沖縄から-沖縄知事選の結果を受けて、試合終了のホイッスルを鳴らす時が来た。

 今回の沖縄県知事選挙の結果は、辺野古新基地建設については、沖縄タイムスの「試合終了のホイッスルを鳴らすときだ」ということを実現しなければならない時期を迎えたということを示している。

 2014年11月17日付の各紙の社説を見てみると、全国紙と地方紙の主張の差が非常に大きいことに改めて気づかされる。それは、自己決定権の実現こそが各地方紙の存在基盤そのものを規定するという事実の重みの違いなのかもしれない。それにしても一部全国紙の主張はあまりにもひどい。

 以下に、2014年11月17日付の主立った社説の主張を要約する。最初に、地方紙からのもの。

・沖縄タイムスは、次のようにまとめている。
「沖縄の人々が長い間、心の底にしまい込んでいた感情が、マグマとなって一気に地表に噴き出した。予想を上回る歴史的な選挙結果である。」
「1月の名護市長選に続いて再び、『埋め立て承認・辺野古移設反対』の強固な民意が示されたことになる。沖縄の多数意思が何を求めているかは、もはや疑う余地がないほど明白だ。」
「もはや辺野古移設をめぐって丁々発止と渡り合う時期は過ぎた。『地元の頭越しには進めない』という普天間問題初期の政府方針に立ち戻り、計画見直しに向けた話し合いに入るべきである。」
「結果は仲井真氏のオウン・ゴール。『辺野古ノー』と同時に、『仲井真ノー』が示された選挙でもあった。」

・琉球新報は、次のように主張する。
「新たな基地は造らせないとの民意は揺るがない。県知事選で、そのことがあらためて証明された。」
「約10万票の大差は、県民が『沖縄のことは沖縄が決める』との自己決定権を行使し、辺野古移設拒否を政府に突き付けたことを意味する。一方、政府は選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進めると明言しているが、民主主義国家として許されない。埋め立て承認で地元の了解が得られたと受け止めているようだが、それも間違いだ。」
「政府は辺野古移設の是非を最大の争点とした知事選で示された民意を真摯(しんし)に受け止め、辺野古移設を断念すべきだ。それこそが安倍政権の言う『沖縄に寄り添う』ことを具現化することになる。米政府も民主主義に立脚すれば、民意の重みを無視できないはずだ。」
 また、沖縄県民が努力しなければならないことについても次のように指摘する。
「東村高江では住民の反対を無視し、新たな米軍ヘリパッドの建設計画が進められている。翁長氏はオスプレイ配備に反対する立場からヘリパッド建設に反対している。建設断念に追い込んでほしい。県内全41市町村長が署名した『建白書』の求めるオスプレイ配備撤回の実現にも知事として力を注いでもらいたい。
 基地問題の解決はこれからが正念場である。辺野古移設など米軍基地の過重負担を強いる政府の厚い壁を突き破るためには、県民世論の後押しが欠かせない。『建白書』の精神に立ち返り、さらに幅広いオール沖縄で基地問題解決を訴え、翁長氏を支援する態勢の再構築も求められる。」

・西日本新聞は、「これほど明確に示された沖縄の民意を、政権は無視できるのか」と指摘し、「もし、政権がこの状況を軽視し『国家の論理』を沖縄に押し付け続ければ、沖縄の心はますます本土から離れてしまう。沖縄と本土との一体感さえ揺らぎかねない。安倍政権は、沖縄の民意を正面から受け止め、あらためて米国と協議して『辺野古』以外の選択肢を検討して欲しい。一地域の犠牲の上に成り立つ安全保障など、もう限界だと悟るべきだ。」と、主張する。

・北海道新聞は、「移設を強引に進めてきた政府に対する強い拒絶反応である。安部晋三首相はじめ政府・与党は重く受け止めなければならない。辺野古での移設作業をこれ以上進めてはならない。地元の反対意見を無視する姿勢を改め、対話の道を模索することが不可欠だ。」と、指摘する。

・中日新聞は、「これ以上の米軍基地建設を拒否する県民の重い選択だ。安倍内閣は真摯に受け止めるべきである。」と政府に注文を付け、「選挙期間中、多くの自民党議員に加え、菅官房長官も異例の選挙応援に入った。そこで訴えたのは、那覇空港第二滑走路の早期完成や米映画テーマパークUSJの沖縄誘致支援だ。経済振興策は必要だとしても、県内移設受け入れを前提とした露骨な手法である。基地押しつけに『構造的差別』を感じ始めた沖縄県民には、もはや通用しない。」と、まとめる。
 また、「在日米軍基地の規模や配置、沖縄県民の負担軽減は引き続き、すべての日本国民が考えるべき課題である。決して過去の問題ではない。」と、指摘する。

・福井新聞は、「基地問題は沖縄に押しつけているだけでは何も解決しない。沖縄が抱える厳しい現状を直視し政府、国民全体で「負担の解消」を考えていくべきではないか。」と、問題の本質を見抜く。

・徳島新聞は、「『地元の理解が得られない移設を実現することは事実上、不可能だ』と翁長氏が主張したように、辺野古はもはや『現実的』な選択肢といえなくなったのではないか。ただ、住宅密集地に囲まれ、世界で最も危険とされる普天間飛行場を固定化していいはずがない」と、まとめる。

・高知新聞は、「基地負担とひき替えにふんだんに『アメ』を与えるといった常とう手段は、もはや通用しないことを肝に銘じるべきだろう。」と指摘し、「安倍首相は常々、『沖縄の方々の気持ちにも寄り添う』と述べている。それが本心なら翁長氏勝利の結果を謙虚に受け止め、民意を尊重する姿勢に方向転換するべきではないか。」と主張する。

 ここからは、全国紙の主張である。

・朝日新聞は、「『沖縄に寄り添う』と繰り返してきた安倍政権である。辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない。」と、明確に主張を示し、「『基地は県民が認めてできたわけではない。今回、辺野古移設を受け入れれば、初めて自ら基地建設を認めることになる。それでいいのか』。県内にはそんな問題意識が渦巻く。それは『本土』への抜きがたい不信であるとともに、『自己決定権』の問題でもある。自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのか、決める権利は本来、我々にこそある、と。」と問題を抉ってみせる。最後に
「明白になった沖縄の民意をないがしろにすれば、本土との亀裂はさらに深まる。地元の理解を失って、安定した安全保障政策が成り立つはずもない。知事選を経て、普天間問題は新たな段階に入った。二者択一の思考停止から抜け出す好機だろう。政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ。」と、主張する。

・東京新聞は、「普天間返還のためとはいえ、米軍基地をこれ以上、沖縄県内につくるのはやめてほしい、というのは県民の素直な想いと理解する。・・・今回の選挙結果は、『アメとムチ』によって県内移設を強行してきた安倍内閣に対する『不信任』でもある」と、政府の責任を追及する。

 さて、地方紙や他の全国紙と際だった違いを見せたのは、読売新聞である。
・読売新聞は、「曲折の末、ようやく軌道に乗った米軍普天間飛行場の移設を停滞させてはならない。新知事に慎重な対応を求めたい。」とする。そして、当選したばかりの翁長新知事に、「徹底的に移設を阻止しようとすれば、政府との対立は避けられない。その場合、年3000億円台の沖縄振興予算をどうするか、という問題も生じよう」と、脅しをかける。それは、高知新聞の「基地負担とひき替えにふんだんに『アメ』を与えるといった常とう手段は、もはや通用しないことを肝に銘じるべきだろう。」という指摘との質の違いを感じざるを得ない。最後に、「翁長氏も現実路線に立ち、政府との接点を探ってはどうか」と締める。
 この読売の現実路線というものの薄さは、どうしようもないものである。

 さて、今回の沖縄知事選の結果を受けて、沖縄の二紙をはじめ、各紙から受け止めた大事な視点は、次のものである。

(1)新たな基地は造らせないとの民意は揺るがない。沖縄県知事選で、そのことがあらためて証明された。
(2)「沖縄のことは沖縄が決める」との自己決定権を行使したものである。
(3)「地元の頭越しには進めない」という普天間問題初期の政府方針に立ち戻り、計画見直しに向けた話し合いに入るべきである。政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ。
(4)米政府も民主主義に立脚すれば、民意の重みを無視できないはずだ。
(5)在日米軍基地の規模や配置、沖縄県民の負担軽減ついて、沖縄が抱える厳しい現状を直視するなかで、政府、国民全体で、沖縄の「負担の解消」を考えていくべきではないか。
 
 試合終了のホイッスルを鳴らし、自分たちで考える時が来た。


 以下、沖縄タイムスと琉球新報、朝日新聞及び読売新聞の引用。






沖縄タイムス社説-県知事に翁長氏]辺野古に終止符を打て-2014年11月17日


 沖縄の人々が長い間、心の底にしまい込んでいた感情が、マグマとなって一気に地表に噴き出した。予想を上回る歴史的な選挙結果である。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を最大の争点にした知事選で、移設反対を主張する前那覇市長の翁長雄志氏(64)が、埋め立てを承認し移設容認に転じた現職の仲井真弘多氏(75)ら3人の候補を大差で破って初当選した。

 1月の名護市長選に続いて再び、「埋め立て承認・辺野古移設反対」の強固な民意が示されたことになる。沖縄の多数意思が何を求めているかは、もはや疑う余地がないほど明白だ。

 同時に実施された那覇市長選も、「オール沖縄」の旗を掲げ翁長氏と完全セットで選挙戦を展開した前副市長の城間幹子氏(63)が、自民、公明推薦の与世田兼稔氏(64)を振り切った。

 保革の枠を超えて集まった人々が、保守層だけではなし得ず革新層だけでも果たせなかったであろう二大選挙のダブル勝利を勝ち取ったのである。沖縄の今後の政治潮流に大きな影響を与えるのは確実である。

 仲井真知事が昨年12月に行った埋め立て承認の法的効力は今も生きている。とはいえ、県外移設の公約に反して事前説明もないままほとんど独断で承認したことが有権者から2度にわたって否定された事実は極めて重い。

 もはや辺野古移設をめぐって丁々発止と渡り合う時期は過ぎた。「地元の頭越しには進めない」という普天間問題初期の政府方針に立ち戻り、計画見直しに向けた話し合いに入るべきである。

 1996年の返還合意からはや18年。住民にこれ以上、精神的負担を強いてはならない。ここまできてなお移設を強行するのは、暴力的な犠牲の押しつけである。

 試合終了のホイッスルを鳴らすときだ。
    ■    ■
 昨年12月、仲井真知事は首相官邸で安倍晋三首相と会談し、沖縄振興策などの説明を受け、「驚くべき立派な内容」「140万県民を代表して心から感謝する」と最大限の賛辞を連ねた。記者団に対しても「いい正月になる」と、耳を疑いたくなる言葉を連発した。

 知事が辺野古の埋め立て申請を承認したのはその直後である。

 この一連の言動が県民感情を刺激し、特に高年層の激しい反発を招いた。

 仲井真氏は出馬表明にあたって「県民に誤解を招いた」と陳謝し、選挙中も文書を配って重ねて「いい正月」発言をわびた。いかに有権者の拒否反応が大きかったかを物語っている。

 今回の知事選は仲井真政治に対する信任投票の性格を帯びていた。

 結果は仲井真氏のオウン・ゴール。「辺野古ノー」と同時に、「仲井真ノー」が示された選挙でもあった。

 自民党本部は当初、苦戦必至の仲井真氏出馬を懸念し、自民党県連に再考を求めたが、県連はこれに従わず、自ら墓穴を掘る結果を招いた。那覇市長選の候補者選びでも、もたつきが目だち、調整力、指導力の低下を印象づけた。

 自民党県連は知事、那覇市長という重要ポストを失っただけでなく、保守層と経済界の分裂を生じさせ、知事選では公明党の支援も得られなかった。

 党内で責任問題が浮上するのは避けられない。沖縄の政治は流動化の過程に入るはずだ。
 当初、革新陣営の中には、翁長氏の過去の経歴や政治活動に対するアレルギーが強く、当選後の心変わりを懸念する声があった。

 懸念が杞憂(きゆう)に終わったのは、仲井真氏当選に対するかつてない警戒感と、保守革新両サイドの選挙協力が予想以上にうまくいったからだ。

 劇的な勝利を手にした翁長氏には、休む間もなく難題の数々が待ち受けている。今後の県政運営は容易ではない。

 主張の異なる支持層の声をどのように拾い上げ、公約を実現していくか。自民党時代に発揮した手腕を、自民党を野党に回してどのように発揮していくか。政治家としての正念場である。


琉球新報社説-新知事に翁長氏 辺野古移設阻止を 尊厳回復に歴史的意義-2014年11月17日

 新たな基地は造らせないとの民意は揺るがない。県知事選で、そのことがあらためて証明された。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を掲げた前那覇市長の翁長雄志氏(64)が、政府と共に移設を進める現職の仲井真弘多氏(75)らを破り初当選した。
 約10万票の大差は、県民が「沖縄のことは沖縄が決める」との自己決定権を行使し、辺野古移設拒否を政府に突き付けたことを意味する。
 翁長氏には、政府の強硬姿勢を突き崩して移設問題など基地問題に終止符を打つことに全力で取り組むことを期待したい。

民意尊重は当然

 在日米軍専用施設の74%が集中する沖縄に新たな米軍基地の強権的な押し付けを認めることは、県民自ら尊厳を否定するに等しい。今知事選は1968年の主席公選を勝ち取った住民運動同様に、沖縄の尊厳と誇りを回復できるかも問われた。
 仲井真知事の辺野古移設工事埋め立て承認で、沖縄の尊厳と誇りを傷つけられたと感じた県民は少なくない。保守分裂選挙となったことがそれを物語っている。失われかけた尊厳を県民自らの意志で取り戻した選択は歴史的にも大きな意義を持つ。
 一方、政府は選挙結果にかかわらず、辺野古移設を進めると明言しているが、民主主義国家として許されない。埋め立て承認で地元の了解が得られたと受け止めているようだが、それも間違いだ。
 仲井真知事は前回知事選で県外移設を訴えて当選した。県民は辺野古移設推進にその後転じた仲井真知事を支持したわけではない。つまり地元の大半は了解などしていないのである。
 政府は辺野古移設の是非を最大の争点とした知事選で示された民意を真摯(しんし)に受け止め、辺野古移設を断念すべきだ。それこそが安倍政権の言う「沖縄に寄り添う」ことを具現化することになる。
 米政府も民主主義に立脚すれば、民意の重みを無視できないはずだ。
 ことし1月の名護市長選では移設阻止を掲げた稲嶺進市長が再選された。にもかかわらず、政府は移設工事を強行着手した。新基地建設工事を既成事実化し、県民に無力感を植え付けることを狙ったことは明らかである。
 だが、県民がなえることはなかった。新基地建設反対の意志をさらに強固なものにするきっかけにもなった。多くの県民が基地の県内たらい回し拒否に票を投じたことが何よりの証しだ。

県民支援が必要

 東村高江では住民の反対を無視し、新たな米軍ヘリパッドの建設計画が進められている。翁長氏はオスプレイ配備に反対する立場からヘリパッド建設に反対している。建設断念に追い込んでほしい。県内全41市町村長が署名した「建白書」の求めるオスプレイ配備撤回の実現にも知事として力を注いでもらいたい。
 基地問題の解決はこれからが正念場である。辺野古移設など米軍基地の過重負担を強いる政府の厚い壁を突き破るためには、県民世論の後押しが欠かせない。「建白書」の精神に立ち返り、さらに幅広いオール沖縄で基地問題解決を訴え、翁長氏を支援する態勢の再構築も求められる。
 基地問題以外にも解決しなければならない課題は多い。
 翁長氏はアジア経済戦略構想の策定による自立経済の発展や正規雇用の拡大、4年後までの認可保育所の待機児童ゼロ、子ども医療費の無償化などさまざまな施策を通して県民生活を豊かにすることを打ち出している。
 那覇市長を14年務めた翁長氏の行政手腕、さらには那覇市議と県議で培った政治力、行動力を生かし、公約を実現するよう期待したい。県民は平和と豊かさの実感を望んでいる。県民の負託に応え、沖縄の将来も見据え、リーダーシップを発揮してほしい。

朝日新聞-沖縄県知事選―辺野古移設は白紙に戻せ-2014年11月17日


 沖縄県知事選で、新顔の翁長雄志(おながたけし)氏(64)が現職の仲井真弘多(なかいまひろかず)氏(75)らを大差で破り当選した。「これ以上の基地負担には耐えられない」という県民の声が翁長氏を押し上げた。

 最大の争点は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設の是非だった。1月の名護市長選、9月の同市議選に続き、知事選も移設反対派が制したことで、地元の民意は定まったと言える。

 「沖縄に寄り添う」と繰り返してきた安倍政権である。辺野古への移設計画は白紙に戻すしかない。

■「保革」超えた動き

 政権側は辺野古移設を「過去の問題」として、知事選での争点化を避けようとした。

 だが、翁長氏は「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地をつくらせない」と主張。仲井真氏は「一日も早い普天間飛行場の危険除去には、辺野古移設が具体的で現実的な方策」と応じた。民意は翁長氏についた。

 県民にとって、今回の知事選には特別な意味があった。

 普天間飛行場の海兵隊は、山梨県や岐阜県の基地から、米軍政下の沖縄に移ってきた。米軍は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強権的手段で住民の土地を奪い、基地を建設した。

 そして、国土の0・6%の沖縄に、全国の米軍専用施設の74%が集中する不公平。

 「基地は県民が認めてできたわけではない。今回、辺野古移設を受け入れれば、初めて自ら基地建設を認めることになる。それでいいのか」。県内にはそんな問題意識が渦巻く。

 それは「本土」への抜きがたい不信であるとともに、「自己決定権」の問題でもある。自分たちが暮らす土地や海、空をどう使うのか、決める権利は本来、我々にこそある、と。

 前那覇市長で保守系の翁長氏は「イデオロギーでなく沖縄のアイデンティティーを大切に」と訴え、保守の一部と革新との大同団結を実現した。とかく「保革」という対立構図でとらえられがちだった沖縄の政治に起きた新しい動きだ。

■公約違反に「ノー」

 96年に日米両政府が普天間返還に合意し、移設先として辺野古が浮上して18年。この間ずっと沖縄では、辺野古移設が政治対立の焦点となってきた。

 転機は2009年、「最低でも県外」と訴えた民主党の鳩山政権の登場だった。迷走の末、辺野古移設に逆戻りしたものの、「県外移設」に傾いた県民感情は収まらない。

 辺野古容認派の仲井真氏も、前回10年の知事選では「県外」を求め、再選された。

 以来、自民、公明を含めた沖縄の主要政党が辺野古移設反対で一致。「オール沖縄」と呼ばれる状況が生まれた。

 ところが、自民が政権に復帰すると、激しい巻き返しが始まる。党本部の圧力で、党国会議員団、党県連が、辺野古容認に再転換。仲井真氏も昨年末、埋め立てを承認した。

 今回有権者が突きつけたのは、本土の政権に屈して公約を覆した地元政治家に対する「ノー」だったとも言える。

 政府がこの夏、ものものしい警備のなか、辺野古のボーリング調査を強行したことも、県民の怒りを増幅させた。

 政府が打ち出す基地負担軽減策も、県民には「選挙対策か」と空々しく映っただろう。

■唯一の選択肢か

 なぜ、日本政府は沖縄に基地負担を強い続けるのか。

 最近は、中国の海洋進出や尖閣諸島の問題があるからだと言われる。だがそれは、米海兵隊の恒久的な基地を沖縄につくる理由になるのだろうか。

 尖閣周辺の対応は海上保安庁が基本だ。万が一の場合でも、少なくとも海兵隊が沖縄の基地に張り付いている必要はない。

 日米両政府は「辺野古が唯一の選択肢」と強調するが、米国の専門家の間では代替策も模索されている。フィリピンや豪州に海兵隊を巡回配備し、ハワイやグアム、日本本土も含め地域全体で抑止力を保つ考え方だ。

 米ハーバード大のジョセフ・ナイ教授は「中国の弾道ミサイルの発達で沖縄の米軍基地は脆弱(ぜいじゃく)になった」と指摘する。沖縄だけに基地を集める発想はかえって危ういという意見だ。

 「辺野古移設か、普天間の固定化か」。第三の道となる代替策を無視して二者択一を迫る政府の手法は、適切ではない。

 しかし、政権内に辺野古移設を見直す気配はない。新知事となる翁長氏に、沖縄への一括交付金の削減で対抗するという声すら聞こえてくる。

 明白になった沖縄の民意をないがしろにすれば、本土との亀裂はさらに深まる。地元の理解を失って、安定した安全保障政策が成り立つはずもない。

 知事選を経て、普天間問題は新たな段階に入った。二者択一の思考停止から抜け出す好機だろう。政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ。

読売新聞-沖縄県知事選 辺野古移設を停滞させるな-2014年11月17日

 曲折の末、ようやく軌道に乗った米軍普天間飛行場の移設を停滞させてはならない。新知事に慎重な対応を求めたい。

 沖縄県知事選は、翁長雄志・前那覇市長が現職の仲井真弘多氏らを破って初当選した。

 選挙では、普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非が最大の争点とされた。

 元自民党県連幹事長の翁長氏は「移設反対」を唱え、共産、社民など革新政党との保革共闘によって、幅広い支持を集めた。

 自民党推薦の仲井真氏は、「普天間問題の一日も早い解決」を最優先課題に掲げ、「移設容認」の立場を鮮明にした。

 仲井真氏が昨年末、移設先となる辺野古沿岸部の埋め立てを承認したのは、住宅密集地にある普天間飛行場の危険性の早期除去を重視したゆえの決断だった。

 移設予定地は市街地から遠く、騒音や事故の危険性が現状に比べて格段に小さい。沖縄全体の基地負担を大幅に軽減しつつ、米軍の抑止力も維持するうえで、最も現実的な方法なのは間違いない。

 知事選では公明党が、辺野古移設に反対する県本部を説得できずに自主投票としたが、与党の対応として疑問が残った。与党時代に辺野古移設を決めた民主党の自主投票も、無責任だった。

 翁長氏は長年、辺野古移設を容認していたが、民主党の鳩山政権下で反対に転じ、県外移設を主張している。今回、「新辺野古基地は絶対に造らせない」と訴えながら、具体的な代替案を示さなかったのは責任ある態度ではない。

 普天間飛行場の移設が滞れば、「2022年度以降」とされた返還が実現せず、危険な現状の長期固定化を招く恐れがある。他の米軍基地の返還も遅れるだろう。

 この問題にどう対処するか、翁長氏は見解を示すべきである。

 翁長氏は当選を決めた後、埋め立て承認の「取り消し、撤回に向けて断固とした気持ちでやる」と語った。だが、法的に瑕疵(かし)のない承認の取り消しなどは困難だ。

 防衛省は現在、仮設道路の追加など埋め立て工事内容の一部変更の承認を県に申請している。

 翁長氏が徹底的に移設を阻止しようとすれば、政府との対立は避けられない。その場合、年3000億円台の沖縄振興予算をどうするか、という問題も生じよう。

 翁長氏も現実路線に立ち、政府との接点を探ってはどうか。

 政府・与党は、翁長氏の出方を見つつ、辺野古移設の作業を着実に進めることが肝要である。


by asyagi-df-2014 | 2014-11-18 05:27 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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