残業代ゼロ問題を考える02


残業代ゼロ問題を考える02

  残業代ゼロ問題は、いよいよ次のステージに進もうとしている。、6月12日の朝日新聞の記事の「『残業代ゼロ』対象は年収1千万円以上、政府が方針決定」は、まさに、そのことを伝えている。
以下その記事。

 
働いた時間と関係なく成果で賃金が決まる新制度について、政府は11日、対象者を「少なくとも年収1千万円以上」の高年収者に限定する方針を決めた。「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられる恐れがある働き方が、管理職以外にも導入されることが固まり、「働き過ぎを助長する」との批判が高まりそうだ。

 11日夕、官邸で菅義偉官房長官ら関係大臣が集まり、大筋で合意した。田村憲久厚生労働相は会合後、「少なくとも対象者が年収1千万円を割り込むことはなくなった」と述べた。「職務範囲が明確」「高度な職業能力を持つ」との条件もつける。

 この制度をめぐっては、「全労働者の10%は適用を受けられる制度に」(経団連の榊原定征会長)など経済界や経済産業省が年収を問わず働き手を幅広く対象にするよう主張してきた。一方、労働規制を担当する厚労省は「働き手を守る規制がなくなる」と譲らず、平行線が続いてきた。

 甘利明経済再生相は会合後、「すりあわせをして両方にとって合格点になったのではないか」と語り、規制緩和への道がひらけたことを強調した。

 新制度は、今月末にまとめる成長戦略に盛り込まれる。厚労省は、来年の通常国会での労働基準法改正をめざして、年内をめどに審議会での議論を進める。年収1千万円未満の人についても、現行の裁量労働制の拡大を検討する。

 労働時間と賃金を切り離す働き方は、第1次安倍政権で年収900万円以上を対象に検討され、世論の反発で断念した経緯がある。(山本知弘)


 始めからつるんでいるからこそ、経団連会長が「残業代ゼロ『対象限定せず制度化を』」と応援歌を。朝日新聞2014年6月12日の記事が語る。


 働いた時間と関係なく成果で賃金が決まる新制度の対象を、政府が「少なくとも年収1千万円以上」の働き手に限る方針を決めたことに対し、経団連の榊原定征会長は12日、「あまり限定せず、対象職種を広げる形で制度化を期待したい」と述べた。今後、厚生労働省が詳細を詰めるが、できるだけ幅広い働き手を対象にすべきだとの考えを改めて強調した。

 官邸で報道陣の取材に答えた。榊原氏は9日の会見でも「研究技術職などの専門職やキャリアアップを望む女性らは新しい働き方を希望している。全労働者の10%ぐらいは適用される制度に」と述べ、対象を極力絞り込もうとする厚労省の姿勢を批判していた。

 新制度は、今月末に政府がまとめる成長戦略に盛り込まれる。来年の通常国会での労働基準法改正をめざし、厚労省の審議会で制度の詳細を議論していく。労働界には、「残業代ゼロ」で長時間労働を強いられかねないと反発が強い。(稲田清英)


やはり、ここで反論となるものを掲載する。
 以下、引用。

弁護士 佐々木亮の労働ニュース)


「残業代ゼロ」制度を考える(その2)~年収1000万円は長時間労働地獄へのカウントダウンの始まり
           佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表

 ついに「新しい労働時間制度」の政府案が明らかになりました。
 「残業代ゼロ」対象は年収1千万円以上 政府が方針決定
上記の朝日新聞の報道によると、田村憲久厚生労働相は会合後、「少なくとも対象者が年収1千万円を割り込むことはなくなった」と述べた。「職務範囲が明確」「高度な職業能力を持つ」との条件もつける。
とのことです。
「な~んだ。年収1000万円か。オレ、関係ねえや。よかったぜ。ふぅ。」とか思う方もおられるやもしれません。
しかし!
安心してはいけません。1000万円なんて最初だけです。
「ちょ、待てよ。お、お前、まさか田村厚生労働大臣様が言ってることを、信じないって言うのか?! 正気か?!」とか思う方もおられるやもしれません。
ここで、山井和則衆議院議員のツイートをどうぞ。

残業代ゼロ制度「年収要件が1000万円以上との議論があるが3年、5年後も変わらないのか」と私。田村大臣は「年収要件が永遠に変わらないことはない」と答弁。1度、残業代ゼロ法案が成立すれば、簡単に年収要件は引き下げられます。

ほら。このように、年収要件なんて、簡単に下がっていくのですよ。どうですか。もうお分かりでしょう。
「いや、まさか、そんなはずはない。お、お、俺たちの安倍内閣が、そんなご無体なことをするはずがない。そうだ! 年収要件は上がる方に変わるんだよ。そうに違いない。よかった。やっぱり、よかった。ふぅ。とにかく、ふぅ。」とか思う方もおられるやもしれません。
ここで、2005年の経団連のレポートをどうぞ。

ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言(2005年)
ホワイトカラーエグゼンプションとは、今、まさに議論されている「残業代ゼロ」制度のことです。
彼らの考えている年収はというと・・・
当該年における年収の額が 400万円(又は全労働者の平均給与所得)以上であること。

・・・400万円。ボーナスなしだと額面で1カ月33万円。手取りだと20万円台半ばから後半といったところでしょうか。
平均以上の所得だと、もう残業代は出さなくてもいいんだ、というのが経団連のお歴々の本音なのでしょう。
「で、でも・・・。まさか、平均より下なら、大丈夫だよね? いくらなんでも平均より下なら大丈夫でしょ。よ、よかった。ふ、ふぅ。強引に、ふぅ。」と思う方もおられるやもしれません。
ここで産業競争力会議の出している「新しい労働時間制度」をどうぞ。
個人と企業の持続的成長のための働き方改革
ここには、「職務・成果に応じた適正な報酬確保、効率的に短時間で働いて報酬確保」とあるだけで、なんと年収要件さえないのです・・・。
そうです。本音は、年収なんかで区分けしたくもないのです。
結局、本当の狙いは年収に関係なく残業代を払わなくてもよい労働者層を作り出すことです。
初めは1000万円でも3000万円でも何でもいいのです。
あとはカウントダウンを始めればいいのですから。

絶対に実現させてはならない
残業代の制度は長時間労働をささやかに規制するものです。
この程度では長時間労働が規制しきれていないのは、多くの過労死・過労自殺が発生している悲しい事実が証明しています。
このささやかな規制さえも外そうというのでしょうか。
労働法制の規制緩和は、まずはアリの一穴から入り、そこからじわじわ広げて、いつの間にか原則・例外が逆転するというのがパターンです。これは派遣法の改正の歴史を見ればよく分かります。
ですから、1000万円というところに惑わされないで、収入がそれに達しない人もみんなで反対しないと、気づいたら自分も「残業代ゼロ」制度の対象だった・・・なんてことは、冗談ではなく起こり得ると思います。

ですので、こんな制度を絶対に実現させてはなりません。
ぜひ、皆様も、このような制度を実現させないために、声を上げていただければと思います。

このことについては、朝日新聞は2014年6月13日の社説で、一定の反論を加えている。
以下、引用。


[働き方と賃金―長時間労働は許されぬ]

 年収が高いからといって、健康を損なうような長時間労働をさせていいはずがない。それが大原則だ。

 働いた時間と関係なく賃金を決める制度の新設が決まった。新制度では、残業代という考え方がなくなる。政府の産業競争力会議で民間議員の経営者が提案し、厚生労働省も同意した。

 対象は、最低でも年収1千万円以上で、職務内容がはっきりしている人。労使が参加する審議会で議論し、年内にも具体的な制度を決める。

 今の法律では、上級の管理職をのぞくと、労働時間を厳格に把握することが企業に求められている。高い能力を持つホワイトカラーの働き方にそぐわない面があることは確かだ。

 しかし、議論の過程には疑問が残る。会議に労働界の代表はおらず、民間議員の提案も目的や効果がはっきりしなかった。

 最初の提案には二つのタイプがあった。導入が決まった「高収入型」と、見送られた「労働時間上限型」だ。

 後者は、労使合意で労働時間の上限を決める方式。女性や高齢者、若者の活用がうたわれたが、一般労働者まで会社が一方的に上限や賃金を決めてしまう恐れがあった。後に対象は「幹部候補」に変わったものの、若者を使いつぶすブラック企業に乱用される不安がぬぐえなかった。見送りは当然だ。

 では、「高収入型」には問題はないのだろうか。

 新制度で、働く人の職務内容が明確化されるのは望ましい。ただ、「残業代をなくせば長時間労働がなくなる」という主張は根拠が薄い。企業側に仕事量を決める権限があるなら、長時間労働を余儀なくされる。

 新制度の対象は、仕事量を決める裁量があり、会社と交渉する力がある労働者に限るべきだ。休日を強制的にとらせるといった規制も欠かせない。

 いったん制度ができれば、なしくずしに対象が広がる心配も残る。年収1千万円超の勤労者は全体の4%未満とされるが、経団連会長が「全労働者の10%程度は適用を」と発言するなど、経済界には対象拡大の思惑がにじむ。簡単に変更できないよう、年収条件を法律で決めることも必要だろう。

 今ある制度との整合性も考えてほしい。例えば、残業代がいらない管理職は「管理監督者」と呼ばれ、本来は経営者に近い立場の管理職に限られている。ところが、経営側に恣意(しい)的に使われる「名ばかり管理職」の問題が絶えない。廃止を検討していいのではないか。


by asyagi-df-2014 | 2014-06-14 06:05 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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