原発問題-原子力規制委員会の川内原発再稼働のための新基準適合の判断を批判する

原子力規制委員会は2014年9月10日の定例会合で、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)が、原発の新しい規制基準を満たしているとの審査結果を正式に決めたが、このことは大きな瑕疵を伴っており、到底認められるものではない。
 考えられる瑕疵は次のことである。

  原子力規制委員会は、審査にあたっては、規制委が認めた案に、全国から1万7800件余りの意見が寄せられたにもかかわらず、大きく修正する必要はないとの判断をした。
 「3.11」が明らかにしたのは、専門家という集団が作り上げた「安全神話」の誤謬ということであった。だからこそ、「3.11」以降は命の問題を基本に考えるということであったはずであった。大飯原発判決の意義もそこにあった。しかし、多くの市民からの、命から発した問題意識は、顧みられなかった。
 最大の問題は、命の問題、その前提となる「安全性」問題への疑問は、充分には説明されていないままであることである。
 具体的には、 次のことが言える。
 第1に、「川内原発の周辺には、約五十キロ南東にある桜島を含む姶良(あいら)カルデラなど巨大な火山がある。過去に火砕流が敷地内に届いた可能性もある。しかし九電は、影響は少なく、衛星利用測位システム(GPS)で火山周辺の地殻変動を監視すれば巨大噴火は予知できると主張。危険と分かれば原発の運転を止め、核燃料を緊急搬出すると説明した。規制委は『今後の運転期間はせいぜい三十年間。その間の噴火はないだろう』と推測し問題なしと判断した。」ことが間違っている。
 このことについては、「専門家から『巨大噴火を予知することは、現在の技術では非常に困難。事業者にできるのか』『十分な監視ができないのに、できることを前提にした審査はおかしい』など厳しい批判が相次いでいる。こうした科学的な意見があるのに、規制委は審査し直さなかった。」という指摘がまさに正鵠を得ている。
 第2に、住民を守るための避難計画を議論しなかったことである。
 このことについては、「住民の避難計画をめぐっては、規制委は指針を示しただけで、計画策定は自治体に任せたまま。国は無責任との批判を受け、経済産業省は一日付で、立地自治体の薩摩川内市に二人、鹿児島県に三人の計五人の応援職員を派遣したが、実効性のある計画にできるかが課題だ。」と批判されている。
 実は、「3.11」の経験は、避難計画の重要性を指し示しているはずであったにもかかわらずである。
 第3に、「事故時の対策拠点は当面、水道がないなどの問題がある代替施設を使う。」ことと「放射性物質の放出を抑えつつ、格納容器の圧力を下げるフィルター付きベント(排気)設備は完成が二年後になる予定。」とされた上で、原子力規制委員会が審査の合格を決めたことである。
 このことについては、どうしても理解できない。
 第4に、「重大事故では周辺自治体も区別なく被害に遭う。それが福島原発事故の教訓だ。少なくとも半径30キロ圏の自治体には同意を取り付ける努力が必要ではないか」ということである。果たして30キロ圏だけでよいのかということも含めて、このことも重要な課題である。
 
 さて、南日本新聞者の社説は、「ただ、新基準への『合格』は規制委が再稼働を容認したことにはならない。規制委が7月に審査書案を認めた際、田中俊一委員長は『基準の適合性を審査した』と述べているからだ。それでも今後、再稼働への動きが本格化するのは間違いない。鹿児島県や薩摩川内市の同意などを経て今冬以降、再稼働される見通しである。」と、その問題点とこれからの流れについて説明する。

 いずれにしろ。これからが正念場である。

 以下、西日本新聞社及び南日本新聞社の引用。







西日本新聞社説-川内原発再稼働 不安解消へ九電は説明を-2014年09月11日


 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が、全国の他の原発に先駆けて再稼働へ動きだした。

 原子力規制委員会が、新規制基準を満たしているとする「審査書」を決定した。今後は説明会など手続きの中心が地元に移る。住民の不安解消に向け、国や自治体とともに、九電はもっと前面に出て説明を尽くしてほしい。

 原発再稼働に向けた一連の動きの中で電力会社の姿は見えにくい。再稼働を判断して責任を負う主体が曖昧なことも要因だろう。

 とはいえ川内原発を動かすのは九電だ。再稼働を目指すなら事業者として主体的に関与すべきだ。

 九電は、川内原発と玄海原発(佐賀県玄海町)の安全対策を強化している。総費用は3千億円以上とされ、内容もホームページなどで公開している。規制委の委員とのやりとりもオープンだ。

 だがそれだけで十分だろうか。九電の組織全体で原発の安全確保の意識がどう変わったのか。審査を通じて川内原発の安全性がどれだけ高まったのか。住民に説明して納得を得る努力が欠かせまい。

 鹿児島県は、薩摩川内市など5カ所で審査結果の説明会を予定している。説明は規制委の担当者が中心となるが、九電も同席して可能な限り対応すべきである。

 再稼働に向けては、重大事故に備える避難計画作りの不備が、住民の不安や懸念を招いている。

 政府は、避難計画作り支援のため職員5人を地元に派遣した。地方自治体任せだった計画作りに国が関わるのは望ましい。ただし、同意取り付けの単なる「地ならし」ならば、理解は得られまい。

 計画作りで九電も、住民避難用のバスを確保する方針だが、さらにきめ細かな協力を求めたい。

 最大の課題は、地元同意取り付けの範囲だ。鹿児島県も九電も、同県と薩摩川内市の「立地自治体」にとどめる方向とされる。

 だが、重大事故では周辺自治体も区別なく被害に遭う。それが福島原発事故の教訓だ。少なくとも半径30キロ圏の自治体には同意を取り付ける努力が必要ではないか。


南日本新聞社社説-川内原発「適合」 再稼働の容認ではない-2014年9月11日

 原子力規制委員会は、九州電力川内原発1、2号機の安全対策が新たな規制基準に適合しているとして、審査結果をまとめた審査書を正式決定した。

 新基準は、東京電力福島第1原発の事故を教訓に、過酷事故や地震、津波対策を強化した。

 規制委が、再稼働の前提となる新規制基準に適合する原発を認めたのは、事故後初めてである。

 ただ、新基準への「合格」は規制委が再稼働を容認したことにはならない。規制委が7月に審査書案を認めた際、田中俊一委員長は「基準の適合性を審査した」と述べているからだ。

 それでも今後、再稼働への動きが本格化するのは間違いない。鹿児島県や薩摩川内市の同意などを経て今冬以降、再稼働される見通しである。

 審査にあたっては、規制委が認めた案に、全国から1万7800件余りの意見が寄せられた。「避難計画を審査しないのは不備だ」などという指摘である。しかし、審査書は字句の修正にとどまり、結論は変わらなかった。

 決定の際、傍聴席から「納得できない」などの声が上がったのもうなずける。規制委は審査結果について、地元の理解を得られる十分な説明が必要だ。

安全性に関しても同様である。田中委員長は7月、「安全だとは申し上げない」と述べ、審査は安全性を担保するものではない、という認識を示している。

 一方、政府は「規制委で安全性が認められた」との立場だ。九電も同じだろう。伊藤祐一郎知事は「国が安全性を保証し、公開の場で住民説明を行い、理解を得る必要がある」と繰り返している。

 責任逃れの堂々めぐりに見える。安全性について、どこか担保するのか。再稼働の最終判断は誰が行い、結果の責任を負うのか。新基準への適合を機に、はっきりさせてもらいたい。

 この間、県や国はさまざまな対策を打ち出した。知事が国へ再稼働の必要性を明示した文書を要請したり、経済産業省が県と薩摩川内市へ避難計画づくりを支援する職員を派遣したりするなどだ。県は、事故時の避難先を放射線量や風向きを考慮して選ぶ仕組みも整えることにした。

 気になるのは、県と原発から30キロ圏内9市町が行う避難計画説明会への参加者が少ないことだ。約21万5000人が対象なのに、7月下旬のさつま町までの参加は、2600人ほどにすぎない。

 県は今回の審査結果の説明会を10月9日から始める。多くの住民が参加できるようにしてほしい。


by asyagi-df-2014 | 2014-09-12 05:24 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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