原発問題-川内同型原発は審査簡略化可能か

 「川内(せんだい)原発と同型炉なら審査の効率化は可能じゃないですか」という菅官房長官の発言を改めて考えてみた。
 この発言は、これまでにも指摘してきたように、命の問題は隅に追いやり、成長戦略を題目として掲げた以上何としてもやりとげようとする安部晋三政権の政治的意図を感じさせるものである。
 このことについては、次のような反論がまっとうなものして出されている。

(東京新聞引用)
「菅氏の発言は、早く原発の審査を終えたいという本音なのでしょう」。規制委に対しても、「本来、『審査をなんだと思っているんだ』と苦言を呈すべきなのに、なぜ黙っているのか」と批判した。

「上流のダムを一つ決壊させれば、下流のダムも次々と決壊するということなのでしょう。だが、川内が終わる前から、次の原発の再稼働を考えているとは、あきれてものも言えない」

「原発ごとに地震の大きさ、津波の影響も変わる。老朽化の具合も違う。それぞれの原発の事情を考慮することなく審査を簡略化するようなことは、あってはならない」

「安全審査でなく、基準の適合性を審査した。安全だということは私は申し上げませんと、国会でも答えてきた」などと話した。つまり、菅氏の「安全軽視」の姿勢は根本的に誤っているというわけだ。

(小出裕章ジャーナル引用)
「新規制基準では、『活断層をより厳密に審査しろ』ということであったり、あるいは、『津波の影響がどれだけあるかを審査しろ』とかいうことであったわけで、そういうものは全て敷地に依存していますので、加圧水型という原子炉のかたちとは違うことをキッチリと評価しなさいというのが新規制基準の目玉ですので、そんなもの簡略化できる道理がないのです。」

   この問題は、小出裕章さんの次の結論に尽きる。

 「一番大切なのは、本当に住民の安全が守れるかということなのであって、それこそ大切であって、個別敷地に依存しているのです。ですから簡略化というのは、ほんのごく一部でできる場所もあるかもしれませんが、ほとんどのものはできないと思った方がいいと思います。」

 以下、東京新聞及び小出裕章ジャーナルの引用。






東京新聞-菅官房長官発言を考える 「川内原発同型は審査簡略可能」なのか-2014年8月6日


「川内(せんだい)原発と同型炉なら審査の効率化は可能じゃないですか」。菅義偉官房長官が、原発再稼働に向けた原子力規制委員会の適合審査をめぐり、そう発言した。

地震想定や津波対策など、原発ごとに課題はさまざまなのに、あまりに安全を軽視している。「国民が安全保障に臆病だから」という暴言もあった。再び、菅発言を考えてみた。(三沢典丈、白名正和)
◆再稼働の既成化狙い
「審査の簡略化などできるはずがない」。脱原発を目指す市民団体「たんぽぽ舎」(東京都千代田区)の柳田真代表は真っ向から否定した。

菅氏の発言は先月31日。自民党の電力安定供給推進議員連盟とのやりとりで出たもので、菅氏自身が記者会見でこう説明した。

「川内原発の審査は、新規制で初めてのこと。その後の審査で、川内原発と同じ型の炉であれば、審査のノウハウを活用してですね、審査の効率化というのは可能じゃないですかと、そういうことは申し上げました」

規制委は先月16日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)について、新規制基準の「適合」を認めた。川内原発のほか11原発17基が審査を申請中。そのうち5原発10基が、川内原発と同じ加圧水型の原子炉で、他は福島第一原発と同じ沸騰水型だ。

しかし、同型でも、柳田氏は「加圧水型原子炉はオーダーメードで、それぞれ別のもの。さらに、想定される地震の規模も異なる」と指摘した。

各電力会社が審査を申請する際に耐震設計の目安とした地震の揺れ(基準地震動)は、川内原発の620ガルに対し、関西電力高浜原発は700ガル、四国電力伊方原発は620ガル。「車検で、一台の車両が合格すれば、同じ車種の車両の検査を半分に省略できるようにするもの。許されない」

「菅氏の発言は、早く原発の審査を終えたいという本音なのでしょう」。規制委に対しても、「本来、『審査をなんだと思っているんだ』と苦言を呈すべきなのに、なぜ黙っているのか」と批判した。

実は、川内原発の審査も全ては終わっていない。終わったのは全体像を示した「原子炉設置変更許可」だけだ。この変更許可を基に各機器の耐震設計を見直した「工事計画」と、運転・事故時の人員態勢などをまとめた「保安規定」は今も修正を続けている。

特に、工事計画の書類は1号機が5000ページ、2号機が4000ページと膨大で、修正が終わる時期は「現状では分からない」(九電の広報担当)。規制委への書類提出は9月以降になりそうで、その後の審査に1カ月、機器検査に1~2カ月を見込むと、再稼働できるとしても、今秋どころか年末がやっとの状況だという。

「反原発・かごしまネット」(鹿児島市)の向原祥隆(むこはらよしたか)事務局長は「上流のダムを一つ決壊させれば、下流のダムも次々と決壊するということなのでしょう。だが、川内が終わる前から、次の原発の再稼働を考えているとは、あきれてものも言えない」と話す。

立地自治体の薩摩川内市が再稼働容認の姿勢を見せる一方、隣接のいちき串木野市は過半数の市民が反対署名をし、30キロ圏内の姶良(あいら)市議会が廃炉決議をするなど、鹿児島県内でも脱原発の活動は続いている。「川内はまだまだ終わっていません」(向原氏)
◆原発ごとに条件異なる
「政府と電力業界には原発を次々と再稼働させ、原発の稼働を既成事実化したいという考えがあり、その流れで今回の菅官房長官の発言も出たのではないか」。発言の背景について、慶応大の金子勝教授はこう分析した。

確かに、安倍晋三首相は再稼働に前向きの発言をしている。規制委が川内原発について事実上の「適合」判断をした2日後の先月18日、九州の財界関係者から早期の再稼働を求められ、安倍首相は「川内は何とかする」と答えた。

電気事業連合会(電事連)の八木誠会長(関西電力社長)も同じ日、記者会見で「(川内原発の)審査書案がひな型となり、ほかの原発の効率的な審査につながる」と発言した。菅氏の発言を超え、川内原発以外の全ての原発の適合審査を簡略化できるという趣旨に取れる。

脱原発弁護団全国連絡会の海渡雄一弁護士は「原発ごとに地震の大きさ、津波の影響も変わる。老朽化の具合も違う。それぞれの原発の事情を考慮することなく審査を簡略化するようなことは、あってはならない」と、菅氏の発言を批判した。

適合審査には直接関係しないが、政府は原発事故時の避難計画などのきめ細かい配慮も求められるが、菅氏の発言からは伝わってこない。

川内原発の半径30キロ圏内の避難計画では、避難経路の確保について十分な説明はされていない。事故時の風向きによって逃げる方向が変わるという住民からの指摘にもこたえていない。

原発事故で放射性ヨウ素が飛散した際、甲状腺被ばくを防ぐための安定ヨウ素剤の市民への配布も、各原発で事情が異なる。鹿児島県と薩摩川内市は先月27日、規制委の指針に基づいて川内原発から5キロ圏内に住む3歳以上に配布した。全国初の試みだが、受け取ったのは約2400人。対象者約4700人の半分強にとどまっている。

中部電力浜岡原発では、安定ヨウ素剤配布の対象者は5万人で、全員への配布は川内原発以上に困難だ。北海道電力泊原発では、5キロ圏内の共和町が事前配布せず避難時に配る方針を取っている。

元東芝の原発設計技術者で、科学技術のあり方を考えるNPO法人「APAST(アパスト)」理事長の後藤政志氏は、「原発に航空機が衝突しても炉心が生きているという前提で、新規制基準は考えられている。基準自体に問題は多く、適合しても全然安全ではない」と話す。

規制委の田中俊一委員長も先月16日の記者会見で、「安全審査でなく、基準の適合性を審査した。安全だということは私は申し上げませんと、国会でも答えてきた」などと話した。つまり、菅氏の「安全軽視」の姿勢は根本的に誤っているというわけだ。

それにしても、菅氏は先月28日に集団的自衛権の行使容認をめぐって「国民が安全保障に臆病」と発言し、物議を醸したばかりだ。手堅いイメージがあったのに、「問題発言」が続いた理由について、エコノミストの紺谷典子氏はこう分析した。

「安倍首相の影響で、『自分たちが正しい』『思った通りにやろう』という考えが広まり、かつ強まっているため発言が続くのではないか。政権のおごりという面もある。今後、問題とされる発言が続いても、私は驚かない」



川内同型原発は審査簡略化可能か?「そんなもの簡略化できる道理がないのです」~第87回小出裕章ジャーナル-2014年09月06日


湯浅誠:
今日は、原子力規制委員会との話の中で、「川内原発同型の原発は審査の簡略化が可能なんじゃないか」と、菅官房長官が言ったというニュースについてお伺いしたいんですが。これは、どういうことなんでしょうかね。

小出さん:
彼らとしては、なんとしても早く早く再稼働をさせたいと思っているわけで、審査に関しては、出来る限り手を抜いて速やかに完了するようにしたいわけです。

日本では、2種類の原子力発電所を使ってきました。福島第一原子力発電所で使っていたのは、「沸騰水型原子炉(BWR)」と言います。一方、関西電力等は、「加圧水型原子炉(PWR)」と私達は呼んできました。基本的には同じものなのですけれども、仕組みが違うところもあるということで、2種類のものを使ってきたのですが、事故を起こしてしまった沸騰水型の方は、容易に安全だということを言えないだろうと、たぶん菅さん達も思ってるんだと思います。

ですからそうなれば、一方の加圧水型(PWR)という原子炉の方は、できる限り早く再稼働させたいと思っているはずですし、「川内原子力発電所が安全だと認めたのであれば、他だってみんな安全だと認めろ」という指示を菅さんが発信したのだと思います。

湯浅誠:
沸騰水型というのは水を沸騰させて、その蒸気でタービン回して発電と。

小出さん:
非常に単純な原子炉なのです。

湯浅誠:
小出さんは、ずっと湯沸しと同じ原理だとおっしゃってる。それ、字を見るとわかりやすいんですけど、加圧水型というのは何が違うんですか?

小出さん:
沸騰水型は文字通り、今湯浅さんがおっしゃってくださったように、水を沸騰させて蒸気を出して、その蒸気でタービンを回すのですけれども、原子力発電所の場合には、その沸騰した水がもう既に放射能で汚れてしまっているわけです。

それで、タービンというものを回そうとすると、タービンは非常に巨大な構造物ですし、タービンすらが放射能で汚れてしまって、管理をすることが大変になるということが一方にあったわけです。

ですから、加圧水型という方は、放射能で汚れた水をタービンに持っていきたくないと。だから、一次系と私達は呼んでいますけれども、放射能で汚れた水は一次系というところで閉じ込めて、途中で蒸気発生器という熱交換器を使って、二次系に熱を渡して、二次系を沸騰させるというシステムを作ったのです。

ですから、システムとしては沸騰水型より面倒なシステムになったわけですね。冷却系がもう一つ増えてしまっているから。

湯浅誠:
そうですね。間にワンクッション入ったということですね。間にワンクッション入ったことで、より安全だと言えるんですか?

小出さん:
言えません。もちろん、良いこともあるし悪いこともあるわけで、タービンという巨大な構造物が放射能で汚れないという点では、もちろんよかったわけですけれども、一次系から二次系に熱を渡すためには、蒸気発生器という巨大な装置をそこに置かなければいけないし、蒸気発生器というのは、もちろん一次側から二次側に熱を渡すべきものですから、なるべく熱を渡したい構造、つまり金属のパイプなんですけれども、パイプの厚さをなるべく薄くして、効率よく熱を渡したいわけです。

しかし一方で、薄くしてしまうと、今度はそのパイプが破損する可能性が高くなりますので、一次系の放射能が二次系に漏れてしまうということになるわけです。ですから、相反したその目的を両方担わなければいけないということで、蒸気発生器というのは大変難しい設計になりまして、なんとかそれを上手くやりたいと思ってきたわけですけれども、世界中の加圧水型原子炉では、たびたび蒸気発生器が壊れてしまいまして、日本でも、しきりに事故を起こしましたし、世界的にも事故を起こしたし。

例えば、米国の西海岸にサンオノフレという加圧水型の原子炉がありましたが、その原子炉の蒸気発生器は日本の三菱重工が造ったのです。それがあまりにも欠陥だということで、サンオノフレは閉鎖になってしまいましたし、三菱重工が多額の賠償金を請求されるというようなことにもなっているのです。

湯浅誠:
係争中の案件ですね。ありましたね。メリットとデメリットは背中合わせというか、ある問題が解決しようとすると、次の問題が起きてしまうというのが原子力というものの難しさなんだと思いますけど。これを簡略化するというのは、ちょっとイマイチよく分からないというかですね。

小出さん:
全く分からないです。

湯浅誠:
加圧水型という建物の構造、原子力を生み出す構造は、今おっしゃったように、加圧水型というものはある種、同型なんだろうと思うんですけど。にしても建ってる所は別の場所だし、海沿いにあるのか、海面から何メートル上にあるのか、そういうような地下に地震のリスクが、どれぐらい活断層があるのかないのか。そういうことも含めて審査するという話だったですよね?

小出さん:
そうです。新規制基準では、「活断層をより厳密に審査しろ」ということであったり、あるいは、「津波の影響がどれだけあるかを審査しろ」とかいうことであったわけで、そういうものは全て敷地に依存していますので、加圧水型という原子炉のかたちとは違うことをキッチリと評価しなさいというのが新規制基準の目玉ですので、そんなもの簡略化できる道理がないのです。

敷地の条件でなくて、要するに立地している地域の住民の安全をどう守るかという、もっと重要なことがあって、それは新規制基準で言えば、原子力規制委員会は「自分達の責任でない」と言ってしまって、「それぞれの自治体で勝手に考えろと」いうようなことにしているわけですね。

ですから、川内原子力発電所に関しても、原子力規制委員会は、「避難計画とかそんなことは一切知らない」と言ってしまっているわけです。

でも、一番大切なのは、本当に住民の安全が守れるかということなのであって、それこそ大切であって、個別敷地に依存しているのです。ですから簡略化というのは、ほんのごく一部でできる場所もあるかもしれませんが、ほとんどのものはできないと思った方がいいと思います。

湯浅誠:
小出さん今日もありがとうございました。

小出さん:
どうもありがとうございました。


by asyagi-df-2014 | 2014-09-07 09:36 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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