2016年度から使われる中学校用教科書の検定結果を危惧する。

 文部科学省は2015年4月6日、2016年度から使われる中学校用教科書の検定結果を公表した。
このことについて、沖縄タイムスは2015年4月7日、「領土に関する教育を強化させた学習指導要領解説書に沿い、社会科(地理・歴史・公民)の全ての教科書が尖閣諸島について取り上げ、多くが『固有の領土』と記述した。中国船による領海侵入などに触れる教科書も目立つ。歴史では、沖縄戦や沖縄の米軍基地問題を手厚く取り上げた『学び舎(しゃ)』が新規参入し合格、教科書の選択肢が広がった。』と、報じた。
 また、「領土教育については、今春から使われる小学校の社会科教科書も全て尖閣・竹島を記述しており、義務教育から教える流れが鮮明になった。社会科で政府見解の明記などを求めた新検定基準も初めて適用され、政府の立場を教科書に記載する傾向が強まった。」としている。

 この検定結果の焦臭さについて、2015年4月8日の沖縄タイムス社説は「国家による教育への過剰な介入は危うさがつきまとう。特に周辺諸国とのあつれきを生みかねない領土問題や歴史認識についてはなおさらだ。時計の針が戦前に逆回転しているような印象さえ受ける。」と伝えた。
 
 安部晋三政権下での「教書改革」の初の検定である。
 「政府見解の記述を求めるのは実質的な『国定教科書』への回帰である。」との指摘は、この政権下の方法論の常套手段を言い当てている。

 以下、沖縄タイムスの引用。






沖縄タイムス-教科書検定 中学社会全てに「尖閣」-2015年4月7日


 文部科学省は、2016年度から使われる中学校用教科書の検定結果を6日公表した。領土に関する教育を強化させた学習指導要領解説書に沿い、社会科(地理・歴史・公民)の全ての教科書が尖閣諸島について取り上げ、多くが「固有の領土」と記述した。中国船による領海侵入などに触れる教科書も目立つ。歴史では、沖縄戦や沖縄の米軍基地問題を手厚く取り上げた「学び舎(しゃ)」が新規参入し合格、教科書の選択肢が広がった。

 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」については、8社の歴史教科書のうち、自由社を除く7社が取り上げた。うち「軍の関与」まで記述したのは育鵬社を除く6社。前回検定の4社から増えたが、対応は分かれた。

 沖縄戦関連の検定意見では、1件で、自由社(歴史)の「日本軍と沖縄住民はよく戦った」との表現が「生徒が誤解するおそれのある表現である」と指摘された。

 公民の教科書では、6社すべての教科書が普天間飛行場問題について触れた。うち4社が、名護市の「辺野古」という地名を挙げて「移設問題」を取り上げた。オスプレイの配備や、仲井真弘多前知事による辺野古沖の埋め立て承認に言及する教科書もあった。

 領土教育については、今春から使われる小学校の社会科教科書も全て尖閣・竹島を記述しており、義務教育から教える流れが鮮明になった。社会科で政府見解の明記などを求めた新検定基準も初めて適用され、政府の立場を教科書に記載する傾向が強まった。

 歴史教科書では、初参入の学び舎と、「つくる会系」の自由社が不合格だったが、いずれも内容を修正して再申請し、合格した。


沖縄タイムス説-中学教科書検定]危うい政権の過剰介入-2015年4月8日


 国家による教育への過剰な介入は危うさがつきまとう。特に周辺諸国とのあつれきを生みかねない領土問題や歴史認識についてはなおさらだ。時計の針が戦前に逆回転しているような印象さえ受ける。

 文部科学省は、2016年度から使われる中学校用の教科書検定結果を公表した。検定基準や学習指導要領解説書の改定など、安倍政権の「教科書改革」の下での初の検定である。

 際立っているのは、領土教育の強化と日本の立場の明記、慰安婦や戦後補償など近現代史で政府の統一見解がある場合はそれを加筆するよう求めていることである。

 その結果、領土の記述は倍増した。社会科の検定を申請した教科書18冊すべてが尖閣諸島と、竹島について取り上げ、多くが「日本固有の領土」と記述した。

 「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領有権の問題は存在しないというのが日本の立場」(教育出版・公民)「竹島は日本固有の領土だが、韓国が領有を主張し、不法占拠している」(育鵬社・公民)などと記述されている。

 下村博文・文科相は教科書検定について「これまで光と影のうち影の部分が多かった。政府見解を載せることで、よりバランスがとれる」と述べた。

 領土問題では「日本政府の見解」を鮮明にする一方で、周辺諸国の主張を記述した社はない。領土に関する認識は大切だろう。だが、相手国の見方や過去の歴史的経緯に触れなければ、なぜ問題化しているのか理解するのは難しい。
    ■    ■
 「学説が定まっていない場合は、その旨を明記し、生徒が誤解しないようにする」。文科省は検定基準の改定で、近現代史を扱う際の留意事項を追加した。愛国心を盛り込んだ教育基本法の目標に照らして重大な欠陥があれば不合格にすることも明記した。

 検定基準の厳格化がもたらすのは何か。

 沖縄戦の記述に関して、これまで「日本軍によってスパイと疑われて殺害された」と記述していた出版社が「スパイとみなされ処罰されることもあった」と変更した。これは単なる変更ではなく歴史の改ざんではないか。

 「集団自決(強制集団死)」については、6社が「軍の関与」に触れたが、うち1社はこれまでの「自決を強いられた」を各社同様に「自決に追い込まれた」と変更。その結果、強制性を明記した出版社がなくなった。いずれも自主規制の結果である。これでは沖縄戦の実相を伝えられなくなる恐れが出てくる。
    ■    ■
 政府見解の記述を求めるのは実質的な「国定教科書」への回帰である。安倍政権の意向を忖度(そんたく)し、執筆者や出版社が萎縮すれば教科書の変節を招くことになろう。

 領土教育の過度な強化や近現代史についての政府見解の記述は、偏狭な排他意識を植え付けることにならないか。多様な意見、物の見方に触れて考え方の幅を広げるのが教育だ。「安倍色」の強い教科書で近隣諸国との友好に寄与する人材を育むことができるのか危惧する。


by asyagi-df-2014 | 2015-04-10 06:10 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
画像一覧