残業代ゼロ問題-『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書

 佐賀新聞は、2014年8月6日の社説で、過重労働の実態について論表した。
 その内容は、「 牛丼チェーン「すき家」の労働実態が、第三者委員会の調査報告書で明らかになった。一口で言えば、従業員が無理に無理を重ねるシステムである。非管理職社員の平均残業時間が月109時間で、健康障害リスクが高まる「過労死ライン」(月100時間)を上回るなど、現場は「法令違反状況」だったと結論付けている。」というものであった。
なお、この第三者委員会は、運営会社ゼンショーホールディングスが、弁護士などでつくる第三者委を設けて、労働実態を調査させてきたものであった。
結局、運営会社であるゼンショーホールディングスがまっとうな会社に戻ることができるかどうかということであるが、この問題を考える視点は、佐々木亮 弁護士の次の指摘にある。
「労基法は働くルールの最低基準である。これを守れていないことが、そもそも大問題なのである。これを守るということは至極当然なのであるから、これを成し遂げたとしてもゼンショーがいい企業になるのではなく、普通の企業になろうとしているに過ぎないということも、また忘れるべきではない。」
 以下、佐々木亮弁護士のブログ及び佐賀新聞社説を引用。



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ブラック企業を脱却できるか?~「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書を読んで-2014年8月1日

佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表

 ゼンショーホールディングス(以下「ゼンショー」)に宛てた「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書(平成26年7月31日付)を読んだ感想としては、まず、形式だけの調査ではなく、それなりに実態に踏み込んだ調査であるとの第一印象を受けた。

本来であれば、企業が労働基準法を守っていないことは恥ずべきところであるが、労基法を守っていないことを赤裸々に記載しているところに第三者委員会の本気度は認めることができ、これを公表したゼンショーにも、その態度自体は、それなりに肯定的評価をすることはできる。
なお、批判的検討としては、次の記事が参考になる。
すき家の第三者委員会報告書雑感(渡辺輝人)

労働基準法違反の蔓延
報告内容についてであるが、目を覆うばかりの労基法違反が蔓延していることが明らかになった。

列記すると、

•正社員にもクルー(アルバイト)にも発生している慢性的な長時間労働
•常態化する36協定違反
•15分単位で労働時間を切り捨てるという杜撰さ、それに伴う構造的なサービス残業
•労時売上を強調するあまりに発生する恒常的・意図的なサービス残業
•休憩時間がろくに取れない問題
•休憩時間だとしながら休憩させていない問題
•年少者の深夜労働
など、労基法などあってないかの如くのあり様である。

これに対し、労基署から多くの是正勧告がなされていたことも明らかにされており、ゼンショー側も労基法違反となっていることを把握し、何らの改善を行わなかったことが浮き彫りになっている。

このようなやり方で、ゼンショーが日本有数の大企業になったとすれば、その罪は途方もなく深いというべきである。これでは、法律を守る方が馬鹿を見るという、最悪の循環を生み出しかねない。いや、既に最悪の循環を生み出していたからこそ、「ブラック企業」問題が社会問題になったといえよう。

従業員の悲痛な叫び
具体的な従業員からの声は悲痛なものが多い。既に報道されているものも多数あるので、詳細は原典にあたってほしいので言及しないが、いかにゼンショーが、従業員の時間、払われるべき賃金、本来あるはずのプライベート、そして健康・・・これらを吸い取って、自らを太らせる養分にしてきたかが分かる。

ゼンショーはこれまでに多方面から「ブラック企業」と指摘されてきたが、その指摘の正しさが裏付けられたものといえるだろう。

本報告書は、『蟹工船』、『女工哀史』など、過酷な労働環境を描いたものがかつてもあったが、それに匹敵する過酷な労働環境を記載する文献として貴重なものだと言える。

ブラック企業を脱却できるか要注目
ゼンショーがこのような報告書を公表するに至った経緯は、現代の「逃散」とも言われた店舗閉鎖がきっかけである。このような事態を招くまで、多くの労働者、労働組合、市民からブラック企業であるとの批判を受けてきた。公表させたのは、これらの批判が実ったものといえる。

今後は、ゼンショーが労基法違反を是正できるかという点に、多くの市民の注目が集まるものと思われる。この報告書の内容を忘れることなく、国民的な監視が必要である。

なお、労基法は働くルールの最低基準である。これを守れていないことが、そもそも大問題なのである。これを守るということは至極当然なのであるから、これを成し遂げたとしてもゼンショーがいい企業になるのではなく、普通の企業になろうとしているに過ぎないということも、また忘れるべきではない。



佐賀新聞社説-過重労働の実態-2014年08月06日

 牛丼チェーン「すき家」の労働実態が、第三者委員会の調査報告書で明らかになった。一口で言えば、従業員が無理に無理を重ねるシステムである。非管理職社員の平均残業時間が月109時間で、健康障害リスクが高まる「過労死ライン」(月100時間)を上回るなど、現場は「法令違反状況」だったと結論付けている。

 退職者が相次ぎ、人員不足による労働環境の悪化が今年3月ごろから表面化し、約2千店舗のうち、最大約290店が一時休業に追い込まれた。運営会社ゼンショーホールディングスが、弁護士などでつくる第三者委を設けて労働実態を調査してきた。

 第三者でなければ把握できないのは、社内に労務管理する部門が正常に機能していない証拠だ。店舗に勤務した社員のほとんどが24時間連続勤務を経験し、「恒常的に月500時間以上働いた」「2週間帰れなかった」と証言する社員もいた。報告書の中身は信じられないものばかりだ。

 慢性的な人手不足にもかかわらず、新規出店を続け、残業の増加に拍車がかかった。過重労働の象徴とされた一人勤務体制についても、「強盗が多発したときに改善すると(経営側は)言っていたのに、なされなかった」と、現場の声に経営陣が耳を傾けていなかったことも明らかになった。

 価格競争や利益確保を優先するあまり、働く現場に多大なしわ寄せが来ていた。運営会社のトップは「過去にやってきたことの過信が根底にあった」と成功体験が対応の遅れを招いたと総括している。長時間労働が企業体質となっていた。

 外食業界最大手ゼンショーグループのビジネスの仕組みは、安価な外食の暗部も物語る。厳しい競争、デフレ経済の下で勝ち抜いてきた。そこには安さを求める消費者ニーズに応える使命感もあっただろう。だが、そのために何をしてもいいわけではない。

 労働者に無理を強いれば、いずれ破綻が生じる。好条件の働き口がほかにあれば、労働者に冷たい企業から人は離れていく。今回は景気回復で労働市場が改善したことが、待遇の悪い職場を浮き彫りにした。

 似たケースはほかにもある。全国展開の居酒屋チェーンでも、従業員の仕事の負荷を減らすため、60店舗の閉鎖を決め、1店舗当たりの従業員を増やした。このチェーンは正社員が過重労働で自殺したとして損害賠償請求を起こされ、4月入社の新卒採用者も当初目標の半分にとどまっていた。

 過酷な働き方をさせて一時的に利益が確保できたとしても、結局は経営に跳ね返ってくる。経営者は反面教師として学ばなければ、労働者から見放される。

 国の監督責任も無視できない。報告書には、違法な長時間労働などを理由に2012~14年度、労働基準監督署から60件を超える是正勧告が出されたと記している。労働監督行政が効果的な指導ができていない証拠にほかならない。

 先の国会で過労死防止対策推進法が成立した。過労死を防ぐ対策を国の責務とした。すき家のケースは氷山の一角で、外食産業に限られたことでもないだろう。過重な労働が社会から一掃されるように国はしっかり役割を果たしてもらいたい。(宮崎勝)


by asyagi-df-2014 | 2014-08-08 05:30 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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