貧困問題-子どもの貧困2

 子どもの貧困問題について、二つの社説を掲載する。
特に、愛媛新聞の「安倍晋三首相が就任後、いの一番に取り組んだ景気対策で、10兆円規模の補正予算の財源として真っ先に削られたのは生活保護費だった。さらに今月、不正受給対策として申請しづらくなる改正生活保護法が全面施行された。他にも、雇用の安定を一層失わせる解雇促進ルールや『残業代ゼロ法案』導入をもくろみ、『個人増税、法人減税』を強行する。このままでは格差も貧困の連鎖も拡大の一途だ」との記述は、現政権のあり方を鋭く指摘している。
 以下、社説引用。


山陽新聞社説2014年7月15日:子どもの貧困 政府の本気度が見えない

 子どもの貧困対策の基本方針となる政府の大綱案が明らかになった。教育、生活、保護者の就労、経済支援の4分野で多様な施策が打ち出されたものの、数値目標は盛り込まれていない。貧困問題に取り組む政府の“本気度”が見えないと言わざるを得ない。

 与野党の議員立法によって今年1月、「子どもの貧困対策推進法」が施行された。大綱は、同法に基づき政府が取りまとめるもので、今月下旬にも閣議決定される。今後、各都道府県が具体的な計画を作る際の指針にもなる。

 教育支援では、教育委員会へのスクールソーシャルワーカーの配置拡充、放課後子ども教室などでの学習支援の充実などを盛り込んだ。奨学金制度については現状では有利子の奨学金を受ける人が多いが、無利子奨学金を受けられる人を増やすとした。

 生活支援では、児童養護施設の退所者が安心して就職や進学ができるよう身元保証人を確保する事業を行う。ひとり親家庭などに対し、子育てと就労の両立支援なども盛り込まれた。

 大綱案に挙げられた施策はいずれも重要なものだが、課題を並べただけという印象は否めない。

 数値目標の設定は、大綱案に盛り込むべき内容を議論してきた内閣府の検討会が提言していた。対策法をつくった際にも与野党の法案を一本化するに当たって与党が反対し、法案に数値目標が明記されなかった経緯がある。政府が数値目標の設定を避けるのは、子どもの貧困は複雑な要因が絡み合い、目に見える成果を上げるのが難しいという判断があるからだろう。

 しかし、問題が複雑だからこそ、施策の実施状況や効果を十分に検証し、施策を見直していく作業が不可欠ではないか。子どもの貧困問題に詳しい研究者からは、今後の施策効果を検証するため、当事者や支援団体を含めた常設の会議の設置を求める声も上がっている。政府は速やかに検討してもらいたい。

 検討会が求めていた、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当や遺族年金の拡充は大綱案に盛り込まれなかった。扶養手当の拡充だけでも年約420億円が必要で、多額の財源確保が課題とされていた。予算規模の大きな施策は、はなから見送ったとしたら残念である。

 大綱案に盛り込まれた施策にしても財源確保の裏付けはなく、どこまで予算措置が講じられるかは不透明だ。政府の“本気度”が見えなければ、都道府県の計画作りにも支障が出よう。

 貧困問題が深刻なのは、親から子への「貧困の連鎖」である。少子高齢化が進む中、1人でも多くの子どもが貧困から抜け出し、希望を持って社会の担い手になれなければ国の未来は危うかろう。政府は貧困対策の重要性をしっかり認識し、実効ある取り組みを打ち出すべきである


愛媛新聞社説2014年7月15日:子どもの貧困対策 危機感持ち格差と連鎖解消を

 政府は「子供の貧困対策」の大綱案をまとめ、月内にも閣議決定する。
 大綱案は1月に施行された「子どもの貧困対策推進法」の基本方針。子どもの将来が生まれ育った環境に左右されないように、学校を拠点とした教育支援や段階的な幼児教育無償化、返済義務のない給付型奨学金の創設を目指すことなどを盛り込んだ。
 遅ればせながらも国が、子どもの貧困の解消へ一歩を踏み出した意義は大きい。しかし中身はいかにも悠長で、総花的な目標や課題の羅列にすぎない。肝心の期限や数値目標、財源の裏づけもなく、実効性には大いに疑問が残る。
 まずは年々深刻化している現状に、政府がもっと強く危機意識を持たねばならない。その上で、元凶たる親世代の貧困や格差をなくす政策に力を注ぐとともに、負の連鎖を断ち切る強い決意をもって、子どもの健康確保や教育の完全無償化などに向け、思い切った予算を割くべきである。
 学校の制服が買えない。給食が途切れるため、夏休みになると体重が減る。病院にも行けない…。一見豊かな日本でも、厳しい貧困の現実は枚挙にいとまがない。
 「ほぼ6人に1人が貧困」―2009年時点で平均的所得(中央値)の半分(12年調査で年約216万円以下)を下回る世帯の子の割合(相対的貧困率)は、15・7%。経済協力開発機構加盟34カ国のうち10番目に高い。世界的にも恥ずべき、不名誉な「貧困大国」と言わざるを得ない。
 相対的貧困率の高さは、格差の大きさを意味する。背景には、非正規労働者の増加や不況による親の低所得化、社会的支援の手薄さ、教育費が高い割に公的支出率が少ないことなどが挙げられよう。
 今急ぐべきは、誰もが等しく教育の機会を得られ、生活を再建して貧困から脱却しやすい支援と仕組みの拡充。にもかかわらず、安倍政権の政策は逆方向の「企業優遇、格差拡大」に極端に偏る。
 安倍晋三首相が就任後、いの一番に取り組んだ景気対策で、10兆円規模の補正予算の財源として真っ先に削られたのは生活保護費だった。さらに今月、不正受給対策として申請しづらくなる改正生活保護法が全面施行された。他にも、雇用の安定を一層失わせる解雇促進ルールや「残業代ゼロ法案」導入をもくろみ、「個人増税、法人減税」を強行する。このままでは格差も貧困の連鎖も拡大の一途だ。
 政治が自助を言い立て、格差を放置する社会に、将来の希望が生まれるはずもない。急激な人口減が迫る日本にとって、未来を担う子どもへの支援は不可欠かつ一刻の猶予もない。最優先で取り組まねば、国の未来もまた危ういことに気づかねばならない。


by asyagi-df-2014 | 2014-07-18 05:40 | 書くことから-貧困問題 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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