持続可能な社会-教育問題から(1)

 朝日新聞の特集・教育2014を読みながら、多くの示唆を受け、改めて持続可能な社会を考える。
 5月末の経済財政諮問会議で、学校統廃合の基準が取り上げられた。このことについては、「小さい学校が多すぎる。財政の厳しい中、統廃合が進んでいないのは問題だというのだ。民間議員たちが、時代に合わせて統廃合しやすいよう基準を見直すべきだと声をあげた」と紹介されている。
 日本の新自由主義政策の基で、特に1990年代からの「失われた20年」の時代にもたらされたものは、資本の寡占化の中での大多数の国民の困難化と地方の疲弊であった。
 実は今、緊急な課題となっているのは、持続可能な社会とは何なのかということを地域社会の中で考えるということである。
 なぜなら、このままの安部晋三政権の求める「成長戦略」では、国民と地方はより一層切り捨てられることになるからである。
 
 学校の存続については、確かに一方に、本格的な「人口減少時代」に入った日本という重たい現実-「今年生まれる子どもが、100万人に届かないかもしれない。6月までの出生数が50万人を割り込んだからだ。もしそうなれば、統計が残る1899年以来、初めてだ。」-がある。
 実際に、「全国では、2011年度までの20年間で消えた小中学校は約5900校に上る。小学校が1校しかなく、自治体内で統合できなくなった市区町村は13年度、200を超えた。」という状況にまでなっている。
 しかし、「学校の統廃合は人口減少を加速させ、集落の崩壊を招く危険性をはらむ。」ことも事実である。
 記事の中で触れられている「小学校を失うことは、村に未来への希望が消えること」という倉根弘文・村教育次長の言葉は、日本の実態そのものである。

 一方、熊本県多良木町の「学校の復活は集落存続に向けた町の事業の一環」としての学校の復活の取り組みは、地域社会そのものの存在の意味を賭けた取り組みである。
 また、鹿児島徳之島の大久保明・伊仙町長は、「人口減を防ぐためには、小規模校をどんなことがあっても存続させることが重要だ」、「『統廃合は時代の流れ』というのは消極的な考え方。残すにはどうするかを考えるべきだ。学校があることで世代を超えた交流が生まれる」と、学校統廃合でないやり方を実践している。
 こうした取り組みを「成長戦略」にいかに対峙させることができるかが学校存続にとっては重要になる。

 持続可能な社会を創造するという観点の中で、学校の問題を考えて行く必要がある。また、具体的のどのように取り組むことを合わせて求められている。
 それは、小学校、中学校、幼稚園がなくなり、農協の支所が撤退するとともに唯一あった医院も閉鎖された地域に住むという現実の中から、持続可能な社会を考えるということでもある。

以下、朝日新聞の引用。







朝日新聞-2014年9月20日
集落存続、小学校復活にかける 縮む地方、もがく自治体


熊本県の山間部で今春、休校から7年ぶりに復活した多良木町立槻木小学校。上治南凰(みお)ちゃん(左)が入学して約半年が過ぎた。ひとりぼっちの学校生活で、2階建て校舎の一角で担任の先生と向かい合って学ぶ。給食は担任や教頭、用務員の3人と一緒だ。同世代の子と過ごすため、週1日は用務員が運転する車で25分かけて隣の小学校へ。「さみしくない」と南凰ちゃん=熊本県多良木町、池永牧子撮影
 この春、熊本の山あいの集落で、休校していた小学校が7年ぶりに復活した。たった1人の女の子を迎え入れるために。

特集・教育2014
 熊本県多良木(たらぎ)町立槻木(つきぎ)小。学校がある槻木集落は町役場から約20キロ、峠道を越えた先にある。120人近くが暮らし、10人に7人以上が65歳を超える。

 そこに昨夏、町の公募に応じて集落支援員として福岡県から上治(うえじ)英人さん(42)が移ってきた。町の非常勤職員で、お年寄りの送迎や集落のごみ拾いなどを手伝う。長女南凰(みお)ちゃん(7)が翌春に小学校入学を控えていたことから、町はわざわざ彼女のために学校をよみがえらせた。

 学校の復活は集落存続に向けた町の事業の一環だ。上治さんも大自然の中で子育てしたいと思った。小学校の再開が一家の移住の決め手に。今春には妻と南凰ちゃんと紫凰(しお)ちゃん(4)の娘2人も合流した。

 南凰ちゃんは2階建て校舎の一角で担任の先生と向かい合って学ぶ。給食は担任、教頭、用務員の3人と一緒だ。同世代の子と過ごすため、週1日は用務員が運転する車で25分かけ隣の小学校へ。「さみしくない」と南凰ちゃんは言う。

 ほかの小学校の場合、児童1人あたりの町の単年度予算が13万円に対し、ここは660万円と50倍だ。かなりの支出だが、松本照彦町長は「槻木の人を喜ばせるだけでなく、新たな世帯を呼び込むなど目に見える成果を示さなければ」とし、雇用創出も目指す。

 一方全国では、2011年度までの20年間で消えた小中学校は約5900校に上る。小学校が1校しかなく、自治体内で統合できなくなった市区町村は13年度、200を超えた。

 群馬県との境にある長野県北相木(きたあいき)村。村にある学校は北相木小のみだ。すでに中学校はない。小学校を存続させるため、村は塾の力を借りる決断をした。首都圏で人気の学習塾「花まる学習会」(本部・さいたま市)と手を結び、来年度から母子の山村留学を募る。

 名付けて「花まる北相木プロジェクト」。考える力をつける算数プリントや立体パズルなどを採り入れ、「花まるブランド」で子どもを集める狙いだ。小学校名を「花まる北相木小」とすることさえ一時検討した。倉根弘文・村教育次長は言う。「小学校を失うことは、村に未来への希望が消えること」。10月には都内で説明会を開く。

 子どもがいなくなる問題は、人口が一極集中する東京にも忍び寄る。

 都の13年の推計人口は10年前と比べて増加率は8%になる一方で、15歳未満の子どもは2%弱しか増えていない。増加は新しいマンションが建つなどした一部に限られ、11年までの10年間で閉校した小学校は93校に上る。

 東京は子どもを産み育てにくく、地方からやってきた若者たちは、なかなか子どもを持てない。東京は吸い込んだ人口を再生産せず、ブラックホールのようにのみ込んでいく。

 民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の試算で、東京23区で唯一「消滅可能性都市」に挙げられた豊島区。1958年に約4万7千人だった小中学生が13年には約9900人まで減った。96年度には42校あった公立小中学校が、統廃合で30校になっている。

 本格的な「人口減少時代」に入った日本は、どうしたらいいのか。解が見つからないなか、自治体は手探りを続ける。

■統廃合で弱る地域

 東京の首相官邸。5月末の経済財政諮問会議で、学校統廃合の基準が取り上げられた。小さい学校が多すぎる。財政の厳しい中、統廃合が進んでいないのは問題だというのだ。民間議員たちが、時代に合わせて統廃合しやすいよう基準を見直すべきだと声をあげた。

 小学校は12~18学級、通学距離は4キロまでが望ましい――。文部科学省が定めた統廃合の基準は1956年以来、60年近く変わっていない。規模が下回る場合どうするか。新たなルール作りが求められ、統廃合への圧力が強まっている。

 高知市から約110キロの高知県大月町。海岸線の間際まで山が迫り、かつては点在する集落を行き来するには山を越えるしかなかった。各地区にあった小学校は1学年1学級を維持できず、13校(4校休校)を一気に統合し、09年に大月小学校が誕生した。国立教育政策研究所の屋敷和佳総括研究官が調べた結果、99年度から10年度までで最多の事例だった。

 「子どもたちは、地区を越えた広い交友関係ができるようになった」。鎌田勇人校長(55)は言う。鉄筋コンクリート3階建ての校舎の教室には県産のスギやヒノキを使った。だが、児童減少は止まらない。開校時に258人いた児童は、4年後の18年には約170人に減る見通しだ。

 児童の約8割がバス通学になり、最も遠い子は約14キロを30分近くかけて登校する。文教大の葉養正明教授(教育政策学)は話す。「こうした地域は、普段は少人数の学習拠点で学び、月に数回、拠点校へ足を運んで多くの児童と触れ合うネットワーク型の学習環境を整える方が有効だ」

 学校の統廃合は人口減少を加速させ、集落の崩壊を招く危険性をはらむ。

 長野県北西部の小谷(おたり)村。06年4月、役場や中学校がある村南部に、北小谷、中土(なかつち)、南小谷の村内3小学校を統廃合した小谷小学校が新たに開校した。60年には8千人弱だった村の人口は、半世紀後には6割減の約3100人になった。

 村中心部から10キロほど離れた旧中土小学校区で8月末、地元の神社で例大祭があった。県の無形民俗文化財の「狂拍子(くるんびょうし)」を、小学生の男児が2人1組で踊るのが慣例だ。小学生は5人いるものの、2人の5年生を除くと、男児は1年生1人しかいない。傍らで見守る指導役の和田初幸さん(78)は、表情が曇りがちだ。「この伝統もいつまで続けられるのか」

 旧中土小学校は60年代初頭ごろまで、300人前後の児童がいたが、高度成長期に若者が都市部に転出し、減少に転じた。78年度末で地域から中学校がなくなり、中土小は05年度末で姿を消した。

 かつては、狂拍子の保存も学校を挙げて取り組んでいたが、統廃合で地域に根ざした教育の機会は減りつつある。旧中土小出身の太田武彦村議は「都市部と遜色のない『金太郎飴(あめ)のような小学校』を作っても、地域社会の崩壊を助長するだけ」と話す。

 人口減対策の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」の設置に先駆け、8月末に首相官邸で開かれた有識者懇談会。「人口減を防ぐためには、小規模校をどんなことがあっても存続させることが重要だ」。鹿児島徳之島の大久保明・伊仙町長は訴えた。

 合計特殊出生率2・81は全国最高。伊仙町は小規模校の周りに若い人向けの町営住宅を造るなど、工夫を凝らす。大久保町長は、こう考えている。「『統廃合は時代の流れ』というのは消極的な考え方。残すにはどうするかを考えるべきだ。学校があることで世代を超えた交流が生まれる」

■韓国、地方校充実へ支援

 子供が少なくなる地域で、どう学校を維持するのか。この問題に直面しているのは日本だけではない。合計特殊出生率が1・187(13年)と、日本を上回るスピードで少子化が進む韓国では、さまざまな取り組みが始まっている。

 木曜日の午後。韓国京畿道(キョンギド)驪州(ヨジュ)市にある上品(サンプム)中学校の校舎の一室で、「ロッククライミング」の練習が始まり、何とかゴールにたどりついた生徒が、笑顔で全完根(チョンワングン)校長に抱きついた。こうした施設があるのは、特別な財政支援を受けられたからだ。

 高速道路を使えば首都ソウルから車で1時間半ほどだが、野菜農家が多い農村地帯だ。全校生徒は73人。かつては300人ほどいた時期もあるが、だんだんと減っていった。背景には、都市部への人口集中がある。人口約5千万人の韓国で、ソウルには5分の1の約1千万人が住む。

 朴槿恵(パククネ)政権は、中学に進学する際に都市部に移ってしまうケースを防ごうと、13年から15年にかけて計80校を「農漁村拠点別優秀中学校」に選定。期間は各3年で、総額1200億ウォン(約120億円)を支援するという。対象は在学生60人以上の学校で、全国に430校余りある。今年は180校から支援の希望があり、うち30校が選ばれた。

 選ばれると、自由学期制や、スポーツクラブ、芸術サークルのほか、外国語教育も充実できる。「都市の学校に劣らない特色のある学校」(教育省関係者)にするためだ。

 上品中学も昨年、「優秀中学校」に選ばれた。評判を聞きつけ、今年、学区外から9人が入ってきた。「自然の中で学べる。都市の学校のようないじめもない。保護者や地域社会との信頼関係もできる。農漁村の長所を極大化すれば、逆に都市から『教育移民』が来ることもありうる」。1年半前に、ソウル近郊の大規模な中学から着任した全校長はそう話す。

 国際的な学習到達度調査(PISA)で上位常連国の北欧フィンランド。伝統的に小規模校が多く、7~16歳の義務教育課程を教えるおよそ4校に1校が50人以下だ。その平等で質の高い教育を下支えしてきた地方の小規模校が今、存続の危機にひんしている。

 欧州経済危機をきっかけに、国や自治体の財政収支が悪化。教育予算は縮小を余儀なくされ、学校の統廃合や廃校が進んだ。02年に3600を超えていた学校数は今や7割の約2600校だ。フィンランドの教育事情に詳しい米ハーバード大のパシ・サーベルグ客員教授(53)は懸念する。「過疎化を含む人口流動はフィンランド教育の平等を崩し始めている」

     ◇

 今年生まれる子どもが、100万人に届かないかもしれない。6月までの出生数が50万人を割り込んだからだ。もしそうなれば、統計が残る1899年以来、初めてだ。人口減に直面する地方をリポートしながら、縮む時代を迎えている教育のありようを探る。


by asyagi-df-2014 | 2014-09-20 07:31 | 持続可能な社会 | Comments(0)

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