集団的自衛権-国会集中審議を考える

2014年7月14日と15日の集団的自衛権の集中審議について、2014年7月16日の全国の新聞社の社説を比べてみた。
 いささか、長文になる。
 
 河北新報の社説(7月16日)は、「自衛権集中審議/国民の疑問深まるばかりだ」としている。
以下、河北新報の引用。


 答弁を重ねるほどに「明確な危険」の範囲が広がり、「必要最小限度」の規模が変化して、自衛隊の活動に歯止めが利かなくなる恐れが高まる。
 そんな懸念が浮き彫りになり、安全保障政策の大転換に対する国民の不安を払拭(ふっしょく)するどころか、増すばかりではないか。
 集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定を踏まえて14、15両日、衆参両院の予算委員会で行われた集中審議である。
 閣議決定後初めての国会論戦。安倍晋三首相は、ときに野党の質問をはぐらかす一方で、閣議決定を補足する説明で踏み込んだ答弁を繰り出し、集団的自衛権をめぐり自衛隊に認める「武力行使3要件」の曖昧さが抱える危うさを、あらためて見せつけた。
 「明白な危険」など3要件で明示した「限定容認」の不明瞭さが浮かび上がり、武力行使の範囲や規模が政府の裁量でより幅広く認定される可能性があるということだ。
 安倍首相らは14日の衆院予算委で、同盟国の米国が攻撃を受けた場合や、石油供給が絶たれて日本に打撃を与えるような経済危機は、行使の可否を判断するケースに当たり得る、との認識を明らかにした。
 中東における機雷掃海は受動、限定的と容認し、国連決議で侵略国を制裁する集団安全保障への参加も3要件の範囲で可能とした。
 15日の参院予算委では、3要件の一つ「必要最小限度」の武力行使について、相手国の攻撃の規模や態様によって変わり得る、との認識も示した。
 歯止めの機能不全状態につながりかねず、国民の懸念が募るだろう。
 「密接な関係にある他国」も、米国以外は「相当限定される」と、日米同盟強化の手段とする本音を隠さない。台頭する周辺国への抑止力を期待し、米国に見捨てられないための緊密な関係の構築を、ということだろうか。国力に陰りが見えるとはいえ、基地を提供する代わりに守ってもらう、日米安保条約の根幹が揺らごう。
 米国への協力が存立を脅かされない要諦だとすれば、その分米国の戦争に引き込まれるリスクは高まる。覚悟を問われた安倍首相は深入りを避けた。政治に必要な国民への誠意や説得の姿勢を欠いていないか。
 集団的自衛権行使による防衛は自国、他国を区別しない。国際的に使い分けは通用しにくく、そこにも自衛限定の論理が破綻しかねない一端がのぞく。
 安保政策は日々の暮らしとの関わりが薄く、論議も専門的になりがちだ。分かりづらい抽象的な議論を重ねても国民に届かない。安倍首相は説明責任を尽くし、野党は具体的な課題を示し追及してこそ、是非が明確になる。ともに責任は重い。
 集団的自衛権行使が今なぜ必要で、3要件の歯止めが有効に機能するのか。国民が最も知りたい論点への議論が2日間の日程では足りない。引き続き、審議の機会を持つべきである。


 東奥日報(7月16日)は、「議論不十分が浮き彫り/『集団的自衛権』審議」としている。
 以下、東奥日報の引用。

 集団的自衛権の行使容認で、国民の生命や平和な暮らしを守れるのか。なぜ戦後日本が守ってきた「専守防衛」を維持できると言えるのか。疑念は晴れるどころか、深まった。

 集団的自衛権の行使容認をめぐる衆参両院予算委員会の集中審議が終了した。

 安倍政権が憲法解釈の変更による行使容認を閣議決定して以降、初の国会論戦だった。だが、政府側が限定的な行使を強調しながら、政府の裁量で幅広く行使が認定されかねないという矛盾が露呈した。

 自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の制定など、新たな政府の方針も次々に明らかになった。

 やはり2日間の議論では不十分過ぎる。法整備を進める前に論点を整理し、もっと時間をかけて国会で議論を尽くすべきだ。

 審議で安倍首相は再三、新たな武力行使の3要件が「厳格な歯止めになる」と強調した。

 3要件にある「明白な危険」については「攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、わが国に戦禍が及ぶ蓋然(がいぜん)性、国民が被る犠牲の深刻性、重大性などから判断する」とした。

 しかし、具体的にどのような事例に限るのか、厳格な歯止めとなる根拠はあいまいだ。政府の裁量で認定の幅が拡大される可能性は否定できない。

 首相が持ち出したのが、中東の海上交通路(シーレーン)での機雷掃海活動である。石油の供給不足により、「国民生活に死活的な影響が生じ、わが国の存立が脅かされる事態は生じ得る」とし、3要件に当てはまるとの考えを示した。

 機雷掃海は国際法上は武力行使に当たる。民主党の岡田克也元代表が「機雷除去から戦闘行為になる可能性はないとはいえない」と指摘したのは当然だ。

 首相はまた、3要件を満たせば、米艦防護や米国に向かうミサイル迎撃など、政府が与党に示した8事例の全てに対応ができるとの見解も表明した。

 自衛隊に認める「必要最小限度」の武力行使については、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃の規模、態様に応じて判断する」と述べた。武力行使が際限なく広がりかねないという懸念は強まる。

 首相は、集団的自衛権の行使容認を、年内改定を予定する日米防衛協力指針に反映させる考えだ。一方、秋の臨時国会には関連法案を提出せず、来春以降に先送りするという。

 10月の福島県知事選、11月の沖縄県知事選や来春の統一地方選への影響をにらんでいるのは明らかだ。

 共同通信社の世論調査では、憲法解釈変更の閣議決定について「検討が十分に尽くされていない」との回答が82%に上った。

 首相は「国民に丁寧に説明し理解を求める」と言明した。ならば国民と誠実に向き合い、説明責任を果たす機会を設けるべきだ。国民を「蚊帳の外」に置いたまま、行使容認への法整備を進めてはならない。



 京都新聞(7月16日)は、「自衛権集中審議 『歯止め』が曖昧すぎる」と。
 以下、京都新聞の引用。

 あらためて「歯止め」の曖昧さが浮き彫りになった。
 集団的自衛権の行使容認をめぐり衆参両院の予算委員会で2日間の集中審議が終わった。閣議決定後、初の国会論議で安倍晋三首相は「限定容認」を強調し、武力行使の新3要件が「厳格な歯止めになる」と述べた。
 新3要件は他国への攻撃でも国民の権利が根底から覆される「明白な危険」がある場合、必要最小限度の行使を認める。だが時の政権の裁量で幅広く適用される恐れがある。
 安倍首相は、中東のホルムズ海峡が機雷封鎖されて原油輸入に支障が出る例を挙げ、日本に打撃を与える経済危機も該当し得るとの見解を明言。中東での機雷掃海への自衛隊派遣に言及した。
 停戦前の掃海は国際的に武力行使と見なされるうえ、地理的制約を明記しなかった閣議決定を一歩踏み込んだといえる。
 また、同盟国の米国が攻撃を受けた場合も該当する可能性があるとし、武力行使を伴う集団安全保障も容認した。これでは「限定容認」と言い難い。「新3要件は一見厳しいが、何の限定もしていないに等しい」(岡田克也民主党元代表)との批判は当を得ている。
 安倍首相は自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の制定を検討するとも述べたが、なし崩しに海外任務拡大が進まないか。
 閣議決定直後の共同通信社の世論調査で、行使容認への反対が54・4%と賛成を大きく上回った。多くの国民が十分に検討を尽くしていないと答えた。
 国民の疑問に説明責任を果たすべき安倍首相は、行使容認の意義は持論を得得と展開する一方、質疑をはぐらかす応答が少なくなかった。特に自衛隊員を危険にさらすリスクは終始答弁を避けた。これでは議論はかみ合わない。
 安全保障政策の大転換は、世論が割れる重要な問題だ。本来なら日程をたっぷり取って審議すべきであるのに、集中審議は衆参ともわずか1日ずつだった。
 与党は首相らの外遊日程を理由に日程拡大を拒否したが、閣議決定を懸念する世論のほとぼりを冷ましたい意図が透ける。野党側も行使容認への立場の違いもあって迫力を欠く質疑が目に付いた。
 安全保障関連の法案提出は、来年の通常国会に先送りされる見通しながら、生煮えの論議では国民の政治に対する不信が募る。
 臨時国会でも審議を重ね、与野党ともに国民が納得できるよう議論を積み上げるべきだ。





 西日本新聞(7月16日)は、「集団的自衛権 もっと国会で徹底審議を」と。
 以下、西日本新聞の引用。

 武力行使の対象は一体どこまで広がるのか。不安と懸念は解消するどころか、深まる一方だ。

 集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更について、衆参両院の予算委員会で集中審議がきのうまで2日間行われた。

 安倍晋三内閣の閣議決定後、初の国会論戦である。安全保障政策を根本から変える問題だけに、閉会中審査も当然だろう。ただ2日間とは、あまりにも短すぎた。

 安倍首相は14日の衆院予算委で、武力行使の新3要件は限定的としながらも、原油供給が絶たれるなど経済的打撃を理由に武力行使もできるとの考えを示した。

 日本の輸入原油の8割が通過するペルシャ湾のホルムズ海峡に機雷が敷設された場合「除去されなければ、わが国の存立が脅かされる」として、新3要件に当てはまるとの認識である。

 首相は新3要件に該当するかどうかは「政府が判断する」と繰り返すが、解釈によっては行使対象が際限なく広がる恐れすらある。

 機雷除去に関連して内閣法制局長官は、新3要件を満たす限り国連決議による集団安全保障にも参加できるとの見解を明言した。

 ただ、閣議決定に先立つ与党合意では、自民、公明両党が集団安全保障の武力行使は「棚上げ」したと説明している。政府と与党の考えは明らかに食い違っており、ここは明確な説明を求めたい。

 首相はきのうの参院予算委で、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法制定を検討する考えも明らかにした。国際紛争時の海外派遣はこれまで個別の特別措置法を時限立法で整備してきた。

 海外派遣の常態化に一定の歯止めをかけてきたが、恒久法が制定されれば、内閣の判断と国会承認で派遣することが可能になる。集中審議だけでも憲法9条に抵触する恐れが強いことがあらためて浮き彫りになったといえよう。

 政府と与党は秋の臨時国会を待たず、与野党で徹底的に議論する場を設けるべきだ。憲法に関わる重大な問題である。閉会中審査をこれで終わりにしてはならない。


. 沖縄タイムス(7月16日)は、「自衛権集中審議]すでに『歯止め』がない」と。



 日本が攻撃もされていないのに他国の防衛のために集団的自衛権を行使することと、安倍晋三首相が強調する「受動的」「限定的」な範囲にとどめるというのは国際的には通用しない。歯止めとしている武力行使の新3要件もあいまいで、時の政権の裁量次第でいかようにでも解釈できる余地が残されている。

 米国が攻撃されたり、中東のペルシャ湾・ホルムズ海峡に機雷が敷設され、石油供給が絶たれたりするなどの経済的な要因も集団的自衛権を行使するケースに当たるという。「専守防衛」を逸脱するのは明白で、武力行使が際限なく広がる懸念が拭えない。早くも、歯止めがなきに等しいことが浮き彫りになった。

 衆参両院の予算委員会は14、15の両日、集団的自衛権に関する集中審議を行った。憲法解釈を変更した閣議決定から初めての国会論戦だ。

 日本に輸入される原油の8割が通過する中東のホルムズ海峡における機雷掃海について安倍首相は「石油の供給不足が生じて国民生活に死活的な影響が生じ、わが国の存立が脅かされる事態は生じ得る」と答弁した。経済的要因も集団的自衛権の行使に該当するとの認識を示したものだ。どれだけの経済的ダメージを受ければ集団的自衛権の行使に踏み切るか判然としない。

 機雷掃海について安倍首相は受動的、限定的と強調したが、集団的自衛権を行使し、「敵国」が敷設した機雷を除去することは受動的、限定的などではない。戦争における能動的な戦闘行為である。逆にいえば日本は敵国の攻撃の対象になるのである。
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 ホルムズ海峡での機雷掃海では、沿岸国の領海に入らざるを得ない。岸田文雄外相は「他国の領海内でも許容される」と明言した。「海外派兵はしない」と繰り返す安倍首相の見解との齟齬(そご)ではないか。

 日米同盟が大きな影響を受ける場合も武力行使の3要件に該当する可能性が高い、と安倍首相は答弁した。米国が主導する戦争に日本が巻き込まれる危険性が高まる。閣議決定の内容に地理的制約は明記されておらず、日本が米国の世界戦略に深く組み込まれることは間違いない。

 集中審議における安倍政権の前のめりの姿勢はそれだけではない。安倍首相は新3要件を満たせば、米艦防護など政府が提示しながら与党でも議論が尽くされていない8事例、当初は否定していた国連決議に基づき団結して武力制裁を科す集団安全保障への参加もできると踏み込んだ。もうすでに閣議決定を飛び越えたなし崩し的な拡大である。
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 安倍首相は集団的自衛権の行使に、どういうリスクが伴うかについては固く口をつぐむ。集中審議でも「自衛隊のリスクが高まるのを認めた上で、国民に説明すべきだ」と何度も迫られたが、真っ正面から答えることがなかった。

 集団的自衛権は他国の戦争に参戦することである。他国を守るために自衛隊員に戦死者が出る。自衛隊員が敵国の兵士を殺す。安倍首相は聞き心地の良い言葉だけを並べ、戦争のリアリティーを隠しているというほかない。


by asyagi-df-2014 | 2014-07-20 13:00 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

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