安部晋三首相の所信表明を批判する。各新聞社社説から。

琉球新報は、「『巧言令色鮮(すくな)し仁』という言葉がまず頭に浮かんだ。それが否定しようのない実感だ。」と、表す。
南日本新聞社は、「閣議決定による憲法解釈変更で行使を容認した集団的自衛権や、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げなど、世論の批判がある課題に踏み込んだ発言はなかった。」と、した。
高知新聞は、「臨時国会などの冒頭で首相が語る所信表明は、国の針路を国民に丁寧に示すためにある。しかし、きのう召集された臨時国会で安倍首相は国民が本当に知りたいことを語っただろうか。多くの国民は、肝心なことが述べられていないと感じたはずだ」と。
神戸新聞は、「だが、安倍首相には本当に地方や女性の苦悩が見えているのだろうか。明るい未来ばかりが強調され、若者や女性に多い非正規労働や格差拡大に苦しむ地方の現実が見過ごされてしまわないかと心配だ。」と、危惧感を表明する。
 信濃毎日新聞社は、「掛け声ばかりが目立ち、具体策が乏しい。こう感じた人も多かったのではないか。」と、批判する。

 また、各社共通の声として、「野党による腰を据えた追及が欠かせない。」といった野党の奮起を促す論調があった。

 安部晋三政権の政治手法は、耳障りのいい言葉を並べて、実は何もきちっと説明することなく、自分たちが決めた一つの方向に、国民を合わさせる、というものでしかない。
 そこでは、地域も国民も、一方的に窮乏化させられることになる。
 これだけの新聞社が、安部晋三首相の所信表明に不信感を顕しているのだ。

 以下、各新聞社の社説の引用。






琉球新報社説-所信表明 「言葉だけの政治」は誰か-2014年9月30日

 「巧言令色鮮(すくな)し仁」という言葉がまず頭に浮かんだ。それが否定しようのない実感だ。
 安倍晋三首相は第187臨時国会で所信表明演説をした。さまざまな課題に言及したが、沖縄に関する部分は、現実に安倍政権が進めていることと裏腹の美辞麗句が並んでいる。誠実性を感じられぬ内容に不信の念を禁じ得ない。
 首相は「かつて裏付けのない、『言葉』だけの政治が沖縄の皆さんを翻弄(ほんろう)した」と述べた。「最低でも県外」と述べながら挫折した鳩山由紀夫元首相を批判しているのは間違いない。
 安倍首相は続けて「安倍内閣は、『言葉』ではなく、実際の『行動』で負担軽減に取り組んでいく」と述べた。「基地負担の軽減に全力で取り組む」とも述べている。
 しかし安倍政権が実際に取っている「行動」は、辺野古の新基地建設の強行である。このどこが「負担軽減」なのか。それと正反対の「負担押し付け」以外に、表現のしようがないではないか。
 安倍首相の指示により辺野古沖の掘削調査が強引になされたことを県民は知っている。暴力的な警備も周知の通りだ。世論調査で県民の8割が掘削強行に反発している。そんな中、首相は演説で「今後も沖縄の気持ちに寄り添う」と述べた。悪い冗談としか思えない。
 首相は普天間飛行場配備の空中給油機の岩国基地移駐を誇らしげに語ったが、移駐後1カ月間、ほぼ3日に1日、普天間に飛来したのが確認された。これこそ「裏付けのない、『言葉』だけの『負担軽減』」ではないか。真に沖縄の負担を軽減するなら、単に1機種の、しかも再飛来付きの「移駐」などではなく、県外・国外への海兵隊丸ごとの移駐しかあるまい。
 米国の元駐日大使の証言や米国の公文書により、1990年代以降も、沖縄の海兵隊を撤退してもよいとする米国に対し、日本政府が引き留めた実態が明らかになっている。政府が引き留めをやめれば、海兵隊移駐はすぐにでも実現できるのだ。
 演説は女性施策を強調したが、待機児童対策は予算の制約で遅々として進まない。原発再稼働の方針も示したが、汚染水対策に触れないまま安全性を強調したのも、無責任との印象を否めない。世論調査では集団的自衛権の行使容認や原発再稼働への反対が多数を占める。首相はまず、そうした民意にこそ耳を傾けるべきだ。


南日本新聞社社説-所信表明演説] 不人気政策には触れず-2014年9月30日

 秋の臨時国会が召集された。

 安倍晋三首相は所信表明演説で人口減対策と地域活性化に向けた「地方創生」や、経済成長のために「女性が輝く社会」を目指すと表明した。また、有効求人倍率や賃金上昇をアベノミクスの成果とし、今後も「経済最優先」で政権運営に当たると強調した。

 来春の統一地方選を意識してアピールする狙いは明らかだ。

 一方、閣議決定による憲法解釈変更で行使を容認した集団的自衛権や、来年10月に予定される消費税率10%への引き上げなど、世論の批判がある課題に踏み込んだ発言はなかった。

 第2次安倍改造内閣が発足して初の国会である。国政全般について首相の考えを国民に伝える重要な演説で、不人気な政策への言及を避けたのは不誠実と言わざるを得ない。

 集団的自衛権の行使容認について、首相はこの演説で「いかなる事態にあっても、国民の命と平和な暮らしは守り抜く。その決意の下、切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進める」と述べるにとどまった。

行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定がなされたのは通常国会閉会後の7月で、本格的な国会はこの臨時国会が初めてだ。首相には与党協議など閣議決定にいたる経緯や、安保関連法の準備状況を説明する責任があるはずだ。

 12月に判断する消費税率再引き上げの可否についても直接の言及はない。経済対策の関連で「消費税率引き上げや、燃料価格の高騰、この夏の天候不順などによる景気への影響にも慎重に目配りし」と述べただけだ。

 臨時国会の会期は11月末で終わる予定だ。十分な審議時間を確保できないと野党側から異論が出たが、与党が押し切った経緯がある。これでは「集団的自衛権の閣議決定と同じやり方だ」と野党から批判されても仕方ない。

 今後の国会審議の中で、首相はこうした難題についての「所信」を明らかにすべきだ。

 首相は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題に絡み「かつて、裏付けのない言葉だけの政治が沖縄の皆さんを翻弄(ほんろう)した」と民主党政権を批判した。「こんな無責任な政治を、二度と繰り返してはならない」と対決姿勢をあらわにした。

 民主党は執行部を一新し、安倍政権への攻勢を強める構えだ。新党「維新の党」など他の野党も存在感発揮を狙っている。「1強多弱」といわれる国会にあって、活発な論戦で政府の政策の問題点を明らかにしてほしい。

高知新聞社説-所信表明 なぜ肝心なことを言わぬ-2014年09月30日


 臨時国会などの冒頭で首相が語る所信表明は、国の針路を国民に丁寧に示すためにある。
 しかし、きのう召集された臨時国会で安倍首相は国民が本当に知りたいことを語っただろうか。多くの国民は、肝心なことが述べられていないと感じたはずだ。
 まずは集団的自衛権の行使容認をめぐる安全保障法制の問題だ。国民の賛否が割れていたにもかかわらず、短い国会審議の後、7月に行使容認を閣議決定した。
 決定後、「説明不足だ」という国民の批判を考慮したのだろう、政府は関連する法案の提出を臨時国会から来年の通常国会へと先送りした。
 そんな経緯があるからこそ国民は、法案の具体像を知りたかったはずだ。憲法9条に基づく「専守防衛」が政府の憲法解釈や新たな法律で変更されれば、一番影響を受けるのは国民だ。
 ところが首相は「切れ目のない安全保障法制の整備に向けた準備を進めている」と述べただけだ。「いかなる事態でも国民の命と平和な暮らしを守る」と力を込めたが、法制化で「命と平和」を心配している国民の不安は何ら解消されていない。
 しかも政府は先日、日米防衛協力指針(ガイドライン)改定は、年内にこだわらないとの方針を示した。首相は年内改定を目指して、7月に閣議決定したと説明してきた。方針の変更なら理由を国民に説明すべきだった。
 一方で首相が力を入れたのは「地方創生」だ。「ふるさとを消滅させてはならない」は、スローガンとして悪くない。ただし、具体的にどんな政策を国民に示すかが鍵となる。
 首相はあらためて「次元の異なる大胆な政策を」と述べたものの、それではどんな活性化策かよく分からない。
 もう一つ強調した「女性の活躍」もむろん重要だ。労働人口が減る中、女性が働きやすい環境を整えることは男性の働き方や生き方にも直結する。ただ、こちらも「女性が輝く社会を目指す」と理念先行が目立った。
 今国会は、こうした課題に加え原発再稼働や消費税率10%への再引き上げの判断など重要テーマがめじろ押しだ。安倍首相は所信表明では語り尽くせないことがあったはずだ。国会審議で国民の疑問にしっかりと答えてほしい。それには、野党による腰を据えた追及が欠かせない。


神戸新聞社説-所信表明演説 「地方創世」を盾にするな-2014年9月30日

臨時国会が召集され、安倍晋三首相が所信表明演説を行った。

 地域活性化と人口減少克服のため「地方創生」に取り組み、「女性の活躍」とともに経済成長の2本柱に位置付ける考えを表明した。震災復興の加速、日中・日韓関係の改善にも意欲を示し、堅実に政策を実行する姿勢をアピールしたといえる。

 特に地方創生をめぐっては全国の先進事例をふんだんに盛り込み、他の自治体にも発想の転換を迫った。上からの押し付けでなく、地域の個性を生かす視点は重要だ。

 だが、安倍首相には本当に地方や女性の苦悩が見えているのだろうか。明るい未来ばかりが強調され、若者や女性に多い非正規労働や格差拡大に苦しむ地方の現実が見過ごされてしまわないかと心配だ。

 政府は地方、女性それぞれの関連法案を提出する予定だが、首相から具体的な説明はなかった。今国会で成立を目指す労働者派遣法改正案は不安定な非正規雇用を増やす、との批判もある。

 きょうから始まる国会審議で、首相や関係閣僚はこうした疑問や懸念にしっかりと答えてもらいたい。

 一方で首相は、集団的自衛権行使に向けた安全保障法制や、消費税率10%への再引き上げにはほとんど言及しなかった。世論を二分するテーマで、相変わらず考えを正面から語ろうとしない。

 昨年の臨時国会は「成長戦略国会」と名付けながら、国民の知る権利を脅かす恐れのある特定秘密保護法を成立させた。「好循環実現国会」を掲げた先の通常国会では、自身の悲願でもある集団的自衛権行使を認める憲法解釈変更を急いだ。

 文句のつけようがない表看板を掲げながら、国民の反発が予想される重要政策は見えにくい与党協議の場を使って思い通りに進めていく。高い支持率を背景に、国会軽視ともいうべき姿勢を強めている印象だ。

 今国会の「地方創生」「女性の活躍」も反対しにくいテーマだ。会期中に政権運営に直結する福島、沖縄県知事選を控え、年内には消費税再増税の判断が迫る。野党の攻撃を避けたい思惑もあるのだろう。

 地方と女性は、ともに人口減少社会を乗り越える鍵である。政権が求心力を保つための「隠れみの」で終わらせてはならない。野党は徹底した政策論争を挑んでもらいたい。

信濃毎日新聞社社説- 所信表明演説 掛け声ばかりが目立つ-2014年9月30日


 掛け声ばかりが目立ち、具体策が乏しい。こう感じた人も多かったのではないか。

 安倍晋三首相がきのう行った所信表明演説である。

 政府、与党はこんどの臨時国会に「地方創生国会」という大きな看板を掲げた。

 演説では、全国各地の地域活性化の成功例を実名を挙げながら、次々に紹介した。

 地方に自発的な取り組みを求める一方、首相は地方対策の司令塔となる地方創生本部を立ち上げたことを説明。「これまでとは次元の異なる大胆な政策を取りまとめ、実行する」と強調した。

 演説は今後への期待を抱かせることが中心で、政策の道筋や展望など具体性を欠いた。今国会のもう一つの目玉である女性の活躍の後押し策も同様だ。看板の大きさの割に中身は薄かった。

 少子高齢化が進む中、人やカネが一部の大都市に集中し、地方は衰退する。この流れを止め、地方を元気にする―。

 首相が訴えていることを大ざっぱに言うとこうなる。

 演説では「人口減少や超高齢化など、地方が直面する構造的な課題は深刻」との認識を示した。構造的とは複雑な要素が絡み合っていることを意味する。過去の政権も取り組んだが、目立った成果を出すことはできなかった。それほどの難しさがある。

 首相が本腰を入れる気があるならいいが、急に重要課題として持ち出したことが気になる。

 政府に自らをトップとする地方創生本部を新設すると表明したのは6月のことだ。その後の内閣改造では地方創生担当相を設け、地方を重視する姿勢を盛んにアピールするようになった。

 来年春には統一地方選がある。これに勝てば首相の長期政権が現実味を増す。演説では選挙や支持率への影響を意識してか、安全運転に配慮する姿勢が目立った。集団的自衛権の行使容認に伴う安全保障法制の具体的な中身や消費税率10%への再引き上げの判断には踏み込まなかった。

 いずれも国民生活に深く関わる問題だ。当面の政権運営に逆風になることを避けようとの考えだとしたら、不誠実である。

 首相は選挙のために「地方創生」という大風呂敷を広げてはいないか、実効性ある政策を打ち出すことができるか。冷静な目で政権の取り組みを見る必要がある。スローガンに終わることがないよう、野党は論戦で厳しく首相を追及してもらいたい


by asyagi-df-2014 | 2014-10-01 05:40 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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