではなく、第三者による審査の枠組みが欠かせない。成果の公開、基礎研究への限定などの基準作りが必要だ」(山崎啓介、嘉幡久敬)
 ◆キーワード
 <デュアルユース技術> 軍民両用の技術。「デュアル」は両義性の意味で、介護福祉などの現場のほか戦場でも使えるロボット技術、病気の予防と生物兵器の双方に活用されうるバイオ技術などが代表例だ。近年はさまざまな技術がデュアルユースとされる。


朝日新聞-防衛省が大学に研究費 軍事応用も視野、公募開始-2015年7月22日


 国の安全保障に役立つ技術を開発するとして、防衛省は大学などの研究者を対象に研究費の支給先の公募を始めた。研究者に直接お金を出すのは初めてで、最大で1件あたり年3千万円と一般の研究費に比べて高額だ。軍事応用が可能な研究分野の広がりが背景にあり、戦後、軍事研究と一線を画してきた日本の学界にも課題を突きつけている。

「軍事研究」、大学に慎重論 防衛省が公募

 公募対象は大学、独立行政法人、大学発ベンチャーや企業。今年度の予算は3億円で、8日に募集を始め、8月12日に締め切って10件程度を選ぶ。成果は「将来装備に向けた研究開発」で活用するとし、実用化の場として「我が国の防衛」「災害派遣」「国際平和協力活動」を挙げた。

 支給額は文部科学省の科学研究費補助金の1件あたり年平均約200万~300万円より高い。基礎研究に限定し、成果は原則公開、研究者は論文発表や商品への応用ができる。防衛省の担当者は「安全保障への活用の遠いゴールを示しつつ、広く応募してもらえるよう工夫した」と話す。

 公募は、レベルの高い国内の技術から将来使えそうなものを広く探す狙いがある。近年、軍事にも使える民生技術は増えている。実際、募集テーマも様々で、マッハ5以上の速度を出す航空機エンジンの技術、ロボットや無人車両の画像認識技術、木くずなどからエネルギーを取り出す技術など28分野を列挙した。

 防衛省は長らく、研究開発では防衛産業としか縁がなかったが、3年前から大学や研究機関との技術交流を本格化。データ交換や施設の共同使用を進めてきた。安倍内閣は昨年4月、武器輸出を原則禁じた武器輸出三原則を撤廃。新たに防衛装備移転三原則を定め、豪州など海外との武器の共同開発や武器輸出に本腰を入れる。研究開発から購入までを一括管理する防衛装備庁も近く発足する。今回の公募はこうした流れの延長線上にある。

 日本では、軍事研究と関わらないよう求めている大学もある。東京大は1969年、職員組合と「軍事研究は行わない、軍からの研究援助は受けない」とする確認書を交わしている。京都大は海外への軍事に関連する技術の提供は避けるよう要請しているという。

 ただ、研究者が応募することは可能で、具体的な審査規定を持つ大学も少ない。日本学術会議の大西隆会長は「憲法で認められた自衛のために必要な研究を大学や国立研究機関の研究者がすることはありうるが、最近の安保法制の議論も含め、自衛の範囲は必ずしも明確ではない。どこまでの自衛なら許されるか、学術界での議論が必要だ。また、許される範囲の研究であっても、国民の理解は欠かせず、研究者には説明責任がある」と話す。(嘉幡久敬)



軍学共同(大学・研究機関における軍事研究)反対アピール



軍事研究とは、武器開発や、敵国に対して優位に立つことを目的とする装備開発や戦略研究であり、戦争・戦闘に直接・間接に繋がる研究である。先の戦争で日本の大学・研究機関は、戦争に協力する学問を生みだし、軍事研究に深くかかわり、多くの学生を戦場に送り出したという苦い経験をもつ。戦後、この戦争遂行に加担したあやまちを二度とくりかえさないため、大学や研究機関は平和目的の研究のみに従事し、軍事研究は行わないことを固く誓った。その決意は日本学術会議の総会声明で「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(1967年)と、歴史の節目ごとに繰り返し確認されてきた。また、1980年代後半には大学非核平和宣言運動があり、大学や研究機関ごとの平和宣言・平和憲章なども制定された。

この歴史の流れに逆行して、いま軍学共同の動きが加速されようとしている。2014年4月に、防衛省は大学と軍事の共同研究を本格化させる専門部署「技術管理班」を新設し、大学側との手続きを円滑化しようとしている。すでに、いくつかの大学や研究機関では、防衛省との共同研究協定が締結された。このような軍学共同の動きの背景には、武器禁輸三原則の撤廃などの安倍政権の姿勢が強く関連している。「平成26年度防衛計画大綱」(2013年12月)でも「大学や研究機関との連携の充実により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努める」との方針が打ち出されている。

特定秘密保護法が成立(2013年12月)した今日、軍事にかかわる研究の透明性は著しく低下し、軍事機密を漏えいしたとみなされた大学教員や研究者が厳罰を科される可能性が強く懸念される。

軍学共同は如何なる大学・研究機関像をもたらすのだろうか。軍学共同が社会に深く根付いているアメリカの事例から、学問の自由が著しく蹂躙されかねないことが容易に想定できる。軍学共同研究の影響は、大学教員や研究者にとどまらず、大学においては学生・院生へも及ぶことは自明である。それは研究室を主宰する教員や研究者が、その軍学共同の資金に合意された研究を院生・学生にやらせるという立場にもなりうるからである。この結果、院生・学生が意味を十分に理解しないまま、軍事研究に従うことになっていくことも十分ありうる。このような荒廃を決して大学や研究機関にもたらしてはならない。

とりわけ大学は、本来、人類の未来を切り開くための学問・研究の場である。大学は、学問・研究を通じて、民主主義の発展や人々の生活向上、核兵器の廃絶・貧困の根絶といった普遍的な問題や、平和の創造に関する問題に取り組む場である。このため大学は、政治的権力や世俗的権威から独立して、真理と平和を希求する人間の育成を教育の基本とすべきであり、軍学共同とは両立しえない。

われわれは、科学本来の目的・役割に反し、さらに科学の発展をゆがめる、戦争を目的とする研究と教育には絶対に従うべきではない。軍学共同によって戦争に加担するというあやまちを二度とくりかえしてはならない。

ここに学生・院生も含めた大学・研究機関の構成員すべてに対し、軍関係機関に所属する者との共同研究を一切おこなわず、これらの機関からの研究資金を受け入れないこと、また軍関係機関に所属する者の教育はおこなわないことを、あらためて心からアピールするものである。

軍学共同反対アピール署名の会

※軍学共同反対の趣旨
防衛省は、大学や研究機関を軍事研究に取り込む「軍学共同」の動きを強めています。例えば、防衛省防衛技術研究本部と大学・研究機関との間で締結された共同研究の件数は、2010年ごろから加速的に増加する傾向にあります(詳細はこちらをご覧ください)。このような動きは、「戦争を目的とする科学研究には絶対に従わない」(日本学術会議の総会声明、1950年)という戦後の日本の学術の立脚点から逸脱しています。戦争を目的とする軍事研究が大学や研究機関で本格的に行われることになれば、科学の発展は歪められ、学問の自由や研究者の基本的人権が踏みにじられてしまうでしょう。

この「軍学共同反対アピール署名」は、大学教員や研究者(人文・社会・自然科学のあらゆる学問分野で研究・教育に携わる方々。退職者や企業の研究者・技術者も含む)ばかりでなく、大学院生•学生も、そしてこの問題に関心を持つ市民の方々からの賛同も歓迎します。軍学共同の動きを止めるため、ご一緒に声を上げましょう。


京都新聞社説-大学と軍事研究  第三者の監視が必要だ-2015年9月25日



 昆虫サイズの小型飛行体など、軍事技術への応用が可能な基礎研究に研究費を支給する防衛省の初の公募に、少なくとも国立9大学を含む16大学が応募したことが、共同通信が主要な国公私立大に実施したアンケートで分かった。
 大学はかつて戦争に協力したことへの反省から、軍事研究には長らく距離を置いてきた。近年、産学連携が進む中で軍事との関わりがささやかれる研究例もあったが、これまで外部に見えにくかった動きが、公募という形で堂々と表に出てきたともいえる。
 だが、国民的な議論と合意がなされたわけではない。既成事実が積み上がる前に、大学の軍事研究の是非やルールに関する議論を始めることが必要だ。
 「応募あり」と回答したのは国立では東京工業大、岡山大、静岡大、香川大、鹿児島大など。公立は大阪市立大、私立は東京理科大、愛知工業大、関西大など6大学だ。一方、旧7帝大は京都大など5大学が「応募なし」、東京大と名古屋大は回答できないとした。
 気になるのは回答の中に、直接的な軍事研究でなければ応募は許容される、との見解が目立つことだ。今回の公募対象は民生用にも使える基礎研究に限られているものの、それは応募者側の後ろめたさを軽くする方便に過ぎない。主な目的は軍事利用であり、それに加担することになる危険性を、大学や研究者は十分に自覚しているだろうか。
 防衛省は、採択した研究の成果は公開が原則としている。しかし兵器などに転用されれば特定秘密保護法によって外部の目が届かなくなり、研究者が自らの研究内容を語ることも機密漏洩(ろうえい)とみなされかねないと危ぶむ専門家もいる。
 今回の公募は、米国防総省の手法をモデルにしているという。政府の「選択と集中」方針の下、大学予算についても配分先の選別が強まる中で、困窮する研究室に資金を提供して最先端の技術を効率よく取り込もうとの意図が透ける。地方の国立大や単科大の応募が目立つのも、そうした懐事情と無縁ではあるまい。
 政府は昨年、武器輸出三原則を撤廃し、米国を中心とする最新装備の共同開発に加わる道を開いた。従来の防衛産業に加え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと防衛省の技術協力も進む。
 安保関連法の成立で「軍学共同研究」を求める圧力は一層強まろう。第三者による多角的なチェックの仕組みが必要ではないか。


沖縄タイムス社説-[大学の軍事研究]加担の過ち繰り返すな-2015年9月24日

 戦争に協力した反省から、軍事研究とは一線を画してきた大学の研究者のあり方が変わるのではないか。そんな懸念が消えない。

 防衛省は軍事技術として応用可能な基礎研究に研究費を支給する公募をしていたが、少なくとも16大学が応募していたことが共同通信のアンケートで分かった。

 公募は最初から軍事技術への応用が可能な基礎研究とうたっている点が特徴だ。「安全保障技術研究推進制度」というのが正式名称で、防衛省が本年度から導入した。7月に募集を開始。28項目の研究課題について公募していた。

 「昆虫あるいは小鳥サイズの小型飛行体の実現」「微生物や化学物質を数十メートルの距離から検知識別」などが研究テーマである。

 軍事研究に大学を取り込む方針は、2013年12月に閣議決定された防衛計画大綱がすでに示している。「大学や研究機関との連携の充実等により、防衛にも応用可能な民生技術(デュアルユース技術)の積極的な活用に努めるとともに、民生分野への防衛技術の展開を図る」

 デュアルユースとは、生活を豊かにする民生と軍事のどちらにも利用できるという意味だ。主な研究テーマからも想定できるように、「もろ刃の剣」である。

 国立大学は法人化に伴い交付金が減少している。そこに防衛省からの公募である。本年度、約3億円が計上されており、1件当たり年間最大3千万円支給され、文部科学省の科学研究費補助金などと比べると破格である。研究者の気持ちは揺らぐに違いない。
    ■    ■
 軍事技術に応用可能な研究をうたった公募に安易に乗るのは、学問の自由を捨てるのに等しいのではないか。

 各分野の最高水準の専門家が集う日本学術会議は戦後の1949年の発足総会で、科学者が戦争に協力してきたことを強く反省し、わが国の平和的復興と人類の福祉増進のために貢献する趣旨の決意表明をした。

 50年には「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、67年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を繰り返し出している。

 先の大戦に深く関わった反省を踏まえ、科学者の「社会的な責務」を表明したものであろう。

 安倍政権は昨年4月、武器輸出三原則を撤廃し、防衛装備移転三原則を定めた。武器輸出の条件を緩和し、共同開発に道を開くものである。

 10月には研究開発を所管する防衛省の外局として防衛装備庁が新設される。

 今回の公募はこれらの動きに連なるものである。
    ■    ■
 英国の科学誌が「日本の学術界、軍事の侵入を懸念」と題して報じている。

 防衛省は研究成果の公開を原則としているという。だが、特定秘密保護法が施行されている。十分に情報公開されるかどうか、額面通りに受け取るわけにはいかない。

 研究は「学問の自由」の下でなされ「国策」に取り込まれることではあるまい。研究者のモラルも問われている。


by asyagi-df-2014 | 2015-09-27 05:35 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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