沖縄から-翁長雄志知事との会談

 菅義偉官房長官は2015年4月4日、米軍キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区返還式典に出席するため沖縄を訪れた。5日には翁長雄志知事と会談を行うとされている。
 どうやら、その理不尽さが読み取れるキーワードは、次の三つの言葉である。
 ①「辺野古が唯一の選択肢」、②「総合的な政策で選ばれる」、③「法事国家として」。  
沖縄タイムスと琉球新報の社説から、この間の安部晋三政権の理不尽さを読み取る。
 
 (1)「辺野古が唯一の選択肢」について、「安倍晋三首相が好んで使う『この道しかない』という言葉は、サッチャー元英首相のスローガン『ゼア・イズ・ノー・オルタナティブ(ほかに選択肢はない)』に由来する。この言葉を政権は恐らく辺野古推進の哲学にしている。なぜ辺野古なのか、県外はどうなったのか。詳しい説明がないまま、県の頭越しに現行案を決め『唯一の選択肢』や『危険性の除去』を脅し文句のように繰り返している。」と、分析する。また、「選択肢のない政策はない。国と県が今後も協議を継続するのであれば、辺野古での海上作業を一時中断し、対話の環境を整えるべきである。」と、指摘する。
 実に、明快である。


 (2)「総合的な政策で選ばれる」について、次のように反論する。
 管氏は、「移設に反対する人もいれば、逆に普天間の危険除去を一日も早く実現してほしいという多くの民意もある」と述べたが、「菅氏の言う危険性除去は新基地建設のための方便にしか聞こえない。」。何故なら、「危険性除去を最優先させるなら、ここまで長期にわたって問題を引きずることはなかったはずだ」と。そして、「危険性の除去が主たる目的であるのなら、事故後すぐに基地は閉鎖されるべきであった。いまだに「世界一危険」なまま放置されていることに疑問を抱く。 菅氏の一連の発言にちらつくのは、政権のおごりと、都合のいい解釈である。」と、結論づける。
 これまた、明快である。


(3)「法事国家として」について、行政不服審査法の第1条「趣旨」は、「行政庁の違法不当な処分、公権力行使に関し、国民に広く不服申し立てのみちを開く」と定義されている。そもそも「国の不当な行為から私人を守ることが『趣旨』である法を使い、国の行為を守ったのだ。立法趣旨に反するとの意見が法学者の間でも強い。これで『法治国家』もあるまい。」と、切って捨てる。
 そして、「およそ非論理的な発言の数々は滑稽ですらある。これ以上、詭弁(きべん)を続けるのはやめてもらいたい。」と、結論づけた。

 安部晋三政権の方法論と沖縄の二紙のどちらが理に適っているか、これまた明快である。

 以下、沖縄タイムス及び琉球新報の引用。






沖縄タイムス社説-[菅氏きょう来県]作業中止し対話進めよ-2015年4月4日


 菅義偉官房長官が4日、米軍キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区返還式典に出席するため沖縄を訪れる。5日には翁長雄志知事と会談する。

 普天間飛行場の辺野古移設に反対する翁長氏が昨年12月に知事に就任して以降、官邸の「沖縄冷遇」は露骨で、今回が初の話し合いとなる。

 会談を前にした2日の記者会見で菅氏は、「移設に反対する人もいれば、逆に普天間の危険除去を一日も早く実現してほしいという多くの民意もある」と述べた。

 「沖縄の民意を理解していただく」と語った翁長氏をけん制してのことだ。

 しかし、一日も早い危険性の除去は県民の要望であって、翁長氏も県政の重要課題に位置付けている。

 菅氏の言う危険性除去は新基地建設のための方便にしか聞こえない。危険性除去を最優先させるなら、ここまで長期にわたって問題を引きずることはなかったはずだ。

 日米間で普天間の「5~7年以内」の返還が合意されたのは1996年。それが米軍再編ロードマップで「2014年」に先送りされ、おととしの返還計画で「22年度またはその後」とずれ込んだ。

 普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学構内に米軍ヘリが墜落したのは04年のことである。

 危険性の除去が主たる目的であるのなら、事故後すぐに基地は閉鎖されるべきであった。いまだに「世界一危険」なまま放置されていることに疑問を抱く。
    ■    ■
 菅氏の一連の発言にちらつくのは、政権のおごりと、都合のいい解釈である。

 辺野古移設に賛成の声が一定数あるのは否定しないが、忘れてはならないのは、昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で示された「新基地ノー」の圧倒的民意である。

 特に知事選では現職候補に10万票近い大差をつけるなど、これまでにない住民意識の変化を明確にした。その民意のうねりが、衆院選県内4選挙区の全てで移設反対派を勝利させたのである。

 移設反対だけではなく「総合的な政策で選ばれる」とする菅氏の主張は、あきれて検討にも値しない。政治的な誠実さや謙虚さも感じられない。

 もう一つのフレーズ「辺野古が唯一の選択肢」という言い方も、海兵隊の沖縄駐留の必要性が専門家によって否定される今となっては、本土が嫌がるから沖縄に置くことの言い換えと受け取れる。
    ■    ■
 安倍晋三首相が好んで使う「この道しかない」という言葉は、サッチャー元英首相のスローガン「ゼア・イズ・ノー・オルタナティブ(ほかに選択肢はない)」に由来する。この言葉を政権は恐らく辺野古推進の哲学にしている。

 なぜ辺野古なのか、県外はどうなったのか。詳しい説明がないまま、県の頭越しに現行案を決め「唯一の選択肢」や「危険性の除去」を脅し文句のように繰り返している。

 選択肢のない政策はない。国と県が今後も協議を継続するのであれば、辺野古での海上作業を一時中断し、対話の環境を整えるべきである。


琉球新報社説-菅氏「民意」発言 牽強付会も甚だしい-2015年4月4日


 耳を疑うとはこのことだ。
 菅義偉官房長官が、米軍普天間飛行場の辺野古移設について「反対する人もいれば、逆に一日も早く解決してほしいという多くの民意もある」と述べた。翁長雄志知事が「民意を理解していただく」と述べたことへの反論である。
 菅氏から「民意」を尊重するかのような発言を聞くとは思いもよらなかった。選挙で選ばれた人との面会を避け続け、反対の声を無視して新基地建設を強行してきた人物が民意を持ち出すとは、どういう了見か。
 よろしい。それではどちらの民意が多いか比べてみよう。
 県民は昨年、明瞭に意思を示した。辺野古の地元の名護市長選と市議選、知事選でいずれも辺野古反対派が勝利した。衆院選では名護市を含む3区だけでなく、普天間の地元である宜野湾市を含む2区も反対派が大勝した。当の宜野湾市でも6千票の大差だ。選挙という選挙でことごとく示した結果を民意と言わずして何と言うか。
 政府が辺野古の海底掘削を始めた昨年8月の世論調査では「移設を中止すべきだ」が8割を超えた。「そのまま進めるべきだ」は2割にとどまる。そもそも、かつて県民世論調査で辺野古反対が5割を切ったことなど一度もない。
 選挙結果も世論調査も無視する内閣がことさらに賛成の民意を言い立てている。自らに反対の声は無視し、賛成の声を過大評価するさまは、「針小棒大」「牽強付会(けんきょうふかい)」と呼ぶしかあるまい。
 菅氏は知事選後も衆院選後も「粛々と移設作業を進める」と述べた。県が掘削作業停止を指示した際には「この期に及んで」とも述べた。沖縄がどんな民意を示しても、どんな異議申し立てをしても、「問答無用」と言うに等しい。
 菅氏の常套句(じょうとうく)には「法治国家として」もある。県の掘削停止指示を行政不服審査法を用いて効力停止させた際も述べていた。
 だが同法の第1条「趣旨」にはこうある。「行政庁の違法不当な処分、公権力行使に関し、国民に広く不服申し立てのみちを開く」。国の不当な行為から私人を守ることが「趣旨」である法を使い、国の行為を守ったのだ。立法趣旨に反するとの意見が法学者の間でも強い。これで「法治国家」もあるまい。
 およそ非論理的な発言の数々は滑稽ですらある。これ以上、詭弁(きべん)を続けるのはやめてもらいたい。


沖縄タイムス社説-[きょう翁長・菅会談]辺野古ノーが多数の声-2015年4月5日


 名護市辺野古の新基地建設をめぐる菅義偉官房長官の発言が波紋を呼んでいる。

 菅氏は3日の会見で、昨年1月の名護市長選、11月の県知事選、12月の衆院選で辺野古移設反対の候補がすべて勝利したことについて「総合的な政策の中で選ばれた」と述べた。

 移設反対の民意が示されたことを認めれば、工事強行の正当性を失ってしまう。だから、何が何でも移設反対の民意が示されたことを否定したいのである。民主国家を名乗る以上、地元の同意を得ずに一方的に米軍基地を建設することは許されないからだ。  昨年、実施された三つの選挙は、これまでの選挙と違って、辺野古移設の是非を正面から問うものだった。この選挙で現職の仲井真弘多前知事は約10万票の大差で敗れ、自民党の4人の国会議員は衆院小選挙区でそろって「討ち死に」した。なぜか。

 いずれも前回選挙で県外移設を公約に掲げたにもかかわらず、移設容認に転じた。公約破りに有権者からレッドカードが突きつけられたのである。有権者は辺野古移設に対して、疑問の余地がないほど明確に「ノー」を突きつけたといえる。

 移設反対の民意が示されたという見方を否定し、「普天間の危険性除去をなんとかしてほしいというのが沖縄県民の声」だと、臆面もなく問題をすり替える菅氏の発言は、沖縄の人々に寄り添うという姿勢からはほど遠い。

 こんな認識で5日の翁長雄志知事との会談に臨むようでは、実のある話は期待できない。    ■    ■
 民意無視の発言は菅氏だけではなかった。

 自民党県連の会長に就任した島尻安伊子参院議員は4日、県連大会であいさつし、市民の反対運動について「責任のない市民運動だと思っている。私たちは政治として対峙(たいじ)する」と言い放った。

 驚くべき発言である。

 これが安倍政権全体を覆っている空気を反映しているのは明らかである。

 3月26日の自民党国防部会では、辺野古移設について不退転の覚悟で「絶対に進めるべき」だとの意見が相次いだという(3月27日付東京新聞)。

 だが、なりふり構わぬ姿勢を示せば示すほど辺野古移設が自己目的化し、政府が主張する正当性は失われていく。

 仲井真前知事は2011年に「辺野古移設に固執するのではなく、もっと早く現実的に移設できる県外の場所を探すべきだ」と主張した。普天間飛行場の危険性除去を一日も早く実現したいのであれば、そこに立ち戻るべきである。
    ■    ■
 政府の第1のつまずきの石は「地元の頭越しには進めない」という原点を政府が自ら破ったことだ。

 第2は、稲嶺恵一知事時代に県がまとめた普天間受け入れ構想を、県に相談もなく放棄し、閣議決定まで反故にしたことである。

 戦中・戦後の筆舌に尽くしがたい苦難と、三つの選挙で示された民意に謙虚に向き合うことが、政府と県の対話が成立するための条件である。


by asyagi-df-2014 | 2015-04-05 09:49 | 沖縄から | Comments(0)

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