労働問題-「残業代ゼロ」法案提出へ

 厚生労働省は、今通常国会に労働基準法改正案を提出し、2016年4月の実施をめざすことになった。
 このことについて、朝日新聞は、2015年2月14日、「厚生労働省の労働政策審議会は13日、長時間働いても残業代などが払われない新しい働き方を創設する報告書をまとめた。労働組合などからは「『残業代ゼロ』になり、働き過ぎの歯止めがなくなる」と批判の声があがるが、厚労省は今通常国会に労働基準法改正案を提出し、2016年4月の実施をめざす。」と、報じている。
 また、すでに導入した米国の状況について、「米国の制度を調査した日本労働弁護団の菅俊治弁護士によると、WEの対象者の労働時間は対象外の人より長くなる傾向にある。『残業代を払わなくてよければ労働時間が抑制できずに、業務量は増えて長く働かされる』と指摘する。」との記事を紹介している。

 2015年1月16日の厚生労働省労働政策審議会における「今後の労働時間法制等の在り方について(報告書骨子案)」については、日本労働弁護団の「長時間労働野放し法に断固反対する声明」を参考に考え方の根拠を紹介した。
 再度次のことを確認する。

「報告書骨子案のいう新しい労働時間制度は、新たな労働時間規制の適用除外制度(エグゼンプション)を設けることにより、歯止めのない長時間労働・深夜労働を野放しにさせ、『残業代ゼロ』を合法化しようとするものに他ならず、絶対に導入を許してはならない。」

 以下、朝日新聞の引用。






朝日新聞-「残業代ゼロ」法案提出へ 厚労省、来春の実施目指す-2015年2月14日

 厚生労働省の労働政策審議会は13日、長時間働いても残業代などが払われない新しい働き方を創設する報告書をまとめた。労働組合などからは「『残業代ゼロ』になり、働き過ぎの歯止めがなくなる」と批判の声があがるが、厚労省は今通常国会に労働基準法改正案を提出し、2016年4月の実施をめざす。

働き過ぎ、防げるか 経営側「さらに対象拡大を」
 新しい働き方は「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれ、導入のねらいについて、報告書では「時間でなく、成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応える」とした。

 高度な専門知識や技術、経験を持つ労働者を対象にし、為替ディーラーやアナリスト、コンサルタントなどを想定する。

 年収の条件としては、「1075万円以上」と省令に明記する。何時間働いても残業代や深夜、休日手当が支払われなくなる。企業で導入する場合は本人の同意を条件とし、年104日以上の休日取得など働き過ぎを防ぐ仕組みの導入も求める。

 報告書には、労使で事前に決めた労働時間に応じ賃金を支払い、追加の残業代が出ない「裁量労働制」の対象を、営業職の一部に広げることも盛り込まれた。

朝日新聞-働き過ぎ、防げるか 「残業代ゼロ」法案提出へ 経営側「さらに対象拡大を」-2015年2月14日

働き方はこう変わる
 厚生労働省の労働政策審議会が13日まとめた報告書に、「残業代ゼロ」となる新しい働き方が盛り込まれた。安倍政権が掲げる成長戦略の目玉の一つで、反対を続けた労働側は最後は押し切られた。働き過ぎを防ぐ仕組みは十分なのか、疑問は残ったままだ。
 安倍晋三首相は、12日の施政方針演説で「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度、社会の発想を、大きく改めていかなければならない」と語り、なかなか手のつけられない「岩盤規制」とみなす雇用分野の改革に意欲を示した。

 「残業代ゼロ」となる働き方をつくるのは、その岩盤規制に風穴を開ける改革という位置づけだ。安倍首相は「時間ではなく、成果で評価する新たな労働制度を選べるようにする」として、政権の成長戦略にこの制度の創設を盛り込んだ。同様の制度は、第1次安倍政権でも検討されたが、参院選を前に世論の猛反発にあい断念した経緯がある。政権にとっては、8年ぶりの再挑戦でもある。

 今回の対象者は「年収1千万円以上で、高度な職業能力を有する労働者」と昨夏の成長戦略で大枠は決定済み。労働、経営、有識者の3者で構成される労政審に求められたのは、その大枠の範囲内で細かい制度を検討することだった。

 13日の労政審では、連合の新谷信幸・総合労働局長が「労働者の健康と命を守る規制を外し、長時間労働をまねく」と反対したが、司会の岩村正彦・東大大学院教授は報告書をまとめることを宣言。昨年9月から10回を超えた労政審での議論はこの日、2時間足らずで終わった。

 今回の報告書では、対象となる働き手に対し、企業は年間104日の休日を取得させることなどを条件に、働いた時間にかかわらず残業代や深夜・休日手当を支払わなくてもよい、とした。一方で、賃金制度のあり方には踏み込まず、「成果に応じて賃金を増やす」ことを導入企業に約束させるわけではない。

 導入した企業が従来の年功序列型の賃金を維持していた場合、対象の働き手にとっては、成果をあげても賃金は増えない、ということもありうる。労働側が「新たな制度は残業代がゼロになるだけだ」と主張するのはこのためだ。

 導入ありきで議論を進めたこともあり、対象となる職種は為替ディーラーやアナリストなど一部に限定された。企業からは「使い勝手が悪いのでは」との見方も出ている。ある大手銀行の関係者は「一部しか対象にならない『残業代ゼロ』より、営業職が対象になる裁量労働制の拡大の方が対象の人数も多く、影響が大きい」と話す。

 年収1千万円を超える給与所得者は、管理職を含め全体の約4%。経営側は「対象者は幅広い方が望ましい」と求める。13日の労政審終了後、経団連の鈴木重也・労働法制本部主幹は「高い技術を持ったIT技術者なども対象になるよう主張したい」と述べ、対象の拡大を求めていく考えを示した。


 ■米国導入 労働時間長くなる傾向

 「残業代ゼロ」に似た制度があるのが米国だ。管理職や専門職につく一部のホワイトカラーに対し、残業代の支払い義務の適用を除外する(エグゼンプション)ことから、「ホワイトカラー・エグゼンプション」(WE)と呼ばれる。

 米国の制度を調査した日本労働弁護団の菅俊治弁護士によると、WEの対象者の労働時間は対象外の人より長くなる傾向にある。「残業代を払わなくてよければ労働時間が抑制できずに、業務量は増えて長く働かされる」と指摘する。

 WEをめぐっては、1990年代半ばから制度の対象となった労働者が、本来もらうべき残業代の支払いを求める集団訴訟を相次いで起こした。2004年に対象者の収入の要件が引き上げられたが、訴訟は減らず、オバマ政権は、制度見直しに着手している。

 厚労省によると、働き過ぎを防ぐため、英国やフランスは時間外労働も含めた働く時間を「週48時間」を上限とし、終業と始業の間に11時間の休息を義務づける「インターバル規制」を設ける。

 労政審でも、労働側が全労働者に上限規制やインターバル規制を導入するよう求めたが、経営側と合意できずに盛り込まれなかった。

 ◆キーワード

 <裁量労働制と「残業代ゼロ」> 裁量労働制は、労使であらかじめ想定した労働時間に応じ、残業代を含めて賃金が払われる。研究者や弁護士ら専門職や企画・調査部門などを対象とする。実際に働いた時間が想定を超えても追加の残業代は出ないが、深夜や休日に働いた場合の割増賃金は出る。年収による条件はない。「残業代ゼロ」となる働き方は残業や深夜、休日の割増賃金が一切出ない。

 ■海外の働き過ぎ防止策は

 a:日本 b:米国 c:英国 d:フランス
    *

 ◇労働時間の上限規制
 a:なし(週40時間を超えると割増賃金の支払い義務)
 b:なし(週40時間を超えると割増賃金の支払い義務)
 c:週48時間
 d:週48時間、1日10時間

 ◇残業の割増賃金
 a:割増賃金率は25%から
 b:割増賃金率は50%
 c:法定化されていない
 d:割増賃金率25%から

 ◇インターバル規制
 a:なし
 b:なし
 c:終業と始業の間に11時間の休息時間を設ける義務
 d:終業と始業の間に11時間の休息時間を設ける義務


by asyagi-df-2014 | 2015-02-14 21:05 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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