沖縄から-「辺野古協議決裂」を越えて

 安倍晋三政権の一連の政策的方法からすると「辺野古協議決裂」は、予想されることではあった。

 沖縄タイムスと琉球新報は、2015年9月8日付けで、「[辺野古協議決裂]取り消しも 県民投票も」「辺野古協議決裂 尊厳懸け粛々と取り消せ」と社説でその主張を明確にした。
 その要約は、次のとおりである。
(1)沖縄にとってこの協議はどのような意味を持つのか
・沖縄タイムス
①いったい何のための集中協議だったのか。
②一国の総理が最終協議の場に参加したのはどのような理由からか。
③政府に米軍普天間飛行場の辺野古移設を見直す気配はまったくなく、翁長雄志知事が「魂の飢餓感」と例えた県民の心情も理解されることがなかった。最終協議で菅義偉官房長官が口にしたのは「工事再開」である。
・琉球新報
①相手の話に耳を傾けて、違いや溝を埋めるために話し合い、一致点を見いだすよう努める。それが協議の意味のはずである。
②協議全体を通して、安倍政権側は「辺野古が唯一の解決策」と呪文のように繰り返すばかりだった。木で鼻をくくったような言い分を翁長雄志知事が受け入れるか否かと迫るだけの構図は協議の名に値しない。国策の押し付け、恫喝(どうかつ)に等しい。決裂の責任は安倍政権にある。
(2)この協議から見えたもの
・沖縄タイムス
①政府から提案のあった集中協議に、かすかな期待がなかったわけではない。しかし終わってみれば、安保法案、原発再稼働、戦後70年談話などの重要課題を一つずつ処理していく時間稼ぎのために辺野古を利用したとしか思えない内容である。いくら協議を重ねた形をとっても、沖縄の民意を軽んじている。最終協議に出席した安倍晋三首相だが、その前日に放送された民放の番組で「辺野古以外はない」と発言している。県民をもてあそぶような態度だ。問題解決に向け協議するとしながら、話し合いの土壌は、初めからなかったことになる。
②5回の協議で示されなかったのは「なぜ辺野古なのか」「県外はどうなったのか」という県民の切実な疑問への説明である。集中協議で分かったことは「国が決めたんだから言うことを聞け」とばかりの相変わらずの強硬な姿勢だ。
③政府が繰り返す危険性除去は新基地建設のための方便でしかない。危険性除去を最優先させるなら、ここまで長期にわたって問題を引きずることはなかったはずだ。あたかもそれ以外の選択肢がないように「辺野古が唯一」との言い方も一種の世論誘導で、説得力がない。総理をはじめ何人もの閣僚が顔をそろえ、何回も集中的に話し合ったのに、何の解決策も見いだせない。問われなければならないのは、政府の問題解決能力ではないか。
 日米同盟が重要と考えるのなら、強力な政治的意思で選択肢を用意することは、困難であっても可能である。
・琉球新報
①安倍首相や菅義偉官房長官が「知事に理解を求める」という言葉をいくら繰り出しても、実態は沖縄を屈従させるしかないという差別をまとった強権的姿勢と思考停止があぶり出されただけだった。
②米軍による土地強奪の陰影が濃い沖縄戦後史、「抑止力」など新基地の必要性をめぐる虚構、新基地拒否の強固な民意など、翁長知事は意を尽くして沖縄の立場を説いた。だが、沖縄の尊厳を懸けた知事の主張に対し、安倍政権は徹頭徹尾、聞き置くだけにとどめた。
③翁長知事に理解を得る努力をした形跡を残すアリバイにし、国民を抱き込むことはやめた方がいい。安保関連法案審議からうかがえる、国民を見下した政権の品格を一層おとしめるだけである。
(3)主張
・沖縄タイムス
 翁長知事も前知事の埋め立て承認を取り消す手続きを進める意向だが、主導権を確保するためにも決定を急ぐべきだ。知事が承認を取り消せば、政府はすかさず取り消し処分の無効を申し立てるはずだ。法廷に持ち込まれるのは避けられない。沖縄側の主張の正当性を内外にどれだけアピールできるかが、これからの勝負となる。県民投票についても真剣に検討すべき時期である。
・琉球新報
 翁長知事は「全力を挙げて阻止する」と即座に対抗した。さらに「お互い別々に今日まで生きてきたんですね。70年間」と述べ、沖縄を同胞扱いしない政権を痛烈に批判した。県民の心情を代弁していよう。
 知事は粛々と埋め立て承認の取り消しに踏み出せばいい。国連での演説、県民投票など、新基地建設を止めるあらゆる手段を国内外で緻密に駆使してほしい。民主主義的正当性を深く認識し、誇りを懸けて抗(あらが)う県民が支えるだろう。

 確かに、この協議は、安倍晋三政権のための「翁長知事に理解を得る努力をした形跡を残すアリバイにし、国民を抱き込むこと」という位置づけしか持ち得ないものであり、沖縄にとっては「いったい何のための集中協議だったのか。」というものに過ぎないものである。
 ただ、一方では、沖縄県が沖縄県民の意志を受けて次の段階に進むための正当性を得るためには、残念ではあるが必要なものであったのかもしれない。
 この正当性の追求のために、「全力を挙げて阻止する」しかないことを、苦痛の取り組みの中で、あらためて日本中に、そして沖縄県民に、示すことになったとも言えるのではないか。
 後は、どれだけこの正当性を支えることができるのかを、こちら側が問われているに過ぎないのだろう。

 それにしても、「辺野古が唯一の解決策」や「恫喝」という言葉の持つレベルと「魂の飢餓感」という言葉の醸し出す世界の違いに本当に驚く。
 それは、「お互い別々に今日まで生きてきたんですね。70年間」という言葉を、自分の痛みとして受け取れない人間の未発達な部分を抱えてしまった人たちが、日本という国を動かしている実態に改めて気づかされることにもなる。


 以下、沖縄タイムスと琉球新報の引用。






沖縄タイムス 社説-[辺野古協議決裂]取り消しも 県民投票も-2015年9月8日


 いったい何のための集中協議だったのか。一国の総理が最終協議の場に参加したのはどのような理由からか。

 名護市辺野古での新基地建設作業を1カ月中断し、互いの主張をぶつけ合ってきた政府と県の集中協議は7日、論点がかみ合わないまま決裂した。

 この間、政府に米軍普天間飛行場の辺野古移設を見直す気配はまったくなく、翁長雄志知事が「魂の飢餓感」と例えた県民の心情も理解されることがなかった。最終協議で菅義偉官房長官が口にしたのは「工事再開」である。

 政府から提案のあった集中協議に、かすかな期待がなかったわけではない。しかし終わってみれば、安保法案、原発再稼働、戦後70年談話などの重要課題を一つずつ処理していく時間稼ぎのために辺野古を利用したとしか思えない内容である。いくら協議を重ねた形をとっても、沖縄の民意を軽んじている。

 最終協議に出席した安倍晋三首相だが、その前日に放送された民放の番組で「辺野古以外はない」と発言している。県民をもてあそぶような態度だ。

 問題解決に向け協議するとしながら、話し合いの土壌は、初めからなかったことになる。

 5回の協議で示されなかったのは「なぜ辺野古なのか」「県外はどうなったのか」という県民の切実な疑問への説明である。

 集中協議で分かったことは「国が決めたんだから言うことを聞け」とばかりの相変わらずの強硬な姿勢だ。
    ■    ■
 沖縄側が求めていたのは、普天間の県外移設による危険性除去と、新基地建設断念による基地負担の軽減である。

 協議終了後、菅氏は「普天間の危険除去の認識は一緒だが、方法論の隔たりが埋まらなかった」と述べた。

 政府が繰り返す危険性除去は新基地建設のための方便でしかない。危険性除去を最優先させるなら、ここまで長期にわたって問題を引きずることはなかったはずだ。

 あたかもそれ以外の選択肢がないように「辺野古が唯一」との言い方も一種の世論誘導で、説得力がない。

 総理をはじめ何人もの閣僚が顔をそろえ、何回も集中的に話し合ったのに、何の解決策も見いだせない。問われなければならないのは、政府の問題解決能力ではないか。

 日米同盟が重要と考えるのなら、強力な政治的意思で選択肢を用意することは、困難であっても可能である。
    ■    ■
 国は辺野古海域で県が実施する潜水調査が終わり次第、移設作業を再開するという。

 翁長知事も前知事の埋め立て承認を取り消す手続きを進める意向だが、主導権を確保するためにも決定を急ぐべきだ。

 知事が承認を取り消せば、政府はすかさず取り消し処分の無効を申し立てるはずだ。法廷に持ち込まれるのは避けられない。

 沖縄側の主張の正当性を内外にどれだけアピールできるかが、これからの勝負となる。県民投票についても真剣に検討すべき時期である。


琉球新報社説-辺野古協議決裂 尊厳懸け粛々と取り消せ-2015年9月8日


 相手の話に耳を傾けて、違いや溝を埋めるために話し合い、一致点を見いだすよう努める。それが協議の意味のはずである。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を伴う新基地建設をめぐる県と安倍政権の集中協議は、完全な平行線をたどり、安倍晋三首相が出席した5回目で決裂した。
 協議全体を通して、安倍政権側は「辺野古が唯一の解決策」と呪文のように繰り返すばかりだった。木で鼻をくくったような言い分を翁長雄志知事が受け入れるか否かと迫るだけの構図は協議の名に値しない。国策の押し付け、恫喝(どうかつ)に等しい。決裂の責任は安倍政権にある。
 安倍首相や菅義偉官房長官が「知事に理解を求める」という言葉をいくら繰り出しても、実態は沖縄を屈従させるしかないという差別をまとった強権的姿勢と思考停止があぶり出されただけだった。
 米軍による土地強奪の陰影が濃い沖縄戦後史、「抑止力」など新基地の必要性をめぐる虚構、新基地拒否の強固な民意など、翁長知事は意を尽くして沖縄の立場を説いた。だが、沖縄の尊厳を懸けた知事の主張に対し、安倍政権は徹頭徹尾、聞き置くだけにとどめた。
 仲井真弘多前知事による埋め立て承認にしがみつくばかりで、その後の名護市長選、名護市議選、天王山の県知事選、衆院選で新基地拒否の候補者が圧勝したことについては一度も言及はなかった。
 翁長知事に理解を得る努力をした形跡を残すアリバイにし、国民を抱き込むことはやめた方がいい。安保関連法案審議からうかがえる、国民を見下した政権の品格を一層おとしめるだけである。
 菅官房長官は埋め立て作業の再開を知事に通告した。1カ月間の集中協議の行方に気をもんでいた県民は逆に視界が開け、すっきりしたのではないか。沖縄にとって駄目なものは駄目なのだと。
 翁長知事は「全力を挙げて阻止する」と即座に対抗した。さらに「お互い別々に今日まで生きてきたんですね。70年間」と述べ、沖縄を同胞扱いしない政権を痛烈に批判した。県民の心情を代弁していよう。
 知事は粛々と埋め立て承認の取り消しに踏み出せばいい。国連での演説、県民投票など、新基地建設を止めるあらゆる手段を国内外で緻密に駆使してほしい。民主主義的正当性を深く認識し、誇りを懸けて抗(あらが)う県民が支えるだろう。


by asyagi-df-2014 | 2015-09-09 05:28 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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