沖縄から-三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第14回

沖縄の地で、体を張って新しい歴史を作ろうとしている人たちがいる。
 そこには、その煌めきの記録を残そうとしているジャーナリストがいる。
だとしたら、その生きざまの瞬間を私たちは受け取る必要がある。
三上知恵の沖縄撮影日記。
 
 11月16日の沖縄知事選挙がやはりこれからの中心的話題にならざるを得ない。
 この第14回報告では、その様子を次のように伝える。

「彼(翁長候補)の行くところに熱狂があり、彼の言葉に固唾を飲んで聞き入る聴衆の横顔を見ると、今までこじ開けることができなかった新しい窓を、今度こそ県民の総力で開けられるのではないかと総毛立つような感覚にとらわれる。
 翁長候補を追う現職の仲井真候補の陣営も、応援弁士の数も多く迫力では負けていない。しかし鉢巻をしめて居並ぶ支持者の眼差しの中には、翁長候補に向けられたような希望、羨望や祈るような必死さは感じられない。彼の言葉一つ一つに集中する大衆のエネルギーも感じられない。二人の候補者が作り出す場の空気は、全然違う。」

 三上さんは、今回の選挙について、「それでも、である。今回の選挙が沖縄の歴史を塗り替えるものになるであろうことは論を待たない。」と、位置づける。
 それは、「生まれ育った生活の場が戦場(いくさば)になり、愛する人達を殺され、先祖の土地まで基地に奪われた沖縄。戦後、『本土復帰』まで植民地同然の27年間の辛酸をなめながら、ベトナムの爆撃基地として戦争の島であり続けた沖縄。日本に復帰すれば日本国憲法に守られると信じて闘ってきたものの、未だに土地は戻らず、財産権も平和的生存権も手中に収めることができない沖縄。さらにオスプレイ100機が飛ぶ計画に向けて新しい基地の建設を強行する沖縄。 あの戦争から、ずっと「戦場」であり続け、嘆きの声止まぬ沖縄。『戦後70年、もう、終わりにしたい』『ずっと戦場(であることから解放されないばかりか、今は辺野古崎が防衛局と海上保安庁の船に制圧されている。まるで戦争だ』。」との報告に集約される。
 そして、「あの沖縄戦から今日まで、戦場であり続けたこの島の運命を今度こそ断ち切りたい。」とし、「少なくとも、向こう4年間の知事を選ぶ選挙ではなく、自分たちが舐めた70年に及ぶ辛酸の日々を子や孫の世代に絶対に受け継がせてはならないという闘いなのだ。」と、今回の知事選挙の役割(意味)を伝える。
 
 以下、三上知恵の沖縄撮影日記の引用。






三上智恵の沖縄〈辺野古・高江〉撮影日記第14回

「戦場(いくさば)にとどめを刺す」~沖縄県知事選にかける思い~

 沖縄県知事選挙一色である。
 拡声器からの声が風に乗って四方から聞こえ、町中にあらゆるポスターや横断幕、チラシが貼られ、また剥がされたり、汚されたりと、いつもの散歩道の風景も目まぐるしく変化していく。

 県都那覇が誇る巨大な野球ドームを選挙応援イベントの参加者14000人が覆い尽くすなど、これまで考えられなかったことがおきている。保革イデオロギーを超えて沖縄のアイデンティティーで繫がる「島ぐるみ闘争」を目指す翁長雄志候補は、確かにこの島が経験したことのない新しい風を巻き起こしている。彼の行くところに熱狂があり、彼の言葉に固唾を飲んで聞き入る聴衆の横顔を見ると、今までこじ開けることができなかった新しい窓を、今度こそ県民の総力で開けられるのではないかと総毛立つような感覚にとらわれる。

 翁長候補を追う現職の仲井真候補の陣営も、応援弁士の数も多く迫力では負けていない。しかし鉢巻をしめて居並ぶ支持者の眼差しの中には、翁長候補に向けられたような希望、羨望や祈るような必死さは感じられない。彼の言葉一つ一つに集中する大衆のエネルギーも感じられない。二人の候補者が作り出す場の空気は、全然違う。

 県民との約束を破って辺野古の埋め立てを承認してしまった現知事と、辺野古の基地建設を認めない県民の悲願を達成するために生まれた、初のオール沖縄の候補。当初、この勝負は闘うまでもないと思えた。ところが、先週の地元紙の調査ではその差は10ポイント程度という予想外の結果が出た。翁長候補ならダブルスコアで勝てるはずだという初期の強気な読みは、どうやら楽観論に過ぎたようだ。

 地元紙の全面広告にあるように、基地問題を抱えていない離島地域と沖縄本島南部の市町村は保守のリーダーが多い。現職の作戦は、基地問題一点に特化している印象の翁長候補の弱点である離島、南部域を早々に固めるというもの。それが功を奏している。安全保障体制を維持する国策として国が躍起になって襲いかかっている辺野古の基地建設に対して、この17年、誰が知事になっても市長になっても変えられなかったという無力感は、確かにある。この話題自体ウンザリだという嫌悪感が無関心層に広がっていることは、「島ぐるみ闘争」と盛り上がっている側には見えにくいかも知れない。県内移設に8割が反対しながら、それが知事選の投票行動と一致しない背景を、分析し直す必要がありそうだ。

 それでも、である。今回の選挙が沖縄の歴史を塗り替えるものになるであろうことは論を待たない。

 生まれ育った生活の場が戦場(いくさば)になり、愛する人達を殺され、先祖の土地まで基地に奪われた沖縄。戦後、「本土復帰」まで植民地同然の27年間の辛酸をなめながら、ベトナムの爆撃基地として戦争の島であり続けた沖縄。日本に復帰すれば日本国憲法に守られると信じて闘ってきたものの、未だに土地は戻らず、財産権も平和的生存権も手中に収めることができない沖縄。さらにオスプレイ100機が飛ぶ計画に向けて新しい基地の建設を強行する沖縄。
 あの戦争から、ずっと「戦場」であり続け、嘆きの声止まぬ沖縄。

 「戦後70年、もう、終わりにしたい」「ずっと戦場(であることから解放されないばかりか、今は辺野古崎が防衛局と海上保安庁の船に制圧されている。まるで戦争だ」。
 あの沖縄戦から今日まで、戦場であり続けたこの島の運命を今度こそ断ち切りたい。その思いを詠んだ「琉歌(八、八、八、六)」が、ゲート前のテントに張ってある。

今年 しむ月や(くとぅし しむちちや)今年の11月にこそ

戦場のとどみ(いくさばぬ とぅどぅみ)戦場にとどめを刺して終わらせよう

沖縄ぬ思い(うちなーぬ うむい)沖縄の思いを

世界に語ら(しけに かたら)広く世界に知らせましょう

 「戦場にとどめを刺す」。「今度こそ終わらせる」。この歌を詠んだ有銘政夫さんは、80年近い人生のうち70年が戦場だったわけだ。そういうお年寄りの皆さんの今回の知事選にかける熱意は並大抵ではない。少なくとも、向こう4年間の知事を選ぶ選挙ではなく、自分たちが舐めた70年に及ぶ辛酸の日々を子や孫の世代に絶対に受け継がせてはならないという闘いなのだ。
 果たして、この苦しみの連鎖にとどめを刺すことができるのか。16日の投票日までギリギリの攻防が続く。


by asyagi-df-2014 | 2014-11-08 05:40 | 沖縄から | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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