労働問題-労働者派遣法改正案を国会に提出

 政府が労働者派遣法改正案を国会に提出し、労働者派遣法改正案の国会審議が始まった。
 これまでもこの「改正案」の問題点は指摘した。
10月30日及び31日に掲載された各新聞社社説を基に、①意見・②問題点として、「改正案」を考える。

(1)意見

①琉球新報
「政府が労働者派遣法改正案を国会に提出した。今国会最大の対決法案だが、それだけではない。この国の在り方をも占う法案だ。」
②沖縄タイムス
「改正案は企業の論理を優先した内容で、派遣労働者の待遇改善や身分保障への対策は脆弱(ぜいじゃく)だ。このままでは、雇用の質の低下を招くばかりである。結論を急がず徹底した議論を求めたい。」
③新潟日報
「国会で労働者派遣法改正案の審議が始まった。不安定な雇用が拡大するのではないかと懸念されている。拙速を避け、慎重に議論してもらいたい。」
④朝日新聞
「改正案には、これまで一部の派遣会社に認められていた届け出制をやめ、全てを許可制にすることも盛り込まれた。条件を満たせば届け出だけですんだことが、不適切な業者がはびこる一因になっていたからだ。改正案に盛り込まれた改善の流れを太くするためにも、派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある。」

(2)問題点
①琉球新報
「現行法は通訳などの専門業務を除き、派遣労働者の受け入れ期間に3年の上限を設ける。改正案はこの制限を撤廃し、全ての業務で、3年ごとに働く人を交代させれば、半永久的に派遣労働者を使い続けられるようになる。賃金を安く抑えたい産業界の求めに応えた形だ。」
「この派遣法改正は一見、企業を利するように見えて、大局的には経済政策としても消費拡大に逆行するのだ」
②沖縄タイムス
「改正案の柱は、派遣労働者を受け入れる期間の上限撤廃だ。現行では、通訳など専門26業務以外は、同じ職場で最長3年まで、と上限が決まっている。正社員から派遣労働者への置き換えを防ぐためである。」
「つまり「『派遣』は臨時的・一時的な対応で、恒常的な業務には正社員を充てる」という原則からの転換である。」
③新潟日報
「企業に比べて立場の弱い働く側に立って、派遣の待遇を改善し、働き方の違いによる格差を縮めていく努力は欠かせない。」
「若者が結婚や出産をためらう理由として、派遣を含めた非正規労働に就く人が多く、将来に不安を持つことが挙げられる。安定的な雇用があってこそ消費拡大、経済再生につながっていく。改正案がその期待に応えるものかどうか、問わねばならない。」
④朝日新聞
「目指すべき方向ははっきりしている。同じ価値のある仕事をしている人には同じ待遇を義務づける「均等待遇原則」を導入することだ。この原則があれば、派遣会社に支払うマージンが必要な派遣労働は直接雇用よりも割高になり、コスト目的で派遣労働を使うことへの歯止めにもなる。」

 以下、各新聞社の社説引用。







琉球新報社説-派遣法改正案 不況招く「経済政策」だ-2014年10月31日

 政府が労働者派遣法改正案を国会に提出した。今国会最大の対決法案だが、それだけではない。この国の在り方をも占う法案だ。
 政府は今国会での成立を目指すが、国の在り方を左右する以上、慎重審議に徹すべきだ。
 現行法は通訳などの専門業務を除き、派遣労働者の受け入れ期間に3年の上限を設ける。改正案はこの制限を撤廃し、全ての業務で、3年ごとに働く人を交代させれば、半永久的に派遣労働者を使い続けられるようになる。賃金を安く抑えたい産業界の求めに応えた形だ。
 疑問を禁じ得ない。現行法が期間を制限してきたのは、恒常的に発生する仕事には恒常的な正社員を充てるべきだとの原則があったからだ。制限がなくなれば正社員を派遣労働者に置き換える動きが一気に進みかねない。社会全体に不安定雇用を広げることになる。
 安倍晋三首相らは「生涯派遣の労働者を増やすとの批判は当たらない」と釈明に躍起だ。だが、なぜ派遣の増加にならないのか、納得のいく説明は見当たらない。
 バブル崩壊後の日本経済は失われた20年と称される。経済成長率のマイナスも経験し、右肩上がりの神話は失われたが、もう一つ失われたものがある。雇用の安定だ。
 経済成長の喪失と安定雇用の喪失。二つの喪失は一見別物に見えるが、実は深い関連が疑われる。
 総務省の昨年の発表によると、非正規社員は労働者の38・2%と過去最大を更新した。20年前に比べ非正規の割合は16ポイントも上昇している。1990年代後半以降の労働法制改定で企業が非正規雇用をしやすくなったことが大きい。
 低所得者の増加はすなわち、消費に慎重な層が増えるということだ。消費の意欲と実需が高いのは若年層・子育て層であり、その層に不安定雇用が広がると当然、消費は収縮する。人件費抑制で短期的には企業は利益を上げるが、国全体の消費が収縮すれば回り回って業績悪化につながりかねない。
 この派遣法改正は一見、企業を利するように見えて、大局的には経済政策としても消費拡大に逆行するのだ。
 労働法制改定は小泉構造改革で進み、その結果が不安定雇用の拡大、格差拡大だった。安倍政権は派遣法改正から「残業代ゼロ法案」、「解雇特区」など、労働法制を一層改悪しようとしている。構造改革の失策を繰り返してはならない。


沖縄タイムス-派遣法改正案、均等待遇の実現が先だ-2014年10月31日


 労働者派遣法改正案の国会審議が始まった。政府は来年4月施行を目標に、今国会での成立を目指す。

 だが、改正案は企業の論理を優先した内容で、派遣労働者の待遇改善や身分保障への対策は脆弱(ぜいじゃく)だ。このままでは、雇用の質の低下を招くばかりである。結論を急がず徹底した議論を求めたい。

 改正案の柱は、派遣労働者を受け入れる期間の上限撤廃だ。現行では、通訳など専門26業務以外は、同じ職場で最長3年まで、と上限が決まっている。正社員から派遣労働者への置き換えを防ぐためである。

 しかし、改正案では、期間の上限や専門業務の区分が廃止される。労働組合から意見を聞くことなどを条件に、3年ごとに働く人を入れ替えれば、同じ職場で派遣をずっと使い続けられるようになる。

 つまり「『派遣』は臨時的・一時的な対応で、恒常的な業務には正社員を充てる」という原則からの転換である。

 企業が派遣を活用するのは、一時的に働き手が必要になったという理由からだけではない。低コストで労働力が調達でき、好不況に応じて人員調整がしやすいためだ。企業は派遣労働者を「雇用の調整弁」としてきた。

 今回の改正案は、企業の使い勝手をより高める形の内容だ。成立すれば、正社員から派遣労働者への置き換えが進むことは容易に想像できる。派遣を含む非正規労働者の比率は約38%にまで高まっているが、さらに上昇する恐れが強い。
    ■    ■
 政府、与党は、改正案に雇用継続や正社員化につながる措置を盛り込んだとアピールする。

 内容はこうだ。派遣会社は、同じ職場で3年働いた派遣労働者を正社員とするよう派遣先に依頼したり、次の職場を紹介する。派遣労働者に計画的な教育訓練を実施する。また、悪質業者の排除を目的に、すべての派遣会社を許可制とする。

 だが、その効果には疑問符が付く。というのも、派遣先の正社員への登用は「依頼」にすぎず、雇用される保証はない。教育訓練の中身もはっきりせず、キャリアアップへの道筋は見通せないからだ。

 正社員と同等に働きながらも、低賃金を強いられ、家計を支える収入が得られない。雇い止めなどの懸念が常につきまとい、将来に希望が持てない-。派遣労働者のこうした不安を払拭(ふっしょく)するには、ほど遠い。
    ■    ■
 安倍晋三首相は、国会答弁で「子育てを担う世代が生きがいを持ち、安心して働ける環境整備を図る」と法改正の狙いを説明した。

 であれば、まずは派遣労働者が、同じ仕事をする正社員と同水準の賃金を受け取れる「均等待遇」を実現すべきだ。派遣期間の上限撤廃など規制緩和はそれからである。

 安倍政権は「女性が活躍する社会」を推進するが、非正規雇用者の過半数は女性が占める。正社員との賃金格差が是正されず、派遣のまま固定されるようでは、政権の看板が色あせる。


新潟日報-派遣法改正案 待遇改善で格差の縮小を-2014年10月31日

 国会で労働者派遣法改正案の審議が始まった。不安定な雇用が拡大するのではないかと懸念されている。拙速を避け、慎重に議論してもらいたい。

 改正案では、企業の派遣受け入れ期間の制限(現行法は上限3年)を廃止し、派遣会社に雇用安定の措置を義務付けた。

 同じ職場で働く人を3年ごとに入れ替えれば、企業はずっと派遣を活用できるようになる。

 通訳などの専門的な26業務は、現行法でも受け入れ期間の制限がなかったが、改正案では派遣可能な全業務に広げたのだ。

 政府は「多様な働き方の実現を目指す」と強調し、「派遣労働者の雇用の安定と保護を図る」と趣旨を説明する。

 これに対し、民主などの野党は「派遣で働き続ける生涯派遣が増える」と強く反発、「派遣は本来一時的な働き方のはずだ」として廃案に追い込む構えだ。

 安倍晋三首相は「生涯派遣を増やすとの批判は当たらない」というだけで、派遣拡大への懸念に正面から答えていない。

 「雇用の安定」の実効性にも疑問を持たざるを得ない。働く人を入れ替える際は労働組合の意見を聞くとのルールを設けたが、合意は必要としていないのだ。

 また、改正案は派遣会社を許可制としたほか、派遣会社には派遣先企業に派遣労働者の社員登用を依頼することや、次の派遣先を紹介することも義務付けた。

 許可制で悪質業者を排除できるのか、派遣先企業が依頼を聞き入れるか、疑問は尽きない。派遣労働者の雇用が安定するとは言い難いように思える。

 企業が正社員ポストを派遣に置き換えれば、身分が安定した正社員が減ることになる。派遣を活用すれば、人員調整がしやすく、人件費の削減にもなる。

 派遣で働く人の立場とすれば、雇用は不安定なまま、賃金が低く抑えられるという問題となる。改正案は労働側より企業側に大きなメリットをもたらすだろう。

 企業に比べて立場の弱い働く側に立って、派遣の待遇を改善し、働き方の違いによる格差を縮めていく努力は欠かせない。

 野党からは議員立法で、派遣労働者と正社員の均等待遇を図る「同一労働同一賃金推進法案」の提出を目指す動きも出ている。

 派遣労働者を対象にした厚生労働省の調査で、正社員として働きたい人は4割強に達した。その道を閉ざしてはならないはずだ。

 改正の背景として、来年10月に始まる「労働契約申し込みみなし制度」があると指摘される。

 派遣にルール違反があれば、派遣先の企業は派遣労働者を社員として雇わなければならない。改正案は企業にとって、その「リスク」を軽減する方向に働くだろう。

 若者が結婚や出産をためらう理由として、派遣を含めた非正規労働に就く人が多く、将来に不安を持つことが挙げられる。

 安定的な雇用があってこそ消費拡大、経済再生につながっていく。改正案がその期待に応えるものかどうか、問わねばならない。


朝日新聞社説-派遣法審議 目指すべきは均等待遇-2014年10月30日

 労働者派遣法改正案の国会審議が始まった。

 派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んで、派遣先企業で働いている。派遣先で仕事がなくなると派遣会社から解雇されたり、賃金を安くされたりする問題がある。このため、派遣労働が広がらないよう、派遣先が派遣社員を受け入れる期間は上限3年に規制されている。ただし、専門的だとされる26業務では期間の制限はない。

 この「業務」による規制がわかりにくいという主張が、派遣業界や経済界に強かった。派遣労働者にとっても、上限を業務で決めると、例えば前任者が2年をこなすと、後任の派遣社員が1年しか働けない事態が起きてしまう。

 改正案は、業務による規制を見直し、派遣会社と派遣社員の間の契約期間によって区別することにした。期間を決められている有期雇用派遣と、定年まで働ける無期雇用派遣だ。同じ派遣先で働ける期間は、前者が上限3年、後者は無制限となる。

 派遣会社が無期雇用派遣を増やせば、派遣社員から見ると、解雇の不安は緩和される一方で、働き方が派遣というスタイルに固定される恐れもある。有期雇用派遣の場合は、3年ごとに派遣社員を代えれば良く、業務自体が派遣に固定化されてしまう可能性が残る。国会での論議も、この見方を巡って賛否が割れている。

 しかし、目指すべき方向ははっきりしている。同じ価値のある仕事をしている人には同じ待遇を義務づける「均等待遇原則」を導入することだ。

 この原則があれば、派遣会社に支払うマージンが必要な派遣労働は直接雇用よりも割高になり、コスト目的で派遣労働を使うことへの歯止めにもなる。

 改正案のとりまとめ過程で均等待遇原則の導入が提案されたが、経営者側の反対で見送られた経緯がある。確かに、いきなり賃金の均等待遇を実現させるには、無理もあるだろう。しかし、交通費などの手当や福利厚生面で待遇に違いがある。まず、そんな扱いをやめて、原則の実現を目標にするべきだ。

 改正案には、これまで一部の派遣会社に認められていた届け出制をやめ、全てを許可制にすることも盛り込まれた。条件を満たせば届け出だけですんだことが、不適切な業者がはびこる一因になっていたからだ。

 改正案に盛り込まれた改善の流れを太くするためにも、派遣労働者の所得が向上する道筋をつけること。その責任が、この国会にはある。


by asyagi-df-2014 | 2014-11-02 05:50 | 書くことから-労働 | Comments(0)

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