給食未納を、給食停止に結びつけてはいけない。

 「給食停止、やり過ぎか 埼玉・北本市『未納なら弁当を』」(2015年7月4日)という朝日新聞の記事を見て、驚きを隠せない。
 「苦渋の選択」という言葉が理由として踊るとき、そこには常に、判断を下す側の奢りがある。
 ここでは、「『有料』なものに相当額の支払いをするのは社会のルール」という理屈が支える、懲罰を重視した「管理」を最優先させた発想である。その背景には、「評価制度」がちらつく。というのは、「未納金」というものは、教育をどのように捉えるかという理念を失えば、見易い安易な指標になるからである。

 この問題の対応については、朝日新聞も触れている「全国のほとんどの学校は、給食費が未納でも給食を提供している。福岡市教委健康教育課の高着(こうちゃく)一孝課長は『給食は教育の一環として実施している。給食の提供は市の責任で、未納を理由に食べさせないことは考えていない』という。」方法が、多くの所でとられてきている。
 また、「生活保護や就学援助を申請していないからといって『支払い能力がある』と考えるのは短絡的だ。援助を申請できない事情を抱える保護者もいる。滞納を続ける家庭は、子どもが育つ環境として何らかのリスクがある可能性がある。学校や行政は懲罰的な対応ではなく、滞納を福祉による支援が必要なシグナルととらえる必要がある。」(鳫(がん)咲子・跡見学園女子大准教授)という指摘こそ、教育の現場では、重要である。
 少なくとも、この問いかけは、この問題に関わってきた人たちにとっての基本的な考え方であったはずである。

 以下、朝日新聞の引用。






朝日新聞-給食停止、やり過ぎか 埼玉・北本市「未納なら弁当を」-2015年7月4日


 学校給食費の未納が3カ月間続いたら、7月から給食の提供を停止します。その間は弁当を持参させてください――。埼玉県北本市の中学校が6月、保護者に通知を出したところ該当する43人全員が納付するか、納める意思を示した。学校のやり方に「ほかの家庭は払っているのだから当然だ」という声があがる一方で、「親の責任を子どもにおしつけるのはやり過ぎだ」との声もあがる。

■「苦渋の選択」通知で効果

 未納家庭の生徒への給食停止を決めたのは、北本市に四つある全市立中学校。生徒1人あたり月4500円の給食費の滞納総額は、4~6月分だけで約180万円(一部未納も含む)に上る。計画通りに食材購入ができなくなる恐れが出たため、4校の校長は「未納額がこれ以上膨らむ前に手を打とう」と措置に踏み切った。

 同市は、給食費の管理を各校に任せる「私会計」方式をとる。未納の家庭に担任教諭が訪問し、生活が苦しければ給食費などが支給される就学援助の仕組みを説明したり、「一部だけでも納めて」と求めたりしてきた。それでも応じない未納の43人について、学校は「払えるのに払わない」事例だと判断した。

 6月、保護者に配布した通知には「給食を停止する際にはお子様にも告知する」「『有料』なものに相当額の支払いをするのは社会のルール」などと明記した。すると、6月末までに全家庭が納付するか、納める意思を示した。このため、7月も引き続き全生徒に給食を提供している。

 市教委によると、給食費未納問題は10年近く前から続いてきた。1年以上納めないまま卒業した例もあるという。元校長は、卒業生宅を督促に訪れた際、母親から「払えないのよ」と財布をたたきつけられたという。

 4校の校長は法的措置をとるよりもまず、通知を出して解決をはかることにした。市教委は「通知の効果があったのは良かったが、できれば避けたい苦渋の選択だった」とする。弁当を持参させれば、未納だとほかの生徒にもわかるからだ。

 通知後、市教委には20件近い意見が寄せられた。ほとんどが「支払うのが当然だ」と理解を示す声だったという。だが、市内の中学2年生女子の母親(46)は「子どもに罪はないのに、親の責任を押しつけるようで、やり過ぎだ」と話す。

■ほとんどの学校、未納でも提供

 全国のほとんどの学校は、給食費が未納でも給食を提供している。福岡市教委健康教育課の高着(こうちゃく)一孝課長は「給食は教育の一環として実施している。給食の提供は市の責任で、未納を理由に食べさせないことは考えていない」という。

 同市は2008年度の累積滞納金が約1億9700万円に膨らんだ。09年9月、政令指定市で初めて、一般会計に予算計上して自治体で一括管理する公会計方式にし、保護者は口座振替で市に給食費を納める仕組みにした。

 また、市教委には未納者に対応する専従職員が6人いる。督促しても納付されない場合は法的措置をとる。昨年度、市が裁判所に支払い督促を申し立てたのは53件。滞納額が50万円を超え、市が支払いを求めて裁判所に提訴したのは4件。うち計36件で納付の誓約がなされた。

 対策の強化で、前年度までに累積した未納金の収納率は09年度の10・7%から13年度は14・7%に改善。しかし、給食費の値上げもあり、13年度の累積滞納金は2億8692万円と、公会計化前より膨らんだ。

 文部科学省が全国の公立小中学校583校を抽出して行った調査では、12年度の未納者の割合は0・9%。法的措置をとった学校は1・1%あった。完全給食を実施する公立小中学校(約2万9千校)全体での未納額は推計21億円余りに上る。

 今年度も、群馬県高崎市が4月、約30万円を滞納している1世帯を提訴。埼玉県川越市が今月2日、約6万5千円を滞納している1世帯を提訴した。

 文科省は1月、各都道府県教委などに対し、未納者には就学援助などの活用を奨励することや、やむを得ず法的措置をとった過去の事例も参考に適切な対応をとることなどを通知した。(川崎卓哉、三島あずさ)

■懲罰的対応ではなく支援を

《鳫(がん)咲子・跡見学園女子大准教授(行政学)の話》 生活保護や就学援助を申請していないからといって「支払い能力がある」と考えるのは短絡的だ。援助を申請できない事情を抱える保護者もいる。滞納を続ける家庭は、子どもが育つ環境として何らかのリスクがある可能性がある。学校や行政は懲罰的な対応ではなく、滞納を福祉による支援が必要なシグナルととらえる必要がある。

■保護者と信頼関係築く必要

《教育評論家の尾木直樹さんの話》 公立中学校の教員だった経験から、子育ての能力や責任感に欠けるなど様々な保護者がいるのは分かる。ただ、どんな親や子どもにも、きちんと対応していくのが公立学校だ。教員は部活などに費やす時間が長すぎて、保護者と十分なコミュニケーションをとって信頼関係を築けていない。十分な対応ができるようにするためには、働き方も見直すべきだ。


by asyagi-df-2014 | 2015-07-04 08:44 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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