沖縄から-今、沖縄で起こっていること。-「逮捕」の手続が適正であったのか」ということ。

 今回の沖縄平和運動センターの山城博治議長ほか1名の「逮捕」について、弁護士・金原徹夫のブログで、次のように指摘しています。

問題は、「逮捕」の手続が適正であったのか?ということです。
 先ほど述べたように、2人の身柄を沖縄県警が米軍から引き渡された根拠は、刑事特別法12条でしょうから、通常逮捕の要件を満たしていれば12条1項、緊急逮捕の要件を満たしていれば12条2項が適用されることになるのですが、そもそも「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(通常逮捕の場合)も「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」(緊急逮捕の場合)もないと判断した場合には、12条3項の規定に基づき、直ちに釈放しなければなりません。
 沖縄県警は、逮捕時、山城さんに逮捕状を示していないのですから、通常逮捕であるはずがありません(刑事訴訟法201条1項)。
 それでは「緊急逮捕」なのでしょうか。刑事訴訟法に基づく緊急逮捕は、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」でなければ適用されないのですが(刑事訴訟法210条)、刑事特別法12条2項は、この規定の特則をなすため、刑事特別法2条違反(一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料)であっても、緊急逮捕自体は可能です。
 問題は、「直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」(刑事特別法12条2項後文)という手続を経て逮捕状が発布されながら、それを被疑者に示さないというようなことが許されるのか?ということです。
  以上、あれこれ考えてはみたものの、全然すっきりと腑に落ちるという訳にはいきませんでした。
 しかし、米軍による「身体拘束」、沖縄県警による「逮捕」のいずれについても、様々な問題をはらんでいるらしいということ位はご理解いただけたでしょうか。

 
 今回の沖縄平和運動センターの山城博治議長ほか1名の「逮捕」については、現在の沖縄の問題としてだけではなく、「米軍による『身体拘束』、沖縄県警による『逮捕』」のいずれについても日本全体で本等にしっかり考えていかなくてはならないと思います。
 
 以下、弁護士・金原徹雄のブログの引用。






山城博治氏らは何を根拠に米軍に「身体拘束」され沖縄県警に「逮捕」されたのか?

 一昨日(2月22日)午前9時過ぎ、沖縄平和運動センターの山城博治議長ほか1名がキャンプ・シュワブゲート前で米軍警備員に基地内に行きずり込まれて「身体拘束」され、同日午後1時過ぎに米軍から沖縄県警(名護警察署)に2人の身柄が引き渡されたものの「逮捕」されてしまい、翌23日の午後8時前、那覇地方検察庁が勾留請求をしなかったため、名護署において「釈放」されるという一連の事件について考えてみます。
 昨日書いた(というよりは地元沖縄から発信された報道等をコラージュした)ブログ「沖縄で起こったこと、起こってはならなかったこと~地元からの報道で知る」において、私は次のように述べました。

「なお、今日のところは時間の余裕がなく、そもそも最初の米軍による2人の「身柄拘束」の法的根拠(そんなものがあったのか?も含め)についての検討が出来ていません。末尾に刑事特別法、日米地位協定の関連条文を引用するにとどめますが、早急に検討したいと思います。」

 今日はその宿題の最初のとっかかりにしかならないと思いますが、米軍による「身体拘束」と沖縄県警による「逮捕」について、その法的根拠を考えてみたいと思います。
 ただ、お断りしなければならないのは、私は弁護士とはいえ、刑事訴訟法、刑事特別法、日米地位協定等を特に勉強してきたという者では全然なく、単に条文を読みながら、「こういうことではないのだろうか?」と考えたことを、思考の整理のために書いてみただけであるということです。
 この2日間の事実経過を裏付ける信頼するに足る資料を基にした、この問題を論ずるにふさわしい識者の見解を私も是非伺いたいと思っています。
 なお、昨日と同じものですが、刑事特別法、日米地位協定等の関連条項を末尾に引用しておきます。

 まず、米軍に雇用された警備員による最初の「身体拘束」ですが、これは一体何だったのでしょうね?後に沖縄県警(名護署)による「逮捕」の根拠となったのは、おそらく刑事特別法2条の「正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第二条第一項の施設又は区域をいう。以下同じ。)であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料に処する。但し刑法 (明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、同法による。」という罰則規定であったようです。
 そもそも、現場にいた地元紙記者(沖縄タイムス)が目撃した状況に基づいて書いた記事や撮影した写真などから考えて、山城さんにキャンプシュワブの「施設又は区域」に入ろうという故意に基づく行為があったとは到底考えられず、いかなる意味からも不当な「身体拘束」であることは明らかですが、仮にその点をおくとして、一体何を根拠に米軍警備員は山城さんらを基地内に引きずり込んで「身体拘束」をしたのでしょうか?

 一つの考え方は、刑事訴訟法に基づく私人による現行犯逮捕であったというものです。今日の琉球新報社説はこの説に立っているようです。

 刑事訴訟法の該当条文は以下のとおりです。

刑事訴訟法(昭和二十三年七月十日法律第百三十一号)
第二百十二条 現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
2 左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
一 犯人として追呼されているとき。
二 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
三 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
四 誰何されて逃走しようとするとき。
第二百十三条 現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
第二百十四条 検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

 琉球新報社説が「私人逮捕の場合、現場に警察官が到着するまで身柄を確保することはあるが、現場にはすでに大勢の警察官がいた。すぐに身柄を引き渡せばいいはずだ。」と書いたのは、刑事訴訟法214条を踏まえたものです。
 「直ちに」「司法警察職員(まあ、警察官のことだと思えばいいでしょう)に引き渡さなければならない」ですからね。ゲート前には多くの警察官がいたのですから、「直ちに」引き渡すことははなはだ容易でした。
 それに第一、現場には米軍警備員も日本の警察官もいたのですから、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」であるか否かを、多くの警察官をさしおいて私人(検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者)が勝手に判断して逮捕することなど許されるのか?という疑問があります。
 しかも、警備員らは山城さんらを引きずって基地内に「拉致」して「身体確保」したのですからね。これを刑事訴訟法213条の「現行犯人逮捕」とするのは、いくら何でも無理筋過ぎないか、というのが私の意見です。

 それでは一体何なんだ?ということですが、日米地位協定17条10(a)に「合衆国軍隊の正規に編成された部隊又は編成隊は、第二条の規定に基づき使用する施設及び区域において警察権を行なう権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」という規定があり、しかもこの条項に関連する「日米地位協定合意議事録」には、「合衆国の軍当局は、施設又は区域の近傍において、当該施設又は当該区域の安全に対する罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続に従つて逮捕することができる。これらの者で合衆国軍隊の裁判権に服さないものは、すべて、直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない。」とされていますので、これかな?という気もします。


 ただし、「合意議事録」にある「近傍」条項を使った「逮捕」だと主張するのも無理がありそうです。なぜなら、「施設又は区域」に立ち入っていないにもかかわらず、「当該施設又は当該区域の安全に対する罪」の現行犯人として逮捕するとしたら、一体その「罪」とは何かが問題になります。刑事特別法2条は「入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない」ことが構成要件なのですから、「近傍」にいるだけでは該当しません。
 それに、刑事訴訟法に基づく私人としての現行犯人逮捕の場合と同様、「直ちに日本国の当局に引き渡さなければならない」も守られておらず、米軍がこれを持ち出す訳にはいかないでしょう。

 それでは、地位協定17条10(a)に基づき、「合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」という包括的な警察権に基づく行為なのでしょうか?
 今のところ、私はこれを一番疑っています。
 琉球新報社説が「この行為に在沖米海兵隊報道部は「米海兵隊施設に侵入したとして日本人警備員が『逮捕』した」と説明している。」としていることとも矛盾はしないように思います。
 基地内に引きずり込まれても、それは「すべての適当な措置」の一部だと米軍が主張したらどうしようもないのかもしれません。それが、一部で日本国憲法に優越すると言われることもある日米地位協定の恐ろしいところなのでしょう。

 ところで、22日に米軍は2人の身柄を沖縄県警に引き渡し、県警は2人を「逮捕」していますが、その根拠は、刑事特別法12条に求めるべきでしょう。
 そうである以上、「合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知」が沖縄県警にあったとしか考えられず、そうすると、「日本国の法令による罪を犯した」として米軍は2人を「身体拘束」していたということになります。
 ただし、刑事訴訟法に基づく「私人逮捕」ではないので、「直ちに」日本の「検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない」義務はなかったということなのでしょうか?

 結局のところ、米軍による「身体拘束」の実体法上、手続法上の根拠は、私の能力ではよく分かりませんと言うしかないのですが、その約4時間後、米軍から2人の引き渡しを受けた沖縄県警(名護警察署)が「逮捕」したことには、当然、日本の法律による根拠があるはずです。
 もちろんこの場合にも、根拠は2つの側面から必要です。
 1つは、どんな「罪」を犯したのか?という実体法上の根拠であり、もう1つは、どのようにして「逮捕」したのかという手続法上の根拠です。
 この点について、IWJが三宅俊司弁護士へのインタビューなどに基づいて報じた以下の記事などが参考になります。

 いずれにせよ、実体法としては、刑事特別法2条の規定が適用されたのは間違いないようです(というか、事実上それ以外に考えようがない)。

 問題は、「逮捕」の手続が適正であったのか?ということです。
 先ほど述べたように、2人の身柄を沖縄県警が米軍から引き渡された根拠は、刑事特別法12条でしょうから、通常逮捕の要件を満たしていれば12条1項、緊急逮捕の要件を満たしていれば12条2項が適用されることになるのですが、そもそも「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(通常逮捕の場合)も「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」(緊急逮捕の場合)もないと判断した場合には、12条3項の規定に基づき、直ちに釈放しなければなりません。
 沖縄県警は、逮捕時、山城さんに逮捕状を示していないのですから、通常逮捕であるはずがありません(刑事訴訟法201条1項)。
 それでは「緊急逮捕」なのでしょうか。刑事訴訟法に基づく緊急逮捕は、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」でなければ適用されないのですが(刑事訴訟法210条)、刑事特別法12条2項は、この規定の特則をなすため、刑事特別法2条違反(一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料)であっても、緊急逮捕自体は可能です。
 問題は、「直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。」(刑事特別法12条2項後文)という手続を経て逮捕状が発布されながら、それを被疑者に示さないというようなことが許されるのか?ということです。
 この点については、刑事訴訟法に詳しい研究者・実務家の意見に待ちたいと思います。
 
 以上、あれこれ考えてはみたものの、全然すっきりと腑に落ちるという訳にはいきませんでした。
 しかし、米軍による「身体拘束」、沖縄県警による「逮捕」のいずれについても、様々な問題をはらんでいるらしいということ位はご理解いただけたでしょうか。


by asyagi-df-2014 | 2015-02-26 06:14 | 沖縄から | Comments(0)

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