最低賃金問題から-最低賃金、16円引き上げを答申 「逆転現象」解消へ2014年7月29日

 「幅増を求める労働組合側と、引き上げに慎重な経営側の溝が埋まらず、結論が持ち越される異例の展開となっている」と報道されていた最低賃金がようやくまとまった。
 2014年7月24日の朝日新聞の記事でも「正社員を含め、働き手全体の生活底上げにつながる最低賃金をめぐる議論が、大詰めだ。政府は全国平均15円の引き上げだった昨年以上の増額をめざす。だが、消費増税や物価高の直撃で、全国最低の664円の9県では「こんな水準では夢も希望もない」との声がもれる。」とされていた。
 しかし、日弁連会長声明の「現在の最低賃金時間額764円(全国加重平均)に、物価の上昇分3.7%を乗じると、約28円となる。仮に本年度、時間給28円程度の引上げをしたとしても、昨年から今年にかけて急激に上昇した物価相当額を補うことすらできない状態である。」からすると、これでもやはり不十分な額と言える。

 以下、朝日新聞記事及び日弁連会長声明の引用。





最低賃金、16円引き上げを答申 「逆転現象」解消へ-2014年7月29日

 国が定める最低賃金(全国平均で時給764円)を16円上げるべきだとの答申を、厚生労働省の中央最低賃金審議会が29日、まとめた。実現すると全国平均は780円になる。増加率は2・1%で、引き上げの目安額としては、現行方式になった2002年以降で最も高い。消費増税や物価高で家計の負担が増し、底上げを求める声に配慮した。

 最低賃金は、これより低い額で働かせると違法になる金額。非正規や外国人の働き手を含め、原則、すべての労働者に適用される。労使代表と有識者など公益委員の3者でつくる審議会での議論をもとに毎秋、都道府県ごとに改定される。今回決まった金額は、その目安になる。

 引き上げの目安額は、物価や所得などの指標をもとに、経済規模の大きな順にA~Dの4段階で、都道府県をランク分けして示される。今回、Aは19円、Bは15円、Cは14円、Dは13円と決まった。

 北海道や宮城、東京、兵庫、広島の5都道県では、最低賃金で稼げるお金が生活保護水準を下回る「逆転現象」がみられたが、今回の引き上げで逆転がなくなる。逆転解消を目標とした改正最低賃金法が08年に施行されて以来、逆転がなくなるのは初めて。

 安倍政権主導の「官製春闘」で、一部の大手企業では賃上げが進んだ。一方、春闘の恩恵が及ばない非正規労働者にとっては、最低賃金の引き上げは待遇の底上げにつながる。

 このため、政府は6月改定の成長戦略に最低賃金の引き上げ方針を明記していた。田村憲久厚労相も「昨年並みか、それよりよい成果が出ればありがたい」と述べるなど、審議会に大幅アップを求めていた。


最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明

 中央最低賃金審議会は、近々、厚生労働大臣に対し、本年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。この点、最低賃金で働いた場合の手取り収入額が生活保護費(生活扶助+期末一時金+住宅扶助実績)よりも低くなるいわゆる逆転現象が5都道県で生じており、その解消は喫緊の課題である。加えて、本年度は、以下に述べるように、物価上昇傾向は明らかとなっており、もはや昨年までのような小幅な引上げで済ませることは許されない。

当連合会は、2011年6月16日付け「最低賃金制度の運用に関する意見書」、2013年8月2日付け「最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明」等を公表し、繰り返し、中小企業・小規模事業者の経営にも配慮した上での最低賃金の大幅な引上げを求めてきており、他方、政府も、本年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略改訂2014」及び「経済財政運営と改革の基本方針2014」において、中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金引上げに努めるべきことを明記しているところである。

総務省によれば、2014年5月の消費者物価指数は、前年同月比で3.7%の上昇となっている(6月27日公表)。これは、2014年4月から消費税が8%に増税されたことはもちろんとして、2012年末の政権交代以降、政策的に導かれた円安の影響により、食品や燃料などの価格が上昇してきたことによるものと考えられる。物価の急激な上昇は、全労働者の4割近くを占める非正規労働者(直近の総務省の統計では37.9%)を含む労働者全体の生活に大きな影響を与える。

現在の最低賃金時間額764円(全国加重平均)に、物価の上昇分3.7%を乗じると、約28円となる。仮に本年度、時間給28円程度の引上げをしたとしても、昨年から今年にかけて急激に上昇した物価相当額を補うことすらできない状態である。

そもそも政府は、2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において、2020年までの目標として、「全国最低800円、全国平均1000円」にまで最低賃金を引き上げることを明記している。ところが、2013年現在の全国加重平均は764円に留まっており、残り6年間で目標を達成するためには、1年当たり40円の引上げが必要である。かかる情勢を踏まえると、中央最低賃金審議会は、具体的に、全国全ての地域において、少なくとも40円以上の最低賃金の引上げを答申すべきである。

また、答申がなされた後は、各地の地方最低賃金審議会で各地の実情に応じた審議がなされることになる。各地の地方最低賃金審議会においても、以上のような状況を踏まえ、最低賃金額の引上げを図ることで、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。

 2014年(平成26年)7月24日
                   日本弁護士連合会
                         会長 村 越  進


by asyagi-df-2014 | 2014-07-31 06:00 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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