原発問題-川内原発再稼働の動きを考える。

九州電力は、2015年7月7日、川内原発1号機の原子炉に核燃料を装填(そうてん)する作業を始め、8月中旬の再稼働を目指している。
 川内原発再稼働に関しての各地方紙の7月8日の社説等の取りあげ方は、少ないものになった。
 今回の川内原発再稼働の問題は、北海道新聞の「そもそも規制委は、審査が安全を保証するものではないと主張する。一方で、政府は安全のよりどころを規制委に求めている。結局、過酷事故時の責任の所在はどこにあるのか。こうした根本に関わる問題を曖昧にしたまま、安易に再稼働してはならない。」、京都新聞の「原発の『安全神話』が崩壊して4年。国民の6割が再稼働に反対し、安全性への不安は根強い。それなのに多大な犠牲を払った教訓を顧みない昨今の原発回帰に危惧を抱かざるを得ない。政府や電力業界は再稼働には重い責任が伴うことを肝に銘じるべきだ。」、という主張に言い当てられている。
 今回の各紙の主張は、次のようになっている。

(主張)
(1)南日本新聞社
・福島事故の教訓は原発に安全神話はなく、事故が現実に起こり得ることを示したことだ。重い責任を忘れてはなるまい。
(2)北海道新聞社
・そもそも規制委は、審査が安全を保証するものではないと主張する。一方で、政府は安全のよりどころを規制委に求めている。結局、過酷事故時の責任の所在はどこにあるのか。こうした根本に関わる問題を曖昧にしたまま、安易に再稼働してはならない。
(3)京都新聞
・原発の「安全神話」が崩壊して4年。国民の6割が再稼働に反対し、安全性への不安は根強い。それなのに多大な犠牲を払った教訓を顧みない昨今の原発回帰に危惧を抱かざるを得ない。政府や電力業界は再稼働には重い責任が伴うことを肝に銘じるべきだ。
(4)高知新聞
・政府は2030年の原発の電源構成比率を20~22%とすることを決めた。原子力ゼロの現状から、時計の針は戻ることになる。川内原発の再稼働はその布石ともいえる。
電力の安定供給はもちろん重要だが、川内原発が突破口のようになり、再稼働が加速度的に進むことはあってはならない。
 
 川内原発再稼働の具体的な問題点について、「規制基準への対応が必要になったため4年以上止まっていたことへの適切な対応」、「避難訓練の問題」、「特に、要援護者への非難対策が不十分」、「民意を置き去りに『原発回帰』が進むことの危惧」、「30年超運転の認可」、「火山リスクの再検証」、等が各紙の社説の中で挙げられている。
  各紙は、次のようにそれぞれ指摘する。

(問題点)
(1)南日本新聞社
・ただ、世論の多くは再稼働に反対している。住民の不安を置き去りに再稼働を急いではならない。安全対策になお万全を尽くすべきだ。
・川内1号機が停止したのは定期検査入りした2011年5月だ。定検に伴う停止は通常、数カ月だが、規制基準への対応が必要になったため4年以上止まっていた。
 このため、蒸気系配管からの漏えいなどトラブル発生の恐れを指摘する声もある。動かしてみなければ分からないのであれば、心もとない。
・気掛かりなのは、事故に備えた避難訓練をしないまま再稼働に突き進んでいることだ。県は原子力防災訓練を見送る方針で、開催時期も決まっていない。県は「九電が規制委の使用前検査手続き中で対応が困難」と説明する。このままでいいのだろうか。9市町が策定した避難計画を現場で検証できず、訓練を通じて改善点を見いだせない。問われているのは避難計画の実効性だ。
・ 県が先月末、川内原発の重大事故時の避難輸送に関して県バス協会などと結んだ協定にも同じ問題がある。協定締結は一歩前進と評価できる。だが、運転手の放射線防護研修などは手つかずのままだ。線量計の受け渡し方法やバスの除染場所など具体的に詰めなければならない。
(2)北海道新聞社
・政府には、装填という新段階に踏み込んだのを機に、原発再稼働を加速させる思惑があるようだ。だが、4年も動いていない原発だ。運転に対する住民の不安は簡単に拭い去れまい。原発再稼働への反対、慎重論が根強い中、民意を置き去りに「原発回帰」が進むことを危惧する。
・川内1号機は福島事故後の2011年5月に定期検査入りして以降、停止したままだ。
これだけ長期に止まった場合、蒸気系配管からの漏えいなどのトラブルが発生する恐れも指摘されている。スケジュールありきで進めることは許されない。
・運転に向けた作業が大詰めを迎えているというのに、事故時の安全対策も依然として不十分だ。例えば、バスを使った住民の避難である。鹿児島県は先月、県バス協会などと避難協定を結び、バスや運転手の確保にはめどが立った。だが、実効性のある避難訓練などはこれからだ。
・住民の懸念に向き合う姿勢にも問題がある。県と立地する薩摩川内市は再稼働に同意しているが、鹿児島県内や他県の自治体の議会では、運転を前に説明会の開催を求める動きが広がっている。九電は要請に応じない構えのようだが、誠意を持って対応するべきだ。
・運転開始から30年を超えている川内1号機は、機器劣化などを踏まえた保守管理について、規制委から認可を得なければならない。しかし、それが再稼働までに間に合わない可能性もあるという。規制委は認可が運転後でも法令上は問題ないとしているが、それでは見切り発車というしかない。
(3)京都新聞
・川内1号機は営業運転開始から31年が経過し、30年を超えて運転する場合、別途、規制委の認可が必要だ。だが機器の劣化評価など審査が遅れ、再稼働までに間に合わない可能性がある。30年超運転の認可は再稼働後でも法令上は問題ない、としている規制委の対応は解せない。審査完了前の再稼働は安全性をおろそかにした「見切り発車」と言わざるを得ない。
・1号機は福島事故の2カ月後に定期検査入りで停止し、新規制基準への対応が必要になり、4年以上止まっていた。長期間の停止によって蒸気系配管からの漏えいなどさまざまなトラブルの発生を懸念する指摘もある。一層入念な点検が欠かせない。
・政府が「世界最高水準」と胸を張る新規制基準だが、万全ではない。特に川内原発は火山が集中する地域にもかかわらず、噴火による火砕流や降灰へのリスクを過小評価していると批判されている。桜島や口永良部島(くちのえらぶじま)などで噴火が続いており、火山リスクの再検証が必要ではないか。新規制基準の対象となっていない自治体の住民避難計画も要支援者対策など課題が残る。住民の不安を拭えぬまま再稼働を急ぐのは許されない。
(4)高知新聞
・政府は、この新規制基準を世界最高水準と自負するが、項目によっては欧米の方が高い基準を持つ。安全性の担保に疑問を投げ掛ける専門家は少なくない。しかも、原子力規制委は「『絶対安全』とは言わない」と繰り返している。
・周辺自治体が策定した避難計画も実効性に課題がある。国の審査対象にはなっておらず、特に要援護者対策が不十分と指摘されている。
・5月の北海道電力泊原発の審査会合では、原子力規制委が、過去の大地震で原発周辺が隆起した説を退けたことに対し、規制委の断層調査団メンバーが「明らかに不適切」と批判する論文を科学誌に発表している。こうした事例からも、再稼働判断は短期間では難しいことが分かる。

 結局、川内原発の再稼働は、「原発の『安全神話』が崩壊して4年。国民の6割が再稼働に反対し、安全性への不安は根強い。それなのに多大な犠牲を払った教訓を顧みない昨今の原発回帰に危惧を抱かざるを得ない。政府や電力業界は再稼働には重い責任が伴うことを肝に銘じるべきだ。」(京都新聞)ということに尽きる。
 「3.11」で暴露された日本という国の無答責の体質は、少しも改善されていない。
 だとしたら、再稼働にたどり着く理屈は成り立たない。
 また、「川内原発が突破口のようになり、再稼働が加速度的に進むことはあってはならない。(京都新聞)」ことは言うまでもない。

 以下、各新聞社社説の引用。







南日本新聞-[川内核燃料装填] 住民不安は置き去りか-2015年7月8日


 九州電力は、川内原発1号機の原子炉に核燃料を装填(そうてん)する作業を始めた。来月中旬の再稼働を目指している。

 新規制基準の適合性審査をクリアした原発で、核燃料を装填するのは全国で初めてだ。福島第1原発事故から4年4カ月、再稼働に向けた手続きは大詰めを迎えた。

 ただ、世論の多くは再稼働に反対している。住民の不安を置き去りに再稼働を急いではならない。安全対策になお万全を尽くすべきだ。

 九電によると、原子力規制委員会の検査で問題がなければ、8月10日ごろに原子炉を起動し、13日前後に発電と送電を開始して再稼働する想定だ。

 川内1号機が停止したのは定期検査入りした2011年5月だ。定検に伴う停止は通常、数カ月だが、規制基準への対応が必要になったため4年以上止まっていた。

 このため、蒸気系配管からの漏えいなどトラブル発生の恐れを指摘する声もある。動かしてみなければ分からないのであれば、心もとない。

 宮沢洋一経済産業相は閣議後の会見で「やっとここまで来たかとの思いだ」と述べた。再稼働を不安視する地元の思いとはずれがある。

 宮沢氏は昨年11月、伊藤祐一郎知事との会談で原発事故の際に「国が関係法令に基づき責任を持って対処する」と説明した。

 だが、大見えを切った割に、安心安全につながる政策は見えてこない。半径30キロ圏の自治体の避難計画も地元任せだ。

 気掛かりなのは、事故に備えた避難訓練をしないまま再稼働に突き進んでいることだ。県は原子力防災訓練を見送る方針で、開催時期も決まっていない。

 県は「九電が規制委の使用前検査手続き中で対応が困難」と説明する。

 このままでいいのだろうか。9市町が策定した避難計画を現場で検証できず、訓練を通じて改善点を見いだせない。問われているのは避難計画の実効性だ。

 県が先月末、川内原発の重大事故時の避難輸送に関して県バス協会などと結んだ協定にも同じ問題がある。

 協定締結は一歩前進と評価できる。だが、運転手の放射線防護研修などは手つかずのままだ。線量計の受け渡し方法やバスの除染場所など具体的に詰めなければならない。

 福島事故の教訓は原発に安全神話はなく、事故が現実に起こり得ることを示したことだ。重い責任を忘れてはなるまい。


北海道新聞-川内核燃料装填 不安は拭えないままだ-2015年7月8日


 九州電力がきのう、川内原発1号機(鹿児島県)の原子炉に核燃料を装填(そうてん)する作業を始めた。必要な検査を実施のうえ、来月中旬の再稼働を目指すという。

 政府には、装填という新段階に踏み込んだのを機に、原発再稼働を加速させる思惑があるようだ。

 だが、4年も動いていない原発だ。運転に対する住民の不安は簡単に拭い去れまい。原発再稼働への反対、慎重論が根強い中、民意を置き去りに「原発回帰」が進むことを危惧する。

 九電が始めたのは、核燃料計157体を核燃料プールから移動し、装填する作業だ。終了まで4日程度かかる見通しである。

 川内原発は昨秋、原子力規制委員会から「合格証」を受け、九電が再稼働の準備をしてきた。予定通りなら、新規制基準に適合した原発として初の運転再開となる。

 しかし、川内1号機は福島事故後の2011年5月に定期検査入りして以降、停止したままだ。

 これだけ長期に止まった場合、蒸気系配管からの漏えいなどのトラブルが発生する恐れも指摘されている。スケジュールありきで進めることは許されない。

 運転に向けた作業が大詰めを迎えているというのに、事故時の安全対策も依然として不十分だ。

 例えば、バスを使った住民の避難である。鹿児島県は先月、県バス協会などと避難協定を結び、バスや運転手の確保にはめどが立った。だが、実効性のある避難訓練などはこれからだ。

 住民の懸念に向き合う姿勢にも問題がある。県と立地する薩摩川内市は再稼働に同意しているが、鹿児島県内や他県の自治体の議会では、運転を前に説明会の開催を求める動きが広がっている。

 九電は要請に応じない構えのようだが、誠意を持って対応するべきだ。

 運転開始から30年を超えている川内1号機は、機器劣化などを踏まえた保守管理について、規制委から認可を得なければならない。しかし、それが再稼働までに間に合わない可能性もあるという。

 規制委は認可が運転後でも法令上は問題ないとしているが、それでは見切り発車というしかない。

 そもそも規制委は、審査が安全を保証するものではないと主張する。一方で、政府は安全のよりどころを規制委に求めている。

 結局、過酷事故時の責任の所在はどこにあるのか。こうした根本に関わる問題を曖昧にしたまま、安易に再稼働してはならない。


京都新聞-川内再稼動へ  「見切り発車」は解せぬ-2015年7月8日

 九州電力川内原発1号機(鹿児島県)できのう、核燃料の装塡(そうてん)作業が始まり、運転再開に向けた準備は大詰めを迎えた。
 東京電力福島第1原発事故を踏まえ一昨年7月に施行された新規制基準による初の原発再稼働となる。政府や九電は夏の電力需要期に間に合う再稼働へ前のめりだが、安全性を軽視してはならない。
 原子力規制委員会は昨年9月、他の原発に先駆け、川内1、2号機に対し、地震や津波、テロを含めた過酷事故への備えを強化した新規制基準の適合を認めた。燃料装塡後も規制委が検査を継続するが、問題がなければ来月13日ごろに再稼働する予定という。
 川内1号機は営業運転開始から31年が経過し、30年を超えて運転する場合、別途、規制委の認可が必要だ。だが機器の劣化評価など審査が遅れ、再稼働までに間に合わない可能性がある。30年超運転の認可は再稼働後でも法令上は問題ない、としている規制委の対応は解せない。審査完了前の再稼働は安全性をおろそかにした「見切り発車」と言わざるを得ない。
 さらに1号機は福島事故の2カ月後に定期検査入りで停止し、新規制基準への対応が必要になり、4年以上止まっていた。長期間の停止によって蒸気系配管からの漏えいなどさまざまなトラブルの発生を懸念する指摘もある。一層入念な点検が欠かせない。
 政府が「世界最高水準」と胸を張る新規制基準だが、万全ではない。特に川内原発は火山が集中する地域にもかかわらず、噴火による火砕流や降灰へのリスクを過小評価していると批判されている。桜島や口永良部島(くちのえらぶじま)などで噴火が続いており、火山リスクの再検証が必要ではないか。新規制基準の対象となっていない自治体の住民避難計画も要支援者対策など課題が残る。住民の不安を拭えぬまま再稼働を急ぐのは許されない。
 国内の原発は一昨年9月以降、全て停止している。政府や電力業界は電力不足の恐れを挙げて再稼働に躍起だが、仮に川内原発の再稼働が秋口までずれ込めば2年連続で「原発ゼロの夏」を乗り切ることになる。それを避けたい政府や業界の焦りが垣間見える。
 原発の「安全神話」が崩壊して4年。国民の6割が再稼働に反対し、安全性への不安は根強い。それなのに多大な犠牲を払った教訓を顧みない昨今の原発回帰に危惧を抱かざるを得ない。政府や電力業界は再稼働には重い責任が伴うことを肝に銘じるべきだ。


高知新聞-【核燃料装填】再稼働への不安は根深い-2015年07月08日


 鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発1号機で核燃料の装填作業が始まった。今後の作業や検査に問題がなければ、8月にも発電を開始する予定だ。

 全国で原発が停止して約3年。東京電力福島第1原発事故を教訓に策定された新規制基準の下、ついに原発が再稼働に入る。

 だが、周辺住民はもちろん、国民の原発不安は根深いことを強調しておきたい。世論調査でも、多くが再稼働に反対している。

 川内原発は薩摩川内市内にあり、半径30キロ圏内の9市町に約21万人が暮らす。1、2号機は昨年9月に新規制基準による審査に合格していた。
 しかし、安全性も防災対策も責任の所在は曖昧と言わざるを得ない。

 政府は、この新規制基準を世界最高水準と自負するが、項目によっては欧米の方が高い基準を持つ。安全性の担保に疑問を投げ掛ける専門家は少なくない。しかも、原子力規制委は「『絶対安全』とは言わない」と繰り返している。

 周辺自治体が策定した避難計画も実効性に課題がある。国の審査対象にはなっておらず、特に要援護者対策が不十分と指摘されている。

 東日本大震災の大きな教訓は、自然災害を過小評価したことだった。安全神話の崩壊に衝撃を受けた国民の疑問や不安が強いのは当然である。政府も電力会社も引き続き、国民の声に真摯(しんし)に向き合うべきだろう。

 鹿児島地裁が今年4月、住民の再稼働差し止め請求を退けた仮処分決定で「巨大噴火が起きる可能性は十分に小さい」としたが、火山学者から「事実誤認」との批判が出ている。

 5月の北海道電力泊原発の審査会合では、原子力規制委が、過去の大地震で原発周辺が隆起した説を退けたことに対し、規制委の断層調査団メンバーが「明らかに不適切」と批判する論文を科学誌に発表している。

 こうした事例からも、再稼働判断は短期間では難しいことが分かる。

 政府は2030年の原発の電源構成比率を20~22%とすることを決めた。原子力ゼロの現状から、時計の針は戻ることになる。川内原発の再稼働はその布石ともいえる。

 電力の安定供給はもちろん重要だが、川内原発が突破口のようになり、再稼働が加速度的に進むことはあってはならない。


by asyagi-df-2014 | 2015-07-09 07:20 | 書くことから-原発 | Comments(0)

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