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本からのもの-「国家の暴走」

著書名;国家の暴走
著作者;古賀茂明
出版社;角川新書


 こうした問題を扱うと、どうやら「安倍」研究に落ち着いてしまうが、「安倍晋三政権」の構造的問題と考えるべきではないかとも考えてきた。

 この本でも、次のくだりから始まる。

「あらゆる力を使って、自分の理念を世界の中で実現するのが正義だとする発想に立つと、『あらゆる力』の中には、強大な軍事力がなければいけないことになる。自衛のための軍事力ではなく、自国の価値観や利益を積極的に拡大していくための軍事力だ。安倍総理のお気に入りの言葉、『積極的平和主義』には、そういう意味が込められているのだろう。」

 当を得た説明である。
 この本の内容のすべてを受け入れることにはならないが、多くのことで極めて考え方を整理してくれる。また、細かい政策の理論書ではないので、結論は断定的で、これまたいささか激情的ではある。
 このことを分かって、自分で赤線を引いた箇所のいくつかを紹介する。

 「本当の『積極的平和主義』とは」では、まず「日米安保は片務条約ではない」ことについて次のように整理する。
(1)日米安保条約が本当に米国にとって一方的に不利な条約であるとしたら、そんな条約に米国がサインするわけがない。
(2)米国は、「安保条約を改定しよう」とは口が裂けても言わない。日米安保が非常に都合のよい条約だからだ。
(3)どこが有利なのかというと、沖縄の基地である。米国にとって沖縄の基地は、世界中に何百とある米軍基地の中でも非常に特殊な”素晴らしい”基地なのだ。
(4)その理由は次のことにある。①ほぼ、米軍の思うままに使える。基地周辺の管制権なども全部米軍が持っている.自国の領土と同じだ、②沖縄からグアムなど他の地域に米軍基地を移転する際には、「その費用を出します」とまで日本政府は言っている。
 日米両国が「辺野古新基地建設」を譲らない理由が、まさにこある。
 また、「『米国は尖閣を守ってくれる』という幻想」では、「今の米国の損得勘定では、中国と戦争をしたら失うものが非常に大きい。それは軍事的な打撃だけでなく、中国のマーケットを失うことによる打撃で、将来性をも勘案すれば、日本のマーケットを失うことより、その損失ははるかに大きい。」と分析し、そこにあるのは「集団的自衛権の行使は米国と一緒に中国と戦うためのもの、という幻想だ。」と、切ってみせる。
 結局、「最も大事なことは、他国と戦争をしないこと、日本が攻められないようにすることだ。」と、安倍総理の「軍事力拡充による積極手平和主義」を「全く違うもの」と否定する。そして、これに対置させるものとして、ヨハン・ガルトウングの「積極的平和」を示す。
 古賀流の「軍隊を引き連れて『悪い奴ら』を叩くことが積極的平和主義だというのは、とんでもない勘違いであり、あまりにも田舎者の発想である。」との表現は、一介の田舎者としても、そうだと頷く。

 「間違いだらけの雇用政策」では、現在の安倍晋三政権の政策を俯瞰する形で、次のように指摘する。

「今の安倍政権は、その『頑張り』の負担を、すべて国民に押しつけようとしている。企業を守らなければいけないから、残業代をタダにしましょう。競争に勝ち残らなければならないから、正規雇用を非正規雇用に変えてコストを下げましょう。企業には、国紗競争のために減税しましょう。消費者には、財政再建のために消費税で負担してもらいましょう。そうことを言っている。『何のための成長なのか』が忘れられ、まさに成長のための成長という成長市場主義になっている。これこそが、アベノミクスの最大の問題として議論されなければならない。」

 安倍晋三政権の「成長戦略」政策を批判してきた者としては、「何のための政策なのか。誰に向けての政策なのか」をやはり追求していく必要性を感じた。

 最後に、これからの日本のあり方について、古賀は次のように説く。

「どの国から見ても『日本はこれから世界のお手本になる。そういう国とは仲良くしておく方が得だ』『日本人の文化や生き方には共感を覚える。日本人とは仲良くしたい』と思えるような国になっていくためには、軍事力に莫大な税金を注ぎ込むようなことはせず、もちろん、局地的であっても戦争のようなことは起こさずに、経済・社会の改革をすすめることである。」

 そして、「総合評価で、天秤の傾きをもう一度日本に戻すためには、『成長のための改革はするけれど、戦争はしない国、日本』という方向を目指していくべきだ。」と、まとめる。
 「成長政策」をどのように捉えるのかについては異論があるとしても、「戦争はしない国、日本という方向」は、正しい。
 ともに闘っていくことが必要である。


by asyagi-df-2014 | 2015-05-26 08:53 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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