労働問題-過労死防止法施行と労働時間規制緩和について考える

過労死弁護団全国連絡会議は2014年9月26日の第27回全国総会で、「残業規制を撤廃し過労死を促進する法案に反対する決議」を決議している。
 この決議を基に、この法律の施行の意味を考える。

「過労死等防止対策推進法」(過労死防止法)は、「1980年代後半から社会問題化し、四半世紀を超えてもなお広がり続けている過労死・過労自殺をなくすことを目的として成立した、過労死防止に向けた長年に渡る運動の結晶である。」と、位置づけられるものである。
 しかし、現在の安部晋三政権は、「安倍政権のもとで、本法の理念とは完全に逆行する動き」を進行させている。
 これが、労働時間制度の規制緩和であり、「一定の要件を満たした労働者を対象に、長時間労働を抑制する法律上の規制を撤廃することが意図されている。」ものになっている。
この労働時間の規制緩和は、決議は、次のような問題点を孕んでいることを明確にしている。
(1)現在、長時間過重労働による過労死・過労自殺、精神疾患などの健康被害が広く日本の職場に蔓延している状況の中で、労働時間制度の規制緩和を行ったならば、ますます長時間労働が広がり、過労死・過労自殺が増加することは火を見るよりも明らかである。(2)政府が導入を目指している新制度は、わが国で働く労働者の命と健康を脅かす極めて危険な内容であり、過労死を広げる「過労死促進法」というべきものである。
(3)新制度のいう適用対象労働者の範囲についても、職務が明確で高い能力を有する労働者という要件はあまりにも抽象的であり、およそ対象が限定されていない。これでは使用者の一方的解釈によってあらゆる種類の労働者が対象となるおそれが高い。
(4)年収1000万円以上という要件に関しても、高年収の労働者であれば、長時間過重労働による健康被害を防止しなくてよいということには決してならない上、ひとたび新制度が立法化されてしまえば、なし崩し的に年収要件が引き下げられていくことは必至であり、現に日本経団連は2005年6月21日の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」で、対象労働者の年収を400万円と想定している。
(5)新制度は法定労働時間の規制をなくするものであるから、どんなに長時間労働を課したとしても労基法違反ではないということになるため、労働基準監督官が長時間の残業を取り締まるための法的根拠がなくなってしまう。労働基準監督官による長時間労働の取り締まりが困難という事態になれば、ますます過労死・過労自殺が増えることは必至である。

 したがって、安部晋三政権は、労働時間の規制緩和を考える前に、「国の責務」として、過労死・過労自殺をなくすことに最善を尽くさなければならない。

 以下、決議の引用。






残業規制を撤廃し過労死を促進する法案に反対する決議

2014年6月20日、参議院本会議で「過労死等防止対策推進法」(過労死防止法)が満場一致で可決され、法律として成立した。この法律は、1980年代後半から社会問題化し、四半世紀を超えてもなお広がり続けている過労死・過労自殺をなくすことを目的として成立した、過労死防止に向けた長年に渡る運動の結晶である。
しかしながら、現在、安倍政権のもとで、本法の理念とは完全に逆行する動きが進行している。これが、労働時間制度の規制緩和である。
過労死防止法制定のわずか4日後の2014年6月24日、「日本再興戦略改定2014-未来への挑戦-」が閣議決定された。この中では、「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応える、新たな労働時間制度を創設する」として、一定の要件を満たした労働者を対象に、長時間労働を抑制する法律上の規制を撤廃することが意図されている。
現在、長時間過重労働による過労死・過労自殺、精神疾患などの健康被害が広く日本の職場に蔓延している状況の中で、労働時間制度の規制緩和を行ったならば、ますます長時間労働が広がり、過労死・過労自殺が増加することは火を見るよりも明らかである。政府が導入を目指している新制度は、わが国で働く労働者の命と健康を脅かす極めて危険な内容であり、過労死を広げる「過労死促進法」というべきものである。
新制度のいう適用対象労働者の範囲についても、職務が明確で高い能力を有する労働者という要件はあまりにも抽象的であり、およそ対象が限定されていない。これでは使用者の一方的解釈によってあらゆる種類の労働者が対象となるおそれが高い。また、年収1000万円以上という要件に関しても、高年収の労働者であれば、長時間過重労働による健康被害を防止しなくてよいということには決してならない上、ひとたび新制度が立法化されてしまえば、なし崩し的に年収要件が引き下げられていくことは必至であり、現に日本経団連は2005年6月21日の「ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言」で、対象労働者の年収を400万円と想定している。
加えて、新制度は法定労働時間の規制をなくするものであるから、どんなに長時間労働を課したとしても労基法違反ではないということになるため、労働基準監督官が長時間の残業を取り締まるための法的根拠がなくなってしまう。労働基準監督官による長時間労働の取り締まりが困難という事態になれば、ますます過労死・過労自殺が増えることは必至である。以上より、過労死弁護団全国連絡会議は、日本の労働時間規制の解体をもたらす過労死促進法の導入に強く反対するものである。

2014年9月26日
過労死弁護団全国連絡会議第27回全国総会


by asyagi-df-2014 | 2014-11-07 05:44 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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