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平和と人権及び立憲主義を守るために。(2)

平和と人権及び立憲主義を守るために、2015年5月29日の日本弁護士連合会の声明(以下、「声明」とする)を、抜粋して再確認する。

 まず、何故反対しねければならないかということへの日弁連の痛烈な反省と当然の責務としての決意がある。
 「1949年9月1日に当連合会が設立された。1950年5月12日に当連合会は第1回定期総会を被爆地である広島市で開催し、それに引き続いて平和大会を開催して、次の平和宣言を採択した。」
 「日本国憲法は世界に率先して戦争を放棄した。われらはこの崇高な精神に徹底して、地上から戦争の害悪を根絶し、各個人が人種国籍を超越し自由平等で且つ欠乏と恐怖のない平和な世界の実現を期する。右宣言する。」
 だから、こう考える
「この宣言に表れているとおり、戦争を放棄した日本国憲法の恒久平和主義(憲法前文及び第9条)を徹底することは、当連合会の原点である。そして、その原点は、戦前において国が戦争への道を推し進めようとしているときに、弁護士及び弁護士会がそれに必ずしも十分な対応ができず、むしろそれを推し進める役割の一翼を担ってしまったことへの真摯な反省と痛切な教訓に基づくものである。」
  はっきりしているのは、こうした「決意」が必要な状況にまで、日本という国が追い込まれていると、日弁連が判断しているということである。

 「声明」は戦争の定義を次のように押さえる。
「国際社会は、戦争をめぐり、不正な攻撃への対抗等を目的とする『正義の戦争』だけが許されるとする『正戦論』から、戦争に訴える権利は国家の主権的自由であるとの考え方(無差別戦争観)を経て、戦争は違法であると考えるようになった(戦争放棄に関する条約(パリ不戦条約、1928年))。もっとも、そこで禁止される戦争は、『國家ノ政策ノ手段トシテノ戰爭』、すなわち侵略戦争を指し、自衛戦争は認められるなど全ての戦争を違法とするものではなかった。」
 また、国連憲章のもとでの集団的自衛権の扱いはあくまで暫定的な措置に過ぎないと次のように説明する。
 「第二次世界大戦の反省の下に制定された国際連合憲章(以下『国連憲章』という。)は、平和的解決義務を具体化し(国連憲章第2条第3項)、『武力による威嚇又は武力の行使』を原則として禁止し(国連憲章第2条第4項)、戦争の違法化を徹底した。しかしなお、国連が軍事的措置等をとるまでの間の暫定的な措置として、個別的又は集団的自衛の権利を害するものではないとされた(国連憲章第51条)。」

 続いて、「声明」は日本国憲法について、日本国憲法が果たしてきた「戦争の違法化の徹底」と「国連憲章を越える日本国憲法の徹底した恒久平和主義」の状況が、大きな転機を迎えさせられているという事実を指摘する。

 「声明は」、今回の安保法制等の何が問題であるかについて、次の指摘をする。
(1)従来の政府見解は、自衛のための実力の行使が認められるとしつつ、それはあくまでも、我が国が外国から武力攻撃を受けた場合にこれを排除することに限定していた。その上で、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力を持って阻止する集団的自衛権の行使は認められないとしていた。これにより、自衛隊が海外に出て戦争に参加するような積極的な武力の行使に歯止めをかけ(専守防衛政策)、我が国の安全保障法制の合憲性を保持しようとしてきたのである。
 これは、従来の憲法上は許されないとしてきた集団的自衛権の行使を「自衛のための措置」として認めるものであり、さらには「自衛のための措置」であれば国連の軍事的措置への参加も可能にしようとするものである。
(2)自衛隊の海外活動等に関連する法制を改変する法案は、地理的限定をなくして海外のあらゆる地域の戦闘行為を行っている現場近くまで自衛隊を派遣し、戦争等を遂行する米国及び他国軍隊への支援として、弾薬・燃料等の軍事物資の提供や輸送その他の役務の提供等を可能とするものである。
 これは外国で戦争をしている他国軍隊の武力行使に対する積極的協力であり、他国軍隊の武力行使と一体となり当該戦争に参加するに等しいものである。
(3)今般の法案では、平和協力活動の範囲を拡大するとともに「駆け付け警護」その他の任務遂行のための武器使用を認めようとするものである。また、自衛隊法を改変する法案等により、自衛隊の活動と権限を他国軍隊の武器等の防護等や在外邦人の救出活動にまで広げようとしている。これらの法案もまた、我が国が戦争や戦闘行為に陥る具体的危険を生じさせるなど、自衛隊の海外における武器の使用に道を開くものに他ならない。

 また、「声明」は、安全保障法制等を改変する法案が恒久平和主義に反する理由については、次のものとする。
(1)今般の安全保障法制等を改変する法案は、集団的自衛権の行使等を容認するばかりでなく、戦闘中である米国及び他国軍隊への後方支援として、自衛隊を海外のあらゆる地域へ、しかも戦闘地域まで派遣し、弾薬・燃料等の物品や自衛隊の役務を米国及び他国軍隊に提供することを可能とするものであり、また自衛隊の武器使用権限を拡大するものである。
(2)他国軍隊に戦闘地域で弾薬・燃料等を補給することは武力行使と一体化した戦争参加とみるべきものであり、相手国からの武力攻撃を受け、武力紛争へと発展する高度な危険を伴う。
(3)武器の使用権限の拡大も武力紛争のきっかけとなりかねない。

 さらに、「声明」は、日本国憲法の立憲主義に対する危機について、次のように押さえる。
(1)今般の安全保障法制等の改変に向けて、本閣議決定やその後の「日米防衛協力のための指針」の見直し作業、さらには与党協議が行われてきたが、その間、主権者である国民に対しては、十分な情報が与えられず、民意を反映させようとする努力も行われてこなかった。国民は、第189回通常国会が開会された後、安全保障法制等の改正案等が国会に提出されて初めて具体的な情報を得ることができた。
(2)しかし、政府は、恒久平和主義に反する安全保障法制等を改変する法案が国会に提出されるまで、主権者である国民に対して十分な説明を行わないまま、不透明な状況下で既成事実を積み重ねてきたのである。

 日本弁護士連合会が、こうした観点から、導き出した考え方は、次のものである。
Ⅰ.全世界の国民が平和的生存権を有することを確認し、国際紛争を解決する手段として戦争と武力行使を永久に放棄し、戦力の保持を禁じ、交戦権を否認している日本国憲法の下で、他国軍隊の武力行使に協力することは、平和的生存権を侵害し、憲法第9条に反し、到底許されないものである。
Ⅱ.政府の方針が、主権者への不十分な説明のまま、対外的に決定され、憲法改正手続を経ることなく、法律の制定、改廃によって憲法第9条の改変が事実上進められようとしている。これは立憲主義に反するものでもあり、到底容認することができない。

 日本弁護士連合会は、最終的に次の「結論」を宣言した。

 私たちは、1950年の第1回定期総会(広島市)に引き続いて開催された平和大会において、日本国憲法の戦争放棄の崇高な精神を徹底して、平和な世界の実現を期することを宣言した。私たちはこの決意を思い起こし、憲法の恒久平和主義や基本的人権の保障という基本原理及び立憲主義を守り抜くために、集団的自衛権の行使等を容認し自衛隊を海外に派遣して他国軍隊の武力行使を支援する活動等を認める、今般の安全保障法制等を改変する法案に強く反対するとともに、平和と人権、そして立憲主義を守る活動に国民と共に全力を挙げて取り組む。


 今は、平和と人権、そして立憲主義を守る活動に、日本国民の一人として繋がること。


by asyagi-df-2014 | 2015-06-15 06:07 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

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