意図的で傲慢な「法的安定性は関係ない」発言を許してはいけない(2)。

 礒崎陽輔首相補佐官は、「考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない」と講演で語った。
このことを、朝日新聞と毎日新聞は2015年7月29日、社説で取りあげた。
この社説を要約してみた。

(主張)
・毎日新聞
①これが政権の本音では。
・朝日新聞
①権力が恣意(しい)的に憲法を操ることは許されない。政権は根本から考えを改めねばならない。

(問題点)
・毎日新聞
①憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法案は憲法違反との批判が高まっているのに、法秩序の安定性など関係ないと言っているかのようだ。この問題は法案の本質に関わる。見過ごすことはできない。
②そもそも政府による憲法解釈の変更はどこまで許されるのだろうか。全く変更してはいけないわけではないが、それには限界がある。従来の憲法解釈との論理的整合性と法的安定性が保たれている必要がある。政府が便宜的、意図的に憲法解釈を変更すれば、国民が憲法を信頼しなくなるからだ。だからこそ、安倍政権は今回の憲法解釈変更について、1972年の政府見解などを根拠に「これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性、法的安定性は保たれている」という理屈を立て、合憲性を主張してきたはずだ。礒崎氏の発言はそういう政権の見解とも矛盾している。
③礒崎氏は法案の成立について「9月中旬までに終わらせたい」とも語った。参院審議をも軽視している。
④この問題が深刻なのは、発言が、安倍政権の本音ではないかと疑われることだ。憲法学者が法案は違憲と指摘した際、自民党幹部から「学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安保条約もない。平和と安全が保たれていたか疑わしい」と反発が出た。安保政策は憲法に優先すべきで、法秩序が犠牲になっても構わないとでも言いたいのだろう。今回の発言はこれに通じるものがある。安倍晋三首相はきのう、礒崎氏の発言について「憲法とともに安保環境の変化を踏まえる必要があるとの認識を示した発言だ」とかばい、民主党からの更迭要求を拒んだ。

・朝日新聞
①法案が「合憲か、違憲か」を左右するキーワードである法的安定性について、解釈変更を引っ張ってきた礒崎氏が「関係ない」と切り捨てたことになる。礒崎氏はきのう「おわび」をし、首相も「誤解を与えるような発言は慎むべきだ」と語ったが、法案が違憲であるとの疑いがますます濃くなったと言わざるを得ない。
②仮に法的安定性のない法案が成立したら、どうなるか。想定されるのは、自衛隊の海外派遣中に憲法の番人である最高裁が違憲判決を出したり、政権交代によって再び憲法解釈が変更されたりする可能性だ。不安定な立場のまま自衛隊員が海外で生命の危険にさらされていいはずがない。自衛隊がともに活動する相手国に対しても無責任ではないか。

 礒崎陽輔首相補佐官の意図的で傲慢な発言は、どうやら、「これが政権の本音」、「仮に法的安定性のない法案が成立したら、どうなるか」、という言葉に集約されそうだ。
 結論は、朝日新聞の「権力が恣意的に憲法を操ることは許されない。」ということだ。

 以下、朝日新聞及び毎日新聞の引用。






朝日新聞社説-「違憲」法案―軽視された法的安定性-2015年7月29日


 安全保障関連法案をめぐり、安倍首相の側近で法案作成にあたった礒崎陽輔首相補佐官の発言が、波紋を広げている。

 「考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない」と講演で語ったのだ。

 法的安定性とは何だろう。

 憲法や法律、その解釈はみだりに変更されないことで社会が安定する。国家権力はその範囲内で行動しなければならない。民主国家として、法治国家として当たり前のことだ。

 この法的安定性が改めて注目される背景には、安倍政権が踏み込んだ、集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更がある。

 政権は「憲法解釈上、行使できない」としてきた歴代内閣の見解を「行使できる」と百八十度転換。「それでも法的安定性は保たれる」としてきた。

 これに対し、多くの憲法学者や内閣法制局長官OBらは「それでは法的安定性は失われる」と指摘してきた。

 つまり、法案が「合憲か、違憲か」を左右するキーワードである法的安定性について、解釈変更を引っ張ってきた礒崎氏が「関係ない」と切り捨てたことになる。礒崎氏はきのう「おわび」をし、首相も「誤解を与えるような発言は慎むべきだ」と語ったが、法案が違憲であるとの疑いがますます濃くなったと言わざるを得ない。

 法的安定性を重んじる社会であればこそ、国民は、権力は憲法の下で動くという安心感、信頼感のなかで生活できる。権力が法的安定性を軽視することは法の支配に反し、憲法が権力を縛る立憲主義に反する。

 仮に法的安定性のない法案が成立したら、どうなるか。

 想定されるのは、自衛隊の海外派遣中に憲法の番人である最高裁が違憲判決を出したり、政権交代によって再び憲法解釈が変更されたりする可能性だ。

 不安定な立場のまま自衛隊員が海外で生命の危険にさらされていいはずがない。自衛隊がともに活動する相手国に対しても無責任ではないか。

 代表質問で民主党の北沢俊美元防衛相はこう訴えた。

 「日本の強さは、精強な自衛隊員の努力やたゆまぬ外交によってのみ、実現するのではありません。国家統治の柱である憲法の下、立憲主義と平和主義がしっかり機能してこそ、国民は団結し、諸外国も日本に信頼を寄せるのです」

 傾聴すべき意見である。

 権力が恣意(しい)的に憲法を操ることは許されない。政権は根本から考えを改めねばならない。


毎日新聞社説-安保転換を問う 首相補佐官発言-2015年07月29日 


 ◇これが政権の本音では

 安全保障法制を担当する礒崎(いそざき)陽輔首相補佐官から「法的安定性は関係ない」という、あきれた発言が飛び出した。憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法案は憲法違反との批判が高まっているのに、法秩序の安定性など関係ないと言っているかのようだ。

 この問題は法案の本質に関わる。見過ごすことはできない。

 礒崎氏は、5人いる首相補佐官の1人で、政府内で安保関連法案の作成に中心的に関わってきた。参院での審議入り前日の26日の講演で、集団的自衛権について「法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要な措置かどうかを気にしないといけない」と述べた。

 そもそも政府による憲法解釈の変更はどこまで許されるのだろうか。

 全く変更してはいけないわけではないが、それには限界がある。従来の憲法解釈との論理的整合性と法的安定性が保たれている必要がある。政府が便宜的、意図的に憲法解釈を変更すれば、国民が憲法を信頼しなくなるからだ。

 だからこそ、安倍政権は今回の憲法解釈変更について、1972年の政府見解などを根拠に「これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性、法的安定性は保たれている」という理屈を立て、合憲性を主張してきたはずだ。礒崎氏の発言はそういう政権の見解とも矛盾している。

 参院審議では、引き続き憲法と安保関連法案との整合性が中心的な課題になる。それなのに審議が始まろうという時、首相の周辺から憲法を頂点とする法秩序をないがしろにするような発言が飛び出した。

 礒崎氏は法案の成立について「9月中旬までに終わらせたい」とも語った。参院審議をも軽視している。

 この問題が深刻なのは、発言が、安倍政権の本音ではないかと疑われることだ。

 憲法学者が法案は違憲と指摘した際、自民党幹部から「学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安保条約もない。平和と安全が保たれていたか疑わしい」と反発が出た。安保政策は憲法に優先すべきで、法秩序が犠牲になっても構わないとでも言いたいのだろう。今回の発言はこれに通じるものがある。

 安倍晋三首相はきのう、礒崎氏の発言について「憲法とともに安保環境の変化を踏まえる必要があるとの認識を示した発言だ」とかばい、民主党からの更迭要求を拒んだ。

 礒崎氏は発言を撤回すべきだが、仮に撤回したとしても、この政権が憲法を軽んじているという疑念は消えない。


by asyagi-df-2014 | 2015-07-30 09:58 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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