2015年度予算案の閣議決定を各紙社説から考える

 2015年1月14日、政府予算案が閣議決定された。
 このことを、各紙の社説とともに考える。
 各紙の社説とその見出しは、次の通りである。

(1)信濃毎日新聞社説-政府予算案 成長頼みで大丈夫か-

「『経済再生と財政再建の二兎(にと)を追う』は安倍政権の決まり文句だが、予算案を見ると、本当に実現できるのか疑念が募る。」
「しかし、歳入の4割近くを国債に頼っている。借金依存体質は少しも変わっていない。さらに注意しなくてはならないのは、予算案が経済成長で税収が伸びることを前提にして、財政再建を図ろうとしていることだ。当てが外れれば経済も財政も共倒れになる危険がある。」
「首相が力を入れる安全保障関連費用の伸びが目立つ。防衛費は02年度をピークに減少傾向だったが、第2次安倍政権は3年連続で増やしている。18年度までの中期防衛力整備計画によれば、毎年1%近くの増加が見込まれる。16年度は5兆円を突破する可能性がある。軍事重視路線が周辺諸国との間で摩擦をさらに強めないか、心配になる。」
「社会問題化している経済格差への対応も同様だ。税制改正も含め、富の再分配への取り組みが今回の予算案でも弱い。」

(2)新潟日報社説-15年度予算案 足りぬ暮らしへの目配り-

「総額96兆3420億円は過去最大である。規模は勇ましいが、私たちの日々の暮らしが良くなるかは見通せない予算といえる。」
「政府は具体策を打ち出す地方自治体の奮起を求めるが、力の弱い自治体を切り捨てるようなことは許されない。」
「経済と財政のかじ取りはこれからますます難しくなりそうだ。安倍政権の『経済最優先』が正念場を迎える。」

(3)北海道新聞社説-2015年度予算案 道筋見えぬ成長と健全化-

「一方、企業業績の改善で法人税収などが増える見込みから、財源不足を補う新規国債の発行額は6年ぶりに30兆円台に抑えてはいる。しかし歳入の40%前後を国債に頼る借金体質に変わりはない。安倍首相は『経済再生と財政健全化の両立を実現させる予算』と胸を張るが、これでは納得することはできない。」
「過去最大の4兆9800億円に膨らんだ防衛費は安全保障を重視する『安倍カラー』が、より鮮明に打ち出されたと言える。予算編成の基本方針で『聖域なく歳出を見直す』と明記していたはずだ。議論も不十分なままの事実上の聖域化は疑問が残る。」
「生活保護費では、家賃に相当する『住宅扶助』の支給額が引き下げられ、冬の暖房費などに充てられる『冬季加算』も減額される。低所得世帯にとっては最低限の生活保障を脅かされる事態につながりかねないだけに、政府にはより慎重な対応を求めたい。」
「財務省によると国債発行残高は15年度末には807兆円、国と地方の長期債務残高は1035兆円に膨らむという。15年度は新規国債発行額を4兆3870億円減らしたとはいえ、焼け石に水といった状態だ。」

(4)東京新聞社説-15年度予算案 見えない「負担」も語れ-

「政府が決めた二〇一五年度予算案は税収増から借金依存度が改善したとはいえ、依然として借金頼みだ。結局、巨額債務の処理も『禁じ手』を使うのか。」
「アベノミクスは当初から、政府債務を処理するうえで『禁じ手』との指摘があったが、政府与党の楽観的ともとれる姿勢を見せられると、結局アベノミクスは債務削減を企図していると思わざるを得ない。」
「日本の債務残高は、例えれば河原で積み上げる小石の山のようなものだ。何かのはずみで、いつ崩れてもおかしくない。それでも政府が小石を積み上げ続けられるのは、アベノミクスの異次元緩和で金利を低く抑え込んでいるためだ。だが、この人為的な超低金利は預金者や金利生活者、投資家の金利収入を犠牲にしていることに等しい。」
「見えない負担を『可視化』すると、アベノミクスの持つ危うさや、それにもたれかかる財政の脆弱(ぜいじゃく)さが浮かび上がるのである。世界一の借金大国が大盤振る舞いの予算を組み続けるのは、やはりおかしいのである。」

(5)朝日新聞社説-新年度予算案―弱者へしわ寄せなのか-

「もらえる年金やサービスは抑えられる一方、消費税などによる負担は増える。国民にとって痛みの分配は避けられない。」
「政権が予算案で示した解答をひと言でいえば、『所得の少ない人へのしわ寄せ』である。」
「この予算案にも首をかしげる項目が多くある。例えば、整備新幹線である。与党や自治体の要望で北海道など3路線の開業時期の前倒しを決めたが、国と地方が投じる公費が膨らむ危険をはらんでいる。」

(6)毎日新聞社説-15年度予算案 未来への道が見えない-

「しかし、その意気込みは伝わってこない。税収が増える分だけ新たな借金は減らすが、歳出の膨張に歯止めはかからず、一般会計は過去最大の96.3兆円に達した。これではツケ回しをしない健全な未来への道筋は見えない。」
「15年度の目標を達成しても歳入の約4割を借金に頼る不健全な構造は変わらない。政府は20年度のPB黒字化を目指すが、内閣府の試算でも11兆円の赤字が残る。達成には大胆な歳出削減が欠かせない。」
「3年連続増の防衛費や前年度並みの公共事業費などからも厳しい財政規律を守る姿勢はうかがえない。」
 
 結局、今回の政府予算案は、東京新聞の「 世界一の借金大国が大盤振る舞いの予算を組み続けるのは、やはりおかしいのである。」ということであり、朝日新聞の「所得の少ない人へのしわ寄せ」との指摘に尽きる。

 加えて、愛媛新新聞は、沖縄振興予算減額について、「沖縄振興予算が14年度比で4.6%減額となった。減額は5年ぶり。安倍政権が推進する米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志氏が、知事選で勝利したことへの腹いせとみられる。」と、痛快に安部晋三政権の姑息さを指摘した。

 以下、各紙社説の引用。






信濃毎日新聞社説-政府予算案 成長頼みで大丈夫か-2015年01月15日

 経済再生と財政健全化の二つを同時に達成するために資する予算になった―。

 安倍晋三首相はきのう閣議決定された2015年度予算案について胸を張った。

 「経済再生と財政再建の二兎(にと)を追う」は安倍政権の決まり文句だが、予算案を見ると、本当に実現できるのか疑念が募る。

 一般会計の総額は、過去最大となる96兆3420億円となった。借金に当たる国債の新規発行額や財政の健全度を表す指標となる基礎的財政収支の赤字額はいずれも4兆円以上減らした。10年度比で赤字を半減する目標を達成できる見通しになった。

   <借金依存は変わらず>

 しかし、歳入の4割近くを国債に頼っている。借金依存体質は少しも変わっていない。

 さらに注意しなくてはならないのは、予算案が経済成長で税収が伸びることを前提にして、財政再建を図ろうとしていることだ。当てが外れれば経済も財政も共倒れになる危険がある。

 安倍首相の成長頼みの政権運営がどんな影響を及ぼすのか、厳しく見る必要がある。

 予算案は、日本の社会が抱える深刻な現状を映し出した。高齢化に伴い社会保障費がどんどん膨らんでいる。15年度は過去最大となる31兆円台になり、歳出総額から借金返済を除いた政策経費の43%を占める。

 今後も毎年1兆円規模で増えていくとされる。このままだと現役世代の負担は増し、他の政策にもしわ寄せが行く。

 社会保障全般にわたる制度改革に向けた腰の据わった議論や取り組みが必要なのに、介護報酬の引き下げなど小手先の対応に終始している。問題が多い。

   <防衛費は聖域化へ>

 首相が力を入れる安全保障関連費用の伸びが目立つ。防衛費は4兆9801億円で過去最高となった。最新鋭のステルス戦闘機や新型輸送機オスプレイ、水陸両用車の導入のほか、イージス艦の建造費などを盛った。

 東シナ海で活発に活動する中国や、集団的自衛権の行使容認に伴う自衛隊の活動拡大を想定しているとみられる。

 防衛費は02年度をピークに減少傾向だったが、第2次安倍政権は3年連続で増やしている。18年度までの中期防衛力整備計画によれば、毎年1%近くの増加が見込まれる。16年度は5兆円を突破する可能性がある。軍事重視路線が周辺諸国との間で摩擦をさらに強めないか、心配になる。

 来年度の税収は昨年春の消費税増税や所得税、法人税の伸びで約54兆円を見込む。その10%近くが軍事関連に充てられることを軽視してはならない。

 首相が看板政策に掲げる地方対策関連では、人口減少の克服や地域経済の活性化を目指し、雇用の創出や都会からの移住促進に重点を置いた。歳出項目に「まち・ひと・しごと創生事業費」を設け、1兆円を計上した。

 春の統一地方選をにらんで地方を重視する政権の姿勢を示したいようだが、各省庁の従来の政策の焼き直しも目立つ。踏み込み不足の感が否めない。

 安倍政権はかねて地方自治体に対し、「知恵を出せ」と訴えてきた。アイデアを出せば、支援するとの立場である。政府が効果的な政策を持ち合わせていないことの裏返しにもみえ、ばらまきに終わる恐れがある。費用と効果の検証が欠かせない。

 緩んだ財布のひもを締めるには既得権益への切り込みや無駄遣いの徹底的な見直しが欠かせない。繰り返し繰り返し指摘されてきたことだ。それにもかかわらず、安倍政権は待ったなしのこれらの課題の解決に本気で立ち向かう姿勢が見られない。

 社会問題化している経済格差への対応も同様だ。税制改正も含め、富の再分配への取り組みが今回の予算案でも弱い。

 来年は参院選がある。そこでつまずけば首相が悲願とする憲法改定が遠のく。景気回復を絶えず国民に訴え続けることで不安感を抑えるのが得策―。安倍首相の姿勢や15年度予算案からは、そんな思惑もにじむ。

   <持続できる社会を>

 巨額の赤字財政に対する市場の目も厳しくなってきた。金融緩和に依拠するアベノミクスにも懐疑的な声が増え始めている。

 安倍首相は基礎的財政収支を20年度に黒字にする目標を堅持し、達成に向けた計画を今夏までにまとめるとしている。財政再建の道筋が、甘い成長見通しに基づいたお手盛りの中身になるとすれば、たちまち国債への信認は失われるだろう。いつまでも日銀が買い支えるわけにはいかない。

 今月下旬に始まる通常国会では安倍政権の経済・財政運営について掘り下げなくてはならない。人口減少、超高齢社会の到来という厳しい現実を見据え、持続できる社会をどうつくるか、突っ込んだ論議を求める。


新潟日報社説-15年度予算案 足りぬ暮らしへの目配り-2015年1月15日

 政府は14日、2015年度予算案を閣議決定した。総額96兆3420億円は過去最大である。
 だがその内実は、消費税再増税の延期や社会保障費の増加で圧迫された財源の多くが、借金の抑制に振り向けられた形だ。
 1兆円の「創生枠」を盛り込み地方活性化策とした。
 県内をはじめ自治体から歓迎の声が上がるものの、これを人口減少の歯止めにできるかどうかは未知数である。
 子育て支援を拡充するのは当然だが、まだ十分ではない。一方、生活保護の縮小など低所得者対策は先送りが多い。格差や貧困問題への対策は置き去りにされた感がぬぐえないのだ。
 規模は勇ましいが、私たちの日々の暮らしが良くなるかは見通せない予算といえる。
 15年度は政府が掲げる地方創生が実質的にスタートする。歳出の創生枠新設の一方、歳入で地方自治体が自由に使える一般財源総額を過去最高とし、地方重視の姿勢を明確にした。
 意気込みは歓迎したい。ただ安倍晋三首相が言う「景気回復の成果を全国津々浦々に」を現実の姿にするには、政府と地方双方の本気の努力が必要だ。
 統一地方選目当ての掛け声や、ばらまきに終わってはならない。目先でなく長期の地方発展につなげる視点も不可欠だ。
 政府は具体策を打ち出す地方自治体の奮起を求めるが、力の弱い自治体を切り捨てるようなことは許されない。
 現時点では何も始まっていないのだという認識を新たにしつつ、今後の政策の進展をしっかりと見守っていきたい。
 社会保障費の増加は高齢化の進展で避けられないものだ。他方、公共事業や農業、中小企業、教育関係の分野は横ばい程度に抑えられている。
 ところが安倍首相が重要視する防衛は3年連続で増えて過去最高となり、5兆円に迫った。
 財政難の中での防衛費拡大の是非は、これから十分に論議されてしかるべきものだ。
 また、東京電力福島第1原発の廃炉・汚染水対策などに引き続き巨額が投じられた。事故が収束していない現実があらためて示されたと受け止めねばならない。
 それなのに、全国の原発の再稼働に向けて地元自治体への支援に積極的に乗り出すというのはやはり釈然としない。
 経済政策アベノミクスに伴う財政出動で財政再建は事実上、一服した形になっていた。
 「経済再生と財政健全化を同時に達成する予算」と今回首相は自画自賛したが、財政健全化達成への道は険しい。
 15年度の赤字半減目標は達成できる見通しだ。これは成長による税収の増加頼みである。
 20年度黒字化のめどは立たず、日本の財政への信認が揺らぎかねない状況にある。
 経済と財政のかじ取りはこれからますます難しくなりそうだ。安倍政権の「経済最優先」が正念場を迎える。

北海道新聞社説-2015年度予算案 道筋見えぬ成長と健全化-2015年1月15日

 政府は2015年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は96兆3420億円と当初予算としては過去最大である。

 社会保障費は高齢化の進展に伴って膨らみ続け、防衛費も3年連続の増額だ。

 安倍晋三政権が最重要課題に位置づける事業費1兆円の「地方創生」枠などの目玉はあるものの、経済の成長を促す施策に総じて新味は乏しく、格差是正に目配りした取り組みも鈍いままだ。

 一方、企業業績の改善で法人税収などが増える見込みから、財源不足を補う新規国債の発行額は6年ぶりに30兆円台に抑えてはいる。しかし歳入の40%前後を国債に頼る借金体質に変わりはない。

 安倍首相は「経済再生と財政健全化の両立を実現させる予算」と胸を張るが、これでは納得することはできない。

 政府は中長期的な視点で予算の効率化や重点化に取り組むことこそ、国民への責務である。

■ぬぐえぬばらまき感

公共事業費はほぼ14年度並みの5兆9700億円にとどめたとはいえ、ばらまき感はぬぐえない。15年度当初予算案の歳出を抑えるため、前倒しで14年度補正予算に盛り込んだ事業もあるからだ。

 安倍政権による当初と補正の一体的な編成は3年続けて100兆円規模に達している。老朽化インフラの整備や防災などを名目に不要不急の事業が紛れ込んでいないか、精査すべきだろう。

 過去最大の4兆9800億円に膨らんだ防衛費は安全保障を重視する「安倍カラー」が、より鮮明に打ち出されたと言える。

 中国への対応を念頭に離島防衛を強化する狙いだが、ここまで手厚い配分が必要なのだろうか。

 予算編成の基本方針で「聖域なく歳出を見直す」と明記していたはずだ。議論も不十分なままの事実上の聖域化は疑問が残る。

 成長戦略として重点配分する「新しい日本のための優先課題推進枠」を見ても、総花的に事業を羅列した印象は否めない。

 項目として「農林水産業の人材確保・育成」「科学技術イノベーションの推進」などを挙げている。具体的な効果をどこまで見込めるのか、肝心の成長への展望が開けるのかどうか心もとない。

 人口減対策などの地方創生には春の統一地方選をにらんだ思惑もあろうが、大切なのは地域の主体性だ。その意欲を引き出す知恵を政府には絞ってほしい。

■再分配政策の強化を

 社会保障費は初めて31兆円台に乗り、安倍首相肝いりの子育て支援が拡充された。その一方、消費税10%への引き上げ延期で財源に制約があった中、介護や福祉など生活に直結する経費が切り詰められたことは看過できない。

 予算編成で最大の焦点だったのが、介護サービス事業者に支払われる介護報酬の見直しである。

 介護報酬は原則3年に1度見直され、今回は9年ぶりのマイナス改定で下げ幅は過去最大に近い。 政府は介護保険料の上限を抑制し、利用者負担を軽減するためと説明するが、人手不足が深刻になる懸念のほか、サービスの質が低下する恐れも出てこよう。

 生活保護費では、家賃に相当する「住宅扶助」の支給額が引き下げられ、冬の暖房費などに充てられる「冬季加算」も減額される。

 低所得世帯にとっては最低限の生活保障を脅かされる事態につながりかねないだけに、政府にはより慎重な対応を求めたい。

 政府の労働規制緩和を背景に、非正規労働者の割合は40%近くに迫る。貧困層の増加など経済格差の是正も重要な課題だ。経済の底上げを図る上でも税体系のあり方など再分配政策の強化が必要なのではないか。

■増え続ける国の借金

 巨額の財政赤字は暮らしの中で意識することがないだけに警戒が必要だ。財務省によると国債発行残高は15年度末には807兆円、国と地方の長期債務残高は1035兆円に膨らむという。

 15年度は新規国債発行額を4兆3870億円減らしたとはいえ、焼け石に水といった状態だ。

 社会保障などの政策経費を税収などでどれだけ賄えるかを示す国の基礎的財政収支を見ると、15年度の赤字割合を10年度比で半減させる財政健全化目標は達成できる見込みではある。

 だが20年度に黒字化するという次の目標への道のりは険しい。

 税収が増えるからと安易に当て込み、大盤振る舞いをするようでは財政再建は遠のくばかりだ。

 安倍首相は17年4月に消費税率10%への引き上げを言明している。だが景気のけん引役である個人消費がどこまで回復するかは不透明だ。経済再生と財政健全化の二兎(にと)を追うには正念場との自覚が必要だ。

東京新聞社説-15年度予算案 見えない「負担」も語れ- 2015年1月15日

 政府が決めた二〇一五年度予算案は税収増から借金依存度が改善したとはいえ、依然として借金頼みだ。結局、巨額債務の処理も「禁じ手」を使うのか。

 この予算案をひとことで言えば、収入が増えても、増えた分は相変わらずの浪費癖で使ってしまい、借金返済に回すのは最小限-といったところだろう。

 国と地方の借金残高は一千兆円を突破し、危機的な財政の再建は待ったなしではなかったか。それなのに三・一兆円の本年度補正予算案に続き、新年度予算案は過去最大を更新する九十六兆三千四百億円(一般会計総額)の大盤振る舞いである。

◆歳出膨張で過去最大
 麻生太郎財務相は閣議決定後の会見で「財政健全化に向けた最大限の努力を行った」と胸を張った。しかし、本当にそう言い切れるだろうか。

 数字だけ見れば、新たな国債発行額(借金)は前年度当初予算より四・四兆円減らして三六・九兆円に、借金依存度は43%から38%に改善した。財政再建に向けた第一段階といえる基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字を一〇年度比で半減する目標も達成した。

 だが第二段階の目標は、政策に充てる経費を借金に頼らずに賄えることを意味するPB黒字化であり、それを二〇年度に達成できて、ようやく財政再建は緒に就く。

 財務相はその達成が困難であるとの認識を示しながら、今回の予算案には歳出削減努力に疑問がわく項目が少なくない。リーマン・ショック後に地方の財源不足に配慮した地方交付税の「別枠加算」は全廃すべきだと財務省は主張していたのに、統一地方選対策からか廃止に至らなかった。

 防衛費は安全保障体制の強化で過去最大の五兆円に膨張し、公共事業費も消化不良気味なのに高止まりさせた。毎年一兆円ずつ増え続ける社会保障費は生活保護費の一部や介護報酬は引き下げるのに、富裕層への給付削減などの切り込みは甚だ不十分なのである。

 税収が大幅に増え、さらに日本経済にとって「七兆円に相当するボーナス」といわれる原油安の追い風も吹く。債務残高を減らすにはもってこいの経済環境なのに、それを生かさないのでは財政再建への本気度が疑われるのである。

 アベノミクスは当初から、政府債務を処理するうえで「禁じ手」との指摘があったが、政府与党の楽観的ともとれる姿勢を見せられると、結局アベノミクスは債務削減を企図していると思わざるを得ない。

◆債務削減の禁じ手
 歴史的に政府債務を削減する手段は、経済成長や増税、歳出削減が王道であり、ほかに「禁じ手」の部類といえるのが低金利政策やインフレである。

 低成長が続く日本では、経済成長だけで債務を削減していくのは限界があり、といって増税や歳出削減は不人気ゆえに政治家が避けてきた手段である。残るインフレや低金利はアベノミクスと符合する政策なのである。

 日本の債務残高は、例えれば河原で積み上げる小石の山のようなものだ。何かのはずみで、いつ崩れてもおかしくない。それでも政府が小石を積み上げ続けられるのは、アベノミクスの異次元緩和で金利を低く抑え込んでいるためだ。だが、この人為的な超低金利は預金者や金利生活者、投資家の金利収入を犠牲にしていることに等しい。

 さらにアベノミクスが目指すインフレ政策である。お金の価値が下がるインフレにすれば、借金も実質的に目減りする。これも、目に見えない形で民間から国が税金を徴収しているのと同じ効果があり、税の専門家が「インフレ税」と呼ぶ手段である。

 アベノミクスは、原油安などもあって思うように物価上昇は実現していない。しかし、日銀が無理に緩和を進めればスタグフレーション(景気後退下の物価上昇)など悪性インフレが起きるおそれもある。日銀の狙い通りに緩やかなインフレが続けば、知らない間にインフレ税を払わされる。

 見えない負担を「可視化」すると、アベノミクスの持つ危うさや、それにもたれかかる財政の脆弱(ぜいじゃく)さが浮かび上がるのである。世界一の借金大国が大盤振る舞いの予算を組み続けるのは、やはりおかしいのである。

◆政治家を縛る仕組み
 政府は夏までに財政健全化の計画をまとめるが、予算制度の抜本的改革を望みたい。

 大事なのは、政治家に財政再建への全力の取り組みをコミットメント(約束)させる縛りである。補正予算や赤字国債など財政法をゆがめた振る舞いが現在の債務残高を生んだからである。

朝日新聞社説-新年度予算案―弱者へしわ寄せなのか-2015年1月15日

 社会保障の予算は今や国の一般会計の3分の1近くを占め、さらに膨らみ続けている。

 膨大な借金を抱える国の財政を立て直すには、その問題にどう対処するかがかぎとなる。

 もらえる年金やサービスは抑えられる一方、消費税などによる負担は増える。国民にとって痛みの分配は避けられない。

 国はそれで得られた財源をいかし、国債発行という将来世代へのつけ回しを減らす。同時に、必要な制度はきちんと充実させる。それが「社会保障と税の一体改革」のはずだ。

 ところが安倍首相が消費税の再引き上げを先送りし、15年度に予定していた財源に穴が開いた。どう対応するかが、予算編成の焦点の一つとなった。

 政権が予算案で示した解答をひと言でいえば、「所得の少ない人へのしわ寄せ」である。

 低所得者向けに予定されていた三つの対策のうち、年金がらみの二つは丸ごと先送りされる。低年金者への給付金と、年金保険料の支払期間の短縮だ。介護保険料については軽くするが、当初より規模を大きく圧縮する。

 これらは一体改革がうたう充実策のなかに位置づけられてきた。充実策全体の財源は国と地方合わせて1・8兆円の予定だったが、消費増税の先送りで1・3兆円余にとどまった。

 「負担なくして給付なし」を貫き、一体改革を堅持した。財務省などはそう説明する。しかし、経済的な弱者を狙い撃ちする対応が、国全体にとってもプラスになるとは思えない。

 デフレ脱却と経済活性化のためには、一部の豊かな人だけでなく、幅広い国民の消費を底上げする必要がある。低所得者を支えることも重要で、格差の拡大を防ぐことにもつながる。

 社会保障と財政の今後を見すえても、得策とは言えまい。

 消費税率を10%にしても社会保障費をすべてまかなうにはほど遠く、給付見直しと負担増の長く、険しい道のりは続く。ならば一体改革という枠組みにとらわれず、予算全体を厳しくチェックし、社会保障に回す努力が欠かせないはずだ。

 この予算案にも首をかしげる項目が多くある。例えば、整備新幹線である。与党や自治体の要望で北海道など3路線の開業時期の前倒しを決めたが、国と地方が投じる公費が膨らむ危険をはらんでいる。

 分野ごとの縦割りにしばられ、応援団がいる項目は認められる一方、声なき声は顧みられない。そんな予算編成を、いつまで続けるつもりなのか。

毎日新聞社説-15年度予算案 未来への道が見えない-2015年01月15日

 政府が2015年度予算案を閣議決定した。税収はアベノミクスの効果などで24年ぶりの大幅な伸びを見込む。借金頼みの財政を健全化する絶好機であるはずだ。

 しかし、その意気込みは伝わってこない。税収が増える分だけ新たな借金は減らすが、歳出の膨張に歯止めはかからず、一般会計は過去最大の96.3兆円に達した。これではツケ回しをしない健全な未来への道筋は見えない。

 国と地方が新たな借金をしないで政策経費をどれだけ賄えているかを示すのが基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)だ。政府はその赤字の対国内総生産(GDP)比を15年度に、10年度の半分にする目標を掲げている。

 国のPB赤字は13.4兆円になり前年度より4兆円以上改善する。目標は達成できそうだ。しかしそれは法人税収などが伸び、新規国債の発行を減らせたからだ。税収増には大規模金融緩和による円安で企業業績や株価が好転したことと消費税率の8%への引き上げが寄与している。今後も期待できるとは限らない。

 一方で歳出は4600億円増え、14年度補正予算と合わせるとほぼ100兆円。政権交代以降、3年連続で同様の規模になる。15年度末の国債残高は807.1兆円に達する。

 15年度の目標を達成しても歳入の約4割を借金に頼る不健全な構造は変わらない。政府は20年度のPB黒字化を目指すが、内閣府の試算でも11兆円の赤字が残る。達成には大胆な歳出削減が欠かせない。

 焦点は31.5兆円と過去最大を更新し、全体の約3割を占める社会保障費だ。高価な薬を飲みきれないほど処方する医療には切り込めるはずだ。経済的に余裕のある高齢者に医療や介護で応分の負担を求めることも必要だろう。国民に「痛み」を分配するのは政治の役割だ。国会審議で制度改革の議論を深めてほしい。

 15.5兆円と全体の16%を占める地方交付税も見直しの余地がある。地方税収は2.4兆円も増えるが、リーマン・ショック後の特別加算を2000億円残す。自治体の財政運営の指針になる地方財政計画に新設する「地方創生」事業枠1兆円にも交付税が使われる。活性化に役立つ事業なのか精査が必要だ。

 3年連続増の防衛費や前年度並みの公共事業費などからも厳しい財政規律を守る姿勢はうかがえない。

 長期金利はまだ平穏を保っている。しかし日本の財政運営への不信が高まれば、悪い金利上昇(国債価格の急落)が起こり、国民に深刻な影響を与えかねない。政府は、世界の目に監視されていることを忘れてはならない。

沖縄タイムス社説-[沖縄振興予算減額]制度の趣旨を曲げるな-2015年1月15日

 2015年度沖縄振興予算が前年度比4・6%減の3340億円で閣議決定された。5年ぶりの減額で、概算要求からは450億円余りのマイナス査定である。

 「国の財政が厳しい」「未執行の予算が多い」が理由という。

 査定による減額はよくあることで、思ったより減っていないとの見方もあるが、防衛省の辺野古移設経費が倍増する中、さらには本年度沖縄予算が概算要求を上回る大盤振る舞いだったことを考え合わせると、政府の思惑が見え隠れする。普天間飛行場の辺野古移設を認めた仲井真弘多前知事と反対する翁長雄志知事を同様に扱うことはできないという政権のメッセージだ。

 しかし、その考え方には大きな疑問がある。

 政府が沖縄振興特別措置法に基づいて沖縄振興策を実施するのは(1)沖縄戦による戦禍と27年の米軍統治(2)広大な海域に多数の離島が点在(3)亜熱帯地域にある(4)国土の0・6%に基地の74%が集中-の四つの特殊事情からである。

 ここでいう基地は、あくまで既存基地を指しているのであって、新基地を含むものではない。

 以前、県議会事務局が基地が全て返還され、跡地利用が進んだ場合の経済効果を年間9155億円と試算したことがある。基地がなければ得られたであろう利益の大きさを示すものだ。

 沖縄振興予算を新基地建設の「踏み絵」にするのは、沖縄振興策の制度の趣旨を逸脱するものである。

    ■    ■

 沖縄への日本政府の財政援助が本格化するのは1960年代に入ってからだ。それまではガリオア援助などがほそぼそとあっただけである。

 復帰前の沖縄は「法の下の平等」をうたった憲法が適用されず、高度経済成長からも取り残され、国鉄の恩恵を受けることもなかった。

 本土との格差を是正しようと、国の責務として始まったのが沖縄振興計画である。 

 沖縄振興予算は各省庁にまたがるものを内閣府が一括計上する方式をとっている。そのためか予算総額だけが独り歩きし「沖縄は優遇されている」との誤った理解が広がる。実際は2012年の数値で県民1人当たりの国からの財政移転は全国6番目と突出して高いわけではない。

 誤解を解くためにも振興予算の性格や内容について、県は考えをまとめ、積極的に広報した方がいい。

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 来年度予算で減額の対象となったのは一括交付金である。使う側にとって自由度の高い交付金が、配分する側にとっても操作しやすいもろ刃の剣になってはいないか。

 まずはどこがどれだけ減額されたか、影響も含めきちんと検証してもらいたい。一括交付金については、使い道や執行率の改善も必要だ。

 予算をめぐっては、翁長知事が閣僚らに面会できない異様な状態が続いた。知事には何ら落ち度がなく萎縮する必要はない。関係閣僚が横並びで面談を拒否した政権側の大人げない対応に比べ、知事の方がはるかにまっとうで礼儀にかなっていた。

愛媛新聞社説-沖縄振興予算減額 政治の底の浅さに他ならない- 2015年01月15日 

 2015年度予算案が閣議決定され、沖縄振興予算が14年度比で4.6%減額となった。減額は5年ぶり。安倍政権が推進する米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志氏が、知事選で勝利したことへの腹いせとみられる。
 安倍晋三首相は口では沖縄の負担軽減を言いながら、沖縄の民意に向き合おうとしない。日米合意を盾に辺野古移設を曲げず、米国への追従姿勢を強めていく安倍政権の行方が、強く危惧される。
 翁長知事への冷遇ぶりは異常だ。年末、当選後に上京した知事と首相も菅義偉官房長官も会談せず、その時点で減額をちらつかせてけん制。予算案を議論する党会合にも知事を招かず、党幹部は「敵対する知事を呼ぶ必要はない」とまで言い放った。
 あまりに露骨な対応は、政治の底の浅さであろう。このまま沖縄に圧力をかけ続ければ翁長知事が翻意すると高をくくっているのなら、大きな間違いだ。日本のリーダーならば、むしろ翁長知事と積極的に対話し、いかに基地縮小を実現するのかを模索するのが本来の役割のはずだ。
 政府、自民党は基地問題と沖縄振興との関連を否定するが、基地という「迷惑施設」に配慮した予算であることは明白である。その歴史が、予算さえばらまけば沖縄は基地を受容するという認識を国内外に広めてしまった。基地の対価でなく、国は沖縄の振興自体に責任を持つべきだ。
 先の衆院選でも全4小選挙区で、辺野古移設に反対を表明した候補が、自民党候補に勝利した。いくら「北風」を吹かそうが「兵糧攻め」を続けようが、沖縄の民意は揺るぐまい。首相はそれを自覚した上で現状を米国に説明し、基地負担の軽減について新たな交渉に臨むべきだ。
 いま米軍は再編のさなか。膨大な軍事費を見直し在沖米軍を含め基地の再配置を模索中だ。米国のある軍事シンクタンクは、沿岸からの侵攻部隊である海兵隊の役割を疑問視、在沖海兵隊は安全保障上の必要がないと指摘した(琉球新報)。普天間飛行場を返上し、沖縄の声を米国に訴えるチャンスではないか。
 安倍首相は集団的自衛権の行使を容認し、夏に日米防衛協力指針(ガイドライン)改定に臨むなど「積極的平和主義」を推進する。防衛費は前年比2%増と過去最高。安全保障政策が転機にある中、有事の際に真っ先に危険にさらされるのは沖縄だ。
 沖縄の問題は、日本全体の課題でもある。本土復興の捨て石になり、復帰後も基地問題に悩み続ける沖縄に、真の平和をもたらす戦後70年にしたい。そのためには政府が基地問題を正視し、歩み寄る姿勢を示すしかあるまい。


by asyagi-df-2014 | 2015-01-16 19:00 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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