4月以降、公的年金はこれまでのように増えなくなる。

 年金生活を迎えようとしている者にとって、2015年2月8日の毎日新聞の「4月以降、公的年金はこれまでのように増えなくなる。物価が上昇に転じ、デフレ下で凍結されてきた年金抑制策『マクロ経済スライド』が初めて機能するためだ。今後も物価の上昇基調が続けば、若者が将来受け取る年金はひと息つく半面、低年金のお年寄りは打撃を受ける。にもかかわらず、セットで進めるはずの年金の底上げ策は先送りされようとしている。」との記事は、改めて、日本の現実を深く思い知らされている。

 この「マクロスライド」について、毎日新聞は次のように記述する。

 「マクロ経済スライドは、自営や非正規で働く人ら国民年金のみの人により響く。会社員の厚生年金は国民年金と報酬比例年金の2階建て。目減りも2割だ。その点、国民年金は3割減。国民年金しかない単身者の所得代替率は現在18.4%。これが30年後には13%まで下がる。今の価値に直すと4万円台に過ぎない。
 国民年金だけでは生活できなくなる−−。そんな有識者らの声に応じ、厚労省は昨年、2案を示した。非正規雇用の人に厚生年金加入への道を開き『国民年金のみ』の人を数百万人減らす案と、国民年金の加入期間を今の40年から45年に延ばし、給付を増す案だ。
 だが、財源難から与党は先送りに傾いている。また今年10月から低年金の人に最大で月5000円を支給する制度も、消費増税の延期で1年半延びた。
 慶応大経済学部の駒村康平教授は『マクロ経済スライドは必要』と指摘しながらも、『国民年金は年金としての機能を失いつつある。政府が近視眼的に対策を見送るなら、より重いツケが回ってくる』と語る」

 「国民年金だけでは生活できない」社会の創出。
 どうやら、「積極的平和主義」や「大企業の利潤追求のための仕組みづくり」とやらに強い決意で臨むという安部晋三政権の結果がすでに見えてきている。
 以下、毎日新聞の引用。






毎日新聞-「マクロスライド」:初適用 低年金層対策、置き去り-2015年02月08日

 4月以降、公的年金はこれまでのように増えなくなる。物価が上昇に転じ、デフレ下で凍結されてきた年金抑制策「マクロ経済スライド」が初めて機能するためだ。今後も物価の上昇基調が続けば、若者が将来受け取る年金はひと息つく半面、低年金のお年寄りは打撃を受ける。にもかかわらず、セットで進めるはずの年金の底上げ策は先送りされようとしている。

 ◇月6万円 「1%抑制でも死活問題」
 「家計は今までもギリギリ。物価が上がっても年金がほとんど増えないのでは生活できない」。東京都足立区の都営住宅で1人暮らしをする田中実さん(78)は、物価が2.7%増なのにマクロ経済スライドによって年金は0.9%増にとどまることに肩を落とす。

 毎月の収入は約6万円の国民年金(基礎年金)と、5万〜6万円のパート代。以前は家賃や光熱費を払っても余裕があったのに、消費増税や値上げのあおりでスーパーに行く回数は減り、商品は「本当に必要か」と吟味してから買い物カゴに入れるようになった。

 パートは週3回。真冬の今も、朝から夕方まで室温8度の冷蔵室で野菜を詰める作業だ。生活費だけでなく、趣味の囲碁と手芸教室に通う費用をひねり出すため10年前から頑張ってきた。それが今やパート代の多くは生活費に消える。

 田中さんはいずれ働けなくなる時に備え、毎月少しずつ蓄えてきた。だがそれもできなくなった。収入減を思うと、風邪をひいてもパートは休めない。「年寄りは体を壊して早く死ねということか。年金額が低い人にとっては、1%の抑制でも死活問題です」


マクロ経済スライドによる厚生年金の標準的な所得代替率の推移
拡大写真 2014年度の国民年金は満額で月6万4400円。15年度はマクロ経済スライドが響き、6万5008円と608円増にとどまる。スライドの期間は43年度まで約30年続く。この間、年金の伸びは物価や賃金の伸びに追いつけず、実質価値が下がり続け、現役との収入格差も広がる。とりわけ国民年金は今より3割も目減りする。

 マクロ経済スライドの影響は、障害年金で暮らす人にも及ぶ。さいたま市の実家に1人で住む統合失調症の女性(48)は、精神障害者として月6万4400円の障害基礎年金を受けている。千葉にいる両親が蓄えを崩して光熱費や食費の一部を助けてくれ、どうにか生活できているという。

 8年前まで入退院を繰り返し、症状が落ち着いた今も仕事には就けない。医療費のほか、就寝中の失禁に備えるおむつ代に月1万〜2万円かかることもある。毎月4000円を封筒に入れて積み立て、洋服や下着代に充ててきた。だが、それも生活費に回さねばならなくなるかもしれない。高齢の両親が亡くなれば、今の暮らしを維持できなくなる、との不安に襲われる。

 「満足に服も買えず我慢を強いられるなら、ストレスで病状が悪化しないか」。女性はそう感じている。

 ◇制度見直し、小手先のみ 世代間の差縮小/国民年金は3割減も
 横浜市の大学生、吉田孝太郎さん(20)は国民年金保険料(月1万5250円)を猶予される手続きをしている。とはいえ、親の勧めに従っただけ。もう更新はせず、保険料も払わないつもりだ。「将来、年金があるとは思えないし」

 04年の年金改革は若者の年金不信払拭(ふっしょく)を狙った。厚生年金保険料を17年度以降年収の18・3%で固定、マクロ経済スライドで高齢者の年金を抑え、若い世代に回すことが柱だ。

 65歳になってもらい始める時の、厚生年金の所得代替率=現役男性の平均的手取り月額(約34万8000円)に対する年金額の割合=で見てみよう。

 04年当時、モデル世帯(夫と専業主婦の妻)の所得代替率は59.3%(妻の基礎年金含む)。これを07年度からじわじわ削り、23年度に受給し始める世代の水準を50.2%に減らした時点で、下げるのをやめる予定だった。スライドをかけなければ若い世代の年金は底なしで下がりかねなかった。

 それが物価や賃金の下落時にはスライドをかけないとの規定が、計画を狂わせた。制度発足時からデフレが続いたことで14年度までスライドは一度も機能せず、年金の下げ幅は現役の賃金の下げ幅より小さかった。14年度に受給し始めた1949年度生まれのモデル世帯(夫婦とも65歳)は、54%に下がっていたはずが逆に62.7%へ上がった。

 厚生労働省が昨年、計画を練り直した結果、スライドの適用期間は2043年度まで延びた。所得代替率は一生もらい始めの水準を維持できるわけではない。1949年度生まれはもらい始めこそ62.7%あるが、2024年度(75歳)に51.6%、39年度(90歳)は41.8%まで下がる。

 一方、1984年度生まれ、30歳の夫婦世帯は、2049年度の受給開始時(65歳)に50.6%まで下がっているものの、その時点で既にスライドは終了している。もらい始めた後の下がり方は緩やかで、69年度(85歳)でも40.4%。最終的に1949年度生まれとの差は縮まる。

 マクロ経済スライドは、自営や非正規で働く人ら国民年金のみの人により響く。会社員の厚生年金は国民年金と報酬比例年金の2階建て。目減りも2割だ。その点、国民年金は3割減。国民年金しかない単身者の所得代替率は現在18.4%。これが30年後には13%まで下がる。今の価値に直すと4万円台に過ぎない。

 国民年金だけでは生活できなくなる−−。そんな有識者らの声に応じ、厚労省は昨年、2案を示した。非正規雇用の人に厚生年金加入への道を開き「国民年金のみ」の人を数百万人減らす案と、国民年金の加入期間を今の40年から45年に延ばし、給付を増す案だ。

 だが、財源難から与党は先送りに傾いている。また今年10月から低年金の人に最大で月5000円を支給する制度も、消費増税の延期で1年半延びた。

 慶応大経済学部の駒村康平教授は「マクロ経済スライドは必要」と指摘しながらも、「国民年金は年金としての機能を失いつつある。政府が近視眼的に対策を見送るなら、より重いツケが回ってくる」と語る。【金秀蓮、桐野耕一】


by asyagi-df-2014 | 2015-02-09 05:50 | 書くことから-貧困問題 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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