労働問題-再提出された派遣法「改正」法案を考える

派遣法「改正案」については、22日のテレビ報道では、野党の反対を受け、先送りにするという観測記事が流されていました。
 安部晋三政権が、成長戦略に位置づけているこのことを容易にあきらめるだろうかという疑問もあります。
 佐々木亮弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表のブログにこのことに関することが触れられていました。
 今回の「改正案」は、「3年間という期間制限が撤廃されます。もう少し正確に言うと、現行法の業務単位でのカウントはやめて、人単位でカウントすること」になります。
 この結果、「派遣社員は、派遣先企業にとって『切りやすい』存在だからです。直接雇用の労働者には、解雇権濫用法理(労働契約法16条)があるので、簡単に切れません。有期雇用でも雇止め法理(労働契約法19条)がありますので、一定の場合には理由もなくバッサリ切ることはできません。しかし、派遣社員は派遣先企業とは『労働契約』を結んでいません。」ということから、「3年という期間制限がなくなったら、派遣社員は『増える』としか言いようがありません。」ということになる。
 そしてこのことが、「派遣法『改正案』が、『正社員ゼロ法案』と言われるゆえん」であると。

 以下、引用。






再提出された派遣法「改正」法案

前の国会から提出されている派遣法の改正案。
前国会では、ひどい条文ミスがあり、廃案となりましたが、今国会でゾンビのごとく再提出されました。
ただ、ご存じのとおり、閣僚2名の辞任により、審議日程が微妙なようです。
衆院本会議:野党が審議入り拒否 派遣法改正案成立は微妙
派遣法改正、審議に遅れ 2閣僚辞任で野党攻勢
そんな中でも、与党はこの法案を今国会でどうしても通したいようです。
しかし、派遣労働はいろいろな雇用形態の中で最も不安定であり、労働者の多くにとってあまりメリットがある働き方ではありません。

今回、3月に書いた記事(派遣労働の不安定さの理由と派遣法改正案が持つ危険性)と重なるところはありますが、より分かりやすく書きたいと思い、今一度、派遣法改正法案に触れたいと思います。
さて、非正規雇用問題の象徴ともいえるのが派遣労働です。今では広く浸透してまっていますが、元々は賃金の中抜き(中間搾取)や雇い主の責任が曖昧となることなどから厳しく規制されていた働き方でした。
それが1985年に派遣法が成立し、大幅な規制緩和をし続け、今に至っているわけです。
今の派遣法はこういう感じ
例として、派遣労働者のAさんがX社に派遣されていたとしましょう。
現行法は、原則として臨時的・一時的な業務に限って派遣社員を使うことができることになっています。したがって、現行の派遣法では、1つの業務でX社が派遣社員を使える期間は最大で3年と制限されています。
これは業務単位でカウントするので、Aさんが派遣される前に、誰かが同じ業務で2年間派遣社員として働いていれば、X社はあと1年しか派遣社員を使えません。
そして、この3年という期間が過ぎてしまえば、その業務は派遣社員ではなく、直接雇用した社員にやらせなくてはいけません。
こうすることで直接雇用を派遣労働者に置き換えることを防ごうとしているのです。実際は、脱法的なことが多発しておりますが、法律はこうなっているのです。
今国会に出された派遣法改正案は?
では、今国会に出された派遣法改正案はどうなっているのでしょうか。
なんと、3年間という期間制限が撤廃されます。
もう少し正確に言うと、現行法の業務単位でのカウントはやめて、人単位でカウントすることになります。
具体的には、先ほどのAさんは、Aさんの前に誰かがその業務につき派遣労働していても、関係なく3年働けます。
そして、Aさんが3年経てば、X社はBさんを派遣で、Bさんが3年経てばCさんを派遣で、Cさんが3年経てばDさんを・・・・、となります。(*1)
要するに、X社は永遠に派遣労働者を使い続けることができるようになるのです。(*2)
*1 派遣労働者が派遣元企業と無期の労働契約を結んでいる場合は制限は何もなくなります。
*2 派遣労働者の受け入れ開始から3年を超えて派遣労働者を使う際には、過半数労働組合等の意見を聴くことが必要なのですが、ただ意見を聴けばいいだけなので、何の歯止めにもなりません。
改正案だと、なぜ派遣労働者が増えるのでしょうか?
では、3年という期間制限がなくなったら、派遣社員は増えるのでしょうか?
これは「増える」としか言いようがありません。
なぜならば、派遣社員は、派遣先企業にとって「切りやすい」存在だからです。
直接雇用の労働者には、解雇権濫用法理(労働契約法16条)があるので、簡単に切れません。有期雇用でも雇止め法理(労働契約法19条)がありますので、一定の場合には理由もなくバッサリ切ることはできません。
しかし、派遣社員は派遣先企業とは「労働契約」を結んでいません。
先ほどのAさんはX社とは労働契約関係にはないのです。
では、なぜ派遣社員が派遣先企業で働けるのでしょうか。
それは、派遣元企業と派遣先企業の「労働者供給契約」があるからです。
そして、この労働者供給契約の解約や不更新には解雇権濫用法理も雇止め法理も適用されません。
ですから、派遣先企業としては、「人を減らしたいなぁ」と思ったら、派遣労働者であれば、解雇権濫用法理も雇止め法理も関係なく、容赦なく減らすことができるのです。
この減らしやすさを「雇用の調整弁」などと呼ぶことがありますが、派遣労働者からすれば、「『弁』じゃねーよ」と思うことでしょう。
というわけで、現行法では3年という期間が終われば、その業務をする労働者は直接雇用した労働者でなければならなかったのです。
「だったら最初から直接雇用でいいや」と考えたり、「つなぎの間は派遣社員を使うけど、いつかは直接雇用の労働者にしなければなぁ」と考えるきっかけがあったのです。
しかし、改正案では派遣社員をずーっと使い続けることができるようになりますので、あえて切りにくい直接雇用をする企業は減ってしまうでしょうし、上記のように考える「きっかけ」さえ生まれないでしょう。
となると、直接雇用は減り、派遣労働者が増えるのです。
これが派遣法改正案が「正社員ゼロ法案」と言われるゆえんなのです。
まぁ、実際にゼロにはならないのですが、正社員が激減し、派遣労働者が増大することは確実なわけです。
廃案がベスト
こうした派遣法改正案は不安定雇用を激増させます。
派遣労働者の賃金は、正社員の労働者よりも低く、年数を重ねても上昇カーブを描かないことが明らかになっています。
政府は派遣業界からの猛烈なプッシュもあって、早期成立を狙っているようですが、やはり成立させてはならない法案であると言えます。
一日も早く廃案とするのがベストの選択ですね。(^o^)丿オー

佐々木亮弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表


by asyagi-df-2014 | 2014-10-23 20:49 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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