本からのもの-「慰安婦」問題と戦時性暴力

著書名;「慰安婦」問題と戦時性暴力
著作者;高良沙哉
出版社;法律文化社


 高良紗哉の力作である。
 全体をこのくくりで書くことは充分にはできない。
 ここでは、「第3章『慰安婦』訴訟」からだけを、少し抜粋する。

 高良は、「慰安婦」訴訟の意義について、「重要なことは、裁判における被害事実の認定から、第二次世界大戦中の日本軍による性暴力の様子が、明らかになったことである。」と、説く。
 高良は、訴訟によって確定された「慰安婦」制度について、「『慰安婦』制度は、日本の公娼制度を基礎として、現地女性の強姦防止や、軍人の性病罹患による兵力減退の防止、軍人のストレスや不満の解消などの目的の下に、日本軍によって計画され、管理され、遂行された組織的性暴力のシステムであった。」と、する。
 また、その特徴について、「『慰安所』の管理や設備等に違いがあったとしても、軍隊の方針として、軍人の『慰安』のために、女性を一定期間監禁し、繰り返し繰り返し、性行為を強制する、日本軍『慰安婦』制度の特徴があらわれている。」と、説明する。
さらに、「慰安所」の外における性暴力を「性的拷問」と位置づけ、「女性たちは、『女性である』という理由で、『性』に対する執拗な拷問を受け、名誉を毀損するような性的拷問やその羞恥心や自尊心を貶める精神的虐待や、家族や妊婦の虐殺を目撃させられて、精神的ショックを受けるなど、精神的、身体的、性的拷問を受けた。」と、押さえる。
 そして、日本軍に特徴的であったのは、「『慰安所』の存在が、『慰安所』外での大量強姦を誘発し、促進したことである。『慰安所』内で培われた、異民族女性に対する差別と、暴力的な性行為の容認は、『慰安所』の外での異民族女性に対する、残虐な大量強姦を許容し、促進することにつながった。」と、指摘する。
 高良は、この間の「慰安婦」訴訟の意義について、「日本軍『慰安婦』訴訟において明らかになった被害の実態は、『慰安所』内の性暴力と、それと密接に関係する『慰安所』外の性暴力、軍隊の組織的、構造的暴力の実態を明らかにする点で、意義あるものであったといえる。」と、まとめる。
 もちろん、この訴訟における課題、例えば「除斥期間」の問題点等についてもきちんと押さえ、「訴訟は、女性たちが敗訴したまま、一応の区切りを迎え、その後も日本政府による被害救済は進んでいない」と、きちっと結んでいる。

 高良は、女性国際戦犯法廷(以下、「民衆法廷」とする)についても詳細に触れる。ここではいくつかのことについて抜粋する。
 高良は、「慰安婦」の募集について、この「民衆法廷」で認定されたことについて、次のようにまとめた。
①「軍慰安所従業婦等募集に関する件」(1938年3月4日)等の証拠に基づいて、「慰安婦」募集についての日本軍の責任を認定した。
②台湾軍司令官安藤利吉から陸軍大臣東条英機に宛てられた電報、「台電第602号」(1942年3月12日)によって、安藤利吉と東条英機が、直接ないし間接的に関与したこと、そして業者の選定に憲兵が関与していたことを認定した。
③連合国による報告書、アメリカ戦時情報局心理作戦班「日本人捕虜尋問報告第49号」(1944年11月30日)および、東南アジア翻訳尋問センター「心理戦尋問報告第2号」(1944年11月30日)に基づいて、日本軍が性奴隷制の設置と運営に直接、間接的に関与したことが裏づけられるとして、東京裁判当時、連合国側が「慰安婦」制度に関する証拠をすでに得ていたと認定した。また、連合国の報告書は、日本軍が「慰安所」の利用規則を詳細に定めていたことも報告しており、これに基づき日本軍が、性奴隷制度の設置と運営に直接的、間接的に関与したと認定した。
 高良は、「民主法廷」が、「『慰安所』が『政府の最高レベルの許可』に基づく、日本軍将兵が利用するための『性奴隷施設』であったと認定した。」と、する。
 また、その設置目標について、「民主法廷」は、「『慰安所』の設置の主要な目的の1つは、現地女性の強姦を抑止することだった、しかし、『慰安所』は、むしろ『性暴力が容認される軍事的文化を反映かつ強化し、外界からより見えにくい形で性奴隷制度を制度化』した。性奴隷制の制度化は、『秘密裏に行われるか、性病を避ける事前策がとられた場合の強姦は容認され、奨励すらされる』ことを軍人たちに知らせることになった。当時の日本軍の関心事は、部隊に『慰安婦』を『適切に』【供給】し、『慰安婦』の出身地域や国際社会の『敵対的な反応を避ける』ことにあった。」と、した。

 こうして高良の本を振り返ってみると、なぜこの本を今選んだのかが分かる。
 「民主法廷」(2001年12月4日)の判決から、すでに14年の月日が経過しているにもかかわらず、日本という国が、この判決内容を活かしてないことに改めて気づかされる。 むしろ、状況は、悪くなっている。

 こうした時期に、もう一度きちっとこの問題を振り返るためには、最良の本の一つである。


by asyagi-df-2014 | 2015-06-30 05:44 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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