沖縄から-三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第19回

沖縄の地で、体を張って新しい歴史を作ろうとしている人たちがいる。
 そこには、その煌めきの記録を残そうとしているジャーナリストがいる。
だとしたら、その生きざまの瞬間を私たちは受け取る必要がある。
三上知恵の沖縄撮影日記。
 
 
 今回の報告は、日本一恥ずかしい知事の報告。
 「怒り、呆れる以上に心配になる。ここまで県民の恨みを買ってこの老人は島に暮らし続けられるのだろうか。」とさへ。
 あまりにもむごい事柄だから、次のように問いかける。
「異例ずくめの退任劇は終わった。でも私は彼個人を責めて溜飲を下げたくはない。彼はなにも一人勝手に知事になったのではない。2006年には34万7303人が、2010年には33万5708人が、彼に票を入れているのだ。私は本気で聞いてみたい。延べ68万3011人の票を投じた県民は、いったい何を見て仲井真氏に票を入れたのか。少なくとも、県民の審判の上に新任された次期知事の意向と真逆の、重大な事案の駒を進めて逃げる。そんな人物を選んでしまう見る目のなさについては、有権者の落ち度としかいいようがない。それはそのまま、この国を戦争に向けて転がしていく総理を選び出してしまう日本国民の浅はかさと同じである。残念ながら、有権者の民度に見合う政治家しか選挙に通らない。」

 でもあらためて、繰り返すことになる。
このことは、第一には、仲井真弘多という個人の責
任問題である。が、そこには安部晋三政権の強い思惑が見える。

 以下、三上知恵の沖縄撮影日記の引用。







三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第19回

日本一恥ずかしい知事~沖縄県史に残る老知事の裏切り~

 「晩節を汚す」とはこのことだ。選挙で負けた知事が、任期残り4日というタイミングで辺野古の基地建設をめぐる手続きに逃げ切り承認をしてしまった。副知事ら側近でさえ、直前まで読めない行動だったという。辺野古の基地建設が最大の争点になった知事選挙で、沖縄県知事を二期も務めた人物が10万票という大差をつけられて落選したのだ。これは紛れもない「不信任」なのであるから潔く去る以外にないはずだった。怒り、呆れる以上に心配になる。ここまで県民の恨みを買ってこの老人は島に暮らし続けられるのだろうか。

 退任の挨拶といいながら、先月28日、また何やら政府と密談をしてきた仲井真知事。昨年末に政府と密談後に公約を破って埋め立てを承認したときのように再び県民を裏切るのでは。沖縄全体に戦慄が走った。落選して引退が秒読みの中で、まさか承認まで? と半信半疑ながら、退任わずか5日前の12月4日、2千人あまりが冷たい雨の中、県庁に詰め掛け「判の押し逃げは許さない」と庁舎を包囲した。

 映像にあるように、ずっと辺野古のテント村を守ってきた安次富浩さんはこう言った。「最後にやり逃げするような知事は沖縄の歴史にいなかった。(昨年末仮病を使いながら政府のいいなりになったが)今度は県民のために仮病を使ってでも手続きをしないで欲しい」。とても優しい言い方だ。安倍政権に無理強いされているのだろう? 最後に自分を、沖縄を汚すようなことはやりなさるな、という忠告なのだ。立場は違えども同じ県民同士、仲間だと思うからこそ誤った判断をさせてはならないと必死で説得もするのだ。

 しかしそんな県民の声など意にも介さず、彼は翌日知事公舎に関係者を呼び、機動隊にガードされる中あっさり承認の手続きをしてしまった。県民の前に全く姿を見せずに。
 退任前日の週明け8日も、久々に県庁に登庁するものの面会を求める市民から逃げるように6階から非常階段で地下駐車場に逃走した。仮にも、まだ現役の県知事が県庁内を逃げ惑う。地元紙が逃げていく仲井真知事を激写しているが、まるでお尋ね者の風貌。ひどく憐れだ。

 任期最終日の9日、県庁は早朝から集まった県民の怒号に包まれた。県はこれ以上荒れるのを恐れて午後の予定だった退任式を急遽午前10時からに繰り上げた。ロビーには規制線を張ってSPと県庁職員を並ばせて怒れる県民を入れないようにした。いつもは誰でも自由に利用できるエレベーターも止める始末。そこまで規制する権利があるのか、どっちの味方だと詰め寄る市民。緊迫する館内には副知事から異例のアナウンスが流れ始めた。
 「県庁職員のみなさんにお願いします。それぞれ考え方に違いは有っても、8年間仲井真知事を支えてきた県庁職員として、知事の労をねぎらい、退庁を温かく見守っていただけないでしょうか」
 業務命令で知事を守るために並び、エレベーターを止めて県民を追い返し、拍手で知事を見送る県庁職員たち。彼らの拍手と怒号が混ざることのない不協和音となり、県庁を揺さぶった。その中に拍手をしないで遠くを見ている職員を複数見つけたことは救いであった。明日から彼らは、180度違う考えの翁長新知事に仕えるのだ。

 歴代知事は広いロビーで職員に抱えきれない花束をもらって退庁する。しかし仲井真知事の離任式は密室で行われた。最後の会見で仲井真知事は「県庁の仕事を邪魔して大騒ぎする“反対派の人たち”は不謹慎だ」と、顔を真っ赤にして怒っていたそうだ。こうなることは予想できなかったのだろうか。そして「この場に及んで、やはり埋め立てを承認したことは間違っていたと思いませんか?」という記者の問いには「全くもって間違っていたとは思っていません」ときっぱり言い切った。
 厳戒態勢がしかれたロビーに下りた知事は警護に脇を固められながら、最後まで悪びれることなく、県庁の出口から3メートルほどの近さに用意された車に逃げ込んで県庁を去った。「恥ちらー!(恥知らず)」「裏切り者!」という怒号が、県民を裏切った老知事に送られた最後の言葉だった。

 異例ずくめの退任劇は終わった。でも私は彼個人を責めて溜飲を下げたくはない。彼はなにも一人勝手に知事になったのではない。2006年には34万7303人が、2010年には33万5708人が、彼に票を入れているのだ。私は本気で聞いてみたい。延べ68万3011人の票を投じた県民は、いったい何を見て仲井真氏に票を入れたのか。少なくとも、県民の審判の上に新任された次期知事の意向と真逆の、重大な事案の駒を進めて逃げる。そんな人物を選んでしまう見る目のなさについては、有権者の落ち度としかいいようがない。それはそのまま、この国を戦争に向けて転がしていく総理を選び出してしまう日本国民の浅はかさと同じである。残念ながら、有権者の民度に見合う政治家しか選挙に通らない。

 そして今週末、また私たちは有権者としてのレベルを問われるのだ。私たち沖縄は、名護市長選挙、統一地方選挙、そして知事選挙と今年は「長いものに巻かれない」人物を選び出してきた。平成島ぐるみ闘争の機運の中で、県民の意識はかつてなく高くなっていると信じたい。少なくとも、またも公約を軽視して基地の苦しみを再生産させるような人物を国会に送ることだけはやめにしなければいけない。


by asyagi-df-2014 | 2014-12-12 05:50 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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