本からのもの-「特集 福島・これでも帰還か!

著書名;DAYS JYAPAN 2015年10月号
著作者; 満田夏花 ・  おしどりマコ
出版社;DAYS JYAPAN 


 DAYS JYAPAN 2015年10月号の「特集福島・これでも帰還か!」に掲載された「2015年9月4日の楢葉町の『民家にほど近い場所に山積みにされた触れコンバック』」の写真には、「この近くの路上からは国の定める年間被爆限度の毎時0.23マイクロシ-ベルトを越える線量が次々に観測された」との説明がされている。
 また、死亡・人身災害が相次いだ折りの、東京電力はの再発防止対策中には、安全意識の背後要因として、「管理職を含めた社員の中で、福島第1の現場環境では、事故が発生してもやむを得ないという考えがあった」と、書かれていたという。

 この「小児甲状腺がん多発と帰還促進」(満田夏花)と「作業員が『まるで戦場』と語る混乱の現場」(おしどりマコ)の二つの記事は、東京電力福島第1原発事故を、政府や東京電力だけでなく、自分達が余りにもないがしろにしてきたのではないかという大きな反省を感じさせるものである。
 例えば、おしどりの「燃料デブリ(高濃度廃棄物)」の指摘も、恥ずかしながら全く知らなかった。
 これから、福島第一原発事故に、きちっと向き合うために、この二つの記事から大事な部分を取り出してみる。


(1)「小児甲状腺がん多発と帰還促進」(満田夏花)

①東京電力福島第1原発事故による避難指示解除を進め、支援や賠償を打ち切り、被害をあたかも「なかったこと」にするかのような動きが進んでいる。
②このような政策は、避難の実態や避難を継続したいという住民の意思、被曝リスクを無視したものだ。支援や賠償の打ち切りは経済的にも精神的にも避難者を追い詰め、結果的に帰還の強要に繋がる。
③福島県によると、現在、原発事故によって福島県内外に避難している人は約11万人。その多くが、災害援助法に基づく借り上げ住宅制度(みなし仮設住宅)を利用している。借り上げ住宅制度とは、地方公共団体が公営住宅、民間の賃貸住宅を借り上げ、避難者に無償で提供する制度。最終的にはその費用の9割を国が、1割を福島県が負担する。ところが、福島県は、政府指示区域以外の避難者に対して、この支援を2017年3月末で終了させる方針を決定した。
④「原発事故で故郷を追われ、避難先で必死で自立しようとしている私たちの命綱を切るのですか?」「国は自立自立というが、住む場所がなくなるかもしれないのに、“自立”できるわけがない。生活の基盤を奪って何を言うのか」「私たちの意志を無視して、無理やり帰還させようとしている」。参加したさまざまな避難者から、怒りと絶望の声が上がった。
⑤一方で、国が「新たな住宅支援」として揚げる「公営住宅への入居の円滑化」は、応募書類の発行が50件にとどまるなどまったく機能していない。
⑥政府は解除の要件として、1空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシ-ベルト以下になることが確実であること、2生活インフラが復旧していること、3県、市町村、住民との十分な協議、をあげている。この年間20ミリシ-ベルトを非難・帰還の基準とする政府の要件は、内外から多くの批判の声があがっている。そもそもICRP(国際放射線防護委員会)による勧告、また、原子炉等規制法など日本の国内法令による公衆の年間の線量限度は1ミリシ-ベルト、放射線管理区域でも年間5.2ミリシ-ベルト相当である。さらに、この解除要件は土壌汚染レベルをまったく考慮していない。
⑦2014年12月に解除となった南相馬市の特定避難勧奨地点の場合、指定解除の説明会で発言した住民はすべて、解除反対を表明した。住民たちは、「除染しても市内の避難区域より線量が高い」「再除染してから解除すべきだ」「年間1ミリシ-ベルト以下でないと解除に反対」など口々に発言。しかし、高木経済産業副大臣は、「積算線量20ミリシ-ベルトを下回っており、健康への影響は考えられない」と述べ、政府は12月28日に恐慌的に解除を通知した。それを受けて、南相馬の住民たちは今年4月17日、国を相手どり、解除の取り消しを求め、東京地裁に提訴した。
⑧8月31日、福島県で開かれた第20回「福島県県民健康調査」検討委員会で、小児甲状腺がんの悪性または疑いを診断されたこどもは、138人となった(うち手術後確定が104人)。うち、2014年から始まった2巡目検査で甲状腺がんまたは疑いとされた子どもたちは25人。この中には、1巡目の検査で、問題なしとされた子どもたち23人が含まれている。
⑨被曝を軽視する政府の政策は、科学的な根拠に基づくものではなく、「放射線被曝による健康影響がたとえ生じても、因果関係の立証は困難で、立証できたとしても時間がかかる」ことを見越した、その場しのぎのものだ。復興の名の下に事実上の帰還の押しつけが進んでいることは許されるものではない。被災者自身が、避難・居住・帰還を選択できる環境を保障すべきであろう。多くの被害者・支援者・専門家が連携し、データや知見を蓄積しつつ、政府に対抗していくことが求められている。


(2)「作業員が『まるで戦場』と語る混乱の現場」(おしどりマコ)


①最も古い1号機の使用済み燃料プ-ルには、原発事故の25年も前から取り出せない破損燃料が70体ある。東電によると、この破損燃料を取り出す技術は「将来に開発される予定」とのこと。
②各号機における原子炉の燃料デブリの取り出しは、「まず使用済み燃料プ-ルに集中する。原子炉の燃料デブリ取り出しはいったん計画から取り出す」(東電)ということで、時期の目途すら立っていない。各号機とも、原子炉の中の燃料デブリがどのような状態か、どこにあるのかも分かっていないのが現状なのだ。
※燃料デブリとは、核燃料や格納容器、それらに付随する構造物などが、メルトダウンによっていちど溶けたあと冷やされて塊になった物体。高レベル放射性廃棄物。
③福島第1原発内では今年1月に死亡・人身災害が相次ぎ、その際、東京電力は、再発防止対策を作成した。その中にはこう書かれていた。「安全意識の背後要因:管理職を含めた社員の中で、福島第1の現場環境では、事故が発生してもやむを得ないという考えがあった」
④福島第1原発事故で、最も犠牲を強いられているのは作業員の方々だと思う。2012年に福島第1原発の医療室で看護師をしていた染森信也氏も、「8月に3人亡くなったというのは思ったより少なかった。亡くなる方がもっと多くても不思議はない過酷な状況。福島第1原発の作業員はもっと保障があるべき。雇用保険から安定化基金を出すとか、特別支援金の制度を作るとか。福島第1原発の作業員のための病院がなぜできないのか」と話していた。
⑤新規性基準が決まってから、東京電力などの事業者は消防車を自前で準備し、社員が大型免許を取得するため、全国の自動車学校が混雑したという。「指示されたから免許を取得したが、本当に自分たちが対応できるんだろうか?」と、東電社員などらが話しているのを聞いた。いま、安全保障関連法案でテロの問題が様々語れているが、原発のテロ対策は本当にお粗末なものである。そして、これが安倍首相のいうところの「世界一厳しい」全国の原発再稼働の新規性基準なのだ。
⑥このお盆休みに、九州電力が試験運転を決めたのは偶然だろうか?私はそうは思えない。意図的にお盆休みにして、問題が発生しても規制庁や報道が迅速に対応できない時期にしたのではないのか。そして川内原発の起動にも関わらず、そのまま休みの体制をとるのが今の規制庁の体制だ。万が一事故が起こった場合の規制側の体制すら整っていない。それが「世界一厳しい安全基準」の実態である。
⑦私はずっと継続して迫っている問題に、福島原発内の「」/2号機排気筒」がある。この煙突に2013年9月、高さ66メ-トル部分の東西南北4方向に8か所の破断や切れ目が見つかった。同12月、1/2号機排気筒の根本のSGTS配管に、毎時25シ-ベルトと毎時15シ-ベルトの部分があることが測定された。これは現在、福島第1原発の敷地内で最も高線量の部分である。
⑧現在の東電会見では、「発表する意味があるかどうか、出す情報は東京電力が判断して選ぶ」という体制になっており、質問しても回答がないことが多い。しかし、記者会見だけでなく、原子力規制庁にも同様の態度を取っていることに驚いた。
規制庁の役割がまるで果たされていない。
⑨私が30日の東京電力記者会見で東電の担当者に質問すると、彼は「東電として報告が遅れたとは思っていない。なぜなら、報告しろという指示はもともとなかったから」と答えた。規制庁は、私が4月に指摘するまで点検の際の写真が存在することさえ知らなかったのだ。それなのに1月に報告の指示ができるわけがない。これが、原発事故を起こした東京電力が原子力規制庁にとっている態度であり、規制庁の規制側としての監視能力である。原子力規制庁は事業者を規制できているのか?新規性基準は安倍首相の言うように「世界一厳しい」のか?残念ながら答えは両方ともNOである。


 ここで示されているのは、 「世界一厳しい」ものとはかけ離れた、またしても無答責体制ではないか。


by asyagi-df-2014 | 2015-09-24 05:41 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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