安倍首相が口にした『我が軍』という言葉。

 「五十嵐仁の転成仁語」というブログで、「安倍首相が口にした『我が軍』という言葉はどのような意味を持っていたのか」という内容に出合いました。
 どうやら、安倍首相は、3月20日のの参院予算委員会で、「自衛隊と他国との訓練について説明するなかで自衛隊を『我が軍』と述べました。維新の党の真山勇一氏が訓練の目的を尋ねたのに対し、首相は『我が軍の透明性を上げていくことにおいては、大きな成果を上げている』」と、語ったということなのです。
 東京新聞が2015年3月25日に、「『わが軍』答弁、問題ない 野党批判に官房長官」という記事を掲載しましたので、驚くことに、間違いのないことなのです。それも、官房長官が、「自衛隊が軍隊であるかどうかは、定義いかんによるものだ。(答弁が)誤りとの見解は全く当たらない」と述べた、ということなのです。
 あきれ果ててしまいます。
 こんな人たちだから、現行の日本国憲法の意味を全く理解できないないしは理解しようとしない人たちであるからこそ、現在の状況があるということを、これはいつものように本音の発言であることを、改めて確認しました。

 例えばそれは、民主党の細野豪志政調会長の「これまで自衛隊という形で憲法の枠組みの中で積み上げた議論を、全部ひっくり返すような話を総理がおっしゃるということについては非常に理解に苦しむ。(新しい安全保障法制をめぐる)与党合意ができたということで前のめりになっておられるのかもしれないが、この問題については時間をかけてしっかりと国会でやることが極めて重要だ。私は安全保障については現実的な対応を、という考え方だが、私の目から見ても非常に懸念される状況なので、より民主党の役割は大きくなってきている」という発言が、あたりまえの反応である。
 さらに、現在の集団的自衛権の論議がいかにひどいものであることの証明である。

 以下、十嵐仁の転成仁語の引用。







五十嵐仁の転成仁語


心の内が、ポロリと表に出てしまったということでしょう。普段からそう考えているから、何気ない答弁で言葉になってしまうのです。

 安倍晋三首相は20日の参院予算委員会で、自衛隊と他国との訓練について説明するなかで自衛隊を「我が軍」と述べました。維新の党の真山勇一氏が訓練の目的を尋ねたのに対し、首相は「我が軍の透明性を上げていくことにおいては、大きな成果を上げている」と語り、大きな問題になっています。
 これが何故、問題になるのかといえば、政府の公式見解では、自衛隊を「通常の観念で考えられる軍隊とは異なる」としているからです。憲法9条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めていますから、「軍」を保持することは憲法違反になります。
 事実、安倍首相自身も、2006年の第1次安倍内閣の答弁書(06年12月1日付)では、自衛隊は「通常の観念で考えられる軍隊とは異なるもの」で、憲法9条第2項で「保持することが禁止されている『陸海空軍その他の戦力』には当たらない」と答えていました。

 それを、今回の答弁では「我が軍」と述べて、自衛隊を「軍」として認識していることが明らかになったわけです。これに対して、民主党の細野豪志政調会長は24日の記者会見で、「これまで自衛隊という形で憲法の枠組みの中で積み上げた議論を、全部ひっくり返すような話を総理がおっしゃるということについては非常に理解に苦しむ。(新しい安全保障法制をめぐる)与党合意ができたということで前のめりになっておられるのかもしれないが、この問題については時間をかけてしっかりと国会でやることが極めて重要だ。私は安全保障については現実的な対応を、という考え方だが、私の目から見ても非常に懸念される状況なので、より民主党の役割は大きくなってきている」と発言しています。
 このような発言をするのは当然でしょう。「現実的な対応を」と考えている細野さん「の目から見ても非常に懸念される状況」であることが、首相自身の口から明らかになったのですから……。

 しかし、安倍首相が「これまで自衛隊という形で憲法の枠組みの中で積み上げた議論を、全部ひっくり返すような話」をするのは、今回が初めてではありません。すでのに、2013年2月1日の参院本会議で、「自衛隊は国内では軍隊ではありませんが、国際法上は軍隊として扱われています。このような矛盾を実態に合わせて解消することが必要と考えます」と答弁していました。
 また、自民党が2012年4月に発表した憲法改正草案には「国防軍」の創設が盛り込まれています。これも、「矛盾を実態に合わせて解消する」ためのものでしょう。
 これまで、「戦力」としての軍隊は保有できないけれども、憲法は自衛権を認めているので、「国際紛争を解決する手段としては」放棄しても「自衛」のためなら許されるとし、その「必要最小限度」を越えない実力組織であれば保有は許されるという解釈の下に、自衛隊が発足し、保持され、増強されてきました。その結果、「国際法上は軍隊として扱われる」ほどの「戦力」にまで成長し、その結果生じた「矛盾」を「実態に合わせて解消する」ために、自衛隊を通常の軍隊と位置付けるために、「実体」の方ではなく「憲法」に法を変えようというのが、安倍首相が考えている改憲方針だということになります。

 これまで国民を欺いてきた結果、憲法の枠に実態が合わなくなり、自衛隊は「軍」になってしまいました。本来であれば、憲法の趣旨によってそれを是正するというのが、あるべき姿でしょう。
 それを、実態がこうなってしまったから、憲法の方を変えるというわけです。これでは憲法の持っている規範性が失われてしまいます。
 国民を欺き憲法に違反して実態を変え、今度は、その実態に合わせて憲法の方を変えてしまおうというのですから……。

 自衛隊は通常の軍隊ではないから憲法違反ではないというのが、これまでの政府の説明でした。安倍首相も第1次内閣では、そう答弁していたのです。しかし、このような偽りの答弁で取り繕うことができないほどに、自衛隊の「実力」は増強され、世界でも有数の軍隊としての「実態」を持つようになってしまいました。
 このような「実態」を踏まえて、力を弱めてきたアメリカから、もっと能動的で積極的な役割を果たし、軍事分担を引き受けるように強く要求されるようになりました。それに応えるためには、これまでの枠を外し、憲法の制約を踏み越える必要が出てきたというわけです。
 日本の安全と関係あろうがなかろうが普通の軍隊として米軍などと協力できるようにするための方策が集団的自衛権の行使容認であり、9条改憲なのです。そのような方向を目指して与党協議会で公明党を抱き込むことに成功し、いよいよ国会に法案を出してそれが実現できると思い込んだ安倍首相が、思わずポロリと言ってしまった言葉が「我が軍」でした。

 集団的自衛権の行使を容認するための新3要件の最初には、「我が国と密接な関係にある他国が攻撃されたとき」とありますが、ここには「軍」という言葉が隠されています。実際に自衛隊が守るのは、「他国」ではなく「他国(軍)」であり、その主たる対象は米軍です。
 集団的自衛権の行使容認と9条改憲が目指しているのは、自衛隊を普通の軍隊として認知し、いつでもどこでも米軍との共同作戦を可能にすることなのです。今回、思わず安倍首相が口にした「我が軍」という言葉は、はしなくもこのような思惑の一端を表面化させる失言だったということになります。

東京新聞- わが軍」答弁、問題ない 野党批判に官房長官-2015年3月25日

 菅義偉官房長官は25日の記者会見で、安倍晋三首相が自衛隊を「わが軍」と国会答弁したことに野党が批判を強めていることに関し、問題ないとの認識を示した。「自衛隊が軍隊であるかどうかは、定義いかんによるものだ。(答弁が)誤りとの見解は全く当たらない」と述べた。

 同時に「自衛隊は憲法上の制約が課されており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるが、自国防衛を主な任務とする組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊だ」と説明。首相の答弁は外国軍隊との共同訓練について言及したもので、一連の答弁で「自衛隊とも言っている」と強調した。


by asyagi-df-2014 | 2015-03-25 17:41 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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