「安保関連法案」の閣議決定(2015.5.14)を考える。(1)

 2015年5月15日の閣議決定について、これまでと同様に、地方紙のこのことに関しての5月15日付の主張を、社説・論説から集めてみた。
 その題目は、下記のとおりである。

(1)北海道新聞社説-安保法案の閣議決定 平和主義を捨て去るのか
(2)河北新報社説-安保法制閣議決定/日米同盟偏重に懸念拭えず
(3)東奥日報社説-与野党で根源的な議論を/安保関連法案
(4)デーリー東北新聞社社説-安保法制 このまま通していいのか
(5)岩手日報論説-安保法案国会へ 焦点は野党の「抑止力」
(6)茨城新聞論説-安保法制 前提問う根源的議論を
(7)新潟日報社説-安保法案国会へ 平和の意味問い論戦せよ
(8)北國新聞社社説-安保法制を閣議決定 戦火交えぬための備えに
(9)福井新聞社説-安保法制大転換 これが平和守る道なのか
(10)神戸新聞社説-安保法案閣議決定/「不戦」の近いが守れるの
(11)山陽新聞社説-安保法案国会へ 国民の懸念を拭えるか
(12)山陰中央新報論説- 安保法制/根源的な議論が必要だ
(13 )高知新聞社説-【安保法案安倍政治を問う】 時の政権次第にならないか
(14)徳島新聞社説-安保法案閣議決定 「平和国家」が変容する
(15)西日本新聞社説-安保法案閣議決定 「平和法案」本質見極めよ
(16)宮崎日日新聞社越-安保法案閣議決定
(17)佐賀新聞-安保法制閣議決定
(18)南日本新聞社説-[安保法閣議決定] 政権の暴走に抗議する

 この中では、北國新聞以外の地方紙で、「政権の暴走に抗議する」とする安部晋三政権への不信感が読み取れる。
 例えば、それは、「平和主義を捨て去るのか」、「これが平和守る道なのか」、「『不戦』の近いが守れるの」、「日米同盟偏重に懸念拭えず」といった言葉に表現される。

 とにかく、まずは、国会での「根源的な議論」が必要である。
 ここでいう根源的とは、主権者のとっての充分な時間をかけるということである。

 以下、各新聞社の社説等の引用。(とにかく長いです。)






(1)北海道新聞社説-安保法案の閣議決定 平和主義を捨て去るのか-2015年5月15日


 憲法の平和主義を踏み外すものだと言わざるを得ない。

 安倍晋三政権は新たな安全保障関連法案を閣議決定し、きょう国会に提出する。

 歴代内閣が憲法上、許されないとしてきた集団的自衛権の行使に道を開き、他国軍への後方支援を地球規模に広げることが柱だ。

 海外での武力行使を禁じた憲法9条を踏まえ、専守防衛に徹してきた戦後の安保政策は根底から覆され、わが国が戦争に巻き込まれる可能性は格段に高まる。

 政府・与党は今国会の会期を夏まで延長し、成立を図る構えだ。

 事実上、改憲に等しい重大法案を、数の力で強引に押し通すようなことがあってはならない。

 安保政策と密接に関わる日本のあるべき国のかたちから各法案の細部に至るまで、徹底的な審議が不可欠だ。

■歯止めにならぬ要件

 新たな安保法制の最大の狙いは、中国の軍事的台頭に対抗するため、自衛隊の活動内容や範囲を大幅に拡大して日米同盟を強化することだ。その中核が集団的自衛権の行使を可能にする武力攻撃事態法改正案である。

 法案では、集団的自衛権が行使できる場合を「存立危機事態」と定義し、「国民の権利が根底から覆される明白な危険」があることなどを条件として明記した。

 「武力行使の新3要件」を条文に反映したもので、政府・与党はこれにより行使に歯止めがかかると説明している。

 だが中東ホルムズ海峡での機雷掃海が可能か否かで自民、公明両党の見解が割れたように、3要件自体が曖昧で、時の政権の判断次第で拡大解釈される恐れがある。

 そもそも昨年7月の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論付けた従来の政府見解を強引にねじ曲げたものだ。憲法が権力を縛る「立憲主義」の観点からも、あらためて厳しく問い直す必要がある。

■武力行使と一体化も

 他国軍の後方支援では、ほぼ同じ内容の2法案が提出される。

 一つは朝鮮半島有事を想定して米軍への後方支援を定めた周辺事態法改正案だ。名称を「重要影響事態法」に変えて地理的制約を撤廃し、米軍以外も支援する。

 もう一つは「テロとの戦い」などを名目に戦う他国軍への後方支援を随時、可能にする恒久法「国際平和支援法案」である。

 2法案の目的はそれぞれ「日本の平和」「国際社会の平和」と異なるが、いずれも活動範囲は「現に戦闘行為を行っている現場」以外なら地球上どこでもよく、従来認めていない弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油なども行う。

 いつ戦闘が起きるか分からない場所でこうした活動を行うことは、もはや後方支援と言えず、憲法を逸脱した「他国の武力行使との一体化」そのものではないか。相手が自衛隊を敵とみなして攻撃対象にするのは明白だ。

 国連平和維持活動(PKO)協力法改正案では武器使用基準を緩和し、他国部隊を助ける「駆け付け警護」や、危険度の高い治安維持活動への参加を可能にする。

 武器使用基準の緩和は、憲法が禁じる海外での武力行使につながる懸念があるため、長年議論されながら認められてこなかった。安易な変更は許されない。

■国会の存在意義示せ

 新たな安保関連法案はいずれも重大な問題をはらみ、一つだけでも十分な審議時間が必要だ。

 ところが政府は、全11の関連法案のうち武力攻撃事態法など既存10法の改正案を「平和安全法制整備法案」に一本化し、新設の国際平和支援法案と2本立てにした。

 審議時間の短縮が狙いだ。乱暴にもほどがある。

 そもそも今回の安保法制の出発点である昨年7月の閣議決定から、法制を先取りした日米防衛協力指針(ガイドライン)改定に至るまで、政府は国会の関与を一貫して拒んできた。

 しかも首相は先の米議会での演説で、関連法案成立を「この夏までに実現する」と言明した。

 法案審議に先立ってまず問われるべきは、首相のこうした著しい国会軽視の姿勢だろう。

 安保法制は複雑で多岐にわたり、国民の理解は進んでいない。

 首相はきのうの閣議決定後の記者会見で「(法整備で)抑止力が高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなる」と述べた。

 だが、日米同盟一辺倒で防衛力強化を図れば日本と中国との緊張は高まり、東アジアの安保環境は逆に悪化するのではないか。

 こうした根本的な疑問から一つ一つ分かりやすく明らかにしていくことが、国会の責務である。

 政府のペースに引きずられ、おざなりな議論で成立を許すなら国会の存在意義が問われる。


(2)河北新報社説-安保法制閣議決定/日米同盟偏重に懸念拭えず-2015年5月15日


 「専守防衛」を掲げた戦後の安全保障政策を大きく転換し、「自衛」のための活動領域を格段に広げ、国際平和を支援する美名の下で自衛隊の広範な出動にも道を開く。
 一定の歯止めがあるにしても、自衛隊の「いつでも、どこへでも」派遣が現実味を帯びる。個別的自衛権を容認しつつ、貫いてきた「非戦」の放棄にも近づいていこう。
 歴史的転換を裏付ける安保法制の関連法案を、安倍政権はきのう、閣議決定した。15日にも国会に提出し、今国会で成立を目指すことになる。
 関連法案は、集団的自衛権行使を明記した武力攻撃事態法改正案など改正対象の法案10本を集約した日本の防衛に関わる「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する米軍など他国軍の後方支援を随時可能とするため新設する恒久法「国際平和支援法案」の2本で構成されている。
 集団的自衛権行使を容認する「存立危機事態」の定義は曖昧で、国会の状況に鑑みれば、実質、政府の判断に委ねられよう。「重要影響事態」の解釈も幅広く、際限のない派遣につながる恐れがある。
 新法に基づく自衛隊出動は電話閣議での決定を認め、歯止めとされる事前承認をめぐる国会審議も、衆参両院各7日の努力規定を盛り込んだ。
 後方支援は改正法案、新法両案にまたがり、適用次第で事前承認をすり抜けることは可能。厳格な歯止めとはほど遠く、憲法の規定による制約を逸脱する危うさが漂う。
 改正法案の一括化は、審議の加速化狙いの側面があり、審議の形骸化も懸念される。
 関連法案は安保環境の変化を背景に、日米同盟を強化し、海洋進出を強める中国への抑止力を高める一方、国力に陰りの見える同盟国を補完する形で、米国の世界戦略の一翼を担っていくというものだ。
 日本の安全性が高まり、国際的な秩序の回復、維持にも貢献できて、発展の基盤である平和が保たれるのであれば、国益にもかなうだろう。
 ただ、安保政策の大転換によっても、その道筋は容易に描けない。多くの国民が効果を計りかね、「急ぎ過ぎ」を危惧し、今国会での成立に反対、慎重姿勢を示す。
 当然だろう。法案は複雑で分かりにくく、国民不在で政府与党の擦り合わせが進んできたのだから。国の安全が軍事力だけで確保され難い現実も知っているのだから。
 安全保障強化に向けた多面的で長期的な戦略が一切示されず、それ以前に幅広い議論を欠いたまま、安倍晋三首相の意向を体現する形で、大改革を強行するとなれば、国民が抱える先行きへの懸念を排除できようはずがない。
 安倍首相は、閣議決定後の記者会見で法整備の意義を強調。早期成立の必要性を訴えた。法案の国会提出、審議に先行し日米防衛協力指針(ガイドライン)再改定に盛り込み、米側に成立を確約した。国会はもとより国民への説明軽視のそしりを免れない。
 日本の岐路に関わる重大案件である。前のめりに国民の理解を置き去りに成立を急いではならない。想像力の限りを尽くした徹底審議で、慎重な世論に応えるべきである。


(3)東奥日報社説-与野党で根源的な議論を/安保関連法案-2015年5月15日

 政府は臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使をはじめとして自衛隊活動を大幅に拡大する新たな安全保障関連法案を決定した。

 法案は形式的には2本立てだ。自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など改正10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新法「国際平和支援法案」である。15日にも国会提出され、与野党による論戦が本格化する。

 安倍晋三首相は閣議決定を受けて記者会見し「日本が危険にさらされた時には日米同盟は完全に機能する。そのことを世界に発信することで抑止力がさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」と強調した。

 しかし、法整備の発端となった集団的自衛権の行使容認は、憲法の基本理念である平和主義の下、専守防衛に徹してきた日本の安保政策の在り方を根底から変えかねない。行使容認の是非という根源的問題から、あらためて議論を進めなければならない。

 自国への攻撃がなくても他国への攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使は、憲法9条下での最低限の自衛措置の範囲を超えるとして、長らく認められてこなかった。

 ところが、政府は昨年7月の閣議決定で憲法解釈を変えて行使を容認。今回の法整備では日本への攻撃を前提とした武力攻撃事態法を改正し、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」他国への武力攻撃を「存立危機事態」と定義、集団的自衛権の行使を可能にしようとしている。

 また、朝鮮半島有事の米軍支援を想定した周辺事態法について、事実上の地理的制約を撤廃し、米軍以外の他国軍も支援対象に加える。これまで特別措置法をその都度、制定し対応してきた他国軍支援は、国際平和支援法制定によって随時可能とする。

 さらにPKO協力法改正で、武装勢力に襲われた国連要員らを武器を使用して保護する「駆け付け警護」を認めた。日本防衛のため活動する米軍や他国軍の艦船なども自衛隊が武器を使用し防護できるよう自衛隊法を改正する。

 安倍首相は4月の米連邦議会演説で、夏までに法案を成立させると約束したが、結論を急いではならない。国会では論点を丁寧に洗い出し、議論を尽くすべきだ。


(4)デーリー東北新聞社社説-安保法制 このまま通していいのか-2015年5月15日


 政府は、集団的自衛権の行使を可能とするなど自衛隊の海外での役割、活動範囲を拡充する安全保障関連法案を閣議決定した。15日に国会へ提出され、今月下旬から審議が始まる見通しだ。

 法案は憲法の制約や日米安保条約の枠を踏み越える恐れが濃厚であり、戦後日本が順守してきた専守防衛を空洞化させかねない。安倍晋三首相は圧倒的な与党勢力を背景に夏までに法律を成立させると公言しているが、法案をこのまま通していいのか。

 戦争放棄を定めた憲法9条に基づき、日本が直接、武力攻撃を受けた場合のみ、自衛のため武力行使できるとした平和主義路線を維持するのか、それとも安倍首相の掲げる「積極的平和主義」の美名の下、海外での武力行使さえ容認する方向にかじを切るのか。日本はいま、重大な岐路に立たされている。

 法案は武力攻撃事態法や周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など現行法の改正案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」で構成される。

 集団的自衛権は武力攻撃事態法改正案に盛り込まれた。日本と密接な関係にある他国への武力攻撃で「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」を「存立危機事態」と定め、行使可能としている。しかし、中東・ホルムズ海峡が機雷で封鎖され原油輸入が止まった場合について、存立危機事態に該当し武力行使(機雷掃海)の要件を満たすとした首相に対し、与党・公明党が「別途調達すればいい」と疑義を呈したように、その認定基準は曖昧だ。

 そもそも、海外での武力行使を容認していること自体、憲法違反のそしりを免れないのではないか。周辺事態法から地理的制約を撤廃し、重要影響事態法に名称変更して後方支援の対象を米軍以外にも広げる改正案は、日米安保条約の適用範囲となる極東をはるかに超え、自衛隊の活動を世界規模に拡大する。しかも自衛隊派遣について国連決議は必要とせず、国会の事後承認も認めている。

 これら以外にも、後方支援の活動地域を「現に戦闘行為が行われている現場」以外に拡大したり、PKOでの武器使用範囲を広げたりするなど、問題点は多々ある。

 野党は与党勢力の数にひるまず、国会で結束して法案の問題点を徹底追及してほしい。

(5)岩手日報論説-安保法案国会へ 焦点は野党の「抑止力」-2015年5月15日


 安全保障法制の見直しに伴う関連法案が14日、閣議決定された。戦争放棄を定めた憲法9条の制約から歴代政権が否定してきた集団的自衛権の行使に、道を開く内容だ。

 政府の狙いは、日米同盟による抑止力強化。自衛隊と米軍の連携を強め、安倍晋三首相が言うところの「切れ目のない対応を可能とする」との触れ込みだ。

 自民党の高村正彦副総裁は実質合意に至る直前、東京都内での講演で「日本を攻めたら米国にたたきつぶされる、そう思ってもらって初めて抑止力になる」と解説。背景として、軍備を増す中国への強い警戒感をにじませた。

 他方、有事の危険が増すのではないか-という議論がある。直近の共同通信世論調査の結果が政府方針に懐疑的なのは、その理屈に国民が納得していない現状を示唆する。

 政府は今日にも法案を国会に提出する。問題は「専守防衛」の基本姿勢に関わり、数の力で押す話ではない。どういう事態が想定され、法律のどこを、どう整える必要があるのか。種々の議論に、政権は真摯(しんし)に向き合ってほしい。

 閣議決定したのは、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする「国際平和支援法案」の新設と、武力攻撃事態法や周辺事態法など既存10法を一括改正する「平和安全法制整備法案」。

 このほか、武装集団による離島の不法占拠など、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」で迅速に対応するため電話閣議の導入も決めた。

 安倍首相は国会審議に先立つ米国公式訪問で、今夏までに安保法制整備を終えると上下両院合同会議で明言。野党は「国会軽視」と批判する。

 昨年も、7月に集団的自衛権行使容認を閣議決定した直後にオーストラリアを訪問。アボット首相から閣議決定への支持を得ている。国内の議論を脇に置いて海外で既成事実化を図る傾向は、決して褒められたものではない。

 一方で、沖縄県の尖閣諸島周辺をはじめ中国の積極的な海洋進出による東アジアの不安定化、過激派組織による邦人人質事件で国際テロの脅威が現実感を増すなど、わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。関連法整備をめぐる議論そのものを意義なしとはしない。

 民主党などは首相の政治姿勢を問題視。審議は入り口から波乱含みだが、「賛成ありき」「反対ありき」の対立に終始すれば結局数の力が物を言い、理解が進まないまま実害は国の未来に跳ね返る。

 むやみな自衛隊海外派遣の歯止めの実効性など、問題の在りかを具体的に国民に知らしめるなら、政権もおいそれと強行突破はできまい。野党の「抑止力」が問われる。


(6)茨城新聞論説-安保法制 前提問う根源的議論を-2015年5月15日

政府が臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使をはじめとして自衛隊活動を広げる安全保障関連法案を決定した。関連法案は15日にも国会提出され、与野党による論戦が本格化することになる。

法整備を主導した安倍晋三首相は「自衛隊と米軍の協力関係が強化され、日米同盟は、より一層堅固になる。それは地域の平和のため、確かな抑止力をもたらす」と強調する。

しかし、法整備の発端となった集団的自衛権の行使容認は、憲法の基本理念である平和主義の下、外交重視と専守防衛に徹してきた日本の安保政策の在り方を根底から変えかねないものだ。安倍首相の言葉を借りれば「抑止力」偏重への転換である。

抑止力が機能する場合もあるが、仮想敵を刺激してお互いが軍拡競争に走る「安全保障のジレンマ」に陥る可能性もある。関連法案の前提をあらためて問い直す根源的な議論を行わなければならない。

安保関連法案は形式的には2本立てだ。自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など改正10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新法「国際平和支援法案」である。

直接、自国に対する攻撃がなくても他国への武力攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使は、憲法9条で定められた最低限の自衛措置の範囲を超えるとして長らく認められてこなかった。行使できるようにするには解釈変更ではなく、憲法改正が必要だとの内閣法制局の答弁さえある。

にもかかわらず、政府は昨年7月の閣議決定で憲法解釈を変えて行使を認めた。これを受け、今回の法整備では日本への攻撃を前提とした武力攻撃事態法を改正し、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」他国への武力攻撃を「存立危機事態」と定義し、集団的自衛権の行使を可能にしようとしている。

最近、野党の追及は、集団的自衛権行使の前提となる「武力行使の新3要件」などが「歯止め」となるのか否かに、重点が移りつつあるように見える。法案ができあがり、国会に提出されれば、それをめぐって議論するという現実的な判断なのかもしれない。しかし、歯止めが利く、利かないに集中すると意図はしていなくても、集団的自衛権の行使を前提としてしまうことになる。

また、法整備では朝鮮半島有事の米軍支援を想定した周辺事態法について地理的制約を撤廃して「重要影響事態法」に改称し、米軍以外の他国軍も支援対象に加える。これまで特別措置法をその都度、制定し対応してきた他国軍支援は、恒久法である国際平和支援法制定によって随時可能とする。

さらに、PKO協力法を改正することで武装勢力に襲われた国連要員らを、武器を使用して保護する「駆け付け警護」を容認。日本防衛のため活動する米軍や他国軍の艦船なども自衛隊が武器を使用し防護できるよう自衛隊法を改正する。

いわば世界規模で軍事的な行動を展開する米軍につきあうことになるのだ。それが平和主義に基づいて専守防衛に徹するとしている日本にふさわしい姿なのかどうかも問わなければならない。


(7)新潟日報社説-安保法案国会へ 平和の意味問い論戦せよ-2015年5月15日


 政府は14日の臨時閣議で、集団的自衛権行使を含む自衛隊活動の拡大を内容とする安全保障関連法案を決定した。

 きょう国会提出の見通しだ。戦後日本の安全保障体制の方向を変える法案である。

 その論戦の行方は、私たちと国の今後を大きく左右することを肝に銘じ、与野党は真剣に向き合わねばならない。

 政府は安全保障をめぐる環境の変化や戦争を起こさせないための抑止力の強化を、安保法制整備の理由として掲げる。

 だが、問われるのは、そのような時代状況の変化への対応だけではあるまい。

 憲法が掲げ、戦後日本の繁栄を支えたともいえる平和主義を今どう評価するか。

 集団的自衛権行使を認めた昨年7月の閣議決定による「解釈改憲」は許されるのか。

 そうした原点に立ち返った議論が求められる。私たちが手にする平和の意味や、これをどう守るかという、単純で基本的な課題を忘れないことが大切だろう。

 安全保障関連法案は、武力攻撃事態法や周辺事態法などの一部改正を「平和安全法制整備法案」としてまとめた。

 また、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能にする恒久法「国際平和支援法案」を新しく作った。

 ともに「平和」を冠したところに政府のイメージ重視戦略がのぞく。実際は、平和維持の名の下に、武力行使範囲の拡大を目指すところに重きがある。

 武力攻撃事態法改正では「存立危機事態」の定義を定めて、他国への攻撃で集団的自衛権を行使できるとした。

 周辺事態法は「重要影響事態法」と名前を変え、地理的制約をなくし、米軍以外の他国軍にも支援対象を広げた。

 国際平和支援法は国際紛争時の他国軍に対する支援を、その都度特別措置法を作らずに随時可能にするものである。

 以上の3点は、特に著しい考え方の変更といえる。

 艦船を含む米軍の武器を守る自衛隊法の改正や、国連平和維持活動協力法を見直しての武器使用基準の緩和も盛り込まれた。従来ならそれだけで国会を紛糾させるに足る材料である。

 このように、重く、多方面にわたり、複雑そのものの関連法案だ。時間をかけて政府は説明を尽くさねばならない。

 与党協議では、世界平和支援法に基づく自衛隊派遣での「例外なき国会の事前承認」を決めた。

 ただ、多くの面で時の政府がいかようにも判断できるとの批判は根強い。都合のいい解釈や、なし崩しの派遣範囲拡大への歯止めは十分ではない。

 反対を明らかにする野党は当然のこと、与党内でも、疑問や異論をのみ込まず、問題提起する姿勢が必要だろう。

 国民の賛否は割れている。「自民党1強」や、自民党内での「安倍首相1強」の空気に引きずられてはならない。


(8)北國新聞社社説-安保法制を閣議決定 戦火交えぬための備えに-2015年5月15日


 集団的自衛権の行使を可能にする新たな安全保障関連法案が閣議決定された。1960年、当時の岸信介首相が日米安保条約の改定を主導して以来、戦後日本の安全保障政策を大きく転換する法案である。国会での活発な論戦を通じて国民の理解を得る努力を求めたい。

 安倍晋三首相は会見で「安全保障環境が厳しさを増す中で、平時から有事まで切れ目のない法制を整備する必要がある」と意義を説明した。安保改定に政治生命をかけた岸首相の孫にあたる安倍首相が55年の歳月を経て、安保関連の重要法案を出すのは、不思議な因縁といえよう。

 東アジアの安保環境は、米ソ冷戦を背景とした60年安保のとき以上に緊迫化している。軍事大国となった中国の台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発、テロの拡散などである。特に中国の海洋進出は各地であつれきを生み、偶発的な衝突が起きる懸念がぬぐえない。

 安全保障関連法案は、不穏な東アジア情勢をにらみ、日本が二度と他国と戦火を交えずに済むよう、備えを厚くするために必要だ。日米同盟を強化し、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を実行するための法整備である。自衛隊が果たす役割を広げ、米国を支援する体制を整えることで抑止力は強化されるだろう。

 自衛隊の活動を広げる法案ゆえに「日本が戦争する国になる」や「戦争に巻き込まれる」などと反対する声がある。60年安保改定のときも同じ主張がなされ、国会は安保反対のデモ隊に包囲された。だが、あのときの決断があればこそ日本の平和と繁栄は保たれたのではなかったか。

 米国は今、世界の警察官役からゆっくりと手を引こうとしている。日本は米国を引き留め、自国と周辺地域の安定を保つ必要性に迫られている。安保関連法案は日米同盟の強化に伴って抑止力を高め、「戦争に巻き込まれる」危険性を減らすことに主眼がある。

 集団的自衛権の行使は、日本の存立が脅かされる事態に直面したとき、限定的に許される。あくまで「受け身」の対応であり、「日本が戦争する国になる」などという批判は当たらない。


(9)福井新聞社説-安保法制大転換 これが平和守る道なのか-2015年5月15日

 政府は、集団的自衛権の行使を含め自衛隊活動を一挙に拡大する安全保障関連法案を閣議決定した。自衛隊法や武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など改正10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と、他国軍の後方支援を随時可能とする新規「国際平和支援法案」の2本である。

 15日の法案提出で本格的な国会論戦が始まるが、憲法9条下で歴代政権が禁じてきた集団的自衛権行使を可能にする安保政策の歴史的転換と言える。「厳格な歯止め」を強調しながら、数の論理で一気に押し通そうとする安倍政権の強権姿勢があらわである。

 集団的自衛権の行使容認の実現に向け、安倍晋三首相が政府、与党に憲法解釈変更を検討するよう指示したのは1年前だ。自民、公明両党は25回協議を重ね、「限定的」行使なら従来の憲法解釈との整合性を保てるとして政府と法案をまとめた。さらに国会審議の前に日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定、日米軍事同盟色を一段と強めた。

 だが国際社会で「限定的」という論理が通用するはずもない。法案には「平和」を付けているが、どうみても「日本参戦」にほかならない。一部野党は「戦争立法」「戦争法案」と厳しく非難している。

 与党協議では自公が決定的な対立を避けるために玉虫色の決着を図ったり、棚上げしたりした。徹底的に問題点を洗い出し、国民に分かるように詰めていく。それが国会の役割である。

 法整備では、日本への攻撃を前提とした武力攻撃事態法を改正、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」他国への武力攻撃を「存立危機事態」と定義し、集団的自衛権の行使を可能にする。

 朝鮮半島有事の米軍支援を想定した周辺事態法は、地理的制約を撤廃し「重要影響事態法」に改称、米軍以外の他国軍も支援対象となる。自衛隊を派遣する際の国会承認について公明の主張通り「例外なき事前承認」が国際平和支援法案に盛り込まれた。だが重要影響事態法案では事前承認なしで派遣可能となり「抜け道」に使われる懸念がある。

 国際平和支援法案では、テロ対策特別措置法などにあった「非戦闘地域」が撤廃され、自衛隊の活動地域は「現に戦闘行為が行われている現場」以外に拡大される。高まるリスク対応へ活動の一時休止や避難が規定されるが、戦闘はどう拡大するか分からない。

 安倍首相は会見で、緊迫する国際情勢を挙げて危機意識をあおり、「日本と世界の平和へ先頭に立って新たな時代を切り開く」と強調した。しかし、集団的自衛権の行使容認は、平和憲法の下で戦後貫いてきた「専守防衛」の基本精神を根底から変質させるものだ。

 仮想敵を刺激して軍拡に走るなら、それこそ「安全保障のジレンマ」に陥る。自衛隊を「わが軍」と公言し、4月の米議会演説で法案の「今夏成立」を公約するほど前のめりな右旋回。世論調査では政権の安保法制に約半数が反対し、賛成を大きく上回っている。根源的な議論なくして国民の理解を得るのは困難だ。


(10)神戸新聞社説-安保法案閣議決定/「不戦」の近いが守れるの-2015年5月15日


 政府はきのう臨時閣議を開き、安全保障関連法案を決定した。「専守防衛」を旨とする自衛隊の活動を飛躍的に拡大する内容だ。

 憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定を踏まえ、安保法制全般を見直す。自衛隊と米軍の連携を「地球規模」に広げることは防衛政策の歴史的な転換であり、戦後貫いてきた「平和主義」が揺らぐ恐れがある。

 安倍晋三首相は「国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、切れ目のない対応が必要だ」と述べた。

 しかし、憲法の制約を取り払って自衛隊活動を拡大する理由は何か。十分に納得できる説明はなく、むしろ海外派遣に歯止めが利かなくなり、戦闘に巻き込まれる懸念が増す。

 戦後の「不戦」の誓いから逸脱しかねない政府の方針は、国民の求める国の在り方に沿っているのか。

     ◇

 「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」。閣議決定された法案はこの2本である。

 ただ、平和安全法制整備法案は自衛隊法や武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など10の法律の改正案を一括提案するものだ。新設を目指す国際平和支援法案と併せ、見直しがいかに広範囲に及んでいるかが分かる。

 これを政府と自民、公明両党は2月以来、わずか7回の協議で取りまとめた。法案は複雑で、細部まで議論を尽くしたとは言い難い。

 政府は先月末、米国と18年ぶりの防衛協力指針(ガイドライン)改定で合意した。内容は今回の法案を先取りしており、日米協議に向けて結論を急いだのは明らかだ。

 「日本として行けるところまで行け」。対米交渉を進める防衛省の幹部に対し、首相はそう指示していたという。自身の訪米の際には、国会に提案もしていない法案の「夏までの成立」を米議会で明言した。

 「一体、どこの国の首相か」と批判されても仕方がない。「国会軽視」と野党が憤るのは当然だ。

【まず「米国ありき」】

 首相が主導する安保法制の見直しは終始、米国との合意を念頭に置いて進められた。国会や国民への説明を後回しにした対応は本末転倒であり、到底容認できない。

 安倍政権の「米国ありき」の姿勢はこれにとどまらない。

 日本との協議を終えたカーター米国防長官は「日米の軍事的な協力はアジア太平洋地域だけでなく、世界で可能になる」と述べた。米議会では中東・ホルムズ海峡での機雷掃海活動や南シナ海での哨戒活動への自衛隊参加を期待する声が上がる。

 米国は国防予算削減を迫られ、日本に軍事的負担の肩代わりを求めている。日本の法整備を待つことなく米側の要求は高まっている。

 今回の法案では、朝鮮半島有事などを想定した「周辺事態法」を「重要影響事態法」に改正し、自衛隊の活動を事実上、日本周辺に限定していた制約を撤廃する。

 「日本の平和と安全に重要な影響を与える(重要影響事態)」と政府が判断すれば、地球上のどこであれ米軍などの後方支援に当たる。弾薬の提供にも道を開く。

 まさに米国が求める軍事連携の一つであり、「周辺」という文言の削除に米側の意向が垣間見える。

 「武力攻撃事態法」の改正は集団的自衛権行使を定めるものだ。米国など「密接な関係にある他国」への武力行使が発生し、「日本の存立が脅かされる明白な危険がある(存立危機事態)」などと政府が判断すれば、日本が攻撃を受けなくても自衛隊による武力行使が可能になる。

 首相はホルムズ海峡での自衛隊による機雷掃海活動に言及しており、これも米側の期待と一致する。

【歯止めを失う恐れ】

 問題は、「重要影響事態」であれ「存立危機事態」であれ、何がそれに当たるかが曖昧で、判断が政府に委ねられていることだ。緊急時は国会承認などが事後でよいとされ、チェックが機能しない危惧がある。

 新設を目指す「国際平和支援法」は、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能にする恒久法だ。この法案は公明党の主張を入れて国会の事前承認を義務付けるが、イラク復興支援などの特措法で「非戦闘地域」とされた活動範囲が「戦場以外」に拡大される。どこまで活動の安全が確保できるかは疑問だ。

 共同通信の世論調査では、法案の今国会での成立や日米連携の地球規模の拡大に5割近くが反対し、多くの国民が懸念を抱いている。

 武器使用基準を緩和して1発の銃弾を撃てば、自衛隊員はこれまでにない危険にさらされるだろう。日本の平和貢献を称賛してきた国際社会の評価が変わる可能性もある。

 法案の内容は「平和主義」の理念を危うくする。いったん撤回して国民の声に耳を傾けるべきだ。


(11)山陽新聞社説-安保法案国会へ 国民の懸念を拭えるか-2015年5月15日


 自衛隊の活動を大きく広げる安全保障関連法案が閣議決定された。きょう衆院に提出され、今月下旬から国会で審議が始まる見通しだ。戦後の安全保障政策の転換点となる法案であり、専守防衛の理念を踏み外しかねないものだという批判もある。国会で徹底して議論し、詰めていく必要がある。

 安倍政権は昨年7月、集団的自衛権行使を限定的に容認した。それを踏まえて11の関連法案を新設・改正する。集団的自衛権に基づく武力行使を条件つきで認める以外にも、米軍などを後方支援する際の地理的な制約とされてきた「日本周辺」という概念を撤廃する。

 論点の一つは、集団的自衛権に基づいて武力行使を認める条件だ。政府が示す3要件の一つである「日本の存立が脅かされる明白な危険」について、民主党は「判断次第でどうにでも当てはめが可能」として、歯止めにならないと反対している。

 維新の党は政府案より厳格な「排除しなければわが国への武力攻撃が予測される」という要件の追加を求めることを検討している。中東・ホルムズ海峡での機雷除去を念頭に、経済的理由では集団的自衛権行使を認めない考えだ。

 原油を運ぶシーレーン(海上交通路)上での機雷除去は、今回の安保法制の分かりにくさとあいまいさを象徴している。与党内でも慎重姿勢の公明党と前向きな自民党の温度差があるが、ここにきて当の自民党内の認識の差をうかがわせる発言があった。

 安倍晋三首相は、原油暴騰などの経済的理由でも行使が認められる可能性があるとしてきた。これに対して自民党の高村正彦副総裁は、原油輸入が滞って国内で凍死者が続出する場合を例に出し、より高いハードルを示した。自衛隊がどんな事態で何をし、何をすべきでないか。際限のない活動拡大にどう歯止めをかけるか。きちんと示すことが不可欠だ。

 安保法制の見直しは、北朝鮮の核・ミサイル開発など日本を取り巻く安全保障環境の悪化を受けたものである。とはいえ、国民の理解を十分に得ているとは言い難い。

 先月末に共同通信社が実施した電話世論調査で、安全保障法制を今国会で成立させる政府方針に「反対」は48・4%、「賛成」は35・2%だった。一方、離島防衛で米国と共同対処することは70・6%が評価した。中国の海洋進出などに危機感は強いものの、安保法制の転換には懸念がある。そんな戸惑いを示す数字ではないか。

 米国支援の強化により、米国の世界戦略に自衛隊が組み込まれる不安は根強い。首相はきのう、日米同盟強化は日本への攻撃に対する抑止力を高めるとした上で「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と強調した。なぜそう言えるのか、国民が納得できる論拠を示すべきである。


(12)山陰中央新報論説- 安保法制/根源的な議論が必要だ-2015年5月15日


 政府が臨時閣議を開き、集団的自衛権の行使をはじめとして自衛隊活動を広げる安全保障関連法案を決定した。関連法案は15日にも国会提出され、与野党による論戦が本格化する。

 法整備を主導した安倍晋三首相は閣議決定を受けて記者会見し、「日本が危険にさらされた時には日米同盟は完全に機能する」「日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」と強調した。

 しかし、法整備の発端となった集団的自衛権の行使容認は、憲法の基本理念である平和主義の下、外交重視と専守防衛に徹してきた日本の安保政策の在り方を根底から変えかねないものだ。安倍首相の言葉を借りれば「抑止力」偏重への転換だろう。

 抑止力が機能する場合もあるが、仮想敵を刺激してお互いが軍拡競争に走る「安全保障のジレンマ」に陥る可能性もある。関連法案の前提をあらためて問い直す根源的な議論が必要だ。

 安保関連法案は形式的には自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など改正10法案を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新法「国際平和支援法案」の2本立てだ。

 直接、自国に対する攻撃がなくても他国への武力攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使は、憲法9条で定められた最低限の自衛措置の範囲を超えるとして長らく認められてこなかった。行使できるようにするには解釈変更ではなく、憲法改正が必要だとの内閣法制局の答弁さえある。

 しかし、政府は昨年7月の閣議決定で憲法解釈を変えて行使を認めた。これを受け、今回の法整備では日本への攻撃を前提とした武力攻撃事態法を改正し、「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」他国への武力攻撃を「存立危機事態」と定義し、集団的自衛権の行使を可能にしようとしている。

 最近、野党の追及は、集団的自衛権行使の前提となる「武力行使の新3要件」などが「歯止め」となるのか否かに、重点が移りつつあるように見える。法案ができ、国会提出されれば、それをめぐって議論するという現実的な判断なのかもしれない。しかし、歯止めが利く、利かないに集中すると、集団的自衛権の行使を前提としてしまうことにならないだろうか。

 また、法整備では朝鮮半島有事の米軍支援を想定した周辺事態法について地理的制約を撤廃して「重要影響事態法」に改称し、米軍以外の他国軍も支援対象に加える。これまで特別措置法をその都度、制定してきた他国軍支援は、恒久法である国際平和支援法制定によって随時可能とする。

 さらに、PKO協力法を改正することで武装勢力に襲われた国連要員らを、武器を使用して保護する「駆け付け警護」を容認。日本防衛のため活動する米軍や他国軍の艦船なども自衛隊が武器を使用し防護できるよう自衛隊法を改正する。

 いわば世界規模で軍事的な行動を展開する米軍に付き合うことになる。それが平和主義に基づいて専守防衛に徹するとしている日本にふさわしい姿なのかどうかも真剣に考える必要があるだろう。


(13 )高知新聞社説-【安保法案安倍政治を問う】 時の政権次第にならないか-
2015年05月15日


 集団的自衛権の行使を含め、自衛隊の活動を飛躍的に広げる安全保障関連の2法案が閣議決定された。
 閣議決定というからには自民、公明の与党と政府の認識は一致していなければならない。ところが、集団的自衛権は具体的にどんなケースで行使できるのか。与党内にさえいまだに見解の相違がある。当然、国民の理解も深まっていない。
 法案はきょう国会に提出される見通しで、安倍首相は米議会で「今夏までの成立」を約束した。とてもそれが可能な状況とは思えない。
 「国民に丁寧に説明する」。記者会見での首相の言葉が本当ならなおのこと、期限など区切らず慎重に審議するのが最低限のルールである。
 集団的自衛権の行使を盛り込んだ武力攻撃事態法の改正など10法案を一括した「平和安全法制整備法案」。もう一つは、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新法の「国際平和支援法案」。
 「専守防衛」という戦後日本の平和国家としてのありようを大きく転換させる法案だが、核心部分はぼやけたままだ。
 集団的自衛権は、他国への武力攻撃であっても「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合、「存立危機事態」と定義して自衛隊が武力行使できるようにする。
 存立危機事態とは何か。具体的に示されているのは、朝鮮半島有事などで避難する邦人を輸送する米軍船舶が攻撃される事例。しかし、これは従来の周辺事態法や個別的自衛権で対応できるのではないか、との声は根強い。
 日本が輸入する原油の8割が通過する中東・ホルムズ海峡が、機雷封鎖される事例も挙げられている。これに対し公明は経済的損失では該当しない、と一貫して反対している。
 与党内の「不一致」を国会でどう説明するのか。

 ちぐはぐな歯止め
 自衛隊の海外派遣をむやみに拡大しないための「歯止め」も十分とは言えない。
 国際平和支援法案で自衛隊を海外派遣する際は、「例外なき国会の事前承認」が条件だ。一方、集団的自衛権の行使に関しては、事前承認は「原則」で事後承認も認めている。
 自衛隊が他国軍を後方支援する際の条件が厳しく、武力行使に踏み切るケースの方が緩い。何かちぐはぐではないか。
 後方支援の対象も、「国連決議」か「関連する決議など」に基づき活動している他国軍となっており幅が広い。
 自衛隊の海外派遣について、国会のチェックが適切に働くのか。時の政権の意向次第で派遣が恣意(しい)的に行われるのではないか。国民の最大の懸念はまだ何一つ払拭(ふっしょく)されていない。
 そもそも安保法制の整備は昨年7月、安倍政権が集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更を閣議決定したことが始まりだ。
 憲法9条が禁じてきた海外での武力行使に道を開く歴史的転換を、憲法改正によらず一内閣の閣議決定に基づき進めていく。こうしたやり方を認めることは、将来に禍根を残すと言わざるを得ない。
 国民の疑問に答えるために、具体的事例に即した国会審議を求める。


(14)徳島新聞社説-安保法案閣議決定 「平和国家」が変容する-2015年5月15日

 安倍晋三首相が目指す安全保障政策の大転換がまた一歩前進することに、危うさを感じる。

 政府が新たな安全保障関連法案を閣議決定した。

 現憲法下では認められないとされてきた集団的自衛権行使を可能にするのをはじめ、自衛隊が地理的な制約なしに米軍や他国軍を支援できるようにする狙いだ。

 政府はきょう法案を国会に提出する方針だが、日本が戦後築き上げてきた「平和国家」の在り方が変容する恐れが強い。このまま成立させてよいはずがない。

 何が問題なのか、どこに危険性があるのか。国会は審議を尽くして、国民に明らかにしなければならない。

 安倍首相は閣議決定後に記者会見し、新たな安保法制の整備は国民の生命と平和な暮らしを守るためであり、日米同盟が強まることで日本のリスクが減少すると強調した。

 さらに集団的自衛権について、厳格な歯止めを定め、行使できるケースは限られていると理解を求めた。

 しかし、地理的制約が撤廃されれば、自衛隊の活動範囲は世界に広がる。「非戦闘地域」に限っている現在の縛りをなくし、「現に戦闘行為が行われている現場(戦場)以外」での活動も可能にするとしている。

 武器使用基準の緩和も併せて考えれば、自衛隊が戦闘に巻き込まれる可能性は高まろう。それが日本をより安全にする道といえるのか。

 首相が言うように、集団的自衛権の行使には、日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由が根底から覆される明白な危険がある場合などの条件が付いている。だが、判断基準には曖昧さが残る。

 中東・ホルムズ海峡の機雷掃海を政府、自民党が可能とし、公明党が否定的であるのが典型例だ。石油の輸入停止は深刻な問題だが、集団的自衛権を行使しなければならない事態なのか。政府が必要と判断すれば認められることにならないか。疑問が次々と湧いてくる。

 首相の前のめりの姿勢に、国民が不安を募らせるのは当然だろう。共同通信社の世論調査では、今国会での成立に48・4%が反対している。

 審議に当たる国会の責任は重い。とりわけ、しっかりしなければならないのは野党第1党の民主党である。

 対決姿勢を打ち出してはいるものの、先月まとめた見解では、将来的に集団的自衛権の行使を容認する可能性を残した。

 党内が賛否で割れているためのようだが、そんな姿勢で「自民1強」の巨大与党に対抗できるのか。日本の安全と国民の生命をどう守るのか。明確な安保政策を示して論戦に臨んでもらいたい。

 政府、与党は会期を延長して夏までに法案を成立させる構えだが、数の力で押し通すことは断じて許されない。国民が厳しい目を注いでいることを忘れてはならない。


(15)西日本新聞社説-安保法案閣議決定 「平和法案」本質見極めよ-2015年05月15日


 安倍晋三政権が今国会で成立を目指す安全保障関連法案がきのう、閣議決定された。近く国会で審議が始まることになる。

 政府はこの法案を「平和安全法制整備法案」「国際平和支援法案」と名付けた。高らかに「平和」をうたうネーミングだ。その一方で、この法案に反対する野党や識者らは「戦争法案」と呼ぶ。

 安倍政権が推進する安保法制の改定は、その名の通り日本と世界に平和と安全をもたらすのか。

 それとも、反対論者が主張するように、日本が国際紛争に関与していく危険を高めるのか。

 そこを見極めたい。平和主義・日本の将来に関わるからだ。

 ▼専守防衛の枠超える

 閣議決定された「国際平和支援法案」は新法で、「平和安全法制整備法案」は現行10法を一括して改正するものだ。内容は多岐にわたり、論理構成も複雑である。

 大づかみに説明すれば、目的は二つある。一つは日本の安全の確保、もう一つは国際平和への貢献拡大だ。

 この二つの目的のためとして、法案には自衛隊の活動の幅を広げる多くの条項が盛り込まれた。自衛隊は一気に、これまでできなかったことができるようになる。

 最も重要なのは、憲法9条の解釈変更に伴う集団的自衛権の行使だ。これまで日本は「専守防衛」を安全保障政策の根本に据えてきた。日本が攻められたときだけ反撃する、という大方針だ。

 しかし、今回の法案では、他国に対する攻撃があって「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合(存立危機事態)なら、日本が実際に攻められていなくても、武力行使ができるようになる。

 日本が「専守防衛」の枠から踏み出すことになる。国民はそれを支持しているのだろうか。

 ▼国民の理解は進まず

 現時点でこの法案を前にした国民の多くの率直な感想は「ややこしくてよく分からない」だろう。

 無理もない。もともと安全保障分野は専門用語が難解である上、多すぎる中身を一度に詰め込んだからだ。作成も自民、公明両党の与党協議で進められ、論議の過程は国民の目にさらされなかった。

 一番分からないのは、これらの法改正がなされた場合、日本が背負うことになるリスクである。

 例えば、今回の新法では、国際社会の平和を乱す勢力と戦う他国軍に対し、自衛隊が海外で恒常的に後方支援できるようにする。自衛隊員が戦闘に巻き込まれて殺害されたり、相手を殺害したりする可能性がどれくらい高まるのか。

 記者会見でこうしたリスクを問われた首相は「災害派遣でも危険な任務はある。(訓練などで)任務遂行のリスクを可能な限り軽減してきた」と一般論でかわし、法整備に伴う新たなリスクについては語らなかった。会見は法案のプラス面のアピールに終始した。

 これほど大事な点を説明せずに法案への理解を求められても、国民は判断のしようがなかろう。

 ▼存在意義かけ論議を

 戦後の国会では、安全保障をめぐって数々の重要な論戦が展開されてきた。1度の国会では法案が成立せず、数度の国会をまたいで審議されたテーマもあった。

 しかし、安倍政権は法案成立を急ぐ。すでに法案を先取りした防衛協力指針(ガイドライン)を米国と取り決め、安倍首相が米議会の演説で「今夏までに(法案成立を)実現させる」と宣言した。まるで、国会が日米合意の追認機関であるかのような態度だ。

 国会は衆参とも、自民党と公明党の連立与党が過半数を占める。政権幹部はすでに、強行的な手法による可決、成立のシナリオも想定しているだろう。

 しかし、これらの法案の重みを考えれば、たとえ会期を延長したとしても、今国会だけの論議で決めてしまうのは拙速である。国民の理解は追い付いていない。期限を区切らず、国民の理解が進むまで徹底的に論議すべきである。

 特に野党の責任は重い。国会論戦を通じ、本当に「平和」を名乗る資格のある法案なのか、それとも戦争を招く危険な法案なのか、国民の前で明らかにすべきだ。

 論議不足のまま強行採決で成立という結果になるなら、それこそ国会は存在意義を失うだろう。


(16)宮崎日日新聞社越-安保法案閣議決定-2015年5月15日


平和国家の評価変えるのか

 いよいよ国会を舞台に与野党の攻防が始まる。安全保障関連法案が臨時閣議で決定し、15日に衆院に提出される見通しとなった。集団的自衛権行使など、自衛隊の活動範囲が大きく広がる法案だ。

 本紙の県民意識調査によると、法制について多くの県民が関心があると答えた。平和国家の概念が変わるかもしれない-という漠然とした不安、警戒心を抱いている人は多いのではないだろうか。

 なぜ今なのか。なぜ法案成立を急ぐ必要があるのか。政府、与党は分かりやすい言葉で説明し、多様な意見に耳を傾けるべきだ。

■「改憲」加速に警戒も■

 4月、安保法制に関するニュースが国民の頭上を駆け巡った。

 統一地方選前半戦により中断していた与党協議が再開されたのが14日。協議内容の実質合意に至ったのが27日で、すぐさま同じ日の深夜、舞台は米国に移り、日米両政府が新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)を決定した。「切れ目のない連携」という安保法制の核心部分を先取りしたものだ。

 28日には日米首脳会談で同盟強化を確認、29日、安倍晋三首相は米議会で法案の成立を「この夏までに必ず実現する」と演説した。

 スピード感あふれる展開。政府、与党は米国と歩調を合わせスケジュールを描き、その通りに事を進めたのだろうが、置いていかれたのが国民だ。思考する時間も意見を交わす時間も与えられない。

 5月に入りゴールデンウイークが明けると、次は衆院憲法審査会が始まった。自民党は改憲論議を加速させており、「本丸は9条」だと野党は警戒を強めている。

 国民はそれらの動きをずっと見てきた。自民党の高村正彦副総裁は、安倍首相の米国での演説は決意表明を表したにすぎないと語ったが、実際、物事は進んだ。国民の理解は追いついていない。

■県民も関心高め注視■

 「わが国はこれまで国際的には『平和国家』と評価されてきた。それは70年続いてきた『戦争放棄』が生きていたからだ」。これは、「安保法制整備 丁寧な論議を」という見出しで本紙窓欄に載った串間市の男性の意見だ。

 男性の指摘通り、戦後70年、日本は平和を誓い守ってきた。そこに安倍首相は「積極的平和主義」を掲げ、目まぐるしい速さで国の在り方を変えようとしている。

 なぜ急ぐのか。中国の海洋進出や北朝鮮情勢など脅威的な事態は確かにある。ただ、武力行使の道を広げることが平和をもたらすのだろうか。国際社会と連帯し、平和を築く方法はもうないのだろうか。

 これについては専門家にも、国民にもさまざまな意見がある。国防の根幹が大きく変化するのでは-などと県民の関心も高い。十分に意見を交わす時間が必要だ。

 戦後70年の今年は、もう二度と戦争を繰り返さないと静かに考える節目になるはずだった。与野党の火花が激しく散る中で、平和を見つめ直す初夏となる。)


(17)佐賀新聞-安保法制閣議決定-2015年05月15日


 集団的自衛権の行使を含む新たな安全保障政策の関連法案が閣議決定された。10本に上る関連法の一括改正と新法が定める自衛隊の活動範囲と内容は、これまでよりも拡大される。戦争に巻き込まれるリスクも高まるだけに、丁寧に論点を整理した上で議論を積み上げて判断すべきだ。

 新たな安保法制は、自衛隊法や武力攻撃事態法、周辺事態法、国連平和維持活動(PKO)協力法など現行法10本の改正案を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする新恒久法「国際平和支援法」で構成する。

 集団的自衛権を行使できる要件として「存立危機事態」を新設。さらに恒久法も整備することで、平時から有事まで「切れ目ない対応」を目指すとしている。

 歴代内閣が「国際法上、有していることは当然だが、行使は憲法上許されない」としていた集団的自衛権は、安倍内閣が昨年7月に憲法解釈変更の閣議決定に踏み切って行使に道を開いた。注目されるのは、その要件として新設された「存立危機事態」に歯止めがあるのかどうかだ。

 武力攻撃事態法改正案では、「存立危機事態」を「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義する。「密接な関係にある他国」や「明白な危険」をどう判断するのかが重要になる。

 安倍首相は、中東・ホルムズ海峡が機雷で封鎖され、原油輸入が止まった場合などを例に挙げる。ただ公明党は備蓄や他の地域からの輸入など代替策があれば、存立危機事態にならないと反論しており、政権内でも意見が分かれている。定義があいまいになれば、その時々の政権の考え次第になってしまう。ここは詰めておくべき論点だ。

 さらに周辺事態法にあった地理的制約を外して、支援対象を他国軍にも広げる重要影響事態法案では、緊急時であれば国会承認は事後でもいいと認める。与党協議段階では歯止め策として「例外なき事前承認」が必要とされたが、法案にすべては反映されていない。国連決議も派遣要件ではないため、なし崩し的に自衛隊が派遣されるという懸念も残る。

 さらに重要影響事態に関しても政府の統一見解は「軍事的な観点をはじめ種々の観点から見た概念」としている。ここからは経済的、社会的な影響も踏まえて対応するという考えが見えてくるが、経済的な理由だけで派遣させていいのかについても議論の余地は残るだろう。

 自衛隊の活動拡大に伴って隊員が危険にさらされるリスクは高まる。国際平和支援法案では、活動できる範囲を「現に戦闘行為が行われている現場」以外とし、これまでの「非戦闘地域」よりも踏み込んだ。任務に弾薬提供も追加した。引き続き後方支援に徹するとはいえ、敵対勢力の攻撃対象となる危険性は高くならないか。

 安倍首相は米国に今夏までの法案成立を約束した。専守防衛に徹してきた日本の安全保障政策を大転換させるような法制だけに、あいまいさを残さず、緻密な議論を重ねるべきだ。(梶原幸司)


(18)南日本新聞社説-[安保法閣議決定] 政権の暴走に抗議する-2015年5月15日


 この法案が成立すれば、自衛隊は「専守防衛」の衣を脱ぎ捨て、「地球の裏側」まで出かけて戦うことになりかねない。

 国民に信を問わないまま、日本国憲法を骨抜きにする政権の暴走に強く抗議する。

 安倍内閣が安全保障関連法案を閣議決定した。

 閣議決定後の記者会見で安倍晋三首相は、「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にあり得ない」と断言した。「戦後日本の平和国家の歩みに胸を張るべき」とも述べた。

 クロをシロと言いくるめるようなものではないか。不誠実にすぎよう。

 きょうにも国会に提出される法案は、武力攻撃事態法や自衛隊法、周辺事態法など改正対象の法案10本を一括した「平和安全法制整備法案」と、国際紛争に対処する他国軍の後方支援を随時可能とする恒久法「国際平和支援法案」の2本である。

 安保法制の整備には二つの目的がありそうだ。「切れ目のない」対応と日米同盟強化である。

 武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」から集団的自衛権の行使を容認する「存立危機事態」まで、一括法案に盛り込まれた。

 その内容は、防護対象を米軍限定とした昨年の閣議決定の拡大解釈だったり、地理的制約の撤廃、他国を武力で守ったりである。

 「切れ目のない」対応とは要するに、「歯止めのない」自衛隊派遣を意味しよう。

 オバマ米政権は「リバランス」(再均衡)政策を掲げる。二つ目の目的の日米同盟強化は、負担肩代わりの点でも「渡りに船」だ。

 実際、中国が岩礁埋め立てを急ぐ南シナ海で、自衛隊の恒常的な警戒監視活動を望む発言が米側から相次いでいる。いずれ望まない紛争に巻き込まれかねない。

 他国軍支援はこれまで特別措置法で対応してきた。イラク戦争では「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊派遣を)の一言でイラク特措法が成立した。

 結果的に開戦は誤りだったが、いまだに日本政府はきちんとした検証を怠っている。失敗から教訓を学ばない政治が、恒久法を手にしたらどうなるのか。

 政府が法案を2本にまとめたのは、いざとなれば数の力で押し切る意思表示にみえる。戦後70年、海外で一度も武力行使しなかった日本の歩みを転換させる法案だ。強行採決は許されない。

 安保関連法をめぐる国会論戦は今月下旬から本格化する。国権の最高機関にふさわしい議論を与野党に求める。


by asyagi-df-2014 | 2015-05-16 06:08 | 米軍再編 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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